スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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第8話 奏がんばる
奏の悪夢


 薄暗い不思議な空間の中、私は一人でネガトーンに向かっていた、ネガトーンの攻撃をギリギリでしてはいるがドンドンと追いつめられてしまい、足元に来た攻撃を捌き切れずに転倒してしまいダメージを覚悟する。

 

「音撃打! 火炎連打!」

 

 何処からともなく表れた獣鬼が一瞬でネガトーンを倒してくれて、私は立ち上がり獣鬼の方を向くが。

 

「ありがとう獣鬼……あれ……?」

 

 そこに居たはずの獣鬼は居なくなり、私は誰も居ない空間に取り残されちゃって。

 

「獣鬼!」

 

 私は不安に成って大きな声で叫ぶが、獣鬼は答えてくれる事は無くて途方にくれた時、後ろからロープの様な物で縛られてしまう。

 

 体を捻り相手を確認すると、そこには別のネガトーンが立っていた、脱出しようと試みるがネガトーンの力は強くその場で耐えるのが精一杯。

 

「翔けめぐれ、トーンのリング! プリキュア! ミュージックロンド!」

 

 ネガトーンが消滅し私は崩れ落ち両手両膝をついてしまう、側に寄って来たメロディの隣にはいなくなった獣鬼も立っていて、私は泣かない様に我慢する。

 

「リズム、大丈夫」

 

「怪我はないかいリズム」

 

 二人が、私に優しい言葉を掛けてくれるが私の心は沈んだまま。

 

「ごめん、私二人に頼ってばかりで、私にベルティエがあれば……」

 

 誇らしげに『ベルティエ』を構えているメロディが羨ましい。

 

「ハミィもベルティエ持ってるニャ!」

 

 メロディの肩に乗ってきたハミィは、楽しそうに『ベルティエ』を掲げる。

 

「俺は、二本持ってるよ」

 

 いつもの優しい笑みで答える獣鬼の手には、二本もの『ベルティエ』が持っていた。

 

「私達もよ」

 

 その声に振り向くと、セイレーンとトリオ・ザ・マイナーすら『ベルティエ』を持っている。

 

「「「持って無いのはお前だけぇ~」」」

 

「姉ちゃん俺も持ってるぜ」

 

「私も……」

 

 奏太もアコも『ベルティエ』を持っており、パパにママ更には和音に王子先輩や聖歌先輩、スイーツ部の部員までもが『ベルティエ』を持って、私を囲んで来て私はパニックになってしまう。

 

「な、何で私だけ『ベルティエ』が無いのおぉぉぉ!」

 

「うわぁ! …………夢……?」

 

 跳び起きた私は、周りを見渡し安堵の息を吐く。

 

「うるせぇなぁ」

 

 ノックもせずに、部屋に入って来た奏太に注意しようとするが。

 

「先輩か兄ちゃんに振られる夢でも見たのかよ」

 

「うるさい!」

 

 奏太にカチンときた私は、力いっぱい奏太の顔面に枕を投げつけた、うん、私悪くないよね。

 

 

 

 

 

 

 

 日直で早目に登校した私は、空気の入れ替えをしながら乱れている机を直し、教卓を拭き自宅から持ってきた花を飾り、拭きむらを見つけた黒板を再度綺麗にする。

 

 思い出すのは今朝の夢、メロディの放つ『ミュージックロンド』に獣鬼の『音撃打』。

 

「これ以上、響と八雲さんに迷惑を掛けられない……」

 

 廊下の様子を伺い誰も居ないのを確認すると、スクールバックから『ディスクアニマル』を取りだす、私達では変身出来ない『音角』で軽く弾くと澄んだ音が教室の中を響き渡り銀色の円盤だったのが、瑠璃色の狼へと姿を変える。

 

「ねぇ、瑠璃、ハミィの所に行って今日学校が終わった後に話したい事があるって伝えて欲しいの、あ、場所は海が見える丘の東屋ね、大変だけどよろしくね」

 

 瑠璃はしばらく私を見てから大きく頷くと、開いている窓から飛び出して行き、あっという間に見えなくなった。

 

「瑠璃、お願いね…………」

 

 私は小さく呟くと、祈る様に瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 響ちゃんと奏太に俺、珍しい組み合わせで話しながら歩いている、奏太から奏ちゃんが夢でうなされたと聞いてどんな夢を見たのだろうと興味が湧くが、奏太はそこまでは知らなかった。

 

「へぇ、私、夢でうなされた事なんて無いなぁ」

 

「俺も」

 

 響ちゃんも奏太もそんな経験は無いらしい、響ちゃんはやたらと関心にしていて、奏太はケラケラと笑っている。

 

「アンタ達、悩みなんて無さそうだもんね」

 

「まぁ、人それぞれだよ、おはようアコちゃん」

 

「ん、おはよ」

 

 アコちゃんも合流した途端、いつもの毒舌を披露する。

 

「悩みかぁ……」

 

 響ちゃんが、人差し指を頬に当て深く考えているのを見て奏太が驚く。

 

「もしかして響姉ちゃん、悩み……あるの……?」

 

 奏太の上げた声は、ウソだろうと言わんばかりだった。

 

「え、あ、無い無い」

 

 響ちゃんは、へらりと笑うと手を軽く振って否定する。

 

「響ちゃん無いの?」

 

 思わず驚きの声をあげてしまうと、隣でアコちゃんは溜め息を吐いた。

 

「そう言う八雲兄は、悩み無いの?」

 

「ん? 俺? そうだなぁ」

 

 チラリと響ちゃんを見ると、目を輝かせて答えを待っていてる姿が可愛くて、思わず頭を撫ぜてしまう。

 

「八雲兄ちゃん、いきなり何やっているんだよ」

 

 奏太にジト目で見られ、慌てて手を離して響ちゃんを見ると、顔を赤くして照れていた。

 

「八雲、そういうとこよ」

 

 溜め息混じりのアコちゃんに、視線を合わすと鼻で笑われる。

 

「そ、そう言えば奏は?」

 

「日直だから早めに出かけたよ」

 

 響ちゃんが、誤魔化す様に話題を反らし奏太に奏ちゃんの事を聞く、その後何気ない会話をしながら四人で歩いて行くと、アコちゃんが溜め息をしつつ唐突に足を止めた。

 

「ねぇ、アンタ、何時から小学生に戻ったの」

 

 小学校の校門の前で、肩をすくめ呆れ気味のアコちゃんに、眉を寄せた奏太。

 

「中学校は反対方向だよ、響姉ちゃん」

 

「ありゃりゃ……でも、八雲兄は?」

 

「響ちゃん、俺は今日、小学校でお仕事です」

 

 俺を巻き込もうとした響ちゃんの目論みは脆くも崩れ去り、頭を掻きながら逃げる様に中学校に向かって走って行く姿を見ながら、スカートって捲れないもんだなと思って眺めていたら、アコちゃんに気付かれたらしく、力の限り足を蹴りあげられた。

 

「そういうところって言ったわよ」

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