その者、取扱い注意。   作:黒三葉サンダー

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今回は無駄に長いぞ!




今日は風が騒がしいな……吹いてないけど。

なんだろう。何故だろうか。

目の前の光景にギリギリと歯軋りをしてしまう程には感情が荒ぶっている。

 

「何故……俺はこんなものを見せられている……!!」

 

「お、落ち着いて風間くん。ステイステイ」

 

俺の豹変にギョッとした南雲くんが俺を宥めようとするが、すまんな。この光景は俺には目の毒なのだ。

だから止めてくれるな、我が友よ。

 

あぁ!何故!何故なんだ!

 

「何故ジジイとおっさんのキスシーンを見せられねばならぬのだ……!!」

 

「「「「ブフッ!」」」」

 

イシュタルの手に王様がキス(偏見)をしているのだ!

今一度問おう!!

何が悲しくてジジイとおっさんのキスシーン(誤解)を見せられなければならぬのだ!!

 

俺の声は静かに、されど怒りに満ち震えていた。その声はどうやら南雲くん含め近くにいたクラスメイトたちにも聞こえていたらしく、殆どの奴らが顔を反らして吹き出した。

ふむ。俺の発言に変な妄想でも成り立ったか。だが俺は謝らない。美女とイケメンの絡みならともかく、ジジイとおっさんで再現しても吐き気が込み上げるだけである。

 

幸いにもイシュタル含めた王族の方々には聞こえていなかった。

 

あん?その後?なんのこともない、ただの自己紹介タァイムよ。

王様のヒドラーさんと王妃のルルイエさん、王子のシャンデラさんに王女のリリーラさんです(大嘘)。

まぁどうせあんまり関わることは無いだろうし、関わるとしてもガッツリ猫被ればいい。

 

なんの問題ですか?なんの問題もないね!

 

因みに一番警戒しなければならんっぽい奴は王子でした。なんやあいつ、1号に釘付けやんけ!

何見てんだよ!1号は南雲くんのやぞ!!

 

王女?ありゃ2号見てるよ、うん。決して俺を見てる訳ではない。俺と被るような位置にいるから勘違いしやすいが、モブである俺を見る必要皆無だからね。

……こっわ。気配消しとこ。

 

 

 

その後、晩餐会が開かれ皆が異世界料理に舌鼓を打つ中。俺は一人バルコニーにて誰にもバレないようにひっそりと息を潜めて星を眺めていた。

んやー、異世界言うても星空は綺麗だかんねー。

……流石の俺もふざけてばかりいないで腹決めとかんといけん。向こうでも欠かさず鍛練はしてたが、戦争とは縁遠い日本でこんな技術を覚える必要はないって思ってたんだけどなぁ。

かおりと同じように、一般家庭で育って、普通に出会って、恋をして。何度も憧れて、夢想した。

 

「でも、これで良かったんだよな」

 

そうだ。この人生に絶対に価値はある。俺がやられてきた時代錯誤な躾だって、あいつの力になれる。

俺じゃダメだ。お姫様の相手はたったの一人。

なら俺はその幸せを得るための手伝いをする。

それでお前が幸せになれるのなら。

 

(……二人だけでも、必ず元の世界へ。たとえそれが無理でも、お前の幸せだけは必ず……はっ!?)

 

珍しく人がしんみりとしてると言うのに、何やら此方へと接近する人の気配。この気配は先程感じたもの!

リリーラ王女!!貴様!来ているな!?

俺の直感が出会ったら面倒なことが起きると警報をならしているので素早くヘリへ。

そして迷わず飛び越えてエルード!!

 

「─────?」

 

しばらく足音が聞こえていたが、数分後には遠ざかっていったので少し頭を出してチェック────

 

「えっ?幸太郎?」

 

「むむ?雫か───」

 

どうやら入れ替りで3号がこっちに来てたらしい。少し気を抜いてしまったせいか気付かんかった。

 

さてさて。ここで考えてみてほしい。俺たちは未だ飛ばされた時のままの格好、つまり学生服な訳だ。

そして女子は勿論スカート。

 

次に考えてほしいのは俺たちの立ち位置だ。

俺はエルードの復帰途中故に3号を見上げるように、対して3号は下から突如現れた俺を見てる為に視線を下に向けている。

 

つまり。今俺の目の前に絶景が広がっている。

無論それに気付かないほど3号は鈍くはない。故に俺の中でこの絶景を脳内シャッターで高速百連写する。

みるみると面白いくらい赤くなっていく3号の顔に、徐々に近付いてくるタイムリミット。今の俺には抗う手段は、ない。

 

「……お粗末!!」

 

「っ!!!!見るな馬鹿ぁぁぁ!!」

 

「グワーッ!!」

 

この夜、王宮の外で憐れな男の悲鳴が星空に響いたのだった。

 

あ、与えられた部屋はとても豪華で寝心地良かったです。

 

 

 

 

▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽

 

 

 

 

しっかりと昨日の絶景が記憶内フォルダに保存されていることを確認し、朝から欠伸を噛み殺しながらメルド団長なる人物の話を聞いていた。

 

メルド団長は話してみると中々にラフな部分があると言うか、豪快と言うべきか。いやはや話していて楽しい人物で好感が持てるぞい。

因みに昨日3号にぶっ飛ばされて落ちた俺を救助してくれたのは団長だったりする。

 

メルドさーん!メルドさーんありがとー!メルドさーん!

 

「よし、全員に配り終わったな?このプレートはステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな。失くすなよ?……あとそこ、プレートで遊ぶな!」

 

「うぇい!?」

 

さっき渡されたシルバープレートを投げて遊んでいたら怒られたでござる。

にしてもこれが身分証とな?しかも迷子お助け機能つき。……こいつもしやGPSでも仕掛けられてんの?

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アー「だんちょー!アーティファクトとはなにかねー!?」……幸太郎」

 

ふっ、2号。お前の発言タイミングは把握してんだよ。

この前の意趣返しだこのやろう!!

 

「お前ら……ん、んん。アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

「だってよミツテル」

 

「光輝だ!幸太郎は真面目に聞かないか!」

 

「HAHAHA!」

 

俺の軽い態度に顔をしかめた2号に怒られるが、無駄だ!

お前のお説教はこの俺には通用しない!お前じゃあ俺を止めるには役不足なんだよミツテルぅぅぅ!

 

「幸太郎くん?」

 

「すんません。マジで勘弁してください」

 

ニッコリ可愛らしく笑う1号に背筋が凍る。

ははは。俺は1号には敵わないんや、昔からほんとに。

俺は素早く1号へと平伏したのだった。

 

「あー、取り敢えずステータスプレートに血を垂らしてもらってもいいか?」

 

「sir!yes sir!」

 

「いやちょっと待て!針を用意───」

 

メルド団長の指示に従い犬歯で親指を軽く噛みきり、指先からプックリと見慣れた赤い血が溢れる。

それをプレートに押し付けると、プレートが淡く光だし、何やら文字や数字が表れた。

 

 

 

 

 

======================================

 

風間 幸太郎 17歳 男 レベル:1

 

天職 :忍

 

筋力:80

体力:120

耐性:120

敏捷:180

魔力:180

魔耐:20

技能:

風魔法適性・巻物作成・鎌術・剣術・体術・隠形・毒耐性・麻痺耐性・痛覚軽減・挑発・魔力操作・言語理解

 

======================================

 

 

 

 

はぁん?なぁにこれぇ?判断素材無さすぎて良いのかそうでも無いんか分からんぞ。もっと親切設計にしろ!

 

「はぁ、幸太郎。針を使えと言ったろう。全員見れたな?説明するぞ?まず、最初に〝レベル〟があるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

おんおん?つまりレベルが上がったからステータスが上がるって訳じゃないと言うことかい旦那。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

うぇ……まぁだ鍛練ですよクォレハ。にしても魔力でスペックが上がるとな。ははん?さては気功だなオメー?

俺は詳しいんだ!嫌でもな!

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう?それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

「HEY!団長!転職を希望だぜ!!」

 

「それは出来ない!お前はその才能で満足しろ!」

 

oh……団長辛辣ぅ……。

確かにこれ以上の職は無いけどよぉ……。

でもどうせならもっと面白そうな天職が良かったぜ。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

ファッ!?そんなに高いん!?現地人のスペック低すぎぃ!いや俺らのスペック高すぎ……!?

他のクラスメイトたちも浮足立ってるのが見え見えだが、ただ一人。

南雲くんだけが顔を青くしているのを発見した。

 

ま、まさか南雲くん……お前……!

 

(HEY!南雲くん。もしかしてお前…)

 

(か、風間くん……。僕、ステータスが全部10、なんだけど……)

 

(アイエエ…)

 

そっと小声で南雲くんに確認を取ると、案の定だった。

おい神様よぉ!そんなに南雲くんが嫌いか!?えぇ!?

南雲くんは良い奴なんだぞ!俺みたいなやべぇ奴ともコミュニケーションしっかり取ってくれる優しい奴なんだぞぉ!?

 

あ、言ってて悲しくなってきたわ。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

メルド団長の褒める声とミツテルの嬉しそうな照れ声。

ちっ!やっぱりあいつはチートだったか!スペックを確認してなかったから詳しくは分からんがあのイケメン野郎のことだ。チートじゃない筈がない!

 

ま、不味いぞ。さっき団長はステータスプレートの内容は報告しろと言っていた。南雲くんのスペックは現地人と同レベル!他の奴らのスペックを見てから南雲くんのスペックを見たら顔に出ること必至!!

そうなればこれ幸いと檜山たちが晒し上げてくるのは必然!

 

「じゃあ次は────」

 

「俺がいくぜ!!」

 

南雲くんの晒し上げは1号が悲しみ、傷付くだろう。

そしてミツテルはそれを庇おうとはしない。

俺はそれを許容出来る程腐っちゃいない。

 

「どれどれ─────」

 

「メルド団長」

 

ステータスプレートを渡しながら、たった一言。

 

「南雲くんのこと、くれぐれもお願いしますよ」

 

「……っ!」

 

晒し上げるようなことをすれば、ただでは済まさない。

暗にこう告げた俺の言葉は、表情を固くした団長を見れば正しく伝わったことが分かる。

 

「……分かった。善処しよう。にしてもお前も凄いステータスだな。総合でいえば勇者より高いが、極端に魔耐が低いのが気になるな。だが何よりもこの魔力操作という技能だ。これは魔物や魔族が保有する技能で、我々人間では保有出来ない技能の筈だが……」

 

ステータスプレートを受け取って戻ろうとすると、団長にそんなことを言われた。心当たりが無くもないのがつらたん。

 

「あー、そりゃあってもおかしく無いかもですね」

 

「なに?」

 

「だって俺の一族は、風の悪魔に憑かれてますから」

 

そのまま踵を返して、歩き出す。その時に不敵な笑みを浮かべるのも忘れない。

 

 

 

ふっ!決まった!

 

 

 

 

 




これでもう幸太郎くんの名前の由来がバレたのでは?

・狙われたお姫様
ただ普通に歩いてるだけで男共の視線を奪う罪深いお姫様。王子に目を付けられ、晩餐会の時に積極的に迫られていたが想いに気付かず笑って流していた。強い。
今回は影が薄かった。

・勇者ミツテル
異世界でも女性たちの視線を奪う罪深いイケメン。許せない。この世界ではやはりチート勇者だったが、幸太郎のチートスペックを見て静かに闘争心に火がついてたりする。今回の幸太郎の言動に少しイラッときている。

・サービスショット提供ネキ
1号と同じように男共の視線を集めたアネキ。しかし何故か男共よりも女性たちに見られることの方が多かった気がしているが間違いではない。バルコニーに出たきり帰ってこない幸太郎が気になり、確認しに行ったら幸運というべきか不幸というべきか幸太郎にサービスショットを提供してしまった。

・まだ大人しい最強くん
転移してからずっと思考を続けている頭つよつよボーイ。漫画や小説のような俺TUEEEEEE!が出来るのかとテンションが上がりかけたが瞬時に絶望に叩き落とされた。今作では幸太郎によって釘を刺されたメルド団長が晒し上げを防ぐ盾になった為、周りに具体的な数値はバレていない。ただし周りよりステータスが低いということはやむを得なく伝えられている。

・NI☆N☆JA
今回の話をダラダラと引き延ばす原因。しかし止められない。何故王女が自分を見てくるのか理解出来ない、というより現実逃避をかましている。実は本人も幼馴染みズに負けない顔面偏差値をしているのだが、本人はそれに気付いていない。どうしようもない厨二病を未だに患っているが、一族の話は本当である。
また、昔から1号に対して並々ならぬ想いを秘めていたようだ。

・一目惚れ王子
まだまだ純朴なショタ。1号の姿に見惚れ、一発KOだった。晩餐会にてガンガン攻めるものの本気にされず、初戦は完全敗北した。まだ諦めていない模様。

・ストーキング王女
初めは2号に視線がいったものの、最終的に幸太郎へと目を付けた残念王女。何より目を付けた相手が残念過ぎた。一人バルコニーへと出ていった幸太郎を見て、話し掛ける為に向かうも姿が見えず、不思議に思いながらも俄然興味が湧いてしまった。駄目やん幸太郎。

・だんちょー!
副団長に嬉々として仕事を押し付けた駄目な人。しかし実力は確かであり、団長に相応しい強さと心の広さを持つ。今後とも幸太郎の行動に振り回される気がして、今から既に胃の心配をし始めている。団長頑張って。
流石に幸太郎の魔力操作技能が他の誰かにバレるのは不味いということで、ステータスプレートに工作する方法を教えた。これがバレると中々にシャレにならない。




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