グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
裏世界探索から帰還したJCは、再び学園生として過ごし始める。しかし元々クラスどころか授業の話すら宙ぶらりん状態だったので、試験的にローズ、リリィ、サンフラワーの順で1ヶ月ずつ体験して、最終的に判断することが生徒会会議で決まった。基本的にクエストも受けず授業のみ受けている状態のため、参加しなかった事案やクエストが多々ある。
例:・犬川寧々覚醒
転校生霧の嵐で裏世界(2ヶ月後)へ
・裏学園生の顛末を聞く、護り手への警戒を強める
・プレジャータウンオープン
牧場警備 エレン 花梨 さら イヴ 小蓮 転校生
・寧々入学
・山奥でジャノ眼討伐、ミナ転校生
・第7回代表選抜戦
・汐ファン襲撃、先発シャルロット茶道部、後発野薔薇家紗妃龍季転校生
・ちひろ救出 ・魔物回復が早く何度も再生?着ぐるみに逃げ込み人を盾にするなど知性がみられる?
「ふ〜、いやぁ、疲れた。まともに授業受けるって、こんなに大変なんだ…」
学園生として正式に授業を受け始めた僕は、漸く午前中の授業を終えて学園内の食堂にてノびていた。特に授業についていけないということは無く、何なら知らないことを知識として吸収できるから楽しかったりもしてるけど。それよりも問題なのは周りの学園生の視線であったりする。顔には出てないけど何となく受け答えがぎこちなかったり、何処か僕を怖れているような反応をされたりと少し居心地の悪い雰囲気を感じていたりする。今までの行動を省みるとそう思われても仕方がないと分かってはいるけど、そのことが何となく悲しく寂しかった。
「はぁ…どうしたもんかなぁ」
「…JCさん?そんなに項垂れてどうかしました?」
「…あっ、薫子さん」
1人で考えを巡らせていると、ちょうど同じタイミングで近くを通った薫子さんが声をかけてきた。
「ここの席、どなたかご予約されていますか?」
「えっ、いや…多分大丈夫だと思いますよ」
「そうですか…でしたら失礼させていただきますわね」
薫子さんは僕と対面する席に座ると、持参したお弁当を広げて口に運んでいた。お弁当持ってるのに、わざわざ食堂で食べるんだ…。
「生徒会室以外で会うなんて、それに虎千代さんが隣にいないのもちょっと新鮮ですね」
「え?あぁ…そうですわね。会長は今度赴任してくる学園長の受け入れの準備を進めている最中なので、暫くは姿を見せないと思います。なんでも10歳の女の子だそうですとか…」
「10歳か〜…じゃあ“同い年”ですねー。お友達になってくれるかなぁ」
「えぇ、きっと良い関係を築けると思いますよ………はい?JCさん、今何と…?」
「え?えぇ〜っと、『俺にかまわず先に行けっ!』でしたっけ?」
「一体どんな状況ですか!?そうじゃなくて!」
「あっ、あれですかね。おっぱ」
そこまで言葉にしたところで気がつけば僕の体は地に倒されていた。何が起こったのか理解できなかったけど、恐らく薫子さんに光の速さで倒されたんだと思う。怖いからもうこれ以上詮索しない。
「JCさん!それは言わないって約束でしょう!?」
「…まぁ、今のはちょっと狙って言ってみたけど。でも本当毛嫌いしてますね?薫子さんの魅力なんだから認めちゃえばいいのに」
「…別に好きで大きくなったんじゃありませんっ」
拗ねたようにプイっと顔を背ける薫子さん。普段は温厚で大人の余裕たっぷりな彼女が時たま見せるそんな様子が年相応の女の子のようで少し可愛らしく思える。
あんまりいじめると可哀想なので、そろそろちゃんと答えてあげようっと。
「からかってすみませんです。本当は僕と新しい学園長さんが同い年で10歳って話ですよね」
「もう…ではやはり本当なんですね?ですが一体どういうことですか?約半年で4歳も成長するなんて…」
「結希さんが調べてくれた結果なんで、間違いないそうです。と言っても、結希さんが言うには成長というより獲得・取得という言い回しの方が正しいみたいです。一度失ったものが戻ってくるという意味合いも込めて」
「そうですか…。それはまた難儀な話ですね。それはそうと、新しい生活の方はどうですか?何か不都合なことがありましたら、遠慮せずに言って下さいね」
そう言って僕に優しく微笑む薫子さん。いつの間にかさっきまで拗ねていたのは忘れて、すっかりお姉さんのように振舞っている。忙しない人だなぁと考えていると、突然背後から誰かに抱きしめられた。
「ふふっ…何やら面白そうな話をしているねぇ。僕にも聞かせてくれないかな?」
「遊佐さん!ちょっと、近いですって!?」
座っている所為かちょうど僕の頭に女性特有の柔らかい感触と清らかな匂いが直に香る。頑張って抜け出そうとするけど遊佐さんはその腕を緩める気配は無い。
「遊佐さん!なんて破廉恥なことを……ここは公共の場ですよ!」
薫子さんが声を荒だてて遊佐さんを注意する。しかし、遊佐さんはさらに煽るように答えた。
「あぁ、君も居たのか。君の胸が大きくて顔が見えなかったよ。いやぁ〜すまないねぇ」
「ぐぬぬ……貴女までそんな戯言を…そんなに大きくありません!それより早くJCさんから離れて下さい!」
「それは出来ない相談だよ。なんせ僕たち報道部が広めた噂の所為で、JCくんに辛い思いをさせてしまっているんだからねぇ。噂を撤回できない以上、せめてもの償いにこうして僕が体を差し出しているという訳だ。当然の対価だよ」
「だ、だからと言ってそんな見せつけるようにしなくても…」
恥ずかしがって言葉の最後が尻すぼみになる薫子さんを見て、何か閃いた様子の遊佐さん。その証拠にいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「はっは〜ん…もしかして君、まだ“穢れを知らない清らかな体”だったのかな?僕はてっきり、もうとっくの昔に喪失しているのだとばかり思っていたよ。いや、失敬失敬……何ならJCくんで“女”にしてもらったらどうかな?」
「な、な、なっ…!?」
「…?遊佐さん、どういうことですか?僕には何がなんだか」
言っていることが全く理解できない僕は遊佐さんに問いかけるも、やんわりとはぐらかされてしまった。
「そうだねぇ…。水瀬くんから説明してもらえるかな?」
「薫子さん…!教えてくれますか?」
「えぇ!?いや、だから、その…えっと……」
僕と遊佐さんがまじまじと薫子さんを見つめる。すると、耐えかねたのか遂に行動に出た。
「っ!!失礼します!」
薫子さんは半分ほど手をつけたお弁当をすぐにしまって、ピューっと速歩きで立ち去ってしまった。こんな時でも校則を守って走らないんだ…流石は生徒会副会長。
「戦略的撤退、という訳か…中々尻尾を掴ませてくれないなぁ。まぁJCくんがいれば、それも時間の問題だと思うけど。それよりも…」
遊佐さんはパッと手を離して、僕にだけ聞こえる大きさでこそっと耳打ちをした。
「君に辛い思いをさせてしまって本当にすまない。まさか君とこんな関係になるなんて当時の僕は思っていなかったから……だから、いつでも僕を頼ってくれないかい?」
少し弱々しく言葉を投げかける遊佐さんに対して、僕はそっと肩に手を置いた。
「遊佐さん…大丈夫ですよ、痛みには慣れてますから。それにきっと、僕がちゃんとしていればみんなが優しくしてくれます。その日が来るまで気長に頑張りますよ」
ニィっと笑いかけると、遊佐さんはどこか納得するように溜息をついて、そして少し乱暴な手つきで僕の頭を撫でた。
「ハァ〜…生意気なこと言ったな?でもその潔さは嫌いじゃない。噂の方は僕が何とかする、悪いようにはしないから安心してくれたまえ」
「…むぅ」
またはぐらかされた。
あれから1ヶ月経ったけど、変わったことが2つある。1つは僕の不良疑惑がいつの間にか払拭されていたこと。これは多分だけど遊佐さんが奮闘してくれたんだと思う。そしてもう1つは遊佐さんの関係者として認知された所為で、また人が寄りつかなくなったこと。以前のような悪意は感じなくなったけど、結局クラス最終日まで誰も仲良くしてくれなかったし…。
そんなこんなで学園内のベンチで1人悲しみに暮れていると、後ろから肩をちょんちょんとつつかれた。振り返ると
「えい」
「ぐべっ」
そのまま頰を指で刺された。といっても痛みは全く無いので、僕はその指をぐぐぐっと押し返しながらその犯人の顔を拝む。
「りゅ、りゅえこしゃん?(ゆ、ゆえ子さん?)」
「ふふふ、初ドッキリ成功なのです」
背後から僕に襲いかかった犯人はゆえ子さんだった。前回の裏世界探索以来だから約1ヶ月ぶりの再会だったのに、その再会の仕方が背後からの奇襲なんて…。
「突然すみません。来週からゆえと同じクラスになると聞いたので、お祝いのドッキリを仕掛けさせてもらいました。よろしくお願いしますね」
あくまで悪気はないと笑顔を見せるゆえ子さん。まぁ実際ドッキリどころか何となく和んだけど。
僕はつつかれた頰を摩りながらその愚行を許すことに。
「…別にいいですよ」
「では、よろしくついでに1つ頼まれて頂いても宜しいでしょうか?」
「ねぇねぇ!ゆえっち!うちの未来視えたってまじ?彼氏って誰!イケメン?ねぇイケメンでしょ!?」
「間宮さん…はい、視えましたよ。ついさっき、ぐわっと……連れてきました」
その少し後、ゆえ子さんは間宮さんと呼ばれる女性に何やら占いの結果を伝えていた。僕はといえば、最初の3歩だけ誘導されるもすぐに力尽きたゆえ子さんを背負って指示されるがままにどこかの教室へ向かって、そして今何故か教卓の裏に隠れさせられている。合図を送ったら出て来てくださいと一言添えられて無理やり押し込まれて目隠しをされたから声しか聞こえないけど、一体何が始まるのだろうか?
「あなたは…クリスマスに1人で…むにゃむにゃ」
「え、さっきの彼氏は?どこ行ったの?」
なんかすごいおろおろしてるけど、何不吉なこと言って差し上げたのゆえ子さん?
あ、また誰か来たみたいだ。間宮さんのお友達の方々か…誕生日おめでとー!って言ってる……あっ、もしかしてサプライズか?だからゆえ子さんドッキリとかやって練習してたのか!だとしたら、何で僕呼ばれてるんだ?
「ちょー嬉しい!あんがとね!」
お友達に祝福されて本当に幸せそうな間宮さん。全く知らない人の誕生日だけど、なんかこっちまで嬉しくなっちゃうな〜。これがアイラさんが言ってた幸せのお裾分けって奴なのか!お祝いごとに出るケーキが沢山食べられるって言ってたし。
「実は、ゆえの占いで視えた本当の間宮さんの恋愛事情は中々絶望的な状態だったので」
「えっ、まさかの自分からバラしていくスタイル?」
「いつもならパワーストーンやアクセサリーを授けさせて頂いているのですが…今回はゆえが考え得る中で最高のプレゼントをご用意しましたです。では間宮さん、持ってくるので目を閉じて待っていてください」
「え?こ、こう…?」
おそらく素直に両手で目を覆っているであろう間宮さん。なんかすごい素直そうだから騙すのとか気が引けるんだけど、何させられるんだろう?あ、ゆえ子さんか。
「(お待たせしました。JCさん、行きましょう)」
ガタッ!ガタッ!!と窮屈な教卓から抜け出して、おそらく女生徒の背後に誘導される。
「今、間宮さんの後ろには、ゆえの知る限り最も間宮さんの好みに近い男性に来てもらいました。姿を見る前に、何かやってもらいたいことがあれば叶えられますが…?」
「え!急にそんなの言われても…え〜っと、じゃあ後ろからハグ!」
「(JCさん、少しお手を失礼しますね)」
ゆえ子さんが僕と間宮さんとの距離を調整して、ちょうど間宮さんの体を覆うように僕の腕を回す。
「くぅ〜!!きたきたきた〜!!人生初の快挙達成!!何にも見えないけど!これで実は律とか自由でしたってオチじゃないでしょーね?」
あからさまに喜びが態度に現れてるみたい。お友達の方々も「すげーっ!!千佳が男に抱かれてる!?」とか「間宮氏史上、最高の瞬間っすね〜!!」とか言ってるし…なんかここまで喜ばれると、逆にガッカリされそうだなぁ。
「ゆえっち!もう見てもいい?って言うか我慢できないんだけど!」
「…わかりました。では、お互いに目隠しをやめて確認して下さい、ふふふっ」
ゆえ子さんの含み笑いが微かに聞こえてくる。あ、これ面白がってるな?
僕は目隠しを取って目の前にいる女生徒の姿を確認する。明るい茶髪で如何にもギャル!って感じだ。向こうも閉じていた目を開けて、僕の姿を確認する。お互い数秒間隈なく見つめ合った後、同じセリフをどちらからともなく同時に叫んだ。
『…いや、誰だよ!!』
【
特異なパーソナリティを持つ者が多いこの学園である意味一番の一般人。年頃の少女らしく恋愛で頭がいっぱいで、男子へのアプローチに余念がない毎日を送っている。魔法使いとして、というより女を磨きたい派の代表。成績も普通。よくフラれる。JCに対して見た目のみの評価は群を抜いて高い反面、約半年間授業未出席の不良疑惑&遊佐鳴子の息のかかった関係者&東雲アイラの彼氏(アイラ申告)など本人の意思とは関係ないところで評価を落としている模様。