スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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奏の特訓

 帰り道八雲さんに、イタリアンレストランでご馳走をして貰って、ホンワカした気持ちで八雲さんの家に戻る。

 

 午後はトレーニングをすると言われ、私はついに八雲さんの強さの秘密が分ると期待をしたの。

 

「八雲さん、何で私に丁度いいサイズのトレーニングウェアあるの?」

 

「ほら、ここってトレーニングルームあるでしょう、ホワイトデーの後位に響ちゃんが、使いたいって言ったから念の為に用意したんだよ、シューズも合わせてね」

 

「あ、あの、八雲さん、私も使わせて貰ってもいいですか?」

 

 ドキドキしながら八雲さんの顔色を伺うが、八雲さんは何時もの優しい笑顔を向けてくれた。

 

「何時でも使って貰って良いよ、奏ちゃんのウェアも用意しておくから、何時でも手ぶらで来たい時に来れる様にね」

 

「ありがとうございます」

 

 甘え過ぎかな、と思いながらもついつい八雲さんに甘えてしまう、私ってこんなんだっけ……

 

 軽いジョギングで近くの山まで走ると、それだけで私はもう息が上がって辛かった。

 

「よし、この階段上がるから、ゆっくりで良いから出来れば足を止めない様に……いや、辛かったり足が痛くなったらちゃんと休んでね、まだ追い込む段階じゃないから」

 

 私は八雲さんの、追い込むって言葉に少し背筋が寒くなる、色々と考えていると八雲さんは一声かけると階段を駆け上りだす。

 

 あっという間に階段を上がり、見えなくなってしまった八雲さんを追い掛けるが、直ぐに足が辛くなり、途中で何度か休みながら、息も絶え絶えで上まで上がると、八雲さんは、木にぶら下がり片手で懸垂をやっていて、私に気が付くと、何でもない様にやって来る、いつもの笑顔が少し怖かった……

 

「なかなか良いペースだったよ、奏ちゃんなら直ぐにスポーツも得意になるよ」

 

 嬉しい言葉を掛けてくれるが、余裕の無い私は何とか笑う事しか出来ないぐらい辛かったの。

 

「次はタイヤ起こしだけど流石に無理かなぁ……」

 

「いえ! やります!」

 

 絶対に八雲さんの秘密を、と思いながらついて行った先にあったタイヤは、見た事の無いタイヤで私は少しだけ後悔をしちゃった。

 

「このタイヤは……車じゃないですよね」

 

「こいつはホイルローダーのタイヤでホイールもついてるから結構重いよ、本当にやるの? 奏ちゃん」

 

 後悔って後で悔やむから後悔って言うのを私は身をもって知る事になってしまう。

 

 見本として見せて貰ったのを見て、私は逃げ出したい衝動にかられる、八雲さんはタイヤを起こすと前に倒し、また起こすと倒すを繰り返し、広場の端まで行き、また同じようにして元の場所まで戻ってくる。

 

「……奏ちゃんやる?」

 

「八雲さん、気合のレシピ見せてあげる」

 

 半分捨鉢気味に即答で答え、タイヤに手を掛け力入れるがピクリとも動かず、力が無くなった私はその場に座り込んで荒い息を吐いていると、優しく背中をさすってくれて嬉しいけれど悔しい。

 

「八雲さん……次行きましょう、次」

 

「無理はしない様にね、次はあそこの小屋でやるからね」

 

 そう言って、連れて行かれた小屋の四方のシャッターを開けると、見たことも無い大きさの和太鼓が置いてあり、八雲さんはバチを四本持って来て、私に二本渡してくる。

 

「見本見せるから次にやろうね」

 

 和太鼓を叩く、八雲さんの姿は格好よく、太鼓の音も迫力があり、見とれてしまうのは仕方ないよね。

 

 私の番になり、八雲さんに手を持って貰い、叩き方を教わっている時、耳元に八雲さんの息が当たり、私は少し、うん少し、ないしょ。

 

 一人で叩きだした私は、さっきまでの幸せな気分は、直ぐに無くなり、腕は上げているのは辛いし、バチを握る手の力は無くなり膝も笑いだす。

 

「はい、そこまで」

 

 八雲さんの、言葉に私は気は抜けて、その場で崩れかけるが、優しく支えてくれる。

 

「良く頑張ったね奏ちゃん、すごいよ奏ちゃんの気合のレシピ、しっかりと見せて貰ったよ」

 

 八雲さんの言葉を聞きながら、私の意識は、ゆっくりと途切れてしまっても、しかたないかな。

 

 

 

 

 

 温かく優しい感触を感じ、ゆっくり目を開けると、私は、私は……八雲さんに膝枕をされていたの。

 

「や、や、や、や、八雲さん!」

 

「目が覚めた奏ちゃん、太鼓を叩き終わった後に気を失ったんだよ、あそこで起きるのを待つのも何だったから、家まで移動したよ」

 

 慌てて起きた私は、乱れている髪の毛を手櫛で整えながら、一つの疑問を怖いけど聞く。

 

「あの、私どうやって戻って来たの」

 

「どうしようかなって思ったけれども、おんぶさせて貰ったよ」

 

 色々と想像して頬に熱が上がってくる、気を失っていて良かったのか、悪かったのか私は少し悩む、うん、少しだけ起きて居たかったかな……

 

「お風呂沸いてるから、ゆっくり浸かって痛い所マッサージしてきな、少しぬるめで入浴剤も入れてあるし、のんびりで良いからね」

 

 八雲さんの、言葉に甘えてお風呂を借りたら、すごく広い浴室でびっくり、ゆっくりのんびりお風呂を楽しみ、言われた通りマッサージをして上がったら、八雲さんは冷え過ぎていないスポーツドリンクを用意してくれた。

 

 久しぶりに飲んだスポーツドリンクが、乾いた体にこんなに沁み込んだのは、初めてな気がして幸せ。

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