グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
常日頃より集団からはぐれて過ごすネクラな少女。魔物に対して異常ともいえる憎悪を燃やしており、通常授業をフケてまで魔法の練習に励む。弱冠13歳でありながら精鋭部隊に所属するだけあって実力は高いが、まだまだ精神的に幼いのも事実。JCとは全く接点がないにもかかわらず、異様な親近感を覚え始めている…。
10月末日、今日も学園は至って平和……いや、一部の人たちは忙しなくしているか。授業を終えて寮に帰ろうとしていたら、偶然廊下で会った夏海ちゃんからその原因とも言える情報を小耳に挟んだ。なんでも“傷の魔物”と呼ばれる恐ろしく強い魔物が発生し、その討伐クエストを転校生くんと精鋭部隊の来栖 焔さんの2人が指名されたらしい。でも、通常のクエストとは違ってかなり危険なクエストらしく、それに対してわざわざ名指しされているってのにも、なんか意図を感じる。それも良くない方の…。
「まぁ、残りの精鋭部隊とその他にも何人か付き添うみたいだから特に心配する必要も無いか……そんなに仲良いって訳じゃないし、来栖さんに関してはそもそも知らないし」
僕の心配は杞憂に終わり、そのまま帰ろうと歩き出したところで、ふとズボンのポケットにしまっていたデバイスから通知音が鳴った。画面を見ると送り主はももちゃんだった。正確にはももちゃんがアルバイトをしているMOMOYAと言う名の購買部からの商品入荷のお知らせだけど。一通りリストを確認して、その中でも一際目を惹くモノがあったので、急遽予定変更。MOMOYAへレッツラゴ〜。
「いらっしゃいませ〜!って、ひゃあ!?せ、先輩じゃないですかぁ!な、なんで急に…」
なんかすごいびっくりされた。別に今までだって意図して避けてたわけじゃないんだけど。でも今日は違うよ!なんてったって一目見たときからずっと探し求めていた“アレ”が遂に入荷したのだ。
「まぁた先輩って呼んで……そんなことよりも!ももちゃんにお願いがある。これ、1つお願いします!」
僕はMOMOYAからのお知らせの画面に赤丸をつけたページを見せる。ももちゃんは最初はなんでかびっくりしてたけど、すぐに店の奥に消えていき、また品物を持って戻ってきた。
「えっと、本当に“これ”でいいんですか?」
「うん!ありがとっ!うわぁ…これが夢にまで見たあの…!」
きっと今の僕はものすごく輝いて見えるだろう。だって待望の“アレ”が今、僕の目の前に…!
そんな感動を噛みしめている僕に、ももちゃんが何処かに不思議そうに尋ねてきた。
「あのぉ、ものすご〜く感激してるところでこんなこと聞くのはどうかと思うんですけど……これって所謂“コーヒー”ですよね?普通の紙パックの」
「…?何変なこと言ってるの。これは真の大人にしか味わえない至高の飲み物だよ。僕も本物を見るのは初めてなんだぁ…!僕より年上なのに知らないんだ?ももちゃんも意外とこどもだなぁ」
「えっ…いや、知らないわけじゃないんですけど。あ、あと私、子どもじゃないです!先輩よりはお、大人ですぅ!」
どういうわけか、ももちゃんが自分の方が大人だと張り合ってきたけど、ぜ〜ったいそんなことないね。だってコーヒーの価値がまるで分かってなかったもん。よって、ももちゃんはお子様。
「んじゃ、早速代金の支払いを…0の桁は4つ?5つ?」
「紙パックのコーヒー1個ですよ!?そんなにしませんよぅ!」
「大丈夫大丈夫、お金ならいくらでも払うから。諭吉さん?諭吉さんが5枚が良い?10枚でも良いよ?」
「だ〜か〜ら〜!?そういう問題じゃないんですってぇ!!もっと安いですから!100円です、ひゃ・く・え・ん!」
僕が相応の代金を支払おうとすると、ももちゃんは目をぐるぐる回してまったく対応してくれない。挙げ句の果てに100円でいいなどとぬかしているではないか。僕にだって物の値打ちくらい理解できるぞ。でも本当に欲しいものには有り金を全部はたけってアイラさんが………あぁ、今は絶交してるんだった。やっぱ訂正。
「本当に100円で良いの?折角この前口座っていうのを作ってもらってから、お金使いたくて堪らんかったのよね。いやね、今までずっとクエストで貯めたお金が使えるん…使える…って、あれ?」
「…?どうかしたんです?」
「…な、無い!?えぇ!うそぉ!?」
僕はついこの間作ってもらった通帳の中身を見て驚愕した。いやだって、お金はちゃんと振り込まれてましたよーって風子さんが言ってたし…言ってたし。
すると、通帳を覗き込んできたももちゃんが、何かに気づいたようだ。
「あれ?これ、昨日の日付でほとんど引き出されてますよ?」
「えっ!な、何だって!?うわ……本当だ。残高が……51円になってる……ほわぁ〜」
「うわぁ〜!!先輩の口から魂出てるぅ!?も、戻ってきて下さ〜い!!」
ももちゃんが必死で僕の両肩を掴んで、前後にぶんぶん揺らして魂が抜けかけている僕の意識を取り戻そうとしている。でもね、無理なのよ。僕の全財産51円じゃ100円のコーヒー1個すら買えんのよ。思えば前回の話で僕が破壊した学園の修繕費がどうとかって風子さんが言ってたような気がするけど……あれ、まさかその分のお金抜き取られてる?通帳渡した時の風子さん、なんかすっごい嬉しそうな含みのある笑顔だったような気がするんな〜…。
「どうします、これ?とりわけ人気商品ってわけでもありませんし、一応取り置きも出来ますけど…」
ももちゃんが気を遣ってくれてなのか、どこか申し訳なさそうに提案してくれる。だけど、そこで甘えていいのだろうか?いつの日か聖奈さんも言ってたじゃないか。
“労働には対価を”
その想いに体が同調した僕に、もはや迷いはなかった。
「…ちょっとクエストこなしてくる!傷の魔物……一攫千金じゃああああ!!」
後日、この時のことを桃世ももは語った。光の速さで走り去ったJCの瞳には間違いなく結城聖奈の魂が宿っていた。だって誰が見てもわかるくらいに目が¥の形になっていたんだ、と。
「…っ!“スカーフェイス”出現。来栖さんと転校生さんが戦闘に入った模様。私もこれより詳細なデータをスキャンし、随時送信します」
学園との通信を終えた私は、すぐさま今回の討伐対象である傷の魔物ことスカーフェイスの全体を解析するため、多少の危険を顧みずにスカーフェイスに迫る。今回の私の目的はスカーフェイスの討伐ではなく、霧の魔物に人間の手が入っているかを確認することだ。もしその確証が得られた場合、それは霧を操ることで人類に仇なす存在ーーーつまりは“テロリスト”がいるということになる。私の任務はその繋がりを明らかにすること。それだけ……のはずなのに。
「…危なっかしい戦い方をするわね。他の精鋭部隊は何をやっているの。あんな魔物、2人だけで倒せるはずないのに………っ!」
気づけば私は氷の魔法でスカーフェイスの背後を攻撃していた。その理由は自分でもよく分からない。私の任務はスカーフェイスを調査するだけで、討伐ではない。なのに、どうして攻撃したの?
私の攻撃に気を取られたスカーフェイスに、今まで防戦一方だった来栖さんが隙をついて炎の魔法で反撃し、体制を立て直すため距離を取る。
幸い、スカーフェイスに私の存在は気づかれずに済んだけど、まだまだ討伐するには圧倒的に戦力が足りてない。残りの精鋭部隊が合流したとしても、恐らく紙一重の戦いになることは予想される。悔しいけど、私たちにそれを覆せるだけの力はまだ無い…。
「○*・<$〆=+>!」
スカーフェイスが咆哮と共に再び立ち直り、来栖さん達と合流した守谷さんと我妻さんと対峙する。私や来栖さんの攻撃を受けてダメージを負っている様子は微塵も感じられない。
「クソッ!!こんなもん全然効かねぇってことかよ!?絶対ェ燃やす!!」
その様子を見て焦りを感じたのか、来栖さんが無謀にもスカーフェイスに向けて高威力の炎をぶつけている。側に転校生さんがいるおかげで魔力の枯渇の心配が無いとはいえ、あれでは先に精神が参ってしまう。我妻さんが障壁を張り、守谷さんが援護しているけどそう長くは持たない。
「一体、どうすれば……「ーーーーー!ーーー!!」っ!」
今、遥か彼方から確かに何かが聞こえた。魔物の声?いや、違う。ちゃんとは聞き取れなかったけど、確かに人の声がした。その声に耳を傾けると、どうやらその声はどんどんこちらに近づいてくるようだ。その声の正体を探している私の目の前で、一瞬視界がブレた。
「%々*÷〒:|<=%$!!!」
魔物が奇声をあげながら、その巨体を大きく吹き飛ばされていく。私がそれを認識したのは、スカーフェイスを吹き飛ばしたあの人の姿を確認したときだった。
お金お金と叫びながら、意気揚々とスカーフェイスを殴り飛ばしたあの変な人を。
「…おいおい、あのトチ狂ってんのは何だ?あいつらが束になっても怯みもしねぇスカーフェイス、嘘みてぇにぶっ飛んでったぞ?」
その様子を見ていた精鋭部隊のメアリー・ウィリアムズが小馬鹿にした笑いを浮かべながら、隣にいる精鋭部隊の部隊長のエレン・アメディックに問いかける。
「あれは……ふっ、面白い。例の学園の秘蔵っ子の実力がどれほどのものか、見せてもらおうか…」
「…あ〜あ、アイツも偉ェのに目ェつけられちまったな。アタイはし〜らねっと……んじゃ、こっちも釘刺しておくか。おーい、来栖」
メアリーがデバイスで来栖 焔に連絡を入れる。その様子は高威力の魔法を連発させていた所為か、やや疲弊しきっていた。
『…ぜぇっ、ぜぇっ…ぐ、チクショウッ…!な、何だよ。あんだけデカい口叩いておいて、アイツに傷一つつけられねぇ…あんなポッと出の奴に先越されて。笑えるだろ?』
焔が自虐めいたことを口にする。が、普段は豪快でかつ厳しく接しているメアリーだが、心の底では1人で仇討ちに向かう焔の身を案じていたのだ。まぁ、そんなことは決して口にはしないだろうが。
「テメー、何バカなこと言ってんだ?まぁ、あのクレイジーマンが出張ってきたのは誤算だったが…それよりも、守谷と我妻がテメーを助けた理由が分かるか?」
『…知るかよ。同じ精鋭部隊ってだけだろ…』
「お前の望みは何だ?」
メアリーの短いその問いに対して、焔は微かな声で、だが確かな意志を持って答えた。
『…アイツに勝ちてぇ…!助けて、くれ…』
焔の告白を受け、背後からそれに応える声が聞こえた。
「…おい、目ぇ開けろよ。ったく、意地張ってねぇで最初からそう言いやがれってんだ」
「全くだ。これより二班に分かれるぞ。守谷・我妻・転校生は来栖の援護、私とメアリーはスカーフェイスの逃亡を阻止しつつ牽制して隙を作る。最前線はJCに任せているが……最終的には来栖が決めろ」
「えっ…」
エレンの指示に焔が唖然とした表情を浮かべていると、横から見ていたメアリーがニマァと良い笑顔で答えた。
「トドメ刺すのはテメーだ。派手にブチかましてやれ。今まで訓練してたんだろ?武田虎千代のホワイトプラズマ」
「なっ…!急に言われても、できるわけ…」
焔がメアリーの提案に驚きを隠せないでいる。ホワイトプラズマ…大量の魔力を放出し、レーザーとして攻撃すること。転校生による魔力譲渡によって、その威力と照射時間が飛躍的に伸びた。が、魔法使いが全員それを使用できるわけではなく、魔力を自在に操る才能が必要なのだが…。
「心配すんな。仕留めきれなかったら、そん時はアタイがきっちり殺してやる。気の済むまでかましてやれっ!」
メアリーに発破をかけられた焔は決意を固め、転校生に向き直し告げた。
「…転校生、アンタの力を貸してくれ!」
焔の願いを受け入れた転校生が首を縦に振ったのを確認したエレンが、その場で号令をかける。
「よし、それでは…作戦開始!!」
「お・か・ね♪お・か・ね♪クエストこなしてがっぽがっぽ!」
僕はスカーフェイスと呼ばれる魔物を見つけるやいなや、すぐさま殴りかかった。初弾で吹き飛ばせた勢いで、スカーフェイスの体躯にリズムよく拳を打ち込んでいく。しかし、流石に強化無しの攻撃では決定打とまではいかず、もどかしく感じていた。
「ハッ!フッ!…ぃよっと!へへっ、これ気持ち良い?」
スカーフェイスの突進を身を翻して躱し、その間合いの中で胴体に回し蹴りを炸裂させて挑発してみる。
「☀︎♯○$€%°>^〜:!?」
するとスカーフェイスは言葉にならない声をあげて他の魔法使いの攻撃に目をくれず全力で突進してきた。僕はそれを真正面から対峙して、そして受け止め切れずに放り投げられ、付近の木々を薙ぎ倒していきながらようやく何本目かのところで、誰かに抱きとめられた。
「いつっ……あれ?君は、ノエルちゃん…?」
うん、最初はすごいそう思った。でもよく見たら、髪結んでないし、何より視線が怖い。ノエルちゃんって言った瞬間からすごい怖くなった。ぶるぶる。
「はぁ…私は冬樹イヴです。ノエルは双子の妹ですよ…ところで貴方はJCさん、で合ってますか?」
見るからに溜息を吐いた彼女は、どうやらノエルちゃんと双子の姉妹のお姉さんの方のイヴちゃんらしい。
「あぁ…うん、受け止めてくれてありがと。えっと、イヴちゃん、でいいのかな?あの、この手錠の意味は…?」
なんか気づかないうちに僕の左手とイヴちゃんの腰の部分が手錠で繋がっていた。えっ、早業すぎて全然反応できなかったんだけど。
「学園から連絡がありました。貴方、正式にクエストを受けずに討伐に参加しましたね?クエストの受注は2人以上が原則ですので、これはれっきとした校則違反です。風紀委員として見過ごすわけにはいきません……と、言いたいところですが」
一旦そこで言葉を止めたイヴちゃんは、鎖の部分に手を添える。すると、僕の左手とイヴちゃんを繋いでいた手錠がスゥ〜っと消えていった。
「今は緊急を要する事態なので10分だけ外します。それまでに精鋭部隊と協力して、スカーフェイスの討伐を支援してください。そうすれば今回の違反を不問に処す…というのが委員長からの伝言です」
僕は自由を取り戻した左手の感覚を確認しながら、相変わらず僕を追い詰めることに余念がない風子さんの嫌〜な笑顔を思い浮かべて苦笑する。
「10分か…結構厳しそうだね。んじゃ、最初から本気で行かなきゃだ……フンッ」
僕が戦う決意を固めると、僕の目がぽぅっと赫い光が灯る。ついこの間から僕の身に起こり始めた現象で、この状態だと攻撃する度に力が増す体質を発現させることが出来る。以前明鈴ちゃんと試合した時に感じたアレだ。
「…話には聞いていましたが、不思議ですね。身体強化の魔法とも違うようですし、既存のどの命令式とも当てはまらない現象…」
イヴちゃんが何か独り言を呟いていたけど、なにしろ自由時間が10分しかない。スカーフェイスから受けた傷も痛みも回復してきたのを確認し、再びスカーフェイスを視認すると、跳躍を利用し死角であるスカーフェイスの頭上から急降下キックを炸裂させる。
「#$€%♪○÷×<*:〒!!」
衝突の勢いを殺し切れずにスカーフェイスは咆哮をあげながら頭から地面にめり込む。が、すぐに起き上がり付近を手当たり次第に攻撃し始める。
「…ぐっ、あれだけ暴れられると手のつけようがない…ん、あれは…!」
真正面で力任せに暴れていたスカーフェイスだったが、突如、背後からの攻撃によって地に伏せる。
その強襲した人物を確認すると、以前見たことのある精鋭部隊を指揮する外人さん達が立っていた。
「私達が援護する!JC!貴様は隙を見て奴の懐に入れ!メアリー!」
「分かってラァ!地獄まで案内してやるゼェ!!Fire!」
精鋭部隊の実力者と思われる2人は、綿密かつ大胆な連携射撃を浴びせ、スカーフェイスを翻弄して動きを止める。その動きに合わせて、僕も一瞬の隙を突いて無防備な状態のスカーフェイスの身体に強烈な回し蹴りを炸裂させる。
「&/#☆♪€$%♪#<×○!?」
攻撃力が増倍した僕の蹴りをまともに受けたスカーフェイスは、轟音を立てて周囲の木々を何本も倒しながら吹き飛んでいく。相変わらず自分でも驚くほどの威力の振り幅と順応力だ。
「Foo〜!あのクレイジーマン、イカしてやがるゼェ!!」
煌々と目を輝かせて興奮気味のメアリーさん、その様子に呆れた様子で注意するエレンさん。
「メアリー、あまりはしゃぐな。来栖の魔力供給が完了したと守谷から連絡があった。ホワイトプラズマが来る」
「…あいよ。お〜い!クレイジーマン!さっさと逃げねぇと“オダブツ”になっちまうぞ〜」
そう言い残して即座に射線から離脱していく2人。えっ、なに?なんか来るの?
「…えっ、のわっ!?」
「…っ!何しているんですか!?来栖さんのホワイトプラズマに巻き込まれますよ!」
訳もわからず戸惑っていると、いつのまにか近くに降りてきていたイヴちゃんに首根っこ掴まれて、付近の高台まで引っ張り上げられる。ぐえっ。
「…うぅ、く、苦しっ…」
「…っ!来ます!」
イヴちゃんが言い終えるのとほぼ同時に、ついさっきまで僕とスカーフェイスが居た同一直線上に凄まじい威力の魔力の砲撃によって、そこにあった物質全てが焼き払われていた。
「うっは〜…すっごい破壊力だ…あれだけ手こずってたスカーフェイスが一瞬で消し炭に…って、あ、あれ?」
スカーフェイスを襲った来栖さんのホワイトプラズマの威力に感心していると、またもや知らん間に手錠が。しかも両手を後ろで拘束されて。
「戦闘は終了しました。よって再び貴方を拘束します。幸い、無事にデータも取り終えましたので、これで貴方を委員長の所に送り届ければ私の評価も上がると……きっちり反省して私の内申点に貢献して下さいね」
「で、でもこの後予定があって…それに魔物倒したからちゃんと報酬は出るんだよね!?」
「…はい?そんなの出るわけないじゃありませんか。今回の貴方のクエスト参加は正式に認可を受けていません。学園に戻っても貴方に待ってるのは報酬ではなく、委員長のお叱りです」
無慈悲にもそう冷たく言い放って、僕の制服の襟を掴みながらずるずると抵抗できない僕を引きずっていく。
「えぇ!?そ、そんなぁ〜…!!」
そんなこんなで、今回の傷の魔物“スカーフェイス”討伐完了。精鋭部隊と違反者1名の活躍により、1人の少女の復讐が終局を迎えたのだった。
【コーヒーのその後】
「はぁ〜…結局あれから3時間も絞られたぁ…。もうこの時間じゃ購買部も閉まってるだろうな…」
「あれ、先輩?」
「…んっ、ももちゃんか。もう今日の営業はお終いなの?」
「はい、あとはもう片付けだけで…それよりも結局あれからお店に戻って来ませんでしたよね?」
「あー、まぁ結局のところ、報酬は無しで違反の罰として1週間風紀委員の活動を手伝う羽目になったよ…」
「あちゃ〜…それはまた厳しそうですね…」
「ん〜…ま、しょうがないよね。今度はちゃんとクエスト受けて、その時にまた買いに来るよ」
「…あの、実は売れ残りが幾つかあるんですけど、もしよければ貰っていきます?」
「…へ?いいの?だって僕、お金持ってないけど」
「いいんですっ!どうせ私が持ち帰っても全部は処理できませんし、それに先輩には色々お世話になってますから…」
「…はて?ももちゃんに何か貸しを作った覚えは無いんだけど…例えば?」
「えぇ!?それは、例えば…ほら、私の誕生日に裏で色々計画してくれたりだとか、会った時にちゃんと挨拶してくれるとか……と、兎に角!そういうことですから、貰って下さいっ!」
「そ、そんな強気で言わなくても…まぁ、くれるんなら有り難く貰っておこうかな。サンキューね、ももちゃん」
「…あっ、い、いきなりそういう顔するのはズルいですよぅ…///」
「…?変なの。というか、ももちゃんは僕にこんなことしてる場合じゃないでしょ。そういうのは転校生くんにしてあげなきゃ。じゃないと、転校生くんに彼女出来ちゃうよ?」
「なっ!なんでいきなり先輩が出てくるんですか!?もぉ〜!そういうのが乙女心を分かってないって言うんですよぉ!」
最終的になんかメッチャ怒られた。