グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
参加生徒:鳴子、夏海、明鈴、初音、沙那、ゆえ子、精鋭部隊、茉理(JGJ)、転校生、JC
・鳴子風飛市街で裏鳴子と接触しパンドラ受け取る
・JGJ長期調査に向け基地開設
・精鋭部隊裏山方面地下シェルターで裏宍戸博士捜索
1ヶ月後、6月30日。僕は遊佐さんの誘いを受けて、再びゲートを通って裏世界へと赴いていた。前回は奇しくも会えなかったけど、こっちに戻ってきて収穫はあった。何より表の遊佐さんと協力関係にあるのはかなり大きい。
「ふふっ、JCくん……君の考えている事を当てようか?ズバリ『僕と同じチームより宍戸くんの方に行きたかった』じゃないかな?」
「えっ!そうなんですか!?天才科学少女×謎だらけの素行不良男子の禁断の恋!?これはスクープの予感が…」
「…ゆえにはそういう未来は見えないのですが」
「あ、あはは…」
遊佐さんに煽られて夏海ちゃんがまたジャーナリスト魂に火がついたみたい。あの後結局ゴタゴタが収まらなくて、独占取材を受けるって約束で何とか関係を取り持ってくれた。最後に喋った子は確か、えっと〜……誰だったかなぁ?
「…おや、あまり見かけない方がいらっしゃいますねぇ。失礼ですがお名前は何というのでしょうか?」
やけに小さいその子はゆったりとした話し方で僕に問いかける。30cm以上身長差がある所為か顔を上に向けて首を痛そうにしていたり背伸びが辛そうだったので、屈んで目線を合わせてあげる。
「よいしょ…初めまして、かな?僕はJCです。よろしくどうぞ」
「…ご丁寧にどうも。ゆえは西原ゆえ子です……実はJCさんと同い年なのですよ……むにゃむにゃ」
ゆえ子さんはそう言いながら、ふらふら〜っとその場にへたり込んでしまった。慌てて駆け寄るとやけに疲れた様子で答えてくれた。
「だ、大丈夫かい!?何でまた急に…」
「す、すみません…ゆえは生まれつき体が弱くて、動くとすぐにへばってしまうのです……転校生さん、いきなりですみませんが、魔力を頂いてもよろしいですか?」
ゆえ子さんが申し出ると、彼女の背後で待機していた転校生くんが魔力譲渡を行う。するとみるみるうちにゆえ子さんの状態は元気になっていった。
「どうだい?転校生くんの魔力譲渡を実際に見た感想は」
遊佐さんがこそっと僕に耳打ちしてくる。
「…すごいですねぇ。魔法学の授業で習った通りなら、魔力って体内から放出できないんですよね?不思議だな…」
僕が感心していると、遊佐さんが「僕には君も同じくらい不思議に思えるんだけどねぇ」と苦笑していた。むぅ…肝心なところは教えてくれないんだ。
「ところでJCさん、少々申し上げ難いのですが…」
「えっ、何ですかゆえ子さん?」
無事回復したゆえ子さんがおずおずと話しかけてくる。
「あなた、死相が見えてますよ。それもかなりの数と確率で」
「うぉ!?本当ですか!弱ったなぁ…」
「はい。ですので、あなたにはこれを差し上げます」
そう言って、ゆえ子さんは僕に妙に綺麗な石を手渡してきた。
「これは?」
「アメジストです。パワーストーンの一種で“直感力を高める、魔よけのお守り石”とされています。
大切な人との真実の愛を深めたい
心配・恐れ・トラウマを解消したい
魔よけのお守り石が欲しい
といった方にオススメしています」
「トラウマねぇ…。まぁ思い当たらない事も無いには無いけど。わかった、ありがたく貰っておこうかな」
「因みに1番若い時の死相がおよそ5歳の頃、いくつかは既にこなしてきたようですが、ゆえが分かるだけでもあと10回ほど死に直面する機会があると思いますです。ふぁいと、お〜ですよ」
ほんわかした笑顔でものっそい残酷な宣言をされた……か、悲しいなぁ。
「…んっ、どうかしたの?あなたの編成チームはこっちじゃないはずよ」
無表情のまま冷静に答えるのは、同じく裏世界探索に来ている別班のメンバーである結希さんです。
「結希さん…いや、特に用事があった訳じゃないんですけど。ただ、ちょっと顔を見たくなったっていうか…」
これは半分嘘である。実際は少し前にゆえ子さんから伝えられた予知の内容に原因があった。
(あと、もう一つお知らせしておきたいことがありまして…)
(う〜ん、死相の話をされた後であんまり聞きたくはないんだけど…何かな?)
(はい…実はさっきの死相の話の続きなのですが、あなたの周りの人たちにも同じ死相が見えているのですよ)
(僕の周りの人…?)
(ゆえはあまり見えたことは無いんですが、親交の深い方々だと連なって見えることがあるそうです。恐らくですが、今ゆえに見えているものがそうだと思います)
(ど、どうすればいいんですか!?何か出来ることは?)
(ゆえの予知はあまり精度が高くありませんし、見えた未来が絶対とは限りません。ですが、何もせず手をこまねいていたら必ず訪れるものです。ですからあなたが変えるしかありません)
(それは…)
(人の未来を変えるのは、人の心なのですよ)
「……そう。けど、作戦行動中よ。今はまだテロリストや霧の魔物の襲撃は無いけど、いつ状況が変わるとも限らないわ。あまり軽率な行動はとらないで」
「あぅ…ご、ごめんなさい」
怒られてしまった。かと言って、死相が見えたから心配になって見に来たと素直に言って信じてもらえるとは思えないし、何よりゆえ子さんから言うのを止められてる。
暫くすると、上空から卯衣さんが偵察を終えて舞い降りてきた。
「ドクター、やはりヒトらしき反応はありませんでした。引き続き探索しますので一度、転校生くんに魔力の補充をお願いしてきます」
「そう…卯衣、遊佐さんによると、そろそろ合流地点に近づきつつあるわ。上空からの探索は発見される恐れがある、次は地上から調査しなさい」
「はい…JCくん、何故あなたがここにいるの?」
「卯衣さん、いやその説明はいま結希さんにしたばかりで……いや、やっぱりいいです。ちょっと気ぃ抜けてました。ヨシッ!」
僕は両手で自分の頰を叩いて、喝を入れる!2人は少し驚いていたけど気にしない。分からないことをいつまでも考えていても仕方ない。なら今はひたすらに前へ進むだけだ。
「僕、戻ります!さっきのは忘れて下さい」
僕はそう言って遊佐さんの班に戻ろうとする。すると、誰かに制服の裾を引っ張られた。
くいくいの主を確認するため振り返ると、当然っちゃ当然だけどそこには卯衣さんの姿があった。そしてそのままハグをされる。
「う、卯衣さん…?」
ジッーっと無言で僕を見つめてくる卯衣さん。えっ、僕何かやったかな?
「…少し焦っているように見えたから、引き止めてみたの。どうかしら?」
「…う〜ん、正直ビックリした。落ち着いたと思ったら、また別の意味でドキドキしてる」
そう言ってドギマギしている僕の心臓あたりに耳を寄せて確認する卯衣さん。
「…確かに心拍数が格段に上がっている。キスのほうが良かったかしら…?」
不思議そうに傾げている卯衣さん。これに関しては少し僕も責任を感じている。転入してきて初期の結希さんが所用で不在の頃、よく卯衣さんとデバイスで色々検索して遊んでたからなぁ。いつの日かやった“キスにはリラックス効果が〜”のくだりはこれの所為でもあったりする。
「そ、それは大丈夫だから!じゃあもう行くからね!」
僕は卯衣さんの拘束をスルッと抜け出して、その場を後にしようとする。しかし、すぐさま僕の背には卯衣さんが乗っかっていた。
「…行き先が同じなら、走って行くよりあなたにおぶさった方が速いから」
えぇ〜…。
「みんな、このオフィス街を抜ければ霧の魔物が少ない地点に出る。今日はそこで夜を明かそう」
探索開始から何時間か経過した現在、遊佐さんが頃合いを見て号令をかける。前に来た時にパルチザンと一緒に倒した分の霧の魔物がまだ払われているのか、また新たに払ってくれたのかはわからないけど確かにこの周辺の霧は前より薄く感じた。建物の柱の陰にもたれるように座り込んで物思いに耽っていると、不意に誰かが話しかけてきた。
「ねぇ、君がJCアルか?」
「んぇ?あぁ、そうだけど…君は別班の?」
声のする方を見上げると、小柄で赤毛の女の子が悪戯っぽい笑顔を僕に向けていた。今日はよく知らない人に会うなぁ。
「ボクは雀 明鈴!宍戸から君の噂は聞いてるアルよ。君も拳で闘う魔法使いネ!ボクとおんなじネ!帰ったら手合わせ願うアル〜!」
「えっ、あ、あぁ〜…うん。その時はよろしくっ」
「意外と聞き分けが良くて助かったアル!約束したアルよ〜!」
明鈴ちゃんは言いたいだけ言うと、嵐のようにピュ〜っと走り去ってしまった。自由人だな〜…。
「早速、雀くんに気に入られたみたいだねぇ。君も隅に置けないなぁ、JCくん」
ちょうど会話が終わったところで遊佐さんが2人分のコーヒーを持ってきて、片方のカップを僕に差し出しながら僕の隣に座った。僕はそれを受け取って一口だけ口に含むと、静かに話を始めた。
「遊佐さん…。そうだ、こんなにゆっくりなペースでいいんですか?あと何時間かで日跨いで7月になっちゃいますよ」
僕はさっきから危惧していた疑問を遊佐さんにぶつける。襲撃を懸念しているのはよくわかっていたけど、今のペースでは到底期限内に到達できるとは思えなかったのだ。
すると、遊佐さんは随分とあっけらかんとした様子で僕にある事を告げた。
「あぁ、あれフェイクだよ」
「………は?」
「だから、6月に会うっていう君が見つけた情報。あれは裏世界に居る君が僕の出した課題を見つけて、答えられるかを試しただけのものだから。本当の受け渡しは明日の午後5時に新街を抜けた所にある県立風飛高校で行われるよ」
「じゃあ、あの時ミナに何も見えなかったのは…」
「そう、本当は“何も書いてなかった”んだ。後で話を聞いて分かったけど、彼女の眼は少し特殊でね、真実のみを見ることができる…そこを利用させて貰ったよ。彼女も言っていたんじゃないかな?」
僕は当時のミナとの会話を思い出してみる。確かあの時ミナはさらに無理を言って変わってもらったと僕に言った。そしてミナの提案で街を散策することになって、裏世界の遊佐さんの書き遺したメモを見つけたんだ。それらが全て表と裏、両方の遊佐さんによって仕組まれていたものだったんだ。驚きだ…その手の込んだ前フリに。最悪気づかなかったぞ。
でもなんかそう考えたら、全ての重荷が降りた気がした。自分で何とかしなきゃと無理に背負い込んで、奔走して、でもそれは遊佐さんによって仕組まれたものだけど、全く疑わなかった甘い考えでよく生きてこれたな、僕は。
気づけば僕の口から笑い声が漏れていた。
「ハハッ…アハハハッ!何となく吹っ切れた気がしました。やっぱり背伸びできませんわ、僕って」
「…そうだね。君は難しい顔をしてるより、そっちの方が良いと思う」
「あ、それって僕がバカだって暗に言ってる…」
まぁ、いいかな。人間、背伸びはよくない。いつでも等身大の自分でいいのだ。そう感じた今日この頃です。
【
世界で3人しか確認されていない【未来予知】を使える魔法使いの1人。オカルトに傾倒しており、パワーストーンを始めとした怪しいグッズを持ち歩いている。いつも眠そうな顔とマイペースが特徴。とても小さい。JCとの身長差は35cmなので、竹物差し(30cm)じゃ足りない。相当ちっちゃい。同い年なのに。何ならJCより先に生まれてるのに。