グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い   作:自由の魔弾

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【裏世界の南条(なんじょう) (れん)
自他共に認める【あーちすと】であり、よく絵を描いている。年齢に不釣り合いなババクサい考え方と喋り方のせいでサバ読み疑惑が根強い。JCをモデル(おもちゃ)としては最高の逸材と豪語している傍らで彼を含むパルチザンのメンバーへのセクハラが今日も止まらない。


第拾壱話 戯れろ!魔法使い

「あぁ……ど、どうしよう!?ねぇ、ちょっとあなた大丈夫?」

 

私、風槍ミナはかなり焦っていた。先にシャワーを浴びさせてもらっている間に、恋に着替えとタオルを持って来てもらうよう頼んでいたから何の気なしに出てきちゃったけど……まさか男の人が居るなんて!いきなりお腹から血を吐いて倒れちゃったし。

私があわあわしていると、叫び声を聞いた恋とさらが室内に駆けつける。

 

「だ、大丈夫か!くっ、こりゃまずったな…」

 

「あぁ〜!!JCくんのがドクドクしてるよぉ〜♡私が全部飲み干してあげるからねぇ!!」

 

「これ!いかんぞ、さら!此奴の血を見て我を忘れとる!」

 

何やらただならぬ様子のさらと、それを必死で食い止めている恋。全く状況が飲み込めない私は、唯一話が通じそうな親友の恋に声をかける。

 

「あの…恋?これって一体どういう……それにこの人は誰なの…?」

 

「こら、ミナ!いつまで“すっぽんぽん”でいるつもりじゃ!わっちより少しばかり大きいからって見せびらかしおって…」

 

「え?恋、後半ちょっと何言ってるかわからないんだけど…」

 

「な、何でもないわい!ほれ、はやくこの服を着るのじゃ!」

 

そう言うと、恋は暴走がちなさらを食い止めながら、持っていた服を私に投げ渡した。

 

「ありがとう…って、これワンピースじゃない!しかもサイズ小さいし!下着は!?」

 

「さらを引き止めるのに時間が無かったんじゃ!とにかくわっちがさらを引き受けてる間に、その男の手当てをしてやってくれ。くれぐれも其奴の血は含むんじゃないぞ!」

 

「わ、わかった!」

 

私は素早くワンピースを着ると、気絶している半裸の少年を抱き抱えて走り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んしょ。ここのソファで良いかな…と」

 

私は少年を普段使っているソファに座らせて、巻いてあった包帯を解いて開いた傷の状態を診る。せっかく手当てしてあったのに、それが無駄になるくらい血が出てしまっていた。その原因は恐らく…。

 

「やっぱり私、だよね…?」

 

彼に落ち度が無いことは分かっている。恋が着替えを持って来たと思い込んで、私が扉を開けた。その際にその、私の裸を……あぅ〜///

 

「……あ、あの?もしかして僕、また倒れちゃったんですか…ぅあ!」

 

一人悶えていると、気がついたのか少年が声をかけてきた。私は小さくこほんっと咳払いをすると、すぐに冷静さを取り戻した。

 

「まだ動いては駄目よ。今開いた傷口の手当てをするから…。少し痛いかもしれないけど、我慢してね?」

 

「あー、痛みは感じないから気にしないでください。思いっきしキツめにお願いしますぅ」

 

「んっ……分かった。すぐに済むから楽にしてて」

 

私は慣れた手つきで止血し、再び包帯を巻いていく。回復魔法が満足に使えない私たちとしては、このやり方のほうが得意なのです。

処置を終えると、やけに疲れた様子の二人が入ってきた。さらの頰に赤みが帯びているみたいだけど…?

 

「ああ〜……マジで疲れたぞ」

 

「うぅ…何もビンタしなくてもいいじゃない!あ、JCくん!」

 

両頬をさすりながら痛みを緩和させていたさらは、JCくんと呼ばれた少年を見るや否や一目散に彼に駆け寄り、彼を背後から抱きしめる。

 

「大丈夫?またいっぱい出ちゃったんだよね?」

 

さらはまるで確かめるように彼の匂いだったり、彼の身体を触っている。だ、大丈夫なのかな?

恋に目配せしてみると、どうやら許容範囲らしい。また傷口が開くような事になれば、本気で止めに入るみたい。

 

「お、お姉さん!?そんなに激しッ…」

 

彼が抗議しようとすると、それが不服だったのか柄にもなく不満顔で彼に迫るさら。頰をぷくーっと膨らませてしかめっ面をしている。どこか幼げな顔立ちをしているさらがそれをやると、何故か可愛く見える。

 

「むぅ〜…その“お姉さん”って言うの禁止!私はJCくんって呼んでるんだから、JCくんも“さら”ってちゃんと呼ぶ!」

 

「え、え〜……」

 

私たちに向けて困惑の視線を送ってくる彼。何というか、まぁ…ご愁傷様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜む……」

 

表世界ではグリモアの生徒会室で一波乱起きようとしていた。その証拠に生徒会長の虎千代が自分の席でスカートがめくれ上がってるのも気にせずに踏ん反り返っている。もちろん室内にはそれを咎める存在も居るわけで。

 

「か、会長!?そんなはしたない格好で座らないで下さい!スカートの中が見えてますよ!」

 

「薫子……今はいいじゃないか、別に男子が居るわけでもないんだし。それより朱鷺坂、“テスタメント”の封印はどうなっている?」

 

「正直言って、まだまだって感じね。開けても精々二秒が限界ってところかしら?」

 

「…ダメかぁ」

 

あまりの進展の無さにそのまま机に突っ伏す虎千代。その様子はまるで“たれぱんだ”ならぬ“たれ虎千代”といったところか。

 

『(か、可愛えぇ〜!!)』

 

彼女以外の生徒会役員がその姿に胸打たれたのは言うまでもなかった。常に生徒達には強く凛々しい姿を見せてきた彼女のごく稀に見ることができる姿がこれだ。妙にデフォルメされたおよそ二、三頭身ほどにも見える彼女は、見る者にとっては鼻血モノ。その証拠に薫子の反応と言えば…。

 

「あばばばば、あばばばば」

 

恍惚の表情を浮かべて鼻血をダラダラと流しながら、どこからか持ってきたビデオカメラでその様子を撮影していた。長年にわたり彼女と時間を共にしてきた薫子にとっても相当レアな光景らしい。

そんな彼女達の思いとは裏腹に、虎千代の脳内には一つの考えしか浮かばなかった。

 

「JCの奴、大丈夫だろうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…さらさん、恋さん、それにミナさんですね?僕はJCです。詳しくはデバイスを見てください」

 

流石にずっと裸でいるわけにもいかないので、貸してもらった服を着た僕は改めて出逢ったこの人たちに自分のことを紹介する。ようやく出血が治まってきたので、ここに連れられてきた目的の通り、僕の素性と彼女たちの“仇”の関係を明らかにしておきたい。

 

「デバイス…随分と懐かしいものを使ってるのね。こっちだとこれは悪手だからもう使ってないの。とある魔法使いたちが敵対している所為でね」

 

「それはどういう…」

 

「双美 心。彼女の魔法によってあらゆるネットワークが制圧され、その結果仲間との連絡は絶たれ、私たちの情報を盗まれた。それに加えて魔法が通用しない魔法使いが現れて、生き残っている人たちを何千何万と殺していった。力と情報という二つの面で敗北しつつあるのが現状よ。でも、悪いことばかりじゃないの」

 

「えっ…」

 

僕は驚きの声を上げてしまう。今の話を聞く限りでは、この世界は既に終わりつつあるとしか思えない。そんな中で何が希望だと言えるのだろう?

そんな考えが僕を支配する中、さらさんは静かに僕を指差して言った。

 

「この疲弊しきった世界で見つけた唯一の光。それは君だよ、JCくん」

 

さらさんの言葉を受けて、僕は言葉を失ってしまう。僕が救い?そんなのはおかしい、何かの間違いだ。だって、僕は…。

 

「あなたには魔法に対する高い耐性がある。これは奴らに対抗するのに大きな力になる。特に双美 心に対しては」

 

そこまで言葉にした時、ミナさんがそれを遮る。

 

「さら…あなた、この子が“あれ”と同じだって言うの!?だとしたら、私は…」

 

「ミナ。それ以上はもっと話を聞いてからじゃ」

 

恋さんが激昂する寸前だったミナさんを宥める。やっぱり何かある……彼女たちの仇と僕の関係。

その時、僕の脳内に激しい痛みと何かの映像がフラッシュバックする。

 

「…!?う、うぐあッ!!な、何だこれ…!!」

 

「JCくん!ねぇどうしたの!?JCくん!!」

 

さらさんが駆け寄ってくるけど今はそれどころじゃない。頭の中を掻き回されるような感覚、完全に麻痺する全身。その中で浮かび上がるイメージには確かに見たことのある場所、人物が映し出されていた。

 

(……れ………ら……んだよ…)

 

(…嫌だ、俺は……俺には、出来ない)

 

(……かた…ない……きな……いな…廃……分す…しか)

 

(…っ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!)

 

(○○…ごめん、でも僕、まだ生きていたい。追放されたくない!)

 

(………ぅうううああああッ!!?)

 

そこで僕の意識は現実に引き戻される。この一瞬の間に全身に嫌な汗をかいてしまっていたみたい。

ふと心配そうに僕を覗き込むさらさんの顔が視界いっぱいに広がっていることに気がついた。うわっ、近っ!

 

「あれっ、今もしかして…」

 

「うん、少し意識飛んでたよ………もうちょっとでキスできたのに」

 

「え、後半全っ然聞こえなかったけど…怖っ!」

 

何となくさっきまでの調子を取り戻してみるけど、やっぱりミナさんは快く納得……というわけにはいかないみたいだ。すると恋さんがフォローとも取れる言葉をかけてくれた。

 

「のうミナ。もし此奴が彼奴と外見が同じ人間じゃったとしても、中身まで同じになるとは限らんじゃろ?生き方は十人十色、“ご〜いんぐまいうぇい”で何とかなるのじゃ!」

 

「恋…」

 

あくまで楽観的にそれでいてどこか説得力のある恋さんの言葉に、ミナさんもどこか腑に落ちた様子だ。よかったよかった……ッ!?

 

「もし駄目な時は、調教すればいいだけじゃしなぁ…うりゃうりゃ」

「その時はもちろん私も参加するからね…JCくん♪」

 

「ヒィ!?ミ、ミナさんっ助けてェ!」

 

二人から向けられた妖艶な視線を受けて、僕は反射的にミナさんの後ろに逃げていた。いや、さっきみたいなのは本当にもう勘弁です。

 

「え、ちょっと」

 

「あ、駄目だよJCくん。ほらこっちおいで?」

 

「こりゃ、ミナ!ぬーどで悩殺しおって!やっぱりいかん!その肉づきが恨めしい!そんなぴっちりしたわんぴーすなど着て自慢しおって!」

 

「これは恋が持ってきたんでしょう!好きで着てるわけじゃ」

 

「いやだーっ!!絶対ミナさんから離れないからぁ!」

 

「ちょっとJCくん!?力強っ…」

 

「むぅ〜……JCくんに抱きつかれてるぅ!!ズルいズルい〜!!」

 

「そんなこと言われたって……んあっ///ジェ、JCくん!?変なとこ、触ってるからァ!」

 

「おぉ〜!ミナ、今のは中々良い嬌声じゃったぞ!それよりわっちのおもちゃ…じゃなかった、もでるを返せ!」

 

「いやーっ!!こっち来ないでェ!!」

 

しばらくはこの変な人たちとの生活が続きそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【裏世界の風槍(かぜやり) ミナ】
パルチザン唯一の常識人的存在。常に楽観的かつ能動的な恋とJC目当てに暴走しがちなさらに振り回されつつある。左右の瞳の色が違うのは魔法の影響で、過去には色々な問題があったが、現在はしっかりと克服したらしい。JCのことを完全に信用したわけではないが、恋の口添えもあってしっかりと見守っていく考えに至っている。
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