スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
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八雲と音吉
響ちゃんと初めて会った次の日に、時間はさかのぼる。
「ありがとうございました、またのご来店お待ちしております」
軽やかな奏ちゃんの声に送り出され目的の家に向かう、歩きながらも何処から話そうか、どうやったら信じて貰えるかとばかり考えていたら、目的地に着いてしまい手に持ったラッキースプーンの箱に視線を落とし溜め息を吐いた。
一度深呼吸をし、肺の中の空気を入れ換え呼び鈴を押す、建物の奥からパタパタと走る軽い音が聞こえ、ガチャリとドアが開けられ顔を出した女の子の明るい茶色のボブカットがふわりと揺れた。
「どちら様ですか?」
一言で言うなら、不審者。向けられた視線は如実に語っており、俺は少し後悔を始めていた。
「調辺音吉さんのお宅でお間違えありませんか?」
「………………そうですけど」
向けられたいた視線は更にきつくなってしまう、心の中で友好的じゃ無かったのか? などど鬼姫を少し恨みながら出来るだけ笑顔を作る。
「最近引っ越して来ました、調律師の木野八雲と言います、調べの館の奇跡のパイプオルガンの件でご相談したい事が有るとお伝え下さい」
上から下までジロリと見られ小さく「分かりました」と呟くとドアを閉められた、閉じられたドアを見ながら小さく息を吐く。
「これからだ、しっかりやれ」
気合を入れる為小さく呟くと同時に、ドアが再度開けられた。
「……中にどうぞ」
迎え入れてくれた時にラッキースプーンのカップケーキを渡すと軽く会釈されるが、明らかに警戒されており全身からピリピリとした気配を発しながら、案内されたのは少し重厚な造りのドアの前だった。
案内してくれた女の子がノックをしドアを開けてくれると、無言で見つめられ出かけた溜め息を飲み込むと、部屋に足を進める。
「すみません、失礼します」
通された部屋は書斎。中央に置かれたソファーに座っていた初老の男性は立ちあがると、少し険しい顔をして迎えてくれた。
「初めまして、最近越してきました調律を生業としている木野八雲と申します」
「初めましてじゃな、調辺音吉じゃ、して何の用かな?」
何と言い出せば良いか思わず目が泳ぐと、音吉さんから咳払いが入った。
「まずは……俺、いや、自分は敵では有りません、それは信じて下さい」
音吉さんに目を向けると、こちらを品定めしている様な視線を向けてくる、俺は膝の上の手に少し力を入れると少し身を乗り出した。
「自分は、やんごとなきお方からこの世界で戦う様に言われ別の世界から来ました、元世界については、今はお話する事が出来ません…………」
「戦う? 何故その様な事を話すのかな?」
音吉さんの表情は変わらない、後頭部を何度か掻く。
「すみません、何処から話せばいいのか自分でも良く分からないので、知っている話をします、聞いて下さいますか?」
「分かった、好きにしなさい」
音吉さんの言葉を聞いて、少しだけ気が楽になった気がした。
「戦う相手は、この世界に繋がる別の世界で生まれ、一度は封印されし存在、しかし復活の時期が迫っています、その敵の名は…………『ノイズ』」
「おぬし、何処でその名を」
少し腰を浮かせた音吉さんに、曖昧に笑って見せ視線を外す。
「それだけじゃありません、伝説の戦士が近々蘇ります、自分は戦士達と共に戦う為にこの世界に来ました……それと、どれだけ力に成るか分りませんが、自分にも調べの館のパイプオルガンの修理を手伝わせて下さい」
俺はそれだけ言うと頭を下げた、時間にしたら数秒、体感が数分経ったぐらいで音吉さんの溜め息が聞こえた。
「取りあえず頭を上げなさい」
一瞬躊躇うが、ゆっくりと頭を上げると音吉さんと目が合う。
「他に知っている事が有れば、話さない」
「はい、自分は音吉さんの正体を知っております、メイジャーランドの元国王にて『ノイズ』を封印した方、と言う事は存じておりますし、一緒に住んでいるお嬢さんが、メイジャーランドの姫君なのも知っています、情報源は自分をこちらに送ってくれた方です」
多少の嘘は混じるが、この際は仕方がないと諦め音吉さんの顔色を伺うが、正直何を考えているのかは分からない。
「伝説の戦士の名は知っておるのかな?」
「伝説の戦士プリキュア、目覚める戦士の名はキュアメロディ、キュアリズムです、適格者は北条団まりあ夫妻の一人娘北条響さんと、ラッキースプーンの看板娘の南野奏さんです、俺個人として二人とは知り合いにはなっています」
一瞬話し過ぎたかと後悔し、音吉さんを見ると目を瞑り何かを考えていた。
「後、もうひとつ重要な事があります、自分は人ではありません、鬼です、正確には鬼人になります」
言うだけ言ってポケットに無造作に入れておいた『音角』『音笛』『音錠』を机の上に置くと、音吉さんは片目だけ開け『音角』達を確認し小さく溜め息を吐く。
「分かった信じよう、お前さんが自分の正体をちゃんと明かしたのでな、でじゃ、お前さんの腕が見たい近々調べの館に来て欲しい」
『音角』達を俺の方に差し戻しながら小さく笑う。
「信じて頂けて良かったです。ひとつ、肩の荷が下りました」
頭を下げた俺に音吉さんが声を上げて笑い、俺も釣られ笑いながら全身の力が抜ける気がした。
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