グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
ミナから教えられた情報収集のエキスパート。学園生の生き残りの1人でパルチザンとは別に世界の真理を探っている。面識のないJCは勿論だが、パルチザンのメンバーですら彼女の居場所を知る術は持ち合わせていない。霧の魔物とテロリストを相手に未だ健在であることから、魔法の実力は相当なものであるとされている。彼女の残した文面から協力者の存在と6月に風飛市で何かの受け渡しを画策していると思われるが…?
「ここが“裏世界”なのか…。見渡す限り霧と瓦礫しか無いぞ…」
魔導書のゲートを通過した先の景色を見て、言葉を飲む虎千代。直前にチトセから説明を受けていたが、見ると聞くとでは大違いだった。すると、裏世界に着いてすぐさま単独行動をとろうとしていた生天目つかさの姿が目に入り、注意する。
「待てつかさ。今回ばかりは勝手に動かれては困るんだ」
「…なぜだ?」
「こちら側で行方が分からなくなった際、アタシたちに探すだけ余裕があるとも限らない。最低でも、目の届く範囲に居てもらうぞ」
「……都合のいい時だけ生徒会長になるな。それにその心配は無さそうだ。どうやらこの近辺に霧の魔物は存在しない」
つかさが明後日の方向を見ながら、やけに自信ありげに答える。虎千代はその言葉の真意を図りかねていた。
「…どういうことだ?朱鷺坂や遊佐が言うにはここは霧の本拠地とされているんだぞ。どうしてそこまで言い切れる?」
「…分かるさ。原種が確認できない。知る限りこれほどの力を持っているのは私と貴様を除けば、奴だけだ」
ここで虎千代にも一つの答えが出た。
「まさか……JCか!」
「ん?誰かに呼ばれた気が…」
「どうかしたの?JCくん」
僕はどこからか声が聞こえてきたと感じたけど、どうやら気のせいだったようです。ちなみに今はミナと近くの街へ偵察に来ているところだ。
例の件はどうやら本人たちは憶えていないようで、そこをわざわざ追及するつもりはなかった。僕も思い出したくないので。
「ごめん、なんでもない。それにしても……街の方に来るのは初めてだ。いきなりだったからちょっとびっくりしたけど」
「本当はさらとだったんだけど、無理言って替わってもらったの。ほら、前に言ってたでしょう?私たちの仇について知りたいって」
「うん…それでどうして街に?」
僕が街へ来た理由を聞くと、ミナは一枚の写真を手渡してきた。そこには知らない女性が写っていた。
「その人は遊佐鳴子さん。私たちの仲間で情報収集のエキスパートよ。今はお互いに身を隠しているから直接連絡が取れないけど、最近この辺りで遊佐さんの居た形跡が残されてたみたいなの……ほら、これとか」
ミナは廃墟と化したビルの一室で見つけたホワイトボードを指さす。そこには霧の魔物と霧の護り手の関係性についての考察、JGJ乗っ取りの背景、ムサシについてなどが事細かく記されていた。
その内容をじっくりと確認しようとすると、びっしりと書き記された文字たちがまるで煙のように消えていってしまった。困惑する僕を尻目にミナは得意げに答えた。
「流石遊佐さん…自分以外の誰かがこれを見た途端に全て消えるように魔法をかけてあったのね。でも遊佐さん本人はやっぱり居なかったか…」
「ねぇミナ…“ムサシ”って何?」
僕は気になるワードがあったので、それを確認した。何故か分からないけど、細胞レベルで反応した。
「魔物の強さを表す階級のことよ。最初に日本に現れたとき江戸城くらいの大きさもあったっていうのが語源だって言われてるけど。第8次侵攻の時にも突然私たちの前に現れて……国軍の兵士とか逃げ遅れた一般市民、それに…学園のみんなを……」
そこまで言って俯いたミナの表情には悔しさと悲しみで溢れていることに気づく。僕は堪らず自責の念に駆られた。
「ご、ごめん…ミナが言いたくないことなのに気づかなくって…。何焦ってんだよ、僕は!」
「ううん…大丈夫、ちょっと思い出しちゃっただけ。それより話を戻そっか……えっと、どこまで話したっけ…」
ミナは目尻に浮かんだ涙を拭うと、普段通りの口調で話を続けた。
「あ、そうそう…遊佐さんに会うには中々難しいのが現状よ。私たちもそうだけど、霧の魔物とテロリストの両方に追われる身だから当然連絡は取れないし、行き先の目処もつかない。ここに居たのもかなり前かもしれないし……運良く遊佐さんからアプローチしてくれればいいんだけど…」
「八方塞がり、か………ん?ここ、なんか書いてある」
「え?私には何も見えないけど……もしかして、魔法耐性の違いかしら。何て書いてあるの?」
「うん、うっすらしか読めないところは自信無いから省いて読んでみるね」
僕はホワイトボードを指差してなぞりながら、見える範囲の文字を読み上げていく。
「協力者…12年前……風飛市受け渡し……六月……パ、パン…?駄目だ、これ以上はもう読めない」
「でも、これでかなり情報は得られた感じはするわね。少なくても遊佐さんは私たちの知らない協力者と連絡を取り合ってたみたい」
「ミナ、今って何年?」
「2027年の2月よ。これを書いた時期にもよるけど、12年前ってことは…2015、或いは2014年って事になる。風飛市は私たちの学園があった場所だよ」
僕はそこで考え込む。ミナの言っていることが正しいならあらゆる疑問が一本の線の上に集約される。そして、それは過去の年代…つまり元の世界へ行けば謎に迫れることを意味していた。
気づけば僕はミナの肩を掴んで、真剣な眼差しで話していた。
「ミナ…よく聞いてほしい。こっちが大変なのは分かってるつもりだけど、どうしてもこの謎を解明するには元の世界に戻る必要があるんだ。こんな時にここを離れるなんて許してくれないと思うけど、でもこのままじゃ」
僕がそこまで言いかけた時、ミナは僕の口元をに指を添えてそれ以上の発言を止めた。
そして柔和な表情を浮かべて、思いの丈を伝えた。
「知ってるよ、JCくんが本気でどうにかしようとしてるのは。最初は疑ってたけど、もう二ヶ月も一緒に戦ってるんだもん……それくらい私にだってわかるよ。だから信用されてないなんて言わないで」
「ミナ…」
ミナの意外な胸中を垣間見て、言葉にならないでいる僕。普段のミナならそんな言葉は言わないであろうに。
「実はね、前からさらと恋からは遊佐さんのことをJCくんに教えるべきだって言われてたのを私が反対して止めてたの。もちろんいきなり現れた君が私たちの仇と似ているのもあったけど、遊佐さんは私たちの要だからそこが崩されればレジスタンスは壊滅する。要するに他人を信じるのが怖かったの」
僕は黙ってミナの告白を聞いている。確かに以前さらや恋に聞いた際、ミナが言いだすまで待ってほしいと言われていたのを思い出す。あれにはそういう意味があったのか。
「でもね、JCくんを近くで見てよく分かったよ。この人は嘘がつけないくらい真っ直ぐで…でも時々お子様で」
オイ、とついツッコみたくなるけど話に水を差すのも癪なのでスルーだ、スルー。
「でも、絶対に裏切らない。挫けそうになっても支えてくれる頼れる存在だって」
「…ミ、ミナァ〜!」
僕は感極まってしまい、涙が止まらなくなってしまった。だって、だってェ〜!?
「JCくん!?な、何で号泣してるのぉ!?あわ、あわわわっ…な、泣き止んでよ〜!」
「うぁああん!!だ、だってぇ〜!こんな嬉しいの、初めてなんだもん…!だからしょうがないんだもぉん!!」
歯止めの効かなくなった感情を爆発させる僕の頭を、無言で優しくそっと撫でてくれるミナ。その瞳には紛うことなく慈愛の感情が込められていた。
「さっきのスゴイ爆発音はチトセさんだったのか…あの人もっ!?」
少し時間が経ってすっかり泣き止んだ僕は、ミナと別れて元の世界に帰るため初めてこの世界に流れ着いた場所を目指していた。そして近くなってきた矢先、突如として爆音に包まれたので一旦付近の物陰に身を隠して様子を伺っていた。そして暫くして爆発地点から現れたのはチトセさんとかつて僕を拉致した女生徒だった。
気づけば僕は彼女たちに向かって駆け出していた。
「チトセさん!」
「へ?うわっ…と、JCくん?無事だったのね。連絡してくれないから心配したのよ?」
僕はチトセさんの姿を確認すると、後ろから一目散に抱きついた。チトセさんも少し驚いたみたいだけど、僕のことを確認すると少し安心したような笑顔を見せて迎えてくれた。
「そ、そうだ!早く帰らないと!6月の受け渡しが…あっ、あぁ……」
突然、僕の意識が遠のいて行った。今までの無理が祟ったのか、はたまた安心感からきたものなのか。
こうして僕の第1次裏世界探索が終わりを迎えたのだった。
R+【JC】 親愛度:0/150
Lv:30/60 コスト:5
攻撃:3500
防御:6500
スキル【ペインレイジ】 Lv 3/20
効果 自パーティ計1班 攻/防 小アップ
サポートスキル・アシスト効果
無し