スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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第12話 ハミィとセイレーン
特訓、訓練、トレーニング


 私は強くなったと思っていた、でも最近はネガトーンに後れを取る事が多く、私と奏は週末に八雲兄に本格的に特訓をして貰っている。

 

 

 

 

 

 最初、八雲兄は弟子を取るつもりはない、と渋い顔をした。でも、私はミューズと矛兜鬼の存在、ネガトーンの攻撃に付いて行けないと(後れを取った事実を)真剣に話をしたら、腕を組み目ときつく閉じて暫く考え込んで表情を変える事無く、唸る様に教えてくれると言ってくれた。

 

 私は何で教えたくないのかと聞いたら、渋い顔のまま後頭部を掻きながら理由を教えてくれる。

 

 ──鬼闘法── 八雲兄が戦闘時に使う体捌きから拳や蹴りの打ち方、防御と歩法、音撃法を含めた全ての闘技の総称。

 

 曰く、鬼へ至る道。鬼闘法を修め、心身ともに充実したなら、八雲兄の使っている『変身音叉・音角』で、鬼の力をその身にまとう事が出来るからだと。

 

 アカネを預かった日に私が変身をしなかったのは、それが原因だと深い溜め息と共に教えられた。その話を聞いた瞬間、私の胸は激しい熱を持ち、心は揺さぶられた……

 

 

 

 

 

 まず教えられたのは、歩き方(歩法)。奏と顔を首を傾げながら始めてみたが、これが思いの外きつい。足の踏み出し方から体重移動、腕の振り方や視線の保ち方、全てを考えながら歩くと物凄く消耗をしたし、普段使っていない筋肉もかなり酷使した、私は初めて歩くと言う行為が全身運動なのだと思い知った。

 

 しかし、効果は凄かった、陸上の記録が伸びたのだ、いとも簡単に……私自身、壁だと感じ出していた自己ベスト(県記録)を簡単に塗り替えたし、奏に至ってはもっと酷かった、今まで女子平均にギリギリ届かなかった奏の足が一秒以上縮まったのだ、それも陸上部から声が掛かるほどに、この事実は私と奏のヤル気に火を入れる。

 

 私達は登下校、移動教室、あらゆる状況でお互いを注意し合った。八雲兄も驚くほどに練習をし、結果、八雲兄も私達の真剣さを感じ取り、今まで以上に親身になって教えてくれるようになり、ついには本格的に戦い方も教えてくれるようになった、でも、戦いに関して八雲兄はややスパルタで……鬼だった…………鬼だけにボソッ

 

 そんな中での訓練の間の休憩は、何となく意見の交換会みたいになっていて少し面白い。

 

「最近、二人とも動きがかなり良くなって来たね」

 

「八雲兄、本当?」

 

 八雲兄の言葉に嬉しさがこみ上げる、隣の奏も嬉しそうだ。

 

「本当、響ちゃんは元々運動が得意だから慣れるのも早いけど、動く時少し癖があるから直さないといけないかな? 奏ちゃんはある意味真っ白だから慌てず基本を体に馴染ませよう」

 

「「頑張る!」」

 

 私と奏が同時に返事をした、自分が日々強くなっていくのが分かる。戦う事が日常になっているのは少し考えなくもないが、皆で同じ方向を向いて努力するのは好きだ。

 

 プリキュアの為とはいえ奏とこういう機会が作れるのは嬉しいし、それに奏と一緒に運動するのがこんなにも楽しいとは思わなかった。

 

「上手く力を制御すれば色々な事が出来て、戦いの幅が広がるよ」

 

「戦いの幅……どんな事が出来る様になるのかな」

 

 奏が手を開いたり閉じたりしながら悩んでいると、八雲兄が立ちあがる。

 

「たとえばミュージックロンドだけど、あそこまで力を溜めなくて途中で開放すれば、その場での攻撃も可能になるはず、ヒントになると良いけど見ててね」

 

 八雲兄が音撃棒を構え力を込める、その真剣な姿にこんなにじっくりと見れるのが嬉しくて、ちょっと頬が緩む。

 

「少し前に見せたが、火炎連打や一気火勢の応用でこんな事が出来る、烈火弾って言うんだ見ててね」

 

 音撃棒を振るい小さな火の玉を数個飛び、近くの岩に当たり小さな爆発を起こす。

 

「八雲兄すごい」

 

「やっぱり八雲さんは、変身しなくても音撃棒使えるんですね」

 

「使えるよ、って話の続きだけど、今みたいに力を解放すれば戦いの幅も広がる。パッショナートハーモニーもあそこまで溜めなくても相手の近場で放てば、牽制にも成ると思う」

 

 私は奏と手を繋いで、その場で何となくパッショナートハーモニーのポーズを取って見る。

 

「奏分かる?」

 

「んー、イメージが湧かないよ」

 

「響ちゃんは一度経験しているよ、似た様な事をね」

 

 八雲兄の言葉に奏と顔を見合わせ、思わず自分を指さす。

 

「私が経験?」

 

「響覚えある?」

 

「あんまり覚えが無いな……何かあったかな?」

 

 私の答えに八雲兄は苦笑し、奏は首を傾げている。

 

あの戦い(ブラックホール)の時さ、キュアブラック達と同時に攻撃して道を切り開いたって言ってただろ、それだよ」

 

 八雲兄の言葉に『コラボレーション・パンチ』を思い出し思わず手を打つ、隣で奏が呆れた顔をしているけど気にしない。

 

「奏ちゃんだって、即興のコンビネーションで切り抜けているんだから、響ちゃんとだったら自然に合わせられると思うし、もしかすると新しい浄化技を生み出すかもね」

 

 今度は奏が目を丸くして驚いている、奏もあの時は大変だったんだもんね。でも奏とのコンビ技に新しい浄化技……少し楽しみ。

 

「絶対って訳じゃないから、そう言った戦い方もあるって記憶の隅にでも留めて置いて、後は……ま、これは良いか、じゃあ、そろそろ続きを始めようか」

 

「どうしたの? 八雲兄」

 

「何か気になる事でもあるんですか?」

 

 八雲兄に訊ねるけど、珍しく言い辛そうにしており、目も泳いでいるので少し不思議になった。

 

「八雲兄はっきり言ってよ、気になるよ」

 

 八雲兄は明らかに誤魔化す様な笑いを浮かべ、後頭部を掻いている。

 

「言うけど怒るなよ……これだけ満遍なく鍛えているからさ、最近二人ともかなりスタイル良くなったなぁ……って正直思ってる……」

 

「「本当!」」

 

 私は奏と手を取り合い喜んだが、二人同時にある事実と視線に気付く。

 

「八雲兄?」

 

「八雲さん?」

 

 少し不躾な視線を私達に向けていた八雲兄を、奏と同時に睨みつけると八雲兄の表情が引きつる。

 

「「この……スケベ!」」

 

「怒るなって言っただろう」

 

「「五月蠅い! 問答無用!」」




 お読み頂きありがとうございます。

 今回も病気に前に書いてあった後書きです。

 鬼闘法に関してですが、この話では戦闘方法という考えになっています。
 鬼に至った結果として鬼爪や鬼火を習得する、といった感じです。
 言ってしまえば響鬼における明日夢君達みたいな修業をしていると思って下さい(正確には明日夢君は修業をしていませんが)、その中に戦い方が入っていると思っています。
 ……あれ、響ちゃん達鬼になる可能性があるのか…………まぁ、鬼人の組曲内では鬼になる予定は今の所ありません。
 結果としてこの世界のプリキュアの中では破格の戦闘能力を得ていきます、ハトプリのいつきやドキプリのありすの様に格闘経験者はこぞって戦闘能力が高いと思っていますので、完全戦闘スタイルの鬼闘法を修めていくメロディとリズムは一線を画します。
 この辺はご都合主義の拡大解釈でお許し下さい。
 では、次回

ハミィとセイレーン
第2節 落とした物は
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