グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い 作:自由の魔弾
5年連続生徒会長という快挙を成し遂げた前代未聞のカリスマ。在学生の中で総合的な戦闘力がトップであり、非常識なまでに強い。知名度は世界クラス。一癖も二癖もある学園をまとめ上げる人望もさることながら、自ら前線に赴くバトルマニアの面も併せ持つ。当分の間、JCの世話係になることを口実に部屋に居座らせようとしていて薫子と聖奈をやきもきさせているが、それにはある目的が…?
「とらのおねーさん。ぼく、じゅぎょーうけられないの?」
「ん?薫子、そうなのか?」
開口一番にその疑問を呈しているのはもちろんJCである。その理由は前回説明した通り、現在のJCの状態を考慮した結果であることを薫子が改めて説明する。
「えぇ、と言っても学園内での生活に慣れるまでの間だけです。例外的に参加して頂くことが無いとも言えませんが、基本的は生徒会室での自習をするように…と言うのが宍戸結希の見解です」
薫子はそう言いながら事前に持参していた小学生が対象の漢字や計算のドリルをいくつか机の上に広げる。虎千代が過去に同じようなものをやって苦労した経験を思い出しながら面白がっている一方で、JCも特に疑うこともないまま早速その中のドリルを1つ手にして取り組み始めた。
(…意外と素直?)
その様子を見ていた薫子と聖奈は侵攻後、宍戸結希によって報告されたJC発見地点の調査結果を思い出して、現状と見比べていた。
〜回想〜
《第7次侵攻で小鯛山から霧の魔物が発生していたわけだけど、その中でも彼が発見されたと思われる場所は魔物の進行ルートの丁度真ん中の地点の地下施設。国連の事前調査によると地表にタイコンデロガによって開けられたと思われる大穴が開いていたそうよ。じゃなかったら、多分一生気づかなかったでしょうね》
「地下施設?それは一体…」
《その地下施設を調べた調査隊によると、施設自体は地下20m程の所に造られていて、全体に防音・耐衝撃加工が施されていた。そして、中を調べていくと研究員と思しき人間の死体が複数人確認出来たそうよ。同時に数人の魔法使いと思われる人間の死体も》
「魔法使いの死体だと…!?」
《国連軍が身元を確認したところ、どういう訳か政府に覚醒した事を確認されていない者ばかりだった。恐らくその施設で魔法使いに対する何かしらの実験をしていたのか…或いは別の意図があったのか。それを唯一の生存者である彼を調べるために科研が強引に引き取ろうとしていたのを政府が阻止するために、このグリモアに白羽の矢が立ったというわけよ。元科研の私が言うのもどうかと思うけど、あそこは人権を無視してでも結果を得る為に手段を選ばない人間が多いから》
「成る程…確かにグリモアに所属していれば、外部から非人道的な扱いを受ける心配はありませんものね…」
《入院先の病院から事前に行った精密検査の結果から分かる通り、彼はある種のトラウマのようなものを抱えているわ。“PTSD”と言う方が的確かもしれないわね。私の専門分野ではないから詳しくは知らないけど、その結果として防衛機制が働き幼児退行という形で生命を維持したのね》
「治療法は無いのか?」
《調べたところ、催眠状態にして過去に何が起こったか原因を探るのが一般的だけど…今回の場合はあまり望ましいとは思わないわ。こういう実験をされた人間が過去に幸せだった試しがないもの。それよりも新たに人格を形成する方が、言い方は悪いかもしれないけど魔法使いとしては大成すると思うわ》
「そうですか…。それでまずは生徒会で彼を受け持つと?」
《将来的には普通の学園生として過ごせるまでに成長してもらうつもりだけど、それにはまず見本となる人間が必要。一般的には6〜12歳頃は周りの大人の影響を受けやすい時期だから指針になる生徒会に任せるのが一番だと考えたわ。しばらく様子を見て問題ないと判断したら、他の生徒に引き合わせてもいいんじゃないかしら?》
「…分かりました。ではそのよう準備します」
「今から頭痛がしてきた…」
〜回想終了〜
「とらのおねーさん、ここはどうやればいいの?」
「ん、筆算か。これは上の数字と下の数字を足して10を超えたら隣に繰り上げてだな…」
まるで姉と弟のような光景に微笑ましく感じた薫子と聖奈は互いに視線を交わし、暫くは見守っていこうと判断した。
そんな彼女らの傍らで、虎千代は咄嗟に何かを思いついたかのように提案する。
「あ、そうだ。JCは暫くアタシの部屋で寝泊まりするからな」
『……ハイ!?』
彼女たちの波乱の育児生活はまだまだ始まったばかりである。
【
生徒会会計。金の管理ならとにかく彼女に任せておけば安心。【労働には対価、与えられた仕事は完璧に】がモットーで、仕事ができない人に対して恐ろしく冷たい。彼女とまともに話したかったら、どんな些細な仕事でもいい、きちんとこなしてからにしよう。宍戸結希の提案で薫子と共にJCの管理・監視を渋々了承している。