スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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響の旋律(メロディ)

 目が開けていられない閃光、耳をつんざく轟音、体を打ちつける爆風、私達の抵抗も空しく全員が砂漠に倒れる。獣鬼もリズムも居ないしここが何処だか分からない、もう……駄目なのかな。

 

 頬につく砂が気持ち悪い、何度も砂を浴びて髪の毛も酷い事になっている、体も服も酷いありさまだ、早くお風呂入りたい、薄れかける意識の中、私は場違いな事を考えていた。

 

 砂漠に降りて来た私達の敵。確かムシバーンとサーロインだったかな……あぁ、お腹空いた、ビーフシチュー美味しかったなぁ…………奏のカップケーキ食べたい…………

 

「ここから抜け出して仲間と合流するんじゃなかったのかな」

 

 眠いんだから静かにしてよ……なか、ま……? …………やくも……にぃ……かな、で…………

 

「ただ闇雲に走って抜け出せる訳ないだろう」

 

 うる、さいなぁ……そんなの…………わかって……る、よ…………

 

「では、プリキュアの諸君サラバだ」

 

 視界の片隅に強い光が入る、破壊の力が渦巻く光……私の頬を一筋の涙が濡らすが直ぐに乾いてしまう。

 

 ごめ……ん、や……も、に……か…………で……

 

「えぇい! なんだコイツ()は!」

 

 男達の周りを何かが数体飛び回り、必死に攻撃の邪魔をしている。

 

「何……アレ……」

 

 ブラックが唸る様に声を出す、私はゆっくりと顔を上げ視界の隅に入ってきた、跳んでいる物体を見て、少しだけ意識がはっきりした。

 

「ディス……ク……アニ、マ……ル……?」

 

 口から漏れ出た言葉に私の意識がドンドンとはっきりしてくる、失った力が戻ってくるようだ。

 

「じゅう……き……リ、ズム…………」

 

 小さく呟く大切な仲間の名前、こんな所で何時までも寝てられない……ゆっくりとだが確実に立ち上がりつつある私の心と体。

 

「邪魔だ!」

 

 打ち砕かれて逝くディスクアニマル達を見て、私は最後に残った一体を助ける為に飛び出した。

 

「その子に触るなあぁ!」

 

 絶叫と共にムシバーンの顔に左膝を入れそのまま右足を振るい吹き飛ばす、優しく両手で最後の一体になってしまったディスクアニマルを胸に抱くと涙が溢れる、迫って来たサーロインに対し強引に体を捻り回し蹴りを入れて同じく吹き飛ばす。

 

「「「「「メロディ!」」」」」

 

 皆が足を引きずりながら寄って来て、私の腕の中のディスクアニマルを見つめてきた。

 

「コレは?」

 

 ブルームが覗きこむように訊ね、皆がディスクアニマルを気にした、私は心を落ち着かせるために一度大きく深呼吸をする。

 

「この子はディスクアニマル、私達と一緒に戦ってくれている大切な仲間、獣鬼の……そして八雲兄の音式神」

 

「音式神? 獣鬼?」

 

 ピーチが首をかしげる。

 

「八雲兄? ……あ、もしかしてあの時一緒に居た男の人! 誰よりも先に飛び出した人だ!」

 

 ブラックが手を叩きながら思い出した事を話す。

 

「あぁ! ムシバーンと殴り合った人!」

 

 ドリームは腕を組みながらうなずく。

 

「助けてくれてありがとうございます、ディスクアニマルさん」

 

 ブロッサムがディスクアニマルに頭を下げる、その姿が少し嬉しくて微笑んでしまう。

 

「君、茜鷹かと思ったら色が少し違うね、メロディだよ。助けに来てくれてありがとう」

 

 ディスクアニマルの頭を撫でながら皆を見ると、先ほどまでの絶望的な顔は誰もしていなかった。

 

「みんな、ここから出られるよ、絶対に」

 

 私は自信を持って皆に宣言する。

 

「どうしてそんな事が?」

 

 ディスクアニマルを見ていたドリームが不思議そうに私を見つめる、私は大きく頷くと笑いながら皆の顔を見回した。

 

「この子は後から助けに来てくれたんだ、八雲兄が私達を助ける為に……きっとリズムの所にも行っているはずだし、今頃は八雲兄も変身して戦っている、だからあきらめない」

 

「八雲さん、変身するの?!」

 

 ブラックが驚きの声を上げる、私は少し自慢を含めて喋る。

 

「八雲兄は鬼人で獣鬼って名前なの、すごく強くて優しいんだ。みんなにも紹介するよ、だからここから早く出よう、ディスクアニマルの事も話さないと」

 

 皆が砕かれてしまったディスクアニマル達を確認し、顔を見合わせ頷き合う。

 

「どうやったらここから抜け出せるかはまだ分からないけど、この子が希望を運んでくれた」

 

 瞳に涙を溜めたドリームが一歩前に踏み出す。

 

「私達を守る為に砕けてしまった子達の為にも、前進あるのみ!」

 

 ブラックが握り拳を作り涙を拭う。

 

「どんなに悲しくても立ち止まってちゃ何も始まらない!」

 

 涙をこらえる様にピーチが大きく深呼吸をした。

 

「私達は何時だってそうしてきたんだから、だから私は砕けたあの子達に誓う!」

 

 ブルームが自身の両頬を叩くと、目に溜まった涙が飛び散る。

 

「さあ、みんなで出口を探して合流しましょう、ディスクアニマルさんも一緒にです」

 

 瞳を潤ませたブロッサムがディスクアニマルを指先で撫でる。八雲兄が送ってくれた数体のディスクアニマル達、最後の一体になってしまったけれど、私達の心に力をくれた。

 

 やっぱり八雲兄は……自慢の兄だ。




お読み頂きありがとうございます。
明日も更新の予定です。
宜しければお付き合い頂ければ幸いです。

次回
プリキュアオールスターズ 虹色の花束
第13節 少女達の子守唄(ララバイ)

よろしくお願いします。
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