グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
Private Military Companyの略。民間軍事会社。
営利目的で魔物の退治を行っている企業。政府や他の企業からの依頼で報酬を受けて任務を遂行する。
主な企業としては「ナチュラルエネミー」がハワイに駐屯している。
「うわぁ……綺麗だなぁ」
はい、現在僕は学園を飛び出しハワイという場所に来ています。というのも観光が目的ではなくて、PMCと呼ばれる民間軍事会社との合同訓練のために遠征してるんだとか。まぁ、例に漏れず未だに学園生からは距離を置かれている僕は班を編成させてもらえず、急遽組んでもらった今回の合同訓練の相手である
「これが“海”っていうのか…!噂には聞いてたけど、本物を見るのは初めてだ……ん?デバイスが…」
その時、ポケットの中に入れていたデバイスに着信の通知が来た。相手は……間宮さん?
〈あ、JC?も〜、今どこにいるの?こっちはもう訓練終わって自由時間だよ〉
「今、罰で砂浜走らされてる最中…まぁとっくに言いつけの20kmは走り終わってるけど」
〈え?だったら帰って来れば良いじゃん。何でまだ戻ってこないの?〉
「だって帰ったらまた軍人もどきの相手させられるんだもん。そうじゃなくても色んな人から距離置かれてるし…。ま、何かあればすぐ戻れるところにはいるから、このまま適当に時間潰してから帰るつもりだよ」
僕がそう言うと、通話越しでもなんとなくわかるほど黙ってしまう間宮さん。やばい、自虐が過ぎたか…?
そんな心配をしていると、間宮さんは意外な提案をしてきた。
〈そっか……じゃあさ、戻ってきてウチ達と一緒に遊ばない?〉
「…へぇ〜」
〈な、何よ…!ウチが誘ったら悪いの!?〉
何故か突然、僕に逆ギレをする間宮さん。自分で言ったのなら怒らないでほしい。プンプンだぜ、全く。
「いや、別に。いいよ…場所は?」
〈ウチらが訓練してたビーチ、わかるよね?急いで来ないと、もう誘ってあげないから!じゃあね!〉
ブツッと切られるデバイス。僕は目の前に広がる海に一抹の寂しさを感じつつも、後ろ髪を引かれる思いで目的のビーチを目指した。
「…よし、これでオッケーっと。智花っち、例の男子、こっち来れるって」
「本当?ありがとね、千佳ちゃん。私、その人の連絡先知らないし、面識もなくて話しかけづらかったから…」
千佳に電話をかけるよう取り計らってもらっていたのは、同じ班の南 智花だ。ハワイに来て合同訓練中にふとJCの話題が上がった際に、どういうわけかしきりにJCの存在を気にしていた。
「それにしても、まさか智花っちがあぁいうのがタイプだったとはねぇ〜…てっきり転校生一筋だとばっかり」
「へぇ!?千佳ちゃん!そ、そんなんじゃないよぅ!?」
千佳にイジられて赤くなる智花。それを近くで聞いていた松島みちるが会話に参加してくる。
「なになに?何の話してるの?」
「あ、実はね…」
千佳が智花がJCを呼び出したことをみちるに話した。
「へぇ〜…智ちゃんってば、意外と積極的なんだね」
「もぉ〜!みちるちゃんまで!?だから違うんだってば〜!」
2人にからかわれて、いよいよ困惑している智花。もとよりそれが真実なのを知っているので、こんな噂話として盛り上がるネタは無いのだが。
「はいはい、智花っちが転校生にぞっこんなのは、みんな知ってるから……まぁ、本人は知らないと思うけど」
「ふぇ!?きゅ〜…」
「あぁー!!智ちゃんが倒れたァ!?」
「…ふぅ、意外に時間かかっちゃったな。えぇ〜っと、ビーチ、ビーチと……あ、これかな?」
少し遅れて到着した僕は、観光案内板を頼りに目的のビーチへ足を運ぶ。しばらく歩くと、無事に間宮さんの姿を見つけることができたけど、何やら忙しなくしていた。何かあったんだろうか?
「間宮さん、どうしたの?あれ、その子…」
「あ!JC、ちょうど良かった!それ、貰うよ!」
「あ、ちょっと…!」
会うや否やいきなり僕が持っていたスポーツドリンクをひったくって、日陰でぐったりしている女の子に少しずつ飲ませてあげる間宮さん。まぁ、貰い物だからいいんだけどさ。新品未開封だし。あ、終わったみたいだ。
「呼びつけといて、いきなりごめんね!あ、あとで飲み物代、返すからさ」
「いや、それ貰い物だから別にいいんだけど……その子、大丈夫なの?」
僕が女の子の体調を気遣うと、間宮さんは気負う必要ないと答えた。
「ちょっとのぼせちゃっただけだから、すぐに良くなるよ。でも、起きるまで一応あんたが付いててあげてよ」
「え、僕が?間宮さんは?」
「ウチは、ほら…ナンパされに行かないと!今回の合同訓練でPMCの人たちに少しでも声かけてもらわないと、せっかくの努力が…」
「あぁ…そういえばダイエット頑張って絶対に彼氏作るんだーって言ってたもんね。偉いな〜よしよし」
そう言って間宮さんの頭を撫でてみる。あっ、手退けられた。むっすーっとした顔してるし。
「うるさいなぁ…ウチのお爺ちゃんか、あんたは!とにかく智花っちのこと、頼んだからね!ほら、あんた達も一緒に行くよ!」
「えぇ!?私も〜!?」
「ノエルちゃんまで!?離して〜!!」
間宮さんに手を引っ張られて、ナンパ仲間に引き入れられていく見知らぬ2人の少女。何かよくわからないけど…ご愁傷様です。
「…うぅん……あ、あれ?私……あっ」
あ、起きたみたいだ。僕は目の前でゆっくりと体を起こそうとする少女を支え、着ていた自分の制服の上着を彼女の体にかけてあげる。
「えっ、あのこれは…?」
不思議そうに見つめてくる少女に、僕は目線を合わせず静かに答えた。
「…あんまり近くで見ない方がいいでしょ?それだけ」
「あっ…ありがとうございます。なんか、気を遣わせちゃって、ごめんなさい」
自分が水着を着ていることに気づいて、少し恥ずかしそうにしている少女。
そんな最中も、間宮さんがどうして目の前の少女と僕を引き合わせるような真似をしたのかに考えを巡らせていた。
すると、少女のほうから僕に話を持ちかけてきた。
「あ、私は南 智花です。実は私が千佳ちゃんに頼んで、JCさんに来てもらったんです。説明するのが遅れてごめんなさい」
そう言って律儀に謝る智花ちゃん。その対応を受けて、僕も改めて少し真面目に受け答えする。
「いや、それは気にしなくていいよ。僕はJC、よろしく。それで君の目的は何かな?」
僕がそう聞くと、智花ちゃんはどこか神妙な面持ちでポツリと呟いた。
「…最近、夢を見るんです。見渡す限り霧が広がってる街で、ものすごく大きくて、強い魔物が街を襲って…学園のみんなが力を合わせても…全然歯が立たなくて」
少し肩を震わせて辛そうに語る智花ちゃん。
「でも、そこには何故か転校生さんとあなたの姿がなかったんです…。何度見ても、その度に色々な場面を見ても、居ないんです…。それで以前遊佐先輩に相談したら、あなたに話を聞いてもらうといいよ…って言ってくださって」
遊佐さんが話に絡んできたことによって、僕はなんとなく話の流れを掴み始めていた。
「そっか…遊佐さんが僕に引き合わせたってことは、その霧が広がる街ってのは、多分“裏世界”のことか…。大きい魔物ってのはタイコンデロガ級じゃなければ“ムサシ”だと思うよ。向こうで生き残ってる学園生から聞いた話だから間違いないはず……第8次侵攻では確実に“ムサシ”が出る」
「じ、じゃあ…私が見た夢っていうのは…」
智花ちゃんが言おうとしている考えを、僕は裏付けるように告げた。
「智花ちゃんが見ているその夢は、第8次侵攻の全貌だと思う…」
その時、近くのビーチから轟音と悲鳴が聞こえてきた。そのすぐ後にそれぞれのデバイスに緊急の連絡が入る。
〈魔物出現!!近くの学園生と班を編成、迎撃せよ!!〉
僕と智花ちゃんはお互いに顔を見合わせて、すぐに駆け出した。
「あ、智ちゃん!こっちこっち!」
「みちるちゃん!ノエルちゃんも!」
一番近くのビーチに到着すると、少し離れたところに智花ちゃんの友達と思われる女の子たちが合流してくる。その喜びを感じるのも束の間、すぐ近くで魔物とPMCが既に戦闘に入っていた。
「智ちゃん、向こうでメアリーさんが呼んでたよ!わたしたち、同じチームだって!行こう」
「う、うん!JCさん、お話聞いてくれてありがとうございました!」
「…大丈夫だよ、智花ちゃんも、転校生くんも、学園のみんなも…きっと」
「…はい!」
それを皮切りに僕たちは分かれる。僕の思いは伝わっただろうか?
僕は振り返って、残ったもう1人の少女に向き直る。
「お兄さん!お兄さんはこの“スーパーサポーター”ことノエルちゃんと同じチームだよ!よろしくね!」
「…あぁ、お手柔らかにね」
見るからに元気はつらつとしたこのノエルという少女、なんか今までとはまた違うタイプの子だなぁ。
「ほらほら〜、わたし達の担当範囲はここじゃないよ!早くさらちゃんのところに行こう!」
「えっ…のわっ!?」
僕はそのまま天真爛漫なノエルちゃんに半ば強引に引っ張られて別班に合流し、一般市民の避難誘導、波打ち際での魔物迎撃、PMCの援護を作戦終了までそつなくこなして、無事にハワイ演習を終えたのだった。
「はぁ〜…かと言ってサボってばっかりじゃダメだよなぁ」
学園に帰ってきて早々、僕は本来なら授業を受けていなければならないにもかかわらず、芝生の生い茂った木々に寄り添って寝転がっていた。規定の1ヶ月が経ったので僕はリリィからサンフラワーにクラス替えをしたその初日の午後イチで体調不良を理由に早退、そのまま放課後の今に至るというわけだ。もちろん体調不良は仮病ではなく、派手な戦闘をするごとに疑惑から確信に変わっていった。それでも毎回気絶するところからギリギリ意識を保っていられるくらいには丈夫になったと褒めてほしい。
「ん〜…ふあぁっ…眠っちまうわ…」
心地よい風が鼻先を擽るように吹く。自然と瞼が重くなり、少し静かにしていれば自分の寝息さえも聞こえ始めるそんな甘美な瞬間に、奴らがやって来た。
「(…ねぇ、ノエルちゃん!本当にやるの?やっぱりやめようよ…)」
「(大丈夫、大丈夫。このお兄さんは噂ほど怖くないから!それにもしバレても怒るほどじゃない楽しいタイプの落書きだから!)」
カキカキ、キュッキュッ…
「(さらちゃんも、何とか言ってよぉ…)」
「(はぇ〜、ぐっすり寝てますねぇ。ずいぶんとお疲れだったんですかぁ?秋穂ちゃん、これなら起きなさそうですよ〜)」
「(さ、さらちゃん〜!)」
カキカキ、キュッキュッ…
「(うわぁ、もうこんなに…)」
「(秋穂ちゃん、心配いりませんよぅ。これはちゃぁんと水で洗えば落ちるペンなのですぅ!)」バァーン!
「(さ、さらちゃん!)」パァア!
「(…ご、ごめん2人とも。わたし間違って自前の油性ペンで描いちゃってるみたい…)」
『(えぇええ〜っ!!?)』
「あばばばば、あばばば…ど、どうしよう!?」
「こ、こうなったら最後まで行くしかありませんっ!全力ふるすろっとるですよぉ!」
「さ、さらちゃん落ち着いて〜!もう素直に謝ろうよぉ!?」
「秋穂ちゃん…覚悟を決めるときだよ」
「ノエルちゃん!?」
「もうわたしたちは一歩も引けないところまで来ちゃってるんだ。なら、もう走りきるしかないよ!」
「…いや、謝ろうよ!?」
「それにちょっと画風が変わるけど、ほらこことか手直しすれば意外と…」カキカキ
「の、ノエルちゃん…」
「猫さんの要素も足して、許してにゃん♪というオチを…」
「それは誰に対する言い訳!?」
「ワンワン!」バシバシ
「あ!シロー、ダメですよぉ……あれぇ?」
「お、おぉ…これは!」
「うわぁ〜……綺麗…!」
むくりと僕は体をを起こす。何で目の前にまた知らない少女たちがいるのかはこの際置いておこう。僕はノエルちゃんから手渡された手鏡で顔を見るよう合図され、訳もわからず渋々確認する。そして、いろんなことが頭の中に過ぎったけど、おそらく今一番ぴったりなセリフを言おう。
「…ジェ○クルキャ○ツを知っているか?」
CA○S、絶賛公演中!
【散歩部】
部員は仲月 さら、瑠璃川 秋穂、冬樹 ノエル。
JC曰く“小悪魔の申し子予備軍”