スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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アニマル達の幻想曲(ファンタジア)

「獣鬼!」

 

 戦いが終わり弛緩した空気の中、メロディとリズムが俺の元に駆けて来る。二人の無事の姿を確認した俺は小さく安堵の息を吐く。

 

「二人ともお疲れ、無事で何よりだ」

 

 メロディが泣きそうな顔を見せ、苦しそうに目を伏せた、その隣でリズムが思い詰めた表情で小さく首を振る。

 

「これ……」

 

 二人が手の平の小さな破片を差し出す、それを見たメロディとリズムと一緒に飛ばされたプリキュア達が近づいて来て、それぞれの手の中の破片を見せて来る。

 

「私達の為にこの子(ディスクアニマル)達が犠牲に……」

 

 言葉を詰まらせていたメロディとリズムの代わりに、戸惑いがちにホワイトが二人の言葉を代弁し俯いた。

 

「ごめんなさい……」

 

 誰かが呟いた小さな言葉がさざ波のように広がって行く、俺は小さく溜め息を吐き下を向いてしまっているホワイトの頭に手を乗せる。

 

「ごめんなさいじゃなくてありがとうと言ってやってくれよ、ディスクアニマル達は自らの意思で君達を守ったんだ、俺は合流したら出入り口まで誘導するようにしか伝えていない」

 

 ホワイトの頭に乗せていた手を降ろし、メロディの方に向き直すと、俺の姿を涙目で見上げたメロディが大きな声を上げた。

 

「でも! この子達は私達の事を守って! 助けてくれて……扉を……開ける為の力も貸してくれて…………」

 

 涙混じりの声が少しづつ小さくなり、色々な感情が入り混じった表情を見せていたメロディは俯く。

 

「そうか……助けになったか……」

 

 涙を流すメロディを見ていられなく、メロディの頭を抱え肩口に引き寄せるとメロディは力なく俺の腕を掴んだ。

 

 有る程度意志を持ち合わせているのは知っていた、だがまさかここまでとは、思考の海に潜りそうになった時にドリームが遠慮がちに俺の前に進み出た。

 

「ねぇ、獣鬼、もし良かったらこの破片ちょうだい、私、大切にしたい!」

 

 思いがけないドリームの言葉にメロディは顔を向け少し呆気に取られた表情を浮かべる。俺はドリームの真剣な眼差しを受け、その思いが嬉しく胸が熱くなっていく。

 

「ありがとうドリーム、構わないよ、いや、是非受け取って欲しい、他にも欲しい人は持っててあげて、きっとディスクアニマル達も喜ぶよ」

 

 誰も返しに来ないどころか複数もっていた人が持って無い人に渡したりしている、結局は全員に行き渡りディスクアニマル達は幸せだなと感謝する。

 

 皆の姿を見てメロディは泣きながら口元に笑みを浮かべた。

 

「ところでさ、腰についている円盤がそのアニマル達なの?」

 

 腰に残っている数枚を見つけて指を指すマリン。

 

「動かしてよ! 私動いてる姿見てない!」

 

「マリン、私見ました! 可愛かったです!」

 

 ブロッサムがマリンに対し説明すると、マリンは地団駄を踏みながら、早く動かせと口を尖らせ俺に猛アピールをする。

 

 響ちゃんと奏ちゃんも可愛いって言ってたな……そんな事を思いながら動かすぐらいならと考え手を伸ばそうとした時、恐ろしいほどの悪寒が空から圧し掛かって来た。

 

「まだだ! まだ終わっていない! 上だぁ!」

 

 俺は重圧に耐えながら絶叫し、青い顔をしながらも慌てて構えるプリキュア達、夜空が禍々しい赤色に染まり生ぬるく気持ち悪い風が吹き荒れる。俺の腕を掴んでいたメロディの手が微かに震えおり俺はその手を包み込むように手を重ねる。

 

「我が名はブラックホール、全てを闇に……全てを暗黒の世界に……」

 

 声だけでも信じられないほどの力を感じる、俺は知らないうちに生唾を飲み込んだ。放たれた悪意の塊、体中の血液が逆流する様な恐怖に耐えながら少しでもメロディとリズムを守ろうと覆いかぶさったが、その行為はまったく意味をなさずに全員が爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。

 

 俺の視界の片隅に入る砕け散っていく大地、砂嵐が晴れると誰も立ってはいなかった、次々に変身が解けていくプリキュア達、俺もあまりの衝撃に変身が解除されてしまう。

 

「ありえない……」

 

 自分の姿を確認して、呆然とするなぎさちゃん。

 

「プリキュアの力が……」

 

 自分の手を見て、信じられないと言った感じの舞ちゃん。

 

「変身が解けるなんて……」

 

「ココロパヒュームが……」

 

 状況を受け入れられないつぼみちゃんとシプレ、全員が絶望の底に落ちそうになったその時、俺達を優しく温かい光が包み込んだ。

 

 自然と空を見上げる全員、穏やかな光を湛えたプリズムフラワーが空に浮かんでいた。

 

「大きい……これがプリズムフラワー……雲の中に隠れていたの……?」

 

 響ちゃんの呟きに誰もが答えず、食い入る様に全員が空を見上げている。

 

「見つけたぞ……プリズムフラワー、光の力を…………消し去ってくれる」

 

 不気味な声を響かせながら、禍々しい手がプリズムフラワーに伸びる。

 

「このままじゃ世界が……何とかしないと」

 

 絶望から最初に立ち上がったのは、のぞみちゃんだった。

 

「でも、ココロパヒュームが無くなって、もうプリキュアにはなれないですぅ」

 

「そんな……黙って見て居るしかないなんて……」

 

 シプレの絞り出すような声に絶望を強くするつぼみちゃん。

 

「全てを闇に」

 

 ブラックホールの満足そうな声が俺達に圧し掛かる。

 

「世界が闇に飲み込まれるココ……」

 

 禍々しい力に覆われ出すプリズムフラワーをすすべなく空を見上げる少女達。

 

「今度こそ、本当にお終いなの……」

 

「もう……どうする事も出来ないの……」

 

 ラブちゃんと祈里ちゃんの呟きは、皆に現実を突き付ける。

 

「まだです……プリズムフラワーはまだ光を失っていないじゃないですか! きっと、まだきっと何か方法がある筈です!」

 

 つぼみちゃんが身振り手振りも使い必死に訴えかけるが、誰も答えられない。

 

「そうですよね!」

 

 涙を流しながら訴え続け、小さな希望を見つけようとするづぼみちゃん。

 

「今の私達には、プリキュアになる力は、もう……」

 

 こまちちゃんが苦しそうに答え、下唇を噛む。

 

「ひとつだけ……ひとつだけ方法があるナツ」

 

 思いつめた表情のナッツが、小さいが皆の心に届く声を出す。

 

「本当!」

 

 えりかちゃんが、ナッツの前にしゃがみ期待に満ちた表情を作る。

 

「わずかに残ったプリズムフラワーの力を使えば、最後にもう一度だけプリキュアに変身する事が出来るナツ……」

 

 皆の表情が輝き喜びの声が上がるなか、俺はそれに加わる事は出来ないでいた。

 

「だったら早く!」

 

 明るいえりかちゃんの声が皆の心に希望を与えるが。

 

「それは……駄目なんだよ」

 

 皆の心に影を落とす言葉、だが俺は……止める事しか出来なかった。




 お読み頂きありがとうございます。
 次回は明日の更新予定となります、宜しければお付き合い頂ければ幸いです。

「ごめんなさい……」
 誰かが呟いた小さな言葉が…………と、ありますが、その部分は読者様のお好きなキャラに呟かせて下さい。
 八雲は変身を解除しても服はちゃんと残ります、プリキュア全員の前で全裸は流石にキツいです。
 遂に黒幕ブラックホールが登場しオールスターズ編も終わりが見えてきました。
では、次回。

プリキュアオールスターズ 虹色の花束
第19節 八雲の瞑想曲(メディテンション)

よろしくお願いします。
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