スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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ハミィ

「ねぇ、八雲兄、何……? あれ」

 

「正直分かりたくは無いが、不味い事に成っているのは分かる」

 

 響ちゃんも俺もドン引きしながらも状況が悪化したのは理解している、どう切り抜けようかと間合いを計っていると後ろから冷たい声が追い付いてきた。

 

「大丈夫よ、ちょっと胸がチックってするだけ、観念をおし」

 

 身を縮こまらせる響ちゃんを感じ奥歯を噛み締めながら腕に力を入れる、今日に限って『音角』を忘れてしまった自分に怒りを覚えた。

 

「響ちゃん必ず守るから、何が有っても守り抜くから信じてくれ」

 

 俺は努めて明るく響ちゃんに声を掛ける、響ちゃんは小さく「八雲兄」と呟きしがみつく力が強くなったがその体は少し震えていて俺の怒りに拍車をかけた。

 

「何? ナイト気どり? くだらないあんたに何が出来るのさ」

 

 黒猫が喉の奥で笑いながら馬鹿にしてくる、黒猫の距離を確認して横目で三人組を見る、まだ変身できない響ちゃんは必ず守らないと、いや、変身できてもだ、たとえ俺の命と引き換えてもだ。

 

 俺の覚悟が分ったのか響ちゃんが不安そうに見上げてくる、安心させようと笑いかけるがその顔を見た響ちゃんは首に回した腕に力がこもる。

 

「やめなさ~~~い」

 

 空から絶叫が聞こえ慌てて上を見上げると、太陽背にして何かが降って来ている、頭の片隅で戦闘機乗りかよと場違いな事思いながらも振って来るのを待つ。

 

「八雲兄! 空から猫が!」

 

 響ちゃんのその台詞を聞いて噴き出さなかった俺を褒めたい、降ってきた猫は二等身の白と所々ピンク色の丸い猫だった。

 

「ハミィ!」

 

 黒猫が驚いた声を出す、白い猫はこちらを振り向き二本足で立ちあがると右手を上げ空気も読まずに挨拶をしてくる。

 

「ハミィだニャ、怪しい者じゃないニャ」

 

「思いっきり怪しいんですけれど!」

 

 響ちゃんに叫びに応じるかのようにハミィと名乗った猫の周りにクリスタルの王冠をかぶったような七人? の小さな物体が取り囲む。

 

「なんか変なのくっ付いて来てるし!」

 

「フェアリートーン達ニャ、ハミィの大切なお友達ニャ」

 

「「「「「「「こんにちはドド」レレ」ミミ」ファファ」ソソ」ララ」シシ」

 

 七つの不思議な生物が声をそろえて挨拶をしてくる、響ちゃんの腕にさらに力がこもる、うん、分かるその気持ち知っていても実際見るとこれは引く。

 

「何しに来たのハミィ、音楽会でモタモタしてて伝説の楽譜を奪われた癖に」

 

 冷たく言い放つ黒猫にハミィはあっけらかんと答える。

 

「そんな悲しい事忘れたニャ」

 

「どんだけ前向きなのよ! どうでも良いから邪魔しないで、猫はコタツで丸くなってな」

 

「そういうセイレーンも猫ニャ」

 

「やかましいわ!」

 

 そのやり取りを見て、仲良いのか? などど思っていると困惑気味の響ちゃんがポツリとつぶやいた。

 

「なんか、私と奏みたい」

 

 何だろう、この弛緩した空気は締まらない取りあえず黒猫の名前が『セイレーン』と言うのは確認できた、今が逃げるチャンスかと思い三人組の方に振り返ろうとした時に。

 

「響……? え? お姫様抱っこ? え? 木野さん? え? え? なんで? もしかして付き合ってるの!?」

 

 タイミング悪く奏ちゃんが来てしまったのだ、軽くパニックを起こした奏ちゃんの台詞に響ちゃんも自分の体勢に改めて気が付き俺から降りると慌てて説明をしだす。

 

「これは深い事情があって、八雲兄とは付き合うとかそう言う関係じゃないから、勘違いしないでお願い」

 

 両腕を前にのばし手を振りならら首まで振って否定する姿に奏ちゃんはジト目で響ちゃんを見ながら更に追撃を掛ける。

 

「八雲兄? 何それ、やっぱり付き合っているんじゃない、あぁ、そう、私には教えられないって事ね、分かりました! 別に二人がどんな関係でも私には関係ないですから!」

 

 奏ちゃんはそう捲し立てると、小さい声で「別に教えてくれても良いじゃない、おめでとうって言ってあげるのにちょっと悔しいけれど」と呟くが聴力が強化された俺には聞こえたが響ちゃんには聞こえてないだろうと思い少し安心をし胸をなでおろす。

 

「なんで奏はいつもいつもそうやって決め付けるの? 事情があるって話してるじゃん」

 

 響ちゃんも負けずに言い返すが顔が少し赤い、響ちゃんは奏ちゃんの持っている物を見つけて驚く。

 

「奏、そのレコード!」

 

 響ちゃんの指摘に持っていたレコードを慌てて隠し、ぎこちない笑顔で返答する。

 

「うち、レコード掛けるの無いから時々聞きたくなったらここに来るの……昔みたいに」

 

 奏ちゃんは悲しそうな顔を響ちゃんに向け、ゆっくりと目線を外し色々な感情が混ざりあった声を出す。

 

「どうせ、響は覚えてないと思うけど」

 

「なにそれ! 知らない! そんなレコード」

 

 明らかにイラついている響ちゃんは怒気を含ませ声を荒げ、勢いよく顔をそむけ吐き捨てる。

 

「ひどい!」

 

「喧嘩はもうたくさんだよ!」

 

「そっちのせいでしょう! このレコードの事覚えてないなんて!」

 

 売り言葉に買い言葉、多分お互い分からなくなっているのだろうと思い、しょうがないから声を掛ける。

 

「「喧嘩は良くないぞ」ニャ」

 

 俺とハミィの声がハモッた、それに気を良くしたハミィが「ハモッたニャ」と大喜びする。

 

「良いんだよ、もっと喧嘩しな!」

 

 セイレーンがあおるように言葉を掛けると、奏ちゃんは目を丸くし。

 

「ね、猫がしゃべった~」

 

 奏ちゃんが手足をばたつかせて軽くパニックを起こす。

 

「ハミィだニャ、怪しい者じゃないニャ」

 

 ハミィは自分のペースを崩さずに奏ちゃんに挨拶をする。

 

「思いっきり怪しいんですけれど!」

 

「ありゃ、同じ事言った二人は仲良しニャ?」

 

「「全っ然!!」」

 

 二人して同時に否定するが当のハミィは「ハモッたニャ」とまた大喜びをする、その言葉を受けて響ちゃんと奏ちゃんはお互いににらみ合う。

 

 やり取りを見ていたセイレーンが「こいつもか」と呟くのを聞き逃さなかった俺は、奏ちゃんに注目する。

 

「ちょうど良い二つまとめて頂くわ! バスドラ! そっちの小娘のを奪いな、バリトンとファルセットは男の相手をしな!」

 

「「「りょ~~かい~~」」」

 

 右手を胸に置き左手を広げた三人組は一斉に動き出す。

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