スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

74 / 110
八雲の瞑想曲(メディテンション)

「八雲兄!」

 

 咎めるような響ちゃんの声、泣きそうな表情に俺は小さく息を吐くと首を横に振る。

 

 不満と不信に満ちた視線が集まるなか、俺はナッツのそばに歩いて行く。

 

「ナッツ、今から俺が言う事が違う時だけ声を上げてくれ、正解だったら何も言わないで良い、お前の口からは言わせたくない」

 

 ざわめきが起こる、不信感が戸惑いに変わっていく、俺は一度大きく深呼吸をした。

 

「今、ここで変身をしたら、プリズムフラワーの力は無くなってしまうんじゃないのか」

 

 顔を見合わせる少女達、ナッツは下を向いているだけだ。

 

「力が無くなると言う事は、プリズムフラワーが作る繋がりが無くなる事、つまりは妖精の世界とこの世界の繋がりが無くなると言う事……」

 

 ナッツは下を向いたまま何も言わず、ココが寄り添っていた、胸が痛くなる。

 

「それは……」

 

 言葉が詰まり出てこない、間違いであって欲しい、それだけを願い話を続けた。

 

「それは、君達妖精とプリキュア達の……別れを意味する…………」

 

 静寂が耳に痛い、心が押しつぶされそうだ……

 

「チョッピ達は二度と会えなくなるチョピ……」

 

 誰も信じたくなかった言葉、俺が話していたから信じなかった話をチョッピが肯定してしまった。

 

「そんな……」

 

「うそでしょう!」

 

 ほのかちゃんと舞ちゃんが信じられない、信じたくないと言う声を上げる。

 

「そんな事って……」

 

 咲ちゃんも認めてしまう。

 

「せやかて、このままブラックホールを放っておいたら全ての世界が……」

 

「いやポポ!」

 

 タルトが付き付けるもうひとつの事実、泣きながら止めるポルン

 

「お別れいやポポ、お別れいやポポ」

 

 大泣きするポルン、妖精達に伝染していく泣き声、皆が皆、別れを悲しみ涙を流す。

 

 ハミィを抱きしめ、声を上げて泣く響ちゃんを見つめる、隣で奏ちゃんも静かに涙を流していた、胸が苦しい、痛くてたまらない。

 

 次々に上がる妖精と少女の泣き声、空を見上げると闇の力に包まれて行くプリズムフラワー。

 

 ……そうか、鬼姫が言っていた闇とはコイツ(ブラックホール)の事だったのかもしれないな……だとしたら俺は…………俺の出来る最後の方法を思い出す。

 

「ひとつだけ……プリズムフラワーに、プリキュアに頼らない方法がある…………」

 

 皆の視線が集まる、希望に縋る瞳に見つめられる。

 

「戦いは命のやり取りなんだ、だからこそ信念と決意……そして覚悟が必要になる、覚えておきなさい。俺が教えてあげられる数少ない話だ、俺はね、戦う為だけにこの世界に来た、だから…………」

 

 俺は言葉を止め、小さく首を振り全員を見渡し大きく息を吸う。

 

「ハミィ、二人の事を頼む、プリキュアの皆に会えて嬉しかったよ…………響、奏、少ない時間だが二人と過ごせて幸せだった」

 

 二人を初めて響と奏と呼び捨てにする、今まで避けていた呼び方、奏の前に行き髪の毛を一房手に取りキスをして、強く数秒間奏を抱きしめる。

 

「奏の夢、応援しているよ」

 

「八雲さん……」

 

 戸惑う奏から離れ、響の元に向かい座り込んでいる響の前でしゃがみ強く抱きしめる。

 

「奏と仲良くな、響のピアノ、大好きだよ」

 

「八雲……にい……?」

 

 体を離し見つめ合う、響の前髪を指先でそっとどかす、露わになったおでこに口づけ落とし、耳元に唇を寄せる。

 

「兄ちゃんに任せておけ」

 

 耳元で呟くと響が力の限り抱き付いてきた。

 

「八雲兄……」

 

 何度か頭を撫ぜもう一度耳元で小さく囁く、抱きついていた響の腕から力が抜けだらりと下げられると、正面から見つめ一度頷き立ち上がる。

 

『音角』を取り出すと丁寧に展開させ眺める、今のこの姿は好きだった『響鬼』を借りているだけだ、鬼姫は言っていた、使いこなせれば姿形、能力も変わると、なら今こそ、その力を。

 

『音角』を爪弾く、美しく哀しい音色を奏で響かせた。

 

 紫炎に包まれ鬼の力が解放されて行く、響鬼、威吹鬼、轟鬼、三鬼の力を合わせてひとつの姿に変わる。

 

「酒吞童子……」

 

 誰かが呟く。

 

「八雲兄……」

 

 響の声に応えず歩く。

 

「八雲兄! ……イヤだ……いっちゃイヤだ……私! ……」

 

「八雲さん……どうして……」

 

 悲痛な響と奏の声。

 

「「行かないで!!」」

 

 叫ぶ響と奏、響の動く気配。だが、直ぐに止まった。

 

「えりか! どいて!」

 

「うるさい! アンタの彼氏が男を見せようとしているんだ! 黙って行かせてやんなよ!」

 

 えりかのそれは慟哭と言って良かった、空を見上げブラックホールを睨みつける。

 

 響と奏の哀哭を背に、俺は高く飛びあがる。




 お読み頂きありがとうございます。
 次回の更新は来週末の予定となります、宜しければお付き合い頂ければ幸いです。

 今回も誰かが呟く。とあります、その部分は読者様のお好きなキャラに呟かせて下さい。

 さて、獣鬼の強化フォームについてですが完全にオリジナルフォームで特別編の特殊フォームです。ボディは響鬼、足は威吹鬼、腕は轟鬼をベースにしており少しごつくなっています、そして、空も飛びます、ご都合主義極まれりです。

酒吞童子と呟かれていますが正式なフォーム名は獣皇鬼です、今後出るかは不明となっております。

 響ちゃんを誰が止める?と考えた時に候補としましては、俯いて表情が見えないほのかが腕を掴む、唇を噛み締め両手を広げて立ちはだかるこまち、全てを察して溢れだす涙を拭う事無く響ちゃんの頬を叩く美希、無表情で響ちゃんの肩を掴むゆり等と考えておりましたが、書いてみたらえりかが全身を使って響ちゃんを押し止めました。
 少し前の話では「海より広い~」を入れる事も何とか出来ました。ハトプリファンの皆さんどうでしょう?

 八雲が決意と覚悟を固め一人戦いに行ってしまいました、見送る事しか出来なかった響と奏、そして大勢の少女達……果たして彼女達プリキュアはもう一度立ち上がるのでしょうか?
 では、次回。

 プリキュアオールスターズ 虹色の花束
 第20節 少女達の協奏交響曲(シンフォニアコンチェルタンテ)

 よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。