グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い   作:自由の魔弾

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【料理部】
部員は里中花梨、雪白ましろ、
李 小蓮(リ シャオラン)雀 明鈴(チャオ メイリン)の4人。別名“学園の胃袋”


第拾九話 リリィは長め 魔法使い

「あれ?よく見たら例の元不良さんじゃないっすか?」

 

「そっかぁ〜!あんた、どっかで見たことあるな〜って思ってたら、クリスマスパーティーの時の…」

 

「んっ?なんで千佳が知ってるんだ?」

 

「ちょ、律ってば、馬鹿にしないでよね!うちのいい男センサーは常にアンテナ3本立ってるんだから!」

 

自信満々にそう言う間宮さん。その態度に何故か嘆息している律と呼ばれた女生徒は僕に振り返る。

 

「だったら、学園からのメールもちゃんと見ろよな…。あ、あたしは音無 律だ。学園中の噂だぜ〜、アンタ。んで、こっちが…」

 

律さんに促されて、後ろからぴょこっと跳ねるように猫耳のような形のカチューシャを着けたメイドさんが現れる。

 

「はいは〜い!自分、小鳥遊自由っす。でもお兄さんって、あんまり優秀じゃないほうの先輩っすよね?」

 

「はぅ!?」

 

やっぱり報道部の影響って凄いな。遊佐さんが噂を払拭してくれてるって言ってたけど、まだまだ消えてないんだ……悲しみ。

 

「ま、まぁその話はさて置いといて、今度リリィでお世話になるJCです。よろしくお願いしますっ」

 

ぺこりとお辞儀をする僕。すると、どこか納得がいかない様子の律さんが僕を見て唸っていた。

 

「な、何ですか…?」

 

「…足りねぇな〜」

 

「え、律?何言ってるの?」

 

「なんかこう…ビビビッとくる感じがしないんだよな〜。JCって名前はロックだけど、今の感じじゃすっかり毒っ気が抜けた……」

 

「音無氏、久しぶりに唸ってるっすねぇ。こりゃ“アレ”が出るかもしれないっすよ?」

 

「えっ?えっ?な、何…」

 

まったく状況が飲み込めない僕と間宮さん。

 

「あぁ、この感じはまるでLU○A S○Aの真○さんのようだぜ!」

 

『それは言っちゃ駄目ェエエ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく…ゆえ子さんのせいでひどい目にあったよぉ…。なんで窓から飛び降りて逃げるしかないんだよ…でもまぁ、学年も違うみたいだし、あの人たちとは会うことも少ないだろうなぁ……ん?」

 

命からがら抜け出してきた僕は、ふと廊下の陰で何かを覗き込んでいるももちゃんを見かける。後ろからそ〜っと近づいて話しかけてみよう。

 

「も〜も〜ちゃん」

 

「ひゃう!?せ、先輩!もっと普通に話しかけて下さいよぅ…はうっ!」

 

言葉の途中で僕にチョップされたももちゃんは、叩かれた箇所を手で押さえながら僕に抗議の視線を向ける。でも、名前で呼んでくれないももちゃんの自業自得なのだ。

 

「めっ!“先輩”禁止って約束でしょうが。それで、一体何を見てたの?どれどれ」

 

「あ!見ちゃ駄目ですっ!」

 

ももちゃんの制止を振り切って顔だけ覗き込んで見ると、例の転校生くんと数人の女生徒が何やら親しげに話し込んでいた。よく見ると、夏海ちゃんの姿も見えた。とりあえず確認できるだけでも夏海ちゃんと帯剣している子とリボンの子の3人かな。

僕はももちゃんに引っ張られて乗り出していた身を戻して向き直す。

 

「…なるほどね〜。転校生くんの周りに女の子が沢山いるから中々思うように近づけない…というわけですかな?」

 

「っ!い、言わないで下さいぃ!」

 

僕の名推理(誰が見ても分かる)を披露すると、図星を突かれたのか明らかに動揺してるももちゃん。うーむ、ここは手助けした方が良いのだろうか?

 

「はぁ…あたしって、いっつもこうだ。折角先輩に明後日の誕生日のお祝いしてもらいたかったのに、そんな時に限って先輩は…」

 

これはかなりグロッキー状態なのでは?というかももちゃん明後日誕生日なのか…。さっきみたいにお祝いしてあげればいいのかな?

 

「ももちゃん、ももちゃん」

 

「…はい?」

 

僕はすっかり元気を失くしているももちゃんにサプライズを披露してあげた。

 

「コラーッ!!!」

 

「わっ!な、何ですかいきなり…」

 

びっくりして尻餅をついたももちゃんに向かって、僕は得意げに答えてみせた。

 

「お誕生日ってこういう風に祝うって、さっき間宮さんの誕生日祝ったばっかりだから完璧でしょ?サ〜プラ〜イズって」

 

「本当にびっくりしたんですから!!もう先輩のバカーッ!!」

 

ももちゃんはそう吐き捨てて走り去ってしまった。残された僕はといえば、ガーンっという表現が正しくぴったりなほどその場に崩れ落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーん…んで、わざわざ妾の所まで来て泣きついてきたってことじゃな?」

 

「うぅ…ももちゃんに嫌われちゃったよぅ〜!もう一生お話してくれないんだぁ!?」

 

この調子でふらふら学園内を彷徨っていると運良くアイラさんのいる部屋に辿り着いたので、話を聞いてもらっていた。もちろん入ってから気がついたけど、ここには他の生徒さんもいるわけで、その人たちには悪いと思いつつも一緒に聞いてもらっていた。

 

「じゃからって、何で妾んとこに来るんじゃ!もっと暇そ〜なのが他にいるじゃろ!」

 

「だってアイラさん、僕のコレ(親指)なんでしょ?」

 

「指が違うわい!コレ(親指)じゃなくてコレ(小指)じゃ!」

 

うぅ〜っと僕とアイラさんが目線で戦っていると、横からおっとりとした女の人がやんわりと仲裁に入ってくる。

 

「まぁまぁ〜、アイラちゃんもJCさんもそのへんにして、ほらお菓子でも食べて落ち着きましょう、ね?」

 

ほんわか〜とした雰囲気で僕たちに語りかけるように話すのは僕が迷い込んだこの歓談部の象徴たる生徒の海老名あやせさんだ。彼女に止められてなのか、唸っていたアイラさんも視線を外して再びお茶を飲んでいた。しかし、こっちはまだまだ不完全燃焼なので、早くも第2ラウンドが始まろうとしていた。

 

「折角、お友だちになってくれるかもしれなかったのに…。僕はただ祝ってるつもりだったけど…何に怒ってるんだろう?」

 

すると、さっきからずっと一生懸命ドーナツを食べていたもう1人の女の子がおずおずと意見してきた。

 

「あの…もしかして、あなたに祝ってほしくなかったのでは……あっ」

 

彼女の一言で歓談部一帯の空気が凍った。一拍遅くその空気を感じとったのか、慌てて取り繕うとするも僕が沈むのが早かった。

 

「今のは日本語が苦手とかのレベルじゃないぞ…外人の悪い癖じゃ」

 

「エミリアちゃん、向こうでドーナツでも食べてましょうね〜」

 

「…す、すみません〜!!私の生意気な口はドーナツを食べて塞ぎます〜!」

 

2人の圧力に負けてはむはむと一心不乱にドーナツを口に含むエミリアちゃん。悪気は無いみたいだし、なんなら1番可能性高そうだし…。

 

「…ほれ、お主も黙っとらんで何か言え」

 

アイラさんが心底かったるそうに少し離れて座っていたシスターさんに話題を振る。すると、シスターさんは胸の前で手を組み、お祈りのポーズをとって一言だけ呟いた。

 

「神を信じ、神の御意志に従えば、貴方にも最良の未来が訪れるでしょう…」

 

…後光が差すって今みたいなことを言うんだろうなぁ。シスターさんがものすごく輝いて見えるもん。

 

「こりゃ!また性懲りも無く勧誘しおって!此奴に宗教なんか理解できるか!」

 

うーん、間違ってないけど失礼じゃない?ちょっとだけ脅しておこうかな。

僕はアイラさんの近くまで寄って、そっと耳元で囁いた。

 

「(また僕の血、飲ませるよ)」

 

途端にガタガタ震えだすアイラさん。前は強がってたけどやっぱり苦手だったんだ、僕の血は。あれ以来、1回も吸血しに来なくなったし…好かれてないんだろうな。

 

「とりあえず、暫く近づかないようにしてみます。僕もそれまでにやっておくことがあるので……相談に乗ってもらって、ありがとうございました」

 

僕は歓談部の皆さんにお礼を言って、そのまま部屋を出た。僕がやらなければいけないこと…それは二度と遊佐さんのような被害者を出さないために、パルチザンのような人たちを救うために、強くなること。そのためなら、たとえ誰に認めてもらえなくても、どれだけ傷ついても成し遂げてみせる。まずそのために約束してた彼女と手合わせしないと。

 

「たのもーっ!」

 

「ん?」

 

調理室の扉を開けて、今もなお食事を続けている明鈴ちゃんに挑戦状を叩きつける。明鈴ちゃんの他にも料理部の部員と思われる生徒が3人いるけどこの際関係ない。勝負の時は正に今この瞬間なのだ。

 

「ようやくヤル気になったアルね?1ヶ月もボクを待たせるなんて、君が相手じゃなきゃ我慢ならなかったヨ。でも、これ食べ終わるまでちょっとだけ待つネ」

 

明鈴ちゃんはすぐさま残りの料理にがっつくと、全て平らげて僕の方に向き直った。

 

「待たせたネ。今のボクは満腹で絶好調アル、それでもやるなら表、出るネ。小蓮、審判頼むアル」

 

僕は明鈴ちゃんの後を追って、校舎の外に出る。先に出て行った明鈴ちゃんは学園の中央広場で足を止めて、付近に危険が及ばないかを確認して場所を確保した。

 

「この時間なら他に生徒も居ないし、それなりに広いから大丈夫そーアルね。先にルールを決めておくアル。と言っても魔法を使わない、審判のジャッジに従う、くらいアル。簡単でしょ?」

 

「うん、わかった…小蓮ちゃん、審判よろしくです」

 

「うーん、なんかよくわからないけど…ワタシに任せるネ!では、2人とも…お互いに見合って、一礼するネ」

 

小蓮ちゃんの指示で僕と明鈴ちゃんは対面して互いに礼をする。それを終えると明鈴ちゃんはすぐに特異な構えを見せて、僕を迎え撃つ体制を整える。詳しいことはわからないけど、あれはカンフーの一種なのか。

 

「さぁ、君も構えるネ!」

 

明鈴ちゃんに促され、僕は小さく息を吐くと静かに拳を握りしめ胸の前で構えファイティングポーズをとる。そして、張り詰めた緊張感を逆撫でするように僕と明鈴ちゃんの間に風が吹いたのを機に、小蓮ちゃんの一声がかかった。

 

「それでは…試合開始ネ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで小蓮さん」

 

「ん?マシロ、どうしたネ?」

 

小蓮はマシロと呼ばれる女生徒にちょんちょんと肩を叩かれ、振り返る。

 

「明鈴さんは何故あの“方”と戦いた“かった”のですか?方とかった……ふふふ」

 

自分で言ったことで1人不敵に笑っているましろ。ダジャレだ…。

 

「マシロ…もうそれやめるネ。聞いてるこっちが寒くなるヨ。明鈴が少し前に裏世界に行ったのは覚えてるアルか?なんかその時に約束したって言ってたネ。よっぽど素手で戦う魔法使いって肩書きに惹かれたネ」

 

話してる最中も、お互いに常軌を逸したスピードで拳の応酬を続けている明鈴と男子生徒。明鈴の拳法に引けを取らない男子生徒の防御や立ち回りには素人目から見ても眼を見張るものがあった。

 

「因みに、明鈴さんとあの方は、どちらが勝ちそうでしょうか〜?」

 

ましろの質問に対して、小蓮は少し考えてから率直な感想を述べた。

 

「今見てる感じだと…多分、明鈴が勝つネ。あの人、恐らく素人だし、ただでさえ満腹の明鈴に勝つなんて相当なことヨ。持って15分ってとこじゃないカ?」

 

すると、それを横で座って聞いていた里中花梨は心配の声を上げた、

 

「う〜ん…よくわかんねぇけど、怪我しねぇかだけ心配だべ」

 

「花梨は少し心配性ネ。それに明鈴にとっても良い機会アル。こっちに来てからまともに鍛えてなかったから、これを機にヤル気になってくれれば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!フッ!デヤァア!」

 

もう何度も隙を見て反撃しているけど、中々決定打になる一撃が決まらない。何度も捌かれて躱されて攻めすぎると逆にこっちが追い込まれる。確実に胴体に決まるはずのパンチもゆらりと躱され、明鈴ちゃんの反撃の掌底、追撃の回し蹴りが決まり、僕の体は地面に叩きつけられる。

 

「カハッ…!?」

 

綺麗に着地した明鈴ちゃんが挑発するように問いかける。

 

「もう終わりアル?ちょっと手応え無さすぎヨ」

 

その言葉に少しカチンときた僕はその場で跳ね起き、ぶるぶると顔を振り、もう一度気合いを入れ直して、再戦を挑む。

 

「うぅ……よしっ!来い!」

 

僕の合図を汲み取った明鈴ちゃんは再び僕めがけて走り出し、顔面に飛び膝蹴りを繰り出す。しかし、上体を逸らし寸での所で回避し頭上を通り越したその背中に後方回転蹴りを叩き込む。が、それを予測していたのか当たる直前で体を地面に沈み込ませギリギリで回避、同時に足払いを決める明鈴ちゃん。そのまま前方宙返りの要領で踵落としを繰り出すも、地面に倒れこむ直前にバックドンキーで体勢を戻して両腕で防御し、そのまま足を持って明鈴ちゃん諸共横に跳んで回転する。が、お互いに受け身を取り、まだまだ健在なので再び蹴りと拳の応酬になだれ込む。

拳を捌いて上段蹴り、防がれて正拳突き、躱して肘打ち、後方宙返りからの蹴りで相殺。

中々終わることのない打ち合いに、僕も明鈴ちゃんも自然と笑みがこぼれる。

 

「へへっ…こんなに長く戦ったのは万姫以外では君が初めてネ!やっと本調子になってきたカ?」

 

「…あぁ、殴られてやる気出てきたってところかな!おかげで色々昂ぶってきてるよ」

 

僕の乱打に次第に反撃の機会を失っていく明鈴ちゃん。それは疲れや痛みでは決してなく、でも確実にその変化は僕の中でも感じていた。

 

(痛みを受けてないのに、力が増してる…?攻撃してるこのタイミングで?)

 

僕が一撃を放つごとに体の奥底から力が湧き出てくる感じが確かにする。攻撃を防御した明鈴ちゃんがその勢いを殺しきれずに体勢を崩したのを好機に、足払いを決め地面に倒れこんだ明鈴ちゃんめがけて最大限の力を込めた拳を放った。

 

「…っ!やばっ」

 

僕はその刹那、一瞬で闘争心に支配されかけた意識を取り戻し、ギリギリのところで照準を逸らした。耳をつんざくような爆音と衝撃が周囲まで広がってしまったが、僕の拳は明鈴ちゃんの顔の横拳一個分空いたところにめり込んでいた。

 

「へ…あ、あの…」

 

恐怖からなのか口をパクパクさせている明鈴ちゃん。だけど異常なまでに昂ぶった僕の意識は既に限界を迎えていた。それを裏付けるように僕は有無を言わせずその場で気絶し、明鈴ちゃんの体の上に倒れこんだ。

 

「んっー!?お、重いのだ〜…し、小蓮!マシロ〜!花梨!退けてほしいのだ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん、ここは…痛ッ」

 

またこの景色、天井が見えるってことはまた保健室のベッドに寝かされているんだろう。ってことは多分明鈴ちゃんとの勝負は僕の負けだったということか……ん?

 

「…すぅ……んぅ……」

 

な、なんかお腹の横のところにもたれかかって、ももちゃんが寝てる気がするんだけど…?え、どういうことかな?

何となく悪い気がしたので、僕の体の上に乗っている手をそ〜っと退けようとするも、頑なに動こうとしない。

 

「…うぅん〜…!」

 

ぜ、全然ビクともしないじゃないか…!寧ろ余計絡まってきてるし。全く状況が飲み込めないんだけど…。あ、誰か入ってきた。

 

「遅くなってごめんね……あ、桃世さん…寝ちゃってるのね。あなたも意識が戻って良かった〜」

 

「は、はぁ…あの、あなたは?」

 

僕が見知らぬ女の人に体調の心配をされ困惑していると、改めて自己紹介をされた。

 

「あぁ、突然ごめんなさい。私は椎名ゆかり、この学園の保健委員よ。あなたは確かJC君よね?よく運ばれてくるから何となく覚えちゃったわ」

 

それを聞いていたたまれない気持ちになる。確かに裏世界から戻ってきたから、意識を失う回数が群を抜いて増えた気がするけど。

 

「あの、ももちゃんはいつからここに…?」

 

僕は今も傍らで静かに寝ているももちゃんのことをゆかりさんに聞く。

 

「確か、あなたが担ぎ込まれてきてすぐ後からだったから……もうすぐ3時間くらいかしら。あなたの意識が戻るまでずっと側に居るんだって聞かなかったんだから」

 

僕はその話を聞いてももちゃんの髪を優しくそっと撫でてあげる。そのせいか、ももちゃんは心なしか嬉しそうな顔を見せている。

 

「そう、ですか…。僕、実はももちゃんのこと怒らせちゃったんです。だから、今こうして近くに居てくれるってことが不思議で…本当だったら、僕みたいな奴の近くに居たくないはずでしょ?」

 

僕の話を静かに聞いていたゆかりさんは、何かに気づいたようで笑みを浮かべて答える。

 

「…成る程ね。あなた、感情を汲み取るのが苦手みたいね。恐らくだけど、桃世さんは全然怒ってないと思うわ。寧ろ恥ずかしがってるっていうか…」

 

「え、何でですか?」

 

「…それは私の口からは言えないけど、でもそういうところよ!言葉の通りに受け取り過ぎちゃダメってことね」

 

「う〜ん……よくわかんないけど、とりあえず安心して良いのかな。でも、これで喜んでちゃダメだよね……僕に何か出来ないかな…」

 

「…そうねぇ。それなら桃世さんが何か喜ぶことをしてあげるのはどうかしら?」

 

「喜ぶこと、か……あっ」

 

「…?どうかしたの?」

 

「ありました!ももちゃんが一番喜ぶこと!うん、これだったらきっと…」

 

僕はふと思い出したことを現実に出来ないかを考える。上手くいけば明後日の誕生日に間に合うかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2日後の放課後、食堂の一部を貸し切ってささやかながらももちゃんのお祝いパーティーが開催されていた。ゆかりさんや夏海ちゃんに協力してもらって、ももちゃんの広い交友関係に何とか連絡が行き渡るよう奮闘してもらったり、ちゃっかり料理部のメンバーに特製ケーキを作ってもらったり、僕はといえばほぼ面識の無い転校生くんに出席してもらうため直談判しに行ったりとそれは忙しい2日間でした。もちろん会場にはお邪魔虫の僕の姿は無く、入り口の陰から祝福を受けて幸せそうなももちゃんの様子を伺っていた。

 

「ん…JCよ、そんなところで何やっとるんじゃ」

 

「あ、アイラさん。いや、別に……アイラさんは、あぁ…ケーキ食べに来たのね」

 

「相変わらずつまらん奴じゃのぅ…良いのか?向こうで一緒に祝ってやらんで」

 

「…えぇ、せっかくの良い雰囲気に水差すわけにはいきませんから。このまま退散しますよ…」

 

「ふ〜ん…ま、妾は別に止めはしないがの。お主の分のケーキも食べてやるから安心せい」

 

ハッハッハ〜と笑うアイラさんの頭の上に、僕はそっと手を置いた。

 

「…おい、何しておる」

 

「やっぱり変な感じだ。全然笑顔にならないじゃん…ウゴッ!?」

 

なんか普通に脇腹を蹴られた。

 

「許可無く女子の髪に触るなんて、お主相当のぷれいぼ〜いじゃの…。妾じゃなかったら通報もんじゃぞ?」

 

「うぐぅ……まぁ、その時はその時でしょう。僕のこと、嫌いなんでしょ?最近、転校生くんの血を吸わせてもらってるんだってね」

 

僕の追及に痛いところを突かれたのか思わず押し黙るアイラさん。たぶん僕は今までで一番冷たい視線を向けているんだろう。でも、なんかもう、そういうの…どうでもよくなってきちゃったな…。

 

「僕の体質が合わないんだよね。だから転校生くんに代わってもらった…要するに僕は御役御免ってわけかな?」

 

「お、おい…何を言っておる…」

 

狼狽するアイラさんを見て、乾いた笑いが込み上げてくる。

 

「ハハッ……“感情は言葉や態度に現れるものだけが真ではない”とはよく言ったものですね。今回の件でそれがよくわかりましたよ」

 

僕はそのまま完璧に理解した真意を告げた。

 

「別れましょう…アイラさん。今からは何の関係も繋がりもない、他人同士です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…不味いな。このままだと確実に裏と同じ結末を辿ることになる……彼が本格的に敵対する前に、早急に手を打たなければ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【桃世ももの誕生日パーティーの様子】
わぁ〜!すごい豪華な…へ?歓談部と料理部の方々も一緒に祝ってくれるんですか?あ、ありがとうございますぅ!椎名先輩も岸田先輩も沢山の方々を招待してくれてありがとうございます!ヒャ!せ、先輩!?わざわざお祝いしに来てくれたんですかぁ!?い、いえ!まさか先輩が来てくれるなんて思わなくて…えへへ!本当に嬉しいです!でも、確か今日は1日予定があるって……へ?代わってもらった?誰にですか?え、どうしても言えない、男の約束って……先輩、いつにも増して意地悪ですぅ…。でも、ちゃんと来てくれてありがとうございます!
……あ、ちょっとだけ外しますね。あ、ありがとう!はい、ありがとうございま〜す!……ふぅ〜、本当にすごい人だかりだよぅ。でも、やっぱり居なかったよね……保健室に運ばれたって聞いてあの時怒っちゃったこと、ちゃんと謝ろうとして起きるまで待ってたけど、いつの間にか寝ちゃって結局お話できなかったんだよね……本当はJCさんにも祝ってほしかったんですよ?
あ、アイラちゃんだ。だ、大丈夫?なんかすごい青ざめた顔してるよ……え、JCさんと別れた…?ど、どういうことなの?
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