スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
朝起きた私は全身の筋肉痛でベットから動けなかったの、動ける様になったのはお昼前、今日は響のパワーの秘密を探る為に痛む体を引きずりながら響の家に向かう。
チャイムを鳴らして出てきた響はエプロンを付け、酷い形になったジャガイモを片手に笑っていた。
「響何なの? 一体……」
「その、パパが演奏会前で忙しそうだから、今日は私がお昼作っているの、皮むき超大変だったよ」
キッチンに向かいながら響の話を聞いて私は悪い予感しかしなく、それは最悪の形で的中した。
鍋に入っている玉ねぎやジャガイモは皮がまだ残っているし、大きさはバラバラで下拵えは何もしておらず、ジャガイモとニンジンが切らずに丸ごと入っている物まである。
私は生まれて初めて、血の気が引く音を聞いた気がし思考を止めてしまいそうだったけど。
「ま、後は煮込めば美味しいカレーの出来あがり」
響の台詞で、私は小さな悲鳴と共に一気に現実に戻されて、慌てて響を止める。
「ちょっとまった、このままじゃ駄目」
「え?」
えって、響、ちょっと待ってよ、おかしいと思わないの?!
「エプロン貸して」
「えぇっ」
不思議そうな声を上げている響が、私は不思議だよ。
響から料理を引き継いで一気に仕上げる、隣の響はずっと感嘆の声を上げ続け私はふと、確か響って交代で食事を作っていたはずと思い出すが、口には出さなかった、ううん、怖くて出せなかった……よし、煮込んでいる間に洗い物を済まそう。
「わぁー、やっぱすごいね奏は」
洗い物をしていると、響が鍋を覗きこみ嬉しそうな声を上げる、喜んで貰えて嬉しいよ。
「まぁ、これぐらいはね、料理の事なら何でも聞いてよ」
やっぱり私は、響の笑顔に弱いみたい。
「本当、奏は何時も頼りになるなぁ、このカレー良い感じじゃん、この前八雲兄の所で食べたビーフシチュー思い出すなぁ」
「ねぇ、響、ビーフシチューって?」
私は出来るだけ笑顔で響に尋ねる、大丈夫、私は冷静、うん、冷静。
「奏、笑顔なんか怖い、サクラがセイレーン、違うか、セイレーンがサクラになっていた時に八雲兄に紹介したんだけど、その時にご馳走になったの」
「え、セイレーンも」
あのセイレーンが、響と八雲さんの三人で食事? うん、想像できないよ。
「私さ、サクラが緊張していると思っていたけど、セイレーン正体ばれるのが怖くて緊張していたんだなって、でも食事は普通に食べてたよ、美味しいて言ってたし」
敵の真ん中で食事って……しかも味わうって敵ながらすごい、セイレーンに対して見かたが変わりそう。
「「「いただきます」」」
私と北条先生が静かに食べている隣で、響がお皿を持ち上げ物凄い勢いでカレーを食べている、何時見ても気持ちのいい食べっぷりで嬉しい。
「うん、美味しい流石は南野さん、お菓子もだけど料理もとてもお上手ですね」
「お口に合って良かったです」
喜んで貰えるのも嬉しい、誰かに幸せを感じて貰えるからお菓子作りも料理も頑張れる、私の原点を思いださせてくれる。
「おかわり」
え、もう? と思った時には響は立ち上がっており、小走りでキッチンに入って行く。
「次は大盛りにしよう」
鼻歌を歌いつつ戻って来た響のお皿は大盛りではなく特盛りで、相変わらず何処に入っているのか不思議になる。
「よくそんなに食べられるわね」
「私のパワーの源はご飯だからね」
笑いながら言う響に私は響と自分の最大の違いに気が付く、それは食べる量、あの日の会話で出たハミィの言っていたパワーって意外と単純かも、幸い筋肉痛で朝食は食べてないし、もう少しは食べられる、かな……おかわりしてみようかな…………
お皿を持ち上げいつもより早いペースで食べ始める、響と北条先生が少し驚いているけど、見ないふりを決め込んで食べ進める。
「私もおかわり」
流石に大盛りは無理だけど一人前は……
席に戻り私は猛然と食べ進める。
「南野さんもたくさん食べるんですねぇ」
「どうしちゃったの奏」
黙々と食べ続けていた手を止める。
「だって響と食べるカレーが美味しいから」