スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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奏の先には

 食休みの後、響がトレーニングをすると言うので、私も一緒にやる為に響のウェアとシューズを借りる、昨日の八雲さんのアレに比べたら大丈夫かな。

 

 響に目を向けるとWIND SCALEのウェアを着ていて、それはあの日のウェアである事を思い出す。

 

「響、そのウェアってホワイトデーのだよね、うん、やっぱり良く似合うよ」

 

 響は少し頬を染めハミィを肩に乗せたままクルリと一回りする。

 

「えへへ、ありがとう、でも奏、本当に一緒に走るの?」

 

「食べ過ぎた分運動しないとね」

 

 握り拳を作り気合を入れる、響のパワーって言えばスポーツもでしょう。

 

 響と一緒に土手の上を走るペースは昨日の八雲さんの時より少し遅く、河川敷に植えられている満開になっている桜を眺める余裕もある、風もさわやかで気持ち良い。

 

「よっ響ちゃん、奏ちゃん一緒なんだね」

 

 後ろから掛けられた声に振り向くと、すぐ後ろを八雲さんが走っている。

 

「八雲さん?」

 

「八雲兄、よろしくね」

 

 八雲さんは響の隣に移動すると、少しづつペースを上げ昨日ぐらいのペースになる。

 

「響、何時も八雲さんと走っているの」

 

 昨日のおかげか話しかける余裕がまだある。

 

「ううん、来週陸上部の助っ人あるから、八雲兄も誘ってみたの」

 

「今朝アカネが来た時は何事かと思ったけれど、せっかくのお誘いだから参加しようかなってね」

 

 会話しながらのジョギングは楽しい、走っていたら筋肉痛も楽になったし、私も二人のペースについて行けてるじゃん、これで『ベルティエ』が現れるのも時間の問題かもね。

 

「少しペース上げるよ」

 

 八雲さんが一言言うとかなりペースが上がる、でも、まだ何とか、何とか……辛い……

 

「奏ちゃんはそのペースを維持する様にね、ゴールは水門だから」

 

 水門って七キロ先のあの水門? このペースで? うそ? 

 

「俺と響ちゃんはインターバルで行くから慌てないでね、足が限界だと思ったら少しづつペース下げてね、響ちゃん準備良い?」

 

「良いよ、八雲兄」

 

 声を開けようとした時はもう遅く、響は八雲さんの合図で全力疾走で行ってしまい、八雲さんも一緒に走って行ってしまう、私もついて行こうと足を速めたけど直ぐに限界が来て足が止まりそうになる、やっぱり私プリキュアのパワー足りないんだ……

 

 走っているのか、歩いているのか、分からないペースで水門に到着すると、二人は土手の搬入道路の坂を使ってダッシュを繰り返していた。

 

 私の到着に気が付いた二人が、ダッシュを止め土手の上で待ってくれている。

 

「奏ちゃん、良いペースたっだよ」

 

「おぉ、すごいじゃん奏」

 

 今日も息も絶え絶えになってしまい、思わす膝と手をついて荒い息を整える。

 

「全然……すごく、なんか……無い……」

 

「何かあったの?」

 

 響が私を覗きこんで訪ねてくる、けれど私は上手い言葉が出てこない。

 

「いつもの奏と違うじゃん、カレーおかわりしたり、こんなに走ったり」

 

「ううん、別に何もない」

 

 私と響は三角座りで土手に座っており、八雲さんは片膝だけ立てて足を伸ばして座っている。

 

「昨日は俺の所に来たし、何も無い訳は無いだろう」

 

「八雲兄、そうなの?」

 

「ああ、午前は調律の仕事一緒に行ったし、午後は俺のトレーニングもやったよ、すごく頑張ってた」

 

 八雲さんは昨日の事を思い出しているのか、少し遠い目をした後に草笛を吹き出す、その姿にもう何も話さないよと言われているみたいで少しだけ安心する。

 

 今の私には頑張る事しか出来なくて、でも頑張っても二人には全然追いつかなくてやっぱり私には……

 

「なんでそんな無理してるのよ」

 

「無理なんてしてないし……」

 

 響の顔が見れなくて思わず目をつぶってしまう。

 

「何年、親友やっていると思っているのよ」

 

 響の言葉が胸に刺さる、親友だからだよ響、大切な親友だから迷惑なんて掛けたくないし、私は響の親友として胸を張って響の隣に居たいんだよ。

 

「ごめんね、響」

 

 これは私の心の問題、響や八雲さんを巻き込んではいけなかったのに、私はそんな簡単な事を忘れていたの。

 

「こんな喧嘩にもなって無い事で謝んないでよ、やっぱりおかしいよ、奏」

 

 正直に話そう正直に、響は必ず受けとめてくれるし八雲さんは手を伸ばしてくれる。

 

「私……自分が情けない……」

 

 膝の上で手を組み懺悔するように言葉を紡ぐ。

 

「奏……」

 

 響の呟きが八雲さんの草笛の音に乗り、春風と共に空にとけていった。

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