スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
久振りに会うみんなは元気そうにしている、桜も植わっており花も満開、みんなで遊ぶには最高の広場。この広場、水無月さんの家の所有地って聞いて驚いた、しかもこんな広場が、他にも何ヶ所もあるらしい。
皆が思い思いに散らばって遊ぶ、バトミントンをするグループ、一緒にダンスをするグループ、立ち話やシートに座って話をしている人達も居れば、寝転んで空を見ている人も居る。
一見すると平和そう、私達の守った平和、謳歌して良いはずなのに物足りない。ハミィ、今何しているの、一人で悲しんでない? フェアリートーン達が居るから大丈夫? 何時帰って来ても良い様に、ハミィのベッド綺麗にしてあるよ、アカネもハミィとフェアリートーンが居なくて寂しそうだよ。
「ごめん、私少し休憩」
輪から外れて桜の木の下へ腰を下ろす、ポカポカとした気持ち良い太陽、爽やかな風が私の頬を撫でる。
「響……大丈夫?」
奏が心配そうに私の顔を覗く、私は無理やり笑って安心させようとしたけど、眉を寄せられた。
「ひーびきっ! 元気ないぞぅ! 笑おうよ!」
のぞみが無邪気に笑いかけてくる、少し遠くにはりん、うらら、こまちさんにかれんさんも居る、覗きこんでくるのぞみの首にネックレスが見え、ペンダントトップを見て息を呑む。
「のぞみ……それ…………」
震える指でのぞみのペンダントを指すと、のぞみはにへらと笑う。
「へへっー、良いでしょう。りんちゃんに作って貰ったんだ、私のお守り」
のぞみが、ペンダントトップをもてあそぶ姿に私は言葉が詰まった。
「りんちゃーん! うららもこまちさんもかれんさんも来て~」
少し間の抜けたのぞみの声に、笑いながら四人が来る。
「響、みんなお揃いなんだよ、コレ」
のぞみに促され、皆がペンダントを胸元から取り出す。
「でね、ここからがすごいの、見てて」
のぞみが皆のペンダントを合わせると、ひとつの形が出来あがり、私は息が止まりそうになる。
出来あがる一枚の羽、
「あの子の羽に成るんだ……」
のぞみの落とした言葉が私の心に波紋を作る、その小さな波紋が大きな波となり私の心を押し流す。
視界が霞み、頬に熱い物が流れ落ちる、その存在に気が付いた瞬間、私の心は決壊を起こし瞬きも出来ずに涙を溢れさせた。
顔を手で覆う、目から涙が溢れて来る、あんなに泣けなかったのに、あの日、私達の為に砕けてしまったディスクアニマル、八雲兄が私達の為に送りこんでくれた小さな戦士達。
八雲兄の思いの詰まったディスクアニマル、色々な思い出が涙と共に溢れだす、奏とのぞみが私を抱きしめてくれると温かい二人の体温が伝わる。
「響ごめんなさい、私そんなつもりじゃ……」
のぞみは必死に私を慰めてくれるが、奏はそれを許さなかった。
「泣いて良いよ響、やっと泣けるんだね、八雲さんの事……良いよ響、私がそばに居るよ、大丈夫だよ」
皆が心配して集まって来て、次々に私に慰めの言葉を言う、皆の優しさが嬉しいけど……痛い。
「みなさん、響さんは大切なお兄さんを失くしてしまったのです、その悲しみは響さんにしか分かりません、今……響さんを慰められるのは、八雲さんが同じく妹と言われた奏さんだけです、私達はお二人をそっとしておくべきです」
ひかりの言葉に従い皆が離れていくがうららだけ残っている、うららがしゃがむと泣き続けている私に一枚のCDを握らせる。
「私のCDです。あの日、八雲お兄さんに……戦いの後サインを頼まれていたんです、響さんにお渡ししておきます、それじゃあ」
走り去って行くうららを歪む視界で見つめCDに目を落とす、八雲兄宛のサイン入りのCD、震える手でケースを開けると入っていたもう一枚のカード、そこに書かれた「ありがとう」の文字、涙で少し歪んで滲んだうららのカード、更に溢れだしそうな思いを誤魔化す為に空の見上げると、三羽の鳥が飛んでいた。
一羽の鳥が少し先を飛び残りの二羽が追いつこうと飛んでいる、まるで私達の様、小さく頑張れと呟き奏を見ると奏も眩しそうに鳥を見上げていた。
やっと泣く事が出来、少しだけ心が軽くなった私は奏と共に顔を洗いに行く、冷たい水が気持ち良い、サッパリとした私はこれ以上心配をかけないように今を楽しもうと心に誓う。
奏と戻って来た時に奏が空を見上げた後に私の手を引く、いきなり引かれてしまい私は奏が空に何を見たのかが分らなかった。
「響、空! みんな見て! 綺麗な虹よ」
私の手を引っ張ったまま奏は私と皆に虹の事を教える。
奏を先頭に丘の端まで走り皆で虹を眺めた。綺麗な虹と空を見ながら私は少しだけ考えを改める、私はプリキュアの一人としてこの世界を守ったんだ、確かに大きな犠牲を払ってしまったが、世界中の人々が虹を見上げられれば幸せだ、この大空に咲く七色の花を束ねた様な虹を。
でも、本当は…………この大空を……美しい虹を……一緒に眺めたい。
「八雲兄……空も、虹も……きれいだよ…………」
奏と繋いでいる手に力を入れる、奏を見ると目が合い、私は笑って見せた、久しぶりの心からの笑顔、奏も笑顔を返してくれる。
「ん?」
「は?」
「え?」
皆が何かに気が付き小さな声を上げる、私も空を注意深く見ると違和感を感じる。
「あれってまさか……」
祈里の言葉が希望を生む、私は凝視するとその正体に気がつき、嬉しさがこみ上げる。
「もしかして……」
小さく呟き心の底から願う、ウソじゃないよね、夢じゃないよね、起きたらベッドの上ってないよね、そう思わずにはいられない、涙が溢れて来る、次々と帰って来る妖精達……そして、私は見つけた。
「ハミィ!」
両手を広げてハミィを迎え入れる。
「響! 奏!」
ハミィを力の限り抱きしめる、私の隣で泣いていた奏も抱き寄せて、私達三人はまるで一つになった様に再開の涙を流す、皆が皆、妖精を抱きしめて泣いている。
抱き合って泣いていると、何の前触れも無く雷が鳴りだし、少し離れた場所に雷が落ちた。
青天の霹靂のそれは、何故か衝撃は少なくビュウと一陣の風が私達の間を通り抜けると、雷の落ちた場所に
紫の炎…………胸が苦しくなり心臓が早鐘を打ち出す、燃え盛る炎から巨大な門が現れ炎が収まると、その巨大な門がゆっくりと開きだす。
封が解かれた門から人影が見えると、私は全力で走りだす、隣で奏も必死な形相で走っている。足が絡まった様に進まない、私はこんなにも足が遅かったのかと思う程に距離が縮まらない、もどかしい時間が過ぎ、やっと目的の人物の側に寄ると、私と奏は力の限り飛び付いた。
「八雲兄!」
「八雲さん!」
私と奏は八雲兄を確認するかの様に抱きつくと、八雲兄は受け止めて力強く抱きしめてくれる。
「ただいま、響ちゃん、奏ちゃん」
ずっと聞きたかった八雲兄の声、抱きしめられた時の八雲兄の温もり、私と奏は八雲兄に顔を埋め涙が枯れるまで泣きじゃくる、そんな私達を虹は優しく見守っていた。
プリキュアオールスターズ 虹色の花束 終曲となります。
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今度の更新は本編には入らない小話となります。
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では次回。
プリキュアオールスターズ 虹色の花束
閑話
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