スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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マイナーランドの歌姫は

「ヤクモ、アンタ私に普通にしてるけど、私はマイナーランドの歌姫……不幸のメロディを歌って人間達を不幸のどん底に陥れるのが目的なのよ」

 

 セイレーンが睨みつけながら話してくる、余りに唐突な事を言い出したので少し驚く。

 

「不幸のどん底ねぇ……で、その後どうするの? まさか不幸にして終わりって訳じゃないよな」

 

 セイレーンは顎を触りながら考えだしてしまう。

 

「その先の計画聞いて無いのかよ、お前リーダーだろ? 把握してないの?」

 

「やっかましいわ!」

 

 図星を突かれ怒鳴るセイレーンを見ながら何となく慣れて来たと感じてきた。

 

「ところでセイレーン」

 

「なによ」

 

 俺の呼びかけに睨みつけてくるセイレーン。

 

「おかわりは?」

 

「……いただくわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴリラダンス……?」

 

 響ちゃんと奏ちゃんの話を聞いて、飲んでいたハーブティーを吹き出しそうになり、口を押さえ響ちゃんを見ると。

 

「やんちゃだし、もう大変」

 

 響ちゃんは机に突っ伏して顔を崩し情けない声を上げる。

 

「歌もバラバラだし、王子先輩も酷い目に会うしもう最悪」

 

 奏ちゃんは自分の髪の毛をいじりながら溜め息を吐く。

 

「でも、奏があそこの幼稚園で八雲兄の手伝いをしてたのはびっくりしたよ」

 

 顔だけ奏ちゃんに向け響ちゃんは崩れた顔のまま話すと、奏ちゃんは少し照れ笑いを浮かべた。

 

「ベルティエの時にちょっとね、あの時はご迷惑をおかけしました」

 

 奏ちゃんの丁寧な言葉に響ちゃんは顔を上げる、しばらく見つめ合った後笑い出す2人。

 

「ヤクモ、誰が居るの」

 

 すぐ側でいきなりかけられた知らない声に、響ちゃんと奏ちゃんは慌てて振り返る。そこに立っていたのは幅広の白いリボンで金色の髪をポニーテールにした赤い瞳の女の子が立っていた。

 

「八雲兄、誰……?」

 

 響ちゃんが俺と女の子を交互に見る、その隣で奏ちゃんも驚いた顔をしている。

 

「私はキリノ、今だけヤクモの世話になっている、それだけ」

 

「あー、お客さんの娘さんでね、ご両親が海外出張の間だけ預かっているんだよ、足怪我してるから大人しくしているんだ」

 

 響ちゃんと奏ちゃんが立ちあがり、キリノと名乗った女の子に前に行くと右手を差し出す。

 

「私、北条響、よろしくねキリノ」

 

「南野奏です」

 

 三人が握手する姿を複雑な気持ちで眺める。

 

「何を騒いでいたの……」

 

 少し冷たい感じの声で、キリノが響ちゃん達に訪ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、そんな事がね……」

 

 キリノは一言呟くと用意したアイスティーに口を付けた。

 

「教えるの、超大変だよ」

 

 食べていたマドレーヌを響ちゃん飲み込み、少し大げさに体を動かしながらキリノに幼稚園での事を話し、奏ちゃんは隣でうなずいている。

 

「歌なんて好きに歌えばいいのよ」

 

「でもそれじゃあ、発表会で楽しい思い出にならないよ」

 

 グラスの縁を指先で(なぞ)りながら吐き捨てたキリノに、奏ちゃんが少し大きな声を上げるとキリノは溜め息を吐く。

 

「言っておくわ、歌はね、好きなように歌いたい様に歌えば良いのよ。まずは歌を好きになるのが先のはず、発表会なんてその次よ、無理強いしたって良い歌は歌えないわ……」

 

 キリノの言葉に響ちゃん達は驚き、俺は目を見張る。

 

「目的の為に歌うのなら止めなさい。二人の言う発表会ってそういう物じゃないと私は思うわ、普段の努力を見て貰う場所よ、舞台の為に努力するのはプロよ、間違えないで」

 

 キリノは何かを誤魔化す様にマドレーヌに手を伸ばす。

 

「キリノすごいね、私そんな事考えた事無いよ」

 

 キリノの歯に衣着せなぬ言い方に純粋に感心する響ちゃんと奏ちゃん。

 

「私も……発表会だからって押しつけていたのかも、キリノさんって歌好きなんですね」

 

「私? ……歌なんて嫌いよ、無くなれば良いわ」

 

 奏ちゃんの言葉に水をかける様なキリノの声。

 

「キリノって歌苦手なの? もしかして下手とか」

 

 響ちゃんの少し失礼な質問にキリノは深い溜め息を吐く。

 

「歌の好き嫌いにね、上手い下手は関係ないわよ……ヤクモ、部屋に戻るわ、食事になったら教えて」

 

 キリノはそれだけ言うと付き合っていられないとばかりに、自分のグラスを持ち自分の部屋に戻って行った。

 

「すごいねキリノって」

 

「うん、本当色んな意味で、すごかったね響」

 

 二人は目を丸くしながら背中を見送るとうなずき合う。

 

「八雲兄、今日は帰る。キリノにありがとうって言っておいて、奏行こう」

 

 響ちゃんは残っていたマドレーヌを口に放ると、ハーブティーで流し込んで立ち上がる。

 

「急ごう響、北条先生直接帰るって言ってたよね、八雲さんまた来ます、それじゃあ」

 

 二人は荷物を持つと嵐の様に帰って行った。

 

「二人は帰ったの?」

 

 セイレーンが後ろから声をかけてくる。

 

「今慌てて帰って行ったよ、二人がありがとうだってさ」

 

 振り返りながら声をかけると、セイレーンはまだキリノの姿のままだった。

 

「礼なんて聞きたくないわ」

 

「セイレーン、その格好ってさ」

 

「アンタの本を参考にしたわ、何でも良かったのだけどね」

 

 腕を組みながら笑うキリノは、光りを放ちながらセイレーンの姿に戻る。

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