スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
「なぁ奏ちゃん、いやキュアリズム……君は何を決断して『キュアモジューレ』を受け入れて、戦う事を決めたんだい」
草笛を止めた八雲さんの質問が頭を回る、何の為、昨日会ったレナちゃんとありさちゃんを思い出す、楽しそうに笑っていた、幸せそうだった、私はそれを守りたかった筈なのに……
今の私は響に、ううん、メロディに置いて行かれる事が怖くて、獣鬼に助けられ続けるのが悔しくて、強くなる事ばかり追い求めて、心をどこかに置いて来てしまっていた。
「大丈夫、そのために私と八雲兄が居る、奏は奏らしく戦えば良いよ、私達は三人で戦うんだから」
「強さとは己の弱さを認めるところから始まる、だから君は強くなる」
二人は私をこんなにも受け入れて励ましてくれていたのに、私は何で忘れてしまっていたのだろう……二人の優しく温かい気持ちを…………
「本当に情けない……」
頬に一粒の涙が落ちる、私はそれを拭うと二人の前に立つ。
「響、八雲さん、ごめんなさい、そしてありがとう、私大切な事を忘れていた、響、私の親友になってくれてありがとう、八雲さん、いつも見守ってくれてありがとう、私はもう大丈夫。
私は私らしくだよね響、私は二人に比べたら全然弱いけれど、私はその弱さを受け入れます、だからこれからもよろしくお願いします」
私は大きく頭を下げる、頭を上げた時、私の視界いっぱいに響の顔が迫ってきて、そのまま抱きつかれ私達は二人して土手を下まで転がって行く。
「奏ぇ! 私の方こそ奏が親友で嬉しいよ、奏は私の自慢の親友なんだ、何でも話そうって決めたじゃん、奏が一人で悩んでいたら私は辛いよ」
響は苦しくなるほど私を抱きしめてくれる、その苦しさが今は愛おしく感じてしまう。
「奏ちゃん、自分自身を信じな、奏ちゃんは奏ちゃんが思っている以上に強いし勇気も持っている、この前だって足を痛めた響ちゃんを庇って一人で立ち向かったじゃないか、俺すら置いてね、だから奏ちゃんは何時でも望んだ強さを手に入れるよ」
「奏も涙もろいって、知らなかったよ」
響が指で私の涙を拭う、その行為が嬉しいけど恥ずかしい。
八雲さんに引っ張って貰い立ち上がった私達は体についた草とかを払っていた時に、お花見スポットから耳障りな音が聞こえ綺麗に咲き始めていた桜の花が一斉に散る。
散ってしまった桜の木々の間からネガトーンの姿が見えた瞬間、私は走り出しながら二人に声を掛けた。
「響! 八雲さん!」
ネガトーンの近くまで来た私は息をのむ、楽しいはずのお花見がネガトーンのせいで悲しみに包まれてしまっている、家族が支え合って泣き崩れている姿を見て私はあの日のレナちゃんとありさちゃんを思い出す。
「酷い、ようやく咲きだした桜の花を」
「家族の大切な時間を踏みにじるなんて」
私は響と頷き合う。
「「絶対に救って見せる!」」
「俺達の力見せてやろう」
「「レッツプレイ! プリキュア! モジュレーション!」」
「鬼姫の使者! 音撃戦鬼! 獣鬼!」
「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」
「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」
「「届け! 三人の組曲! スイートプリキュア!」」
私は守るんだここに居る人達を、傲慢な考えかもしれない、でも私は全てを拾い救うんだ!
全身の力を込めた拳が入った時、私は違和感を感じたがすでに遅く、ネガトーンは桜の花びらに戻ると私は通り抜けてしまい、ネガトーンに無防備な背中を晒してしまう。
体をよじり後ろを見ると、ネガトーンは大きな腕を振り上げており、私は攻撃を受けると思い歯を食いしばる、だけれど目だけは瞑らないでいた。
「させるか!」
「リズム!」
頼もしい二人の声と同時にネガトーンが高く蹴りあげられる、私はその場で強引に体を反転させ膝を折りたたむと全身のバネを使い大きくジャンプする。
「ありがとう! メロディ! 獣鬼!」
体を捻り両足で蹴るが、飛ばさない様にして体を縮め、回し蹴りを入れ吹き飛ばしてから地上に降りた。
「リズム無茶しすぎ!」
メロディが早口で私の心配をするが、私はメロディに笑顔を向ける。
「メロディと獣鬼が背中を守ってくれてるから、信じているから私は戦える」
メロディが困った表情を浮かべ、獣鬼は後頭部を掻いている、うん、いつもの二人だ、私達は最高のチームなのを忘れていた。
「何時までも友情ごっこしてるんじゃないよ!」
セイレーンがトリオの一人の赤髪の人の頭の毛を掻きむしって騒いでいる、私は思わずセイレーンを指さす。
「セイレーン! 貴女はこの輪の中に入れたはずなのにあの時逃げてしまった! 寂しかったら何時でも帰って来て良いんだからね!」
「馬鹿をお言い、アンタらの友達ごっこに付き合う気はないさ」
ますます頭の毛を毟るセイレーンを見て、私は心の中で赤髪の人に謝った。
「私だって食べた事無い、八雲さんのシチュー食べたくせに!」
「リズムそこなの?!」
メロディが思いっきり呆れた声を出すが、食べ物の恨みは恐ろしいんだからね!
ネガトーンが体勢を立て直して走ってくる、ネガトーンが腕を振り上げた瞬間、私は一歩進み出て回し蹴りをネガトーンに入れ吹き飛ばす。
「邪魔!」
「ええぇぇぇ」
「おいおい……」
メロディと獣鬼が驚きの声を上げる、こんな物あの日のトレーニングに比べればどうって事無い!
私は改めて周りを見渡すと、その光景に怒りが湧いてくる。
「私は貴方達を許さない、この光景を見て何も思わない貴方達を許せない、どんな悲しみに覆われても親は子を守り、兄や姉が弟妹を抱きしめている!
私はそんな人々を守る為にプリキュアに、キュアリズムになったの! 私はみんなの心を守って見せる! プリキュアの力はその為にあるんだから!」
私の思いに応えるかのように『キュアモジューレ』が輝きだす、私の心に新たな力を感じ私はそれを受け入れる。
一度手を叩き力の塊のような黄金に輝く音符を召喚する、逆側でもう一度叩き人々を癒すかのように青く輝く音符を召喚するとそれを両手で支えると胸の前で一つの力にする。
「刻みましょう、大いなるリズム!」
これは人々の希望の光、私に託された大いなるリズム!
「ファンタスティックベルティエ!」
人々の心を守る素晴らしい力!
「おいで! ファリー!」
私達の小さいけれど大きな仲間!
「翔けめぐれ、トーンのリング!」
全ての心と希望を乗せて!
「プリキュア! ミュージックロンド!」
今こそこの思い、翔け巡れ!
「三拍子! 1、2、3!」
私は弱い、私をそれを受け入れる!
「フィナーレ!」
だからもう振り向きたくない、私のスタートはここからだから!
人々が淡い光に包まれ不幸のメロディから解放され、ネガトーンによって操られていた桜の花も元に戻り、セイレーン達もいつの間にか姿を消している。
「私、響と八雲さんのおかげで何でプリキュアになったか思い出した、そしたらコレが……」
「そうニャ、それがプリキュアのパワーニャ」
メロディ、獣鬼、ハミィ、フェアリートーン、ディスクアニマル、私は皆に支えられていた、そんな簡単な事も忘れて焦っていた、私は一人じゃないこんなにも素晴らしい仲間に囲まれている。
私はハートのト音記号に選んで貰えて幸せだ、たとえどんなに辛く苦しい茨の道でも私は仲間となら歩いて行ける。
私はキュアリズム。伝説の戦士プリキュア。
第8話終了となります、お読み頂きありがとうございます。
明日も更新予定となります、宜しければお付き合い頂ければ幸いです。
最初に浮かんだのが最後の一行でした、そこに向かって奏ちゃんを格好良く書ければ良いなと試行錯誤したつもりです。
奏ちゃんファンに楽しんで貰えたら筆者は小躍りします。
遂に奏ちゃんも念願のベルティエを入手しました、と言う事で次回
プリキュアオールスターズ 虹色の花束
第1節 フラワーモールの
よろしくお願いします。