グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
グリモワール学園の生徒指導官。ウサギのぬいぐるみまんまな外見をしている。
転校生に学園について説明する役割もあり、学園生活を充実させるようにアドバイスしてくれる。
フレンドリーな態度と気が回る性格もあり、生徒達を見守る良き大人で学園生からの信頼も厚い。
一方でファンシーな外見とは裏腹に大の女の子好き。そのおっさん臭い言動から生徒達から変態扱いされることもしばしばで、風紀委員から説教をくらった回数は数知れず。
第7次侵攻を見事勝利したグリモワール魔法学園。平穏を取り戻してのも束の間、その一ヶ月後に新たな生徒が転校してきた。
「ほぁ〜…おーきながっこうだなぁ。きょうからこのがっこうにかようのかぁ」
校門の前で唖然としているのは、ついこの前の第7次侵攻で保護された少年だった。後々の内偵調査で判明したのだが、何を隠そう侵攻の際に出現したタイコンデロガは既に魔法使いへ覚醒していた彼が倒したものだったのだ。
そんな彼が退院して心機一転、学園へ足を踏み出そうとした時、不意に誰かに声をかけられた。
「おっ!そこの君、ちょっと待って!もしかして、君が今日から転校してくる生徒かい?」
「うわっ!うさぎさんがしゃべってる!すご〜い!!」
少年の前に現れたのはぬいぐるみまんまな外見をしている宙に浮いたまま喋るうさぎだった。物珍しい反応をする少年に、喋るうさぎは思わず感極まっていた。
「お、おぉ〜!!?よっしゃ!やっと来たその反応!やっぱ普通の反応ってそうだよな!うさぎが喋ってるんだからびっくりしちゃうよな!」
「うん!びっくりした!」
あくまで素直に喜ぶ少年の反応に、テンションが最高潮に昂ぶるうさぎ。
「くぅ〜!何て素直で純粋なんだ…!おっと、自己紹介が遅れたな。俺はこの学園の生徒指導官をやってる“兎ノ助”って言うんだ。何か困ったことがあったら相談してくれ!いつでも力になるからな!」
「うん!わかった、兎ノ助せんせー!」
「うっ…!?何なんだこの感情は?いつもの女子生徒を見る時のエロい気持ちとは違うこのトキメキは!?まさかこれが、父性って奴なのか!?」
屈託のない笑顔で返事をする少年に心が躍る兎ノ助。そんな気持ち悪い勘違いをしている兎ノ助に、女生徒が声をかける。
「あら、兎ノ助じゃない。相変わらず気色悪いこと考えてるんだってね?」
「うぎゃあ!?だ、誰が気色悪いだ!俺は常日頃から生徒たちの事を思ってだな…ブツブツ」
会うや否や兎ノ助に失礼な言葉を浴びせる(ほとんど日頃の行いの悪さ)のは、赤髪で白衣が似合う一見科学者のような風貌の女子生徒だった。
「どの口が言ってるんだか…。ん、そっちのボケッとしてるのが噂の転校生?」
「あー、多分お前が思ってる“転校生”とは違うと思うぞ?いや、彼は今日からここに通う転校生ではあるから、ある意味では間違ってないけどさ?」
「ふーん…あっそ、違うならどうでもいいわ。それより今日こそデウス・エクスシリーズの技術進歩に向けて成果を出さないと…」
兎ノ助に目的の人物ではなかったことを説明されると、少年を一瞥して興味を失ったかのような態度をとってすぐさま校内に向けて歩き出そうとするが、そこに少年が立ちはだかった。
「…何?もしかして馬鹿にされて腹が立ったとか言うわけ?魔法使いになったからって偉そうに出来ると思ってたら大間違いなんだから!」
女生徒が凄んでみせる。しかし、少年から発せられた言葉は意外なものだった。
「兎ノ助せんせーのこと、わるくいっちゃダメだよ!」
少年の言葉は女生徒から兎ノ助への暴言の謝罪だった。
「ハァ?アンタいきなり何言っちゃってるのかしら。兎ノ助に弱みでも握られてるの?」
困惑する女生徒を他所に、少年は更に言葉を投げかける。
「おねーさん、兎ノ助せんせーにごめんなさいしないとダメ!」
「ちょっと兎ノ助!こいつ気でも狂ってんじゃないの!?ってか、もう邪魔!」
女生徒は少年の拘束する手を無理矢理振りほどいてその場から走り去ってしまった。少年は女生徒に突き飛ばされた勢いのまま手から地面に倒れ込んだところを兎ノ助が駆け寄る。
「お、おい!大丈夫かい?ごめんな、あいつも本気で言ったんじゃないんだ。中々気難しい子でさ…それより怪我してないか?」
少年は一応全身を見回してみると、特に何も感じなかったのか満面の笑みで答えた。
「…うん。だいじょーぶ!でも、そろそろちこく?しちゃうかも。せーとかいってところにいかなきゃいけないんだぁ。だからバイバイ!」
「…お、おう!またなー!しっかり頑張れよ〜!!」
少年が兎ノ助に手を振ると、向こうも短い手をブンブン振って返してくれた。
少年の言葉通り、手続きのこともあったがもう一つ本命の目的があったのだ。
少しして少年は鏡に映る自分の姿を見て、ある事に気がついた。どうやらさっき倒れた時に着いた指が本来曲がるはずのない方向に折れていたのだ。
「あー、まただ。しょうがないなぁ…えいっ」
もう片方の手で折り直すと、ゴギィという通常鳴り得ない骨の音が折れた指を再び元の形状に戻ったことを知らせる。幾らか形は歪なものの、あらぬ方向に折れていた指は差し支えない程度になった。
「ふぅ〜、これでよし。♪〜♪♪〜」
しばらく経てば見た目も元に戻ることを知っている少年は何事もなかったかのように、再び軽快な足取りで生徒会室へと向かうのだった。
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魔導科学研究所より出向してきた科学者。
実は世界で唯一人、自分の力で魔法の力を使えることができるすごい人。
魔法を誰にでも使えるようにすることに心血を注いでおり、そのためには自分自身をデウス・エクスシリーズの実験台にすることもいとわない。