スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
ほとぼりが冷めるまで色々な店を見ながら時間を過ごし、ファッションショーも終わりテーブルとイスが並んでいたので、ひと休みにする事にした。
「飲み物買って来たよ、響ちゃんがチョコドリンクで、奏ちゃんがレモンティーだったよね」
確認しながら手渡し、テーブルの下に居るハミィとフェアリートーンにはオレンジジュースを渡す、俺も空いたイスに座りグレープジュースに口を付ける。
「いやー、一時はどうなるかと思ったよ」
ストローを咥えたままモゴモゴ喋る響ちゃんを見て、奏ちゃんが少し眉を寄せた。
「響、行儀悪いよ」
テーブルに肘を付き、組んだ手に顎を乗っけていた奏ちゃんは呆れ顔だ。
「さっきは奏ちゃん、ナイスキャッチだったよ」
「あなた達、さっき舞台に乱入した人だよね」
いきなりかけられた言葉に響ちゃんはむせ込んでしまい、奏ちゃんが慌てて背中をさすっている、しょうがないので後ろを振り向くと立って居たのは美墨なぎさと雪城ほのか、九条ひかりの三人だった。
まさかの人物達に声を掛けられ驚く、イメージ通り、なぎさちゃんは元気の塊みたいだし、清楚とは彼女の為にあるのだろうと思われるほのかちゃん、穏やかな水面を連想させるひかりちゃん、思わず見とれてしまう
「人違いじゃないですか」
「お兄さんさっきのジャンプすごかったね、プロのスポーツ選手?」
俺の返事を聞き流したなぎさちゃんは、空いているに椅子に座りながら聞いてくる。
「なぎさ、いきなり失礼よ」
少しだけ眉を寄せ、苦笑しているほのかちゃんの手を引き、隣に座らせるなぎさちゃん。
「気にしないで大丈夫、俺はスポーツ選手じゃないよ、調律師だよ」
「ちょーりつし?」
明らかに分かっていない、なぎさちゃん。
「なぎさ調律師ってね、ピアノのズレてしまった音を直したり保管業務をするのよ、設計、製作をする方も居て製造技師って呼ばれる方も居るわ、それに……」
「ほのかストップ、もう分かったから」
ほのかちゃんの説明について行けずストップをかけるなぎさちゃん、ほのかちゃんはまだ説明終わって無いのにと不服そうだ、その後ろでひかりちゃんはただ笑っていた。
なぎさちゃんは、響ちゃんを見て何かを感じた様で少し側により、響ちゃんは少し警戒する。
「私美墨なぎさ、よろしくね、あたなは?」
差し出された手を、握手する響ちゃん。
「北条響、なぎさ、よろしく」
「南野奏です、仲良くしましょう」
「雪城ほのかです、いきなり話しかけて驚いたでしょう、ごめんなさいね」
なぎさちゃんは、後ろで空気に徹していたひかりちゃんを引っ張って来て、椅子に座らせる。
「ほら、ひかりも自己紹介しないと」
「九条…………ひかりです…………」
かなり緊張しながら自己紹介するひかりちゃん、見ていて少しかわいそうになっていると、皆の視線が俺に集中する。
「自己紹介、八雲兄の番だよ」
響ちゃんの呆れた声。
「あ、俺か、俺は木野八雲、なぎさちゃん、ほのかちゃん、ひかりちゃん、よろしく」
まさか、こんな形で知り合いになるとは思わなく少し嬉しい。
「そうだ、ねえ、みんなで回らない」
響ちゃんが目を輝かせながら提案をし、なぎさちゃんが直ぐに同意をする、奏ちゃんとほのかちゃんは笑い合って、ひかりちゃんも微笑んでいる。
「今日は、八雲兄が我がまま聞いてくれるって言ってたから、みんなでご飯食べに行こうよ」
「響ちゃんナイス提案、美墨さん達も予定が無かったらご馳走するから一緒に行こう、食事は大勢の方が楽しいからね」
俺の言葉に響ちゃんとなぎさちゃんが喜びの声を上げ、ほのかちゃんは俺の方に体を向ける
「ご迷惑になりますから、私達は……」
「雪城さん、八雲さんは出来ない事は言いませんし、それに八雲さん自身もああ言ってます、良かったら一緒に行きませんか」
ほのかちゃんとひかりちゃんは、顔を見合わせてから俺に頭を下げる。
「木野さん、ありがとうございます、ご馳走になりますね」
俺も笑いながらうなずく、その瞬間背中に悪寒が走る、俺とひかりちゃんが弾かれた様に立ち上がると空を凝視する。
「二人ともどうしたの」
聞いてくるほのかちゃんの声が頭に入らない、空が裂けた様に感じ頭の中の警鐘が鳴り響く。
「空が……世界が崩れる…………」
小さく呟いたひかりちゃんの声が重々しく響く。
「ほのかちゃん、なぎさちゃんと協力して避難を始めて、響ちゃんと奏ちゃんを頼む」
空を凝視したまま声を掛けると、異常事態に気が付いたのか、ほのかちゃんは無言で立ち上がる。
「八雲兄、どうしたの?」
「八雲さん?」
俺が緊張しているのが伝わり、二人が俺に声を掛けてくるが、それには答えず話を進める。
「響ちゃん奏ちゃん、判断に困ったらほのかちゃん達に相談しろ、皆で考えて判断するんだ、良いね!」
二人が顔を見合わせるが、それに構わず行動を開始した。
「俺は、ここにスタッフに避難させるように話をしてくる」
「八雲兄!!」
走り出そうと瞬間、響ちゃんの叫ぶような大声に足が止まり振り返る、歯を食いしばり目を潤ませ何かを我慢する様な姿を見て、どうしようもないほど罪悪感に包まれる。
「響ちゃん、ごめん、必ず後で合流する、約束だ…………二人とも、いざとなったら……判るね」
奏ちゃんが響ちゃんの肩に手を置き頷く、響ちゃんは口を歪ませたまま小さく俯く様に頷いたのを見て、出来るだけ笑顔で頷き返すと俺は踵を返し走り出した。