スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
土曜日のまだ早い時間に私は、八雲さんの家のチャイムを鳴らすと、八雲さんが何時もの笑顔で出迎えてくれた。
「奏ちゃんいらっしゃい、取りあえず中にどうぞ」
八雲さんの後についてリビングに向かう、八雲さんから微かにコーヒーの香りがする、リビングに入ると部屋の中はコーヒーの香りで充満しており八雲さんらしいなと私は少し笑みを浮かべてしまう。
「丁度コーヒー豆を挽いていたところなんだ、奏ちゃんも良かったら一緒に飲まない?」
「はい、お願いします」
八雲さんの言葉に嬉しくなり、コーヒーを入れている姿が見たくてカウンターの椅子に座る。
「そう言えば奏ちゃんは、朝食は食べてきたのかな」
「はい、ここに来る前に家で食べてきました」
「俺も食べたから、一緒に食後のコ-ヒーだね」
私の前に煎れ立てのコーヒーを置き隣に座って来る八雲さん、私は少し気恥ずかしさを感じながらも、コーヒーに少しだけクリームを落とす。
こんなに穏やかな時間久しぶりかもと思いながら、ゆっくりとコーヒーを楽しんでいると、自分の目的を忘れそうになりそうになっても仕方ないよね。
「あ、あの八雲さん! 今日一日八雲さんの側に居て良いですか!」
声に出しながらも私は、少しパニックになりそうで早口でまくしたてると八雲さんは驚いた顔をしていた、その顔を見て私は自分の言い方に問題がある事に気付き頬が少し熱くなる。
「あー、うん、別に良いけど何かあったのかな」
「別に何も……ただ普段どんな事しているのかなって興味が…………」
半分本当で半分嘘、少し自分に自己嫌悪をしてしまう、八雲さんの銀色の瞳に見つめられ私は少し気まずくなり目線を反らす。
八雲さんは何も言わないで席を立ち別の部屋に行ってしまう、もしかして機嫌を悪くしてしまったのかと心配していたら、見た事の無い青色の上着を着て腕には同じ色の服らしき物を持って私の前にやってくる。
「午前中は、調律の仕事に行くからこの上着を着てね、職場見学って事にするから」
渡された上着を広げると背中には音叉を斜めにクロスさせたイラストと円を描く様に木野調律工房と書かれたあった。
「はい、分かりましたお借りします」
思っていた事と違うと感じながらも、上着に袖を通すとやはり大きくて袖を捲りながら近くにある姿見の鏡で自分を確認する、八雲さんのサイズだからやっぱり大きいや。
長さなんて私の履いているスカートの丈と同じぐらいまでに成ってしまっている、鏡に映る私と八雲さんを見て仕事着だけれどお揃いの上着を着ている事に気が付き嬉しさと照れくささで一杯に成ってしまった。
連れて行かれた先は私立加音幼稚園、バイクを駐車場に止めて準備をしながら八雲さんが教えてくれる。
「今度発表会があるんだよ、それに合わせて調律の依頼があってね」
幼稚園は休みだけれど、何人かの先生は出勤しているらしくピアノに案内してくれる、早速作業を始める八雲さんを眺めながら前に音楽堂で調律していた時は、すでに作業は終わっていて八雲さんが調律している姿を見るのは初めてなのを改めて思い出す、初めて見る調律の作業は面白くて、何時までも見ていられる。
「奏ちゃん、音の確認したいからいつも練習している曲弾いて貰えるかな」
唐突に言われ私は驚いたが、八雲さんの手伝いが出来ると思い急いでピアノの前に移動して、何時も響と練習している曲を弾き出す。
腕を組み真剣に音を聞いている、八雲さんを視界の隅に入れながらもミスしない様に注意して演奏していると声を掛けられる。
「奏ちゃん、一小節前からもう一度お願い」
言われた通りに、一小節前から弾くとストップを掛けられ八雲さんはまた作業に入る、そんな事を何度か繰り返すと作業も終わりピアノの蓋をする。
「よし、終わり、担当の先生に話してくるから少し待っててね」
八雲さんが伸びをしながら教室から出て行くをの眺め、まだ出しっぱなしの道具を片づけながら戻って来るのを待つ。
「奏ちゃんお待たせ、片付けしてくれてありがとう、今日は後一件で終わるからもうちょっと頑張ってね」
バイクの戻り、何処に行くのかなと思っていると何故が『ラッキースプーン』の駐車場に入る。
「あの、何でうちのお店に?」
「次の場所は仕事を紹介して貰う事あるから差し入れ、小さい女の子も居てねラッキースプーンのカップケーキ好きだって言っていたし、奏ちゃんも居るから丁度いいかなとね」
私の待っている様に伝え足早に店に向かう八雲さん、戻って来た時は贈答用の少し大きめの箱を持って来て私に渡すとバイクを走らせ目的の家へと向かう、着いた家は響の家の負けないぐらいの大きな家だった、チャイムを鳴らし出てきた女性を見て私は見た事がある様な気がしたが思い出せない。
「おかーさーん、おにーちゃん来たのー」
そう言いながら出てきた女の子と見て私は驚いた、その女の子はあの日私達が決意を持って変身した日に助けたレナちゃんだからだ。
「ピアノのお兄ちゃんいらっしゃい、あ! あの時のお姉ちゃんだ!」
「こんにちはレナちゃん、ピアノのお兄さんだよ、今日はお姉さんも一緒なんだ」
私達の周りをまわっているレナちゃんを見て思わず笑みが漏れる。
「今日はよろしくお願いします、急遽職場見学をお許し頂きありがとうございます」
八雲さんがレナちゃんのお母さんに頭を下げる姿を見て、私も慌てて頭を下げる。
「よろしくお願いします」
私のわがままで八雲さんに頭を下げさせてしまった、私は頭を下げながらどうして良いか分からずに困惑してしまう。
八雲さんにカップケーキの箱を渡す時、唇だけで「大丈夫だよ」と言ってくれたけど申し訳なくなってしまった、八雲さんは箱を手渡すと室内に入って行く、私は八雲さんを慌てて追って行くと、部屋にはありさちゃんも居て私達を見て驚いていた。
「ありさちゃんには内緒にしてたの、驚かそうと思って」
自慢げなレナちゃんを微笑ましく思いながらも、八雲さんに促されてピアノのある部屋に向かう、作業をしているとレナちゃんとありさちゃんがドアを少し開け顔だけ入れて覗いてくる。
「邪魔しなければ部屋に居ても良いよ、お姉ちゃんの言う事ちゃんと聞いてね」
二人は、神妙な面持ちで部屋に入ってくると私の両隣りに座って来る、しばらくの間三人で作業を見ていると私はまた八雲さんに言われピアノの演奏をし、八雲さんは調整を繰り返していく、ピアノを弾いている時に二人を見ると目を輝かせて私を見ていて、ちょっと恥ずかしい様なくすぐったい気持になった。
帰りがけにレナちゃん達が騒いで大変だったけれども、お母さんにカップケーキの事を言われた途端に大人しくなって、それを見て私は声を出して笑いそうに成るのを我慢するのが大変だった、うん、二人ともかわいい。
調律はイメージです、筆者は一応調べました、と言うレベルです、ご都合主義でお許し下さい。