幸太郎くんのお家事情にも。
そしてウザさは更なる高みへ────(何も考えないで読むことを推奨します)
目映い光が収まっていき、恐る恐る目を開くと知らないドーム状の天井だった。そして右手には何やら柔らかくてスベスベした感触。左手には弁当箱と箸。
「知らない天井だ……」
「なんで天井見てるのよ!前見て!前!」
「前?そうかこっち上だわ」
雫の言葉に従って顔を前に向けると、言葉にし難い光景が視界に飛び込んできた。
それは巨大な壁画だ。なんかいろんな景色とか金髪外人が書かれてるが、俺には一番気になることがある。
「なぁ雫。あの絵って女性かな?まさか野郎じゃないよな」
「そこ!?今気になるのがそこなの!?」
「気になるじゃん。気にならない?」
「それは……少しだけ」
「だろ?」
「あのー、そろそろよろしいですかな?」
俺たちの足下から声が聞こえ、視線を今度は下に向けると何やら俺たちは知らねぇおっさんたちに囲まれていた!!
思わずまだ掴んでた手を引っ張って雫を俺の側に寄せ、あからさまな警戒心を出してやる。流石の俺も知らない奴らに囲まれてる状況なら雫優先するわ。
1号?1号なら既に然り気無く南雲くんの側に寄ってるよ。こんな状況でもさらっと想い人の側に近付けるってやるおるな。
やっぱすげぇよ、1号は。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願い致しますぞ」
何やら一番豪華そうな装備を施した好爺っぽい人が名乗りを上げる。
あぁん?教会?教皇?ははーん。なるほど。分かったぞ!
教会でステンドガラスに描かれているのは大半が女性!
つまり!
「雫、この絵は高確率で女性だ……!!」
「幸太郎……ちょっとは空気呼んで……」
「「「「確かに」」」」
顔を赤くした雫の言葉に、クラスメイトどころかおっさんたちまで頷いたのはとても解せん。
その後、俺たちはイシュタルなる人物に教会の外へと連れ出されたのだった。
何度でも言おう。解せん!
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場所は変わって、なんぞ豪華でデカイ部屋に案内されたでござる。イシュタルや愛ちゃん先生、幼馴染みズが上座に座っており、やっぱこいつら勇者パーティの主力なんやなぁってボーッとしとります。
俺?長テーブルの最後方、南雲くんの隣だけど。
どうして自分から目立ちにいく必要があるんです?(マジレス)
でもさらっと3号に睨まれました。1号にも睨まれました。3号は「一人だけ逃げるな」、1号は「南雲くんの隣はズルい」ってことを言いたいんですね分かります。
……俺は勇者側じゃないからね!仕方ないね!
「……」ペコリ
「あ、どうも。お仕事お疲れ様です」
「……」ニコッ
飲み物の支給をしてくれたメイドさんにお礼を言うと、愛想笑いをしていってくれた。
うーむ。愛想笑いだと分かっていても可愛い。野郎の悲しい性。南雲くんにも同意を求めようと思ったけど、1号がニッコニコしながら南雲くん見てるから止めといてあげよう。風間 幸太郎は空気を読める男だ。
え?俺に来る3号の視線?でぇじょうぶだ。今のところは問題ない。えぇ、今のところは。
因みに他の野郎どもはデレデレしおってからに女子から冷たい眼差しを受けていた。俺にも冷たい眼差しが来てたけどそいつらには満面の笑みを浮かべながら手を振って差し上げた。顔反らされたけど。解せぬ。俺が何をしたというのか。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され────」
この後延々と胡散臭いじいさんの話が続いていくが、どうせ南雲くんとか幼馴染みズがしっかり聞いてくれるだろうし俺はお昼の続きを取ることにした。幸いにも弁当はそのまま持ってたので一安心だ。
お、このアスパラベーコンの塩加減ええやん。流石カオリエル、俺の味覚を分かってらっしゃる。にしてもこの卵焼きの味も食ってると中々に中毒性がある。甘しょっぱい味付けがいいね。
でもあれだな。この状況って十中八九元の世界に返してくれないパターンが多いよね。
ってことはこんな風に日本の飯が食えるのもこれが最後ということか……。
ちょっとしんみりしながらおかずを口に運んでいると、周りからの視線がチラホラと俺に向いていることが分かる。なんだよ。君らちゃんと食ってたでしょ。
うーん、これメイドさんに頼んで似たような料理とか出来ないかね?
「……」チラッ
「?」コテン
「oh…」
先程支給をしてくれたメイドさんを見れば、愛想笑いをしながら小首を傾げた。うーん、可愛い。控え目にいって最高としか言えな─────
ピシャアァァァァン!!
その時俺の背に電流走る!その原因は今まさに此方をガン見している3号である!少し前の1号並みにニコニコしている。俺はこの話し合いの後に死ぬかもしれない。せめて死ぬ前に美少女か美女に膝枕してほしい人生だった。
「ふざけないで下さい!結局この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっとご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
「ファッ!?」
愛ちゃん先生が怒り心頭で立ち上がり猛然と抗議を始めたのでマジでビビって変な声が出たぜ……。
ってか何?戦争?いつの間にそんな話が進んでた訳?
あの優しいロリ先生を本気で怒らせるなんざぁやべぇ奴らやで。
あ、メイドさん止めて。そんなクスクス笑わないで。流石の俺も恥ずかしいぞい!
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
「なっ!?」
イシュタルの言葉に愛ちゃん先生とクラスメイトたちが動揺するが、何やら隣の南雲くんだけは油断せずに相手を観察している、風に見えなくもない。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
「そんな……」
イシュタルの無情な言葉にショックを隠せない愛ちゃん先生の姿に加え、帰れないという事実が皆に重くのしかかる。
そして勿論それだけで済む筈もない。
「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」
「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」
「なんで、なんで、なんで……」
「そーだそーだー、おーぼーだー」
知らない土地にいきなり飛ばされて、知らないうちに勇者パーティに仕立てられ、しかも帰れませんだもの。
こんなんキレるのも仕方ない。かくいう俺も今頃我が家でつくだ煮を作ってるであろう婆ちゃんのことが心配だ。
だがここで騒いだところで解決なんてするわけも、俺たちを帰してくれるわけでもないだろう。
ほぅれ見ろ。イシュタルのあの冷えきった瞳。ありゃ、ろくでなしの瞳だ。じっくりこっちを観察してやがる。
あ、因みに最後の台詞は俺です。
にしてもそろそろあれだ。我らがイケメン枠、2号が動き出すな。んで2号は良くも悪くもお人好しだ。そりゃもうご都合全開でだ。いやーキツいっす。しかも聞いた限りじゃこれ、人類救済系の戦争っしょ?
勇者様!魔王を倒して人類を救って下さいまし!的な。
いやー本当にキツいっす。何が一番キツいって、これ2号がやらかすな。そこに関しては圧倒的信頼があるぞ。
そしてその予想は見事に的中してしまう。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっとこの世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
はい!!終わり!!閉廷!!解散!!
もぉぉぉやだぁぁぁぁぁこいつぁぁぁぁぁぁ!!
心の中で大泣きしながらも、冷めてしまったハンバーグを口に運んだのだった。
悲報、俺ら戦争から逃れられない模様。
・大天使カオリエル
転移した瞬間は腰を抜かしていたが、その後体勢を立て直して想い人のすぐ側へと這い寄った。蛇の人も驚き。南雲くんの隣に幸太郎が座り、自分がその近くにいられないのをもどかしく思っている。幸太郎が弁当を食べている姿を見て嬉しそう。やはり弟分は可愛いらしい。
・勇者さまー !
転移した瞬間は驚いていたものの、周りの状況を確認して素早く体勢を立て直した。然り気無くカオリエルとツッコミガールを守ろうとしていたが、対象がいなかった為に失敗に終わった。見ず知らずの人達の為に人類救ってやるぜ!と決意した。クラスメイトたちも釣られた模様。
・ツッコミガール
しょっぱなから幸太郎の異常なボケに対応した素晴らしいキレを魅せる。その後、自分の席より遠くに座った幸太郎に胸を痛めた。転移した後も手をニギニギされていたのと、卵焼きを美味しそうに食べてくれていたところに幸せ全開だった。メイドと幸太郎の様子を見て、後で話さなければならないと決意した。
・もうちょいで最強くん
転移した後も動揺はしたものの冷静に物事や状況を把握していた。イシュタルの話もちゃんと聞いてはいたものの、隣で弁当を食べ始めた幸太郎のせいで少し気が散っていた。しかしつっこむのも大変なので無視することに決めた。カオリエルの視線に恐怖心を抱いたのは内緒。
・空気を読めると思い込んだ精神異常者
転移した後もツッコミガールの柔らかお手々と弁当を離さないでいた紳士。しかしやることなすことが残念過ぎてただの精神異常者としか見られなくなってきている。
目立ちたくないと言いながらも話し合いの場で堂々と弁当の続きを楽しみ始めたやべぇ奴。この後ツッコミガールとO☆HA☆NA☆SHIした。
・胡散臭い教皇
操るのに好都合な勇者が来たと思いきや、そのオプションがヤバすぎて白目を剥きかけた。幸太郎のあまりにもの自由っぷりに関わることを止めた。英断である。
・メイドさん
幸太郎への支給を担当したメイドさん。寡黙ながらも表情は豊かであり、初めは愛想笑いだったが幸太郎の突拍子もない行動を見て周りにバレないように楽しそうに笑い始めた。後で幸太郎に日本料理が作れないか相談され、ついでに膝枕も相談されたがそちらだけは笑って受け流した。