グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
壁に耳あり障子に目ありを体現する報道部部長。秘密のノートには学友のご飯から政治家のスキャンダルまでありとあらゆる情報が詰まっているという。気味が悪いほどなんでも知っているが、まともに教えてくれはしない。嘘まみれな彼女の言葉から真実を探せ。
JCの存在を知って近づこうとするものの、強硬手段は使わず敢えてJCから来るように仕向けていた。JCのことを感覚的はおもちゃにして扱っている。
「さぁ…ここに遊佐先輩がいるはずッス。ではでは自分はこれにて失敬させてもらうッス。ドロ〜ン!」
忍者さんはそう言いながら煙幕を使って、煙が消える頃には忍者さんの姿は綺麗さっぱり無くなっていた。忍者さん、凄い!
「え〜っと、ほ、報道部?本当にこんな所にいるのかな?」
僕は不安になりながらも、報道部室の扉を開いた。
「どういう事だ、桃世?JCが突然居なくなったというのは…」
保健室ではJC失踪の連絡を受けた生徒会メンバーがももに事の経緯を聞いていた。JCの意識が回復したら、真っ先に連絡をするよう言いつけられていたのだ。
「はい…本当についさっきまでベッドの上にいたはずなんですけど、先輩の傷の手当てをしてる間に出ていってしまったみたいですぅ…すみません!」
深々と頭を下げて謝るもも。その時、少し遅れて部屋に入ってきた薫子が虎千代に駆け寄り耳打ちをする。
「(会長、つい先程学園内で発生したクレーターの犯人が特定出来ました。現場を調査した風紀委員によると、犯人はやはり生天目つかさで間違いないようです。それと気になることが…)」
更に薫子の報告を受ける虎千代。すると、そこには目を見張る情報があった。
「何だと!?JCとつかさが……」
「し、失礼しまーす…」
声かけてみるも反応は無かった。誰もいないのかな?と思ったけど、ふと机で気持ち良さそうに居眠りをしているツインテールの少女に気がついた。何やら寝言を言っているようで、少し耳を傾けて聞いてみる。
「…ぶ、部長〜。こ、今回のは度肝を抜く特ダネですよぉ〜!実しやかにネットで噂されてる“ネッシーくん”の正体が実は霧の魔物で…」
部員さんなのかな?寝言でも記事を書いてるなんて、随分と熱心な感じだなぁ。
「…え?ボツ?いやいやいや!ちょっと待って下さいよぉ!ネッシーくんですよ、ネッシーくん!何十年も前に初めてその姿を確認されて未だに謎だらけのネッシーくんですよ!絶対バズりますって!え、やっぱり駄目?来週までに全部書き直し……ぐすっ」
だ、大丈夫だよね?夢だもんね、このまま泣いたりしないよね…?
「…うぅわああああんっ!!もうネタが無〜い!!堪忍してぇ!!」
マジ泣き!?いや、ちょっと心配になってきたなぁ…あ、起きた。
「ん…?あれ、あたしまた寝ちゃってた……って、うわぁ!?あんた誰!?まさか寝てる間に乱暴しようとか思ってたんじゃないでしょうね!?」
寝起きでいきなり椅子から転がり落ちて僕を警戒する少女。その際も彼女の持っていたカメラのファインダーはしっかりと僕を捉えていた。
「ち、ちょっと落ち着いて!僕は遊佐さんって人に話があって来ただけなんだ!ほら、カメラしまって……こらシャッター切るなぁ!連写するなぁ!」
僕たちは一進一退の攻防を繰り広げていると、気づけばふと開かれた扉の前に立っていた人物は軽く呆れながらも何故か笑っていた。
「君たち……一体いつの間にそこまで仲良くなったのかな?」
僕と対面していた少女はその人物の姿を見ると、すぐさま駆け寄って助けを求めた。
「あぁ!部長!ちょっと助けて下さいよ〜!こいつがあたしの寝込みを襲ってエロいことを…」
「だーかーら!それはあなたの勘違いで、僕は遊佐さんに会いに来ただけで…」
僕の話を聞いた部長さんは何やら考え込んだ様子になる。そして、すぐに提案をしてきた。
「…よし、JCくん。少し外で話さないかい?」
「服部!」
「にゃわ!?かいちょーさん!?いやはや、奇遇ッスねー。本日はお日柄も良く…」
明らかに動揺している忍者さん…もとい服部梓は虎千代に声をかけられてその場で飛び跳ねていた。
「とぼけなくていい!それよりもJCの居場所を知っているのなら教えろ!」
「だ、ダメッス〜!!まだ教えられないんス〜!?」
梓の肩を掴んでブンブン振りまわしている虎千代。梓は目をぐるぐる回しながらも頑なに拒む。すると今まで沈黙を保ってきた薫子が前に出た。
「会長、ここは私が…」
「あ、あぁ…頼む。服部の奴、折角アタシが優しくしてやれたのに…」
虎千代に解放された梓がふらふらになりながらもなんとか自立する。そこに薫子の追い討ちが掛かる。
「服部さん、JCさんは何処へ?」
「え、いやだから…」汗
「“うちの”JCさんは今、何処に?」
「い、いやそれは、その…」汗ぽたぽた
「うふふ…」ニコニコ
「お、おやおや〜?」
薫子のJCに対する意識に完全におかん…もとい悪寒が走る梓だった。
「いや〜、すまなかったね。あそこは最近誰かに盗聴されているみたいだったからさ。それに夏海に在らぬ疑惑をかけられるのも君に悪いし」
ベンチに座りながらハッハッハ〜と笑う部長さん。それって結構まずいんじゃ…。
「実は君の意識が戻ったら、真っ先に話を聞こうと思っていたんだ。僕たち一般生徒からしてみれば、秘匿されていた君は当然興味の対象でね。それで、君は遊佐に会いにきたんだって?」
部長さんに促されて、僕も部長さんの隣に座りながらミナに貰った写真を見せながら話す。
「向こうで信頼できる仲間から貰った遊佐さんの写真です。テロリストや霧の魔物から逃れる為に変装していて顔は確認出来ないですけど…間違いなく本人だそうです」
「これが…その口振りだと、君は彼女に会えなかったのかい?」
痛いところを突かれ、思わず押し黙ってしまう僕。でも、パルチザンから受けた期待を無駄にはできない!
「…はい。でも!いくつかの手掛かりはあるはずです。さっきメモしたのを見て下さい」
僕はももちゃんが転校生くんを手当てしている最中に殴り書きしたメモを部長さんに手渡した。それを受け取った彼女はまるで品定めをするようにメモに目を通していた。
「6月、受け渡し、12年前、協力者……フッ、やっぱりそうか。どうやらJCくんにはジャーナリストの素質がありそうだね。だったら1つテストを受けてみないかい?」
「…どういうことですか?」
部長さんの言葉を不思議そうに聞いていると、彼女は少し嬉しそうに話す。
「ジャーナリストというのは真実を追求する者だ。今明らかにされている真実など、もしかしたら誰かによって作られた偽りの真実かもしれない。だからその障害をもろともしない力が必要なんだ」
意図を図りかねて少し冷や汗をかきながら聞いている僕に、部長さんは少し言葉を言い換えて説明してくれる。
「そうだな……もしさっき桃世くんが君の側を離れなかったら?もし生天目くんに完膚なきまで叩きのめされていたら?服部くんに案内して貰えなかったら?夏海に部屋を追い出されていたら?そして極め付けにこの写真を貰うほど信頼されていなかったら?これらの疑問に答えてみてくれ。もし納得がいく答えを出せたら、遊佐と話ができるよう計らってあげよう」
部長さんの意地悪な質問に、僕は頭を最大限に使って考えてみる。
「たぶん…ですけど、それでもいいですか?」
「うん、構わないよ。最初に辿り着いた答えが常に正解という訳ではないからね」
部長さんのお許しを得た僕は、ゆっくりと一つ一つの問いに答えていくことにした。
「えっと、じゃあ…ももちゃんが転校生くんを手当てするのに目を離してなければ、たぶんあそこを出ることは出来なかったと思います。つかささんにやられてたら、きっとまた気を失っていた。忍者さんに案内して貰えなかったら、きっと報道部に辿り着かなかった。夏海ちゃんに追い出されていたら、部長さんと話が出来なかった。最後にこの写真を貰うほど信頼されていなかったら……何の疑問も持たずに時間を過ごしていたと思います。これが僕の答えです!」
ドン!という効果音が似合うくらいキッパリと答えた。すると部長さんはクスクスと笑いを堪えていた。
ひ、酷い!
「いやぁ、ごめんごめん。君があまりに一所懸命だから」
ぶ、部長さんェ…。
「じゃあ、さっきの質問の答え合わせをしようか。桃世くんの件については完全に運だ。桃世くんは人に尽くす性格のようだから、意識が戻ったばかりの君を放っておかなかっただろうね。転校生くんというキラーカードが無ければ、あのまま桃世くんが呼んだであろう生徒会の面々に連行されて僕とは話せなかった」
「はい…何となくももちゃんはそんな感じかなとは思いました」
「生天目くんについては君の実力を発揮できたことが要因として大きいかな。彼女相手によく立ち回れたね。服部くんの件も然り、彼女の興味を唆ることができたからこそ僕に近づく危険を冒してまで君を導いてくれたんだろう。でなければ、君の持つ情報が眉唾物でないという先入観を取り払えなかっただろうからね」
「は、はぁ…」
「そして夏海の件。これは正直なところ、どっちでも良かった。君が部室に入った時には僕は君の姿を見つけていたからね。でも、夏海に敵意を抱かせなかったのは上出来だよ。彼女は人の心の機微に敏感だから、少しでも気になるとずっと引きずって近づこうとも近づかせまいともしてしまうから。常々直すように言っているんだけどねぇ…」
「あ、あれで機嫌を損ねてないんですか…?」
「そして最後、この写真を渡した真意。これは君の性格が関係していると考えられる。僕が思うに、これを渡したのは女性なんじゃないのかな?1番手っ取り早いのは好意を寄せられること……つまりは相手に“好き”と思わせるのさ」
「…???」
部長さんの言っていることがほとんど理解出来なくなる。え、どういうことなの?
「…あまりピンと来ていないみたいだね。君は僕のこと、好きかい?」
「うん、好きですね」
「……随分とまっすぐに言うんだね、君は。他の人はどうかな?」
「会ったことない人はよく分からないけど…。夏海ちゃんも忍者さんもつかささんやももちゃん、パルチザンや生徒会メンバーもアイラさんも多分好き…かな?」
「……OK、君に色恋の話はまだ早いみたいだ」
なんか勝手に期待されて、勝手にガッカリされてる…。
「まぁ、大事なことを簡単にまとめると……先入観を持たないこと、疑問を持つこと、あらゆる可能性に必ず自分を含めること。それさえ忘れなければ、君も立派なジャーナリストだ」
……ん?これ、話逸らされてる?
「いや、そうじゃないでしょ」
「…あ、やっぱり誤魔化されないかい?じゃあお待ちかねの結果発表をしようか。ダカダカダカダカダカダカ……」
あ、部長さん自分でドラムロールしてる。ちょっとアホっぽいの可愛らしい。
「ダンッ!」
「………」
「………」
「……ご、ごくり」
「……ふぅ〜」
「結果はァ!?ねぇ!」
「…君は若手芸人さんみたいだねぇ」
部長さんに完全に遊ばれてるよね…?本当に意地悪だなぁ。
「じゃあ簡潔に。JCくん、君は合格だよ」
「ほっ…よかった〜」
「おまけの合格だけどね」
「shit!」
「…君は何人なんだい?まぁいいや……君は僕の納得のいく答えを出すことができた。約束通りに遊佐に会わせてあげよう……よいしょっと」
部長さんはベンチから立ち上がって、僕の前に対面するように立つ。そしてポケットから手作り感満載の名刺を差し出した。
「では、改めて自己紹介をしよう。僕は報道部部長の遊佐鳴子だ。君の情報は非常に価値のあるものだったよ。それを見込んで君に仕事を依頼したい」
「……え?え?え?」
困惑する僕に対して、部長さんもとい遊佐さんはニンマリと笑顔のまま僕に告げた。
「1ヶ月後、僕と一緒に会ってもらいたい人物がいる。裏世界にいる僕の協力者……12年後の遊佐鳴子にね」
【おかん・薫子】
半年以上の触れ合いを禁止されていた反動による、母性爆発……としか考えられない。