スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

75 / 109
少女達の協奏交響曲(シンフォニアコンチェルタンテ)

 空から聞こえるぶつかり合う音、激しく飛び散る炎、戦っている、八雲兄が一人で戦っている。

 

「八雲兄……」

 

 空を見上げ涙する、自分の無力さが悔しい。

 

「勝って……お願い、八雲さん……勝って戻って来て、私と響の所に、お願い……」

 

 奏の願う声、涙を流し空を見上げている大切な親友。

 

 空を見つめたまま立ち上がる、小さく聞こえる「勝って」の声、皆が勝利を願っている、願っている……

 

「進むんだ、進まなきゃ」

 

 願っているだけでは駄目だ、私は戦う決意をしてたはず。

 

 

 

 

 

 

 

 激しくぶつかり合い強い衝撃が地上まで届く、八雲さんが戦っている、私達の為に、世界の為に、涙が止まらない。

 

 このままじゃ居なくなってしまう、八雲さんが私達を置いて行ってしまう……

 

「八雲兄……」

 

 響の呟き、大粒の涙を零しながら悔しい様な祈る様な親友の声。

 

「勝って……お願い、八雲さん……勝って戻って来て、私と響の所に、お願い……」

 

 私は願う、どんなに酷い世界でも二人が居れば生きていける、だから……お願い、帰って来て、皆で……

 

「進むんだ、進まなきゃ」

 

 響の小さな声、けれど決意のこもった強い声、私の好きな響の声。

 

 私ってやっぱり弱い、どんなに辛くても茨の道でも進むって決めたのにね。本当に情けない。

 

 

 

 

 

 

 

「立ち止まってちゃ、何も始まらないんでしょう! 真っ直ぐ前進あるのみだって、さっきみんなが言ってたじゃない!」

 

 思いの丈を皆にぶつける、皆の心にさざ波が立つのが分る。

 

「私、奏と八雲兄が居なくてすごく心細かったけれど、みんなが私の手を取って一緒に進んでくれたから、頑張れた!」

 

 奏の瞳が大きく開かれた。

 

「そうだった……気持ちが繋がっていれば離れて居ても何時も一緒、みんながさっきそう教えてくれた」 

 

 奏がハミィの手を取って握手をする。

 

「たとえ離れ離れになったとしても心は繋がっている、そうだよねハミィ」

 

「私は黙って待っていたくない! ほんの少しだけれど私達にはまだ前に進む力が残っている、八雲兄だけじゃなくて私達も前に進まないと!」

 

 私と奏の言葉に晴れやかな顔をしている仲間達。

 

「そうね、彼一人に戦わせる訳にはいかないわ、それに私達にはまだ出来る事があるわ」

 

 月影さんの静かだけど強さを感じる声、泣きじゃくるポプリをあやすいつき。

 

「そうだよ! 前に進まなきゃ!」

 

 えりかがシプレを抱きしめて大粒の涙を落とす、ラブとタルトが抱きしめ合い声を上げる、のぞみとココが手を握り合う。

 

「のぞみ……」

 

「どんなに離れて居ても私達はずっと一緒だよ」

 

 のぞみと仲間たちの優しい視線、咲がフラッピを力強く抱きしめ、舞とチョッピが見つめ合い微笑み合う。

 

「離れていても気持ちは繋がっている」

 

「だからみんな何時も一緒よ」

 

 ほのかとひかりがポルンとルルンに気持ちを伝え、メップルとミップルがそんな二人を抱きしめる、皆が別れを惜しむのではなく、絆を確かめ合って温かい涙を流す。

 

「みんな一緒だよ!」

 

 なぎさが泣きながら笑顔でメップルにミップル、ポルンとルルンを抱きしめる。

 

「何処に居たって私達はみんな、ずっとずっと、ずーっと友達です!」

 

 つぼみの言葉が皆に広がる、泣いている人は誰も居ない、皆の決意が固まった、ここで決めなきゃ女がすたる。

 

 激しい音と炎を撒き散らしながら戦っている八雲兄とブラックホールを鋭く見上げ奏と強く手を握る、奏の体温を感じる、どんなに辛くても何時も勇気と力を与えてくれる大切な親友。

 

「心が繋がれば怖い事なんて何もない!」

 

 凛とした奏の声に顔、ここぞと言う時に聴かせてくれる声、見せてくれる顔、私の大好きな奏の表情。

 

「私達は今出来る事を! 精一杯の事を頑張ります!」

 

 つぼみの思い。

 

「私達の世界を闇に飲み込ませない!」

 

 ラブの鼓舞。

 

「私達は絶対に!」

 

 のぞみが皆に確認する。

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「諦めない!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 私達全員の決意表明。

 

「プリズムフラワー! お願い!」

 

 私は乞う、大いなる光をたたえるプリズムフラワーに。

 

「「私達に最後の力を!」」

 

 重なる私と奏と皆の思い。

 

「「私に……共に戦う力を!」」

 

 私と奏は最後の希望に手を伸ばす。




 お読み頂きありがとうございます。
 明日も更新の予定となります、宜しければお付き合い頂ければ幸いです。

 最後の力に手を伸ばしたプリキュア達の戦いが始まります。
 では、次回。

 プリキュアオールスターズ 虹色の花束
 第21節 プリキュア総奏(トゥッティ)

 よろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。