グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い   作:自由の魔弾

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【はぴば、アイラちゃん】

「アイラちゃん、お誕生日おめでと〜」

「おめでとうございます〜!」

「おめでとうございます……今日の佳き日を主に感謝致します」

「ちょ!お前、早々に唱えるな!妾は吸血鬼、神的なものには弱いんじゃ!」

「あ、あはは……それでケーキの他にもプレゼントを用意しました!調理部の方に手伝ってもらいながら作ったドーナツです!ほら美味しそうでしょう?」

「ケーキにドーナツって……妾は無類の甘党か!こんなの1人で食ったら糖尿病になるわい!」

「では、次は私から……こちら、プレゼントの聖書でございます。初めは朝・昼・夜と毎日決まった時間に少しずつ読み進めて、主の教えを理解することをお薦めします。慣れてきましたら、自らが理解した教えを他の方にも是非広めて頂いて…」

「…おい、こいつは妾を殺す気か?あやせ〜!もう頼れるのはお主しかおらん!何か妾がウハウハになるプレゼントを〜!」

「あらあら〜、じゃあこれはどうかしら?この前漸く手に入った良いお茶があるのよ〜。何でも腸内環境を整えてくれて美肌効果もあるらしいの〜。はい、これ飲んでみて?」

「何と!頂くぞ……んぐっ、んぐっ……んんっ!?ぶはぁ〜っ!?な、何じゃこれ!?苦過ぎるぞ、あやせ…」

「あら〜?確かセレブ御用達のって……あっ、ごめんなさい。これ、センブリ茶って書いてあるわ〜?見間違えちゃったのね……てへっ♪」

「てへっ♪ではない!もぉ〜、お主らと来たら芸人みたいなボケばっかりかましおって。お主ら、本当に妾が欲しがってるものが分からんのか?しゃーない、ヒントを出そう。まず形は棒状のものだ、それに大きさっちゅーか長さは多分…15〜20cmくらいかもしくはそれ以上かもしれぬ。そして、女子ならみんな大好きなアレじゃ。これで分かるじゃろ………おいおい、マジかお主ら。カマトトぶってるのか?女子だからそういうの口に出来ぬ〜とかじゃろ?はい、時間切れじゃ〜。正解はチ○コじゃよ、それも誰でも良い訳じゃないぞ?JCのチ○コじゃなきゃ駄目じゃ」

『……っ!?』

「あれ、思いのほかのリアクション……チ○コって言って分かるか?チ○ポでもおチ○コでもお○ん○んでも好きに呼ぶといいぞ。男の股に付いとるブラブラぶら下がっとるアレじゃよ。寒いと縮む奴、興奮するとデッカくなる奴じゃ。男と女がS○Xする時に挿れる奴」

「も、もう言わないで下さいよぉ〜!!何回も言わなくても分かりますからぁ///」

「ア、アイラちゃんってば過激ねぇ〜……ちょっとびっくりしちゃったわぁ…///」

「…あ、あまり直接的な表現は、やめてくださいまし……はしたないです///」

「何じゃ何じゃ、揃いも揃って赤くなりおってからに……あっ、さてはお主ら“JCの裸体を想像して感じたな”?はっはっは〜!性欲旺盛なのはなのは元気な証拠じゃ!」

「なっ…!?しょ、しょんなわけあるはず無いじゃないですか〜!!JCくんとはただのお友達で、そういうことをしたいわけでは…」

「そ、そうよ〜。それにいきなり男女の仲に発展することってあんまり無いわよ〜?」

「………」←無心で祈りのポーズをとっている。

「ほ〜ん……じゃあ、妾がここにJCを連れてきて今すぐおっ始めても構わん訳じゃな?お主らは発情することなくその様子を見ていられると……うしっ、試してみるか。JC呼んでくるから、お主らそこで待っとれよ」

『だ、駄目〜っ!?』

この後、風紀委員にめっちゃ怒られた。


第四拾六話 順応せよ 魔法使い

「…よし、これで全員揃ったな。じゃあ、そろそろ話を始めるぞ」

 

裏世界探索から既に2週間が経過しようとしている今日この頃、生徒会室に僕を含むとあるメンバーが集められた。武田 虎千代、生天目 つかさ、雪白 ましろ…そしてこの僕、遊佐 鳴子だ………んっ?おかしいな、どういう訳か1人足りない気がするんだが…。

 

「既に知っているかもしれないが、アタシ達は3月末で学園生じゃなくなる可能性が非常に高い。時間停止の魔法を発動しているとされる南が魔法そのものに亀裂の様なものが入ったと感じているからな……今年中に第8次侵攻が起こることを考慮した結果、アタシ達が学園に残ることが決定したと先程水無月から報告を受けた」

 

その意見には僕も同意せざるを得ない。現在、グリモアの戦力はかつて類を見ないほどの強さを実感しているだろう。個々の学園生の実力は勿論、無尽蔵に近い魔力量とそれを譲渡出来る転校生くんと裏世界に壊滅的な被害を齎したスレイヤーと同等の力を持つとされるJCくん。正直、何をするにしてもこの2人がいるといないじゃ大違いだろうね……だからこそ頼りきっている現状が一番危険なのかもしれないのだけれども。

 

「裏世界では第8次侵攻中にムサシが現れ、風飛市と学園に壊滅的被害を齎した。お前たちにもやりたいことはあるだろうが、この学園を守るためにどうか1年だけ時間を貰えないだろうか?」

 

そう言って僕たちに深々と頭を下げる生徒会長。そんなことをしなくても彼女の一声で僕たちを自由に動かすことは容易いはずなのに、そこは律儀というか愚直というか……そんな中で先に口を開いたのは隣に座っていた雪白くんだった。

 

「…私は、北海道の復興に行きたいのです。かねてからの希望でしたから。ですが…」

 

そこで一旦、言葉を止める雪白くん。当然、その要望は彼女の故郷である北海道を解放した時から誰もが知っている。何か後ろめたいことでもあるのだろうかと変に勘繰ってしまったが、実際は全くその予想を超えた回答を貰うことになる。

 

「もう軍への入隊の手続きはキャンセルしてしまいましたから、第8次侵攻を乗り切らなければ復興も何もありませんものね。この学園を守りたいと思う気持ちは同じです……私も学園に残って戦います」

 

その思いを込めた強い眼差しでこちらをじっと見つめる雪白くん。どうやら迷いは無いようだね……僕?当然学園に残らせてもらうと伝えてあるよ。まだまだやり残したことが沢山あるからねぇ。夏海の育成然りJCくんの謎解明然り。さて、後は生天目くんの返答だけか……学園生の中でも一番思考パターンが理解出来ない彼女はどうするだろうか?

 

「ありがとう……つかさ、お前はどうだ?ずっと南半球に行きたがっていただろう」

 

「…私は何処に行こうが魔物を倒すことは変わらん。それに貴様に断る必要は無いはずだろう……だが」

 

生天目くんに返答を求めると、彼女は相変わらず魔物を殲滅することにのみ執着している旨を示した。変わらないなぁ……んっ、まだ続きがあるみたいだね。

 

「ここにムサシが現れるとなれば話は別だ。それに、JCがスレイヤーとして覚醒した時に貴様では余計な感情に惑わされて満足に戦えそうもないようだからな……私が引導を渡してやろう」

 

「つかさ…」

 

彼女の考えはよく分からないけど、とりあえず残ってくれるって解釈で良いんだよね?ということは、この場にいる全員が同じことを考えていたということになる……なら、わざわざ集まって話す必要なんか無かったかもしれないかな。

 

「それより……奴のことをこれ以上隠しておくのは限界だと思うぞ。周りが考えているほど、奴の存在は矮小なものでは無いだろうからな」

 

それだけを言い残して、生天目くんは退室してしまった。そうだ、僕も聞いておかなければいけないことがあったんだ。

 

「今の生天目くんの言葉で思い出したのだけれど……年明け以降、裏世界探索から帰ってきているはずのJCくんの姿が一向に見えない。彼は今何処にいるんだい?」

 

僕の質問に対して、一瞬だけ身を凍らせる生徒会長。やはり知っているんだな……まぁ、一緒に行ってたんだから当然か。

 

「…隠していたのは申し訳ないと思っている。しかし、JCの容態が安定するまでは誰にも話すべきではないと判断したのだ。だが、つかさの言う通り、このまま黙っていても事態が好転するはずもないか……JCは裏世界で体内に霧を取り込んだ直後、意識不明の重体となってしまった。いや、JCだけでは無い……同じく霧を取り込んでいた裏世界のアタシとつかさも含めて学園の地下“魔法使いの村”にて治療を行なっている」

 

「霧を取り込む…!?そんなことをすれば魔物化が…!」

 

雪白くんは魔物化について動揺しているが、僕にはそれ以上に危惧していることがあった。以前、秋穂くんの体内に霧が入り込んでしまったことを春乃くんから打ち明けられて以来、その対策方法として全血入れ替えや時間停止の魔法をかけるというやり方があることを知った。しかし、血の入れ替えは膨大な費用と体質に合った血液が必要でまだ彼の全容を明らかにしていない上に、裏世界の研究施設で見つけたあの実験データのことが頭にチラつく。恐らく普通の血じゃ駄目だ、先に彼が何の実験をされて何を投与されたのかを突き止めて除去しなければ、きっと同じことの繰り返しになる。そして、時間停止の魔法は恐らく……JCくんには発動しない。これは彼の魔法に対する高い抗体もあるが、それを唯一突破するのは“本人が望んだ時のみ”なのだろう。現にTESTAMENT(テスタメント)の封印を突破したのも制御不能の魔法を自分に引き寄せたのも始祖十家の魔法すら耐えられたのも、彼がそう望んだからと考えれば自然と納得がいく。つまり、僕たちがJCくんに出来る治療方法は……0ということになるだろう。C M L(カウンターミスティックラボ)でも同化した霧の対処法が見つかっていない以上、JCくんに残された選択肢は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は、何をやっているのだろう。虎千代が……会長が命を賭してまでゲートを封印しようとしたにも関わらず、私は会長の容態を見誤った。その結果、生天目つかさとこちら側では味方のスレイヤーまで霧に侵されてしまうなど正に愚の骨頂だ……しかし、まさか私たちしか知り得ない命令式に介入してくるなど予測できるはずもないだろう…」

 

私、結城 聖奈はゲート封印後に過去の学園生の世界に向かい、霧に侵された会長、生天目 つかさ、そしてJCなる生徒の治療を行なっていた。当然霧に侵された身体を完治させる技術は持ち合わせておらず、かと言って人口の集中した病院などに搬送しようものならいつ魔物化が起きても不思議ではない状態の3人を放っておくことなど出来ず、こちらのグリモアと協議した結果……学園地下の魔法使いの村で3人の様子を看ることになった。初めは仲月がこちらに来ることを強く望んでいたが、まだ意識があった会長から残りのメンバーを集めてこちらに来るよう指示を受けて、代わりに私が選ばれた。私が選ばれた理由は以前、会長のお世話をしてきた経験があったからに過ぎず、障壁の魔法や回復魔法を使えるわけでもない。いざとなれば戦うことしか出来ない自分の無能さを呪いたくなる。

そんなことを考えていると、背後から不意に声をかけられる。

 

「どうじゃ、容態は快方に向かっておるか?」

 

「お前は…東雲 アイラか!今まで何処に……いや、すまない。こちら側の東雲だったか」

 

「ほっほっほ〜、別に気にしとらんわ。どの世界線でもアイラちゃんはぷりちぃじゃからなぁ……って、黙っとらんでツッコまんかい」

 

「むっ、すまない。私の知る東雲のイメージと随分かけ離れていてな…」

 

「そりゃこっちのセリフじゃわい。そんな破廉恥な格好で彷徨きおって……横からたわわな胸が丸見えじゃぞ?」

 

「…っ!?」

 

東雲が下卑た笑みを浮かべて、私の身体全体を舐める様に見回す。今まで気にしていなかったが改めて自分の姿を認識させられると、私は何て格好を……これではまるで痴女ではないか!?

私が羞恥に顔を歪めていると、東雲が軽く咳払いをして話題を変えてきた。それはこれから考えろということか……いいだろう。

 

「それよりも3人の状態じゃ。揃いも揃って実力者ばかりこうも霧に侵されるとは……世の中は本当不公平じゃわい。妾が今日来たのは忙しくしとる朱鷺坂の代わりに障壁の魔法をかけに来たのじゃが……ほほぉ〜、これが裏の虎千代と生天目か。こっちとは似ても似つかなんだわ」

 

「2人はついさっき寝付いたばかりなんだ。なるべく起こさないように頼むぞ。それで、この男子生徒に関してなのだが…」

 

2人とは違ってまるで対処法が無く今も苦しそうに呻き声をあげているJCという生徒。この男子生徒には回復魔法も障壁の魔法も効果は無く、挙句には時間停止という禁じ手の様な魔法すら効かないのが現状だ。しかし、すぐに魔物化する様な事態には陥っておらず、それはこのJCという人間の実力が如何に高いことを意味しているか側で見ているだけで痛感させられる。気合いだけで体内に入った霧を封じ込めているのだからな、並の人間には真似出来ない芸当だ。

 

「のぉ、JC……お主は何で霧なんぞ取り込んでしまったのじゃ。霧は痛いし苦しいし身体に毒なんじゃ。お主には障壁の魔法はおろか時間停止の魔法すら効かんのじゃぞ。おーい、聞いとるんかぁ?返事せんかーい…」

 

東雲がJCの横たわったベッドの側に寄り添って、その頬にそっと手を添えながら語りかける。その声色は先程までの快活さは無く、何処か弱々しさすら感じる。もしかして、東雲にとって特別な感情を持つ男なのだろうか?

 

「……結城、時間を取ってすまなんだ。うしっ、そろそろ此奴らに障壁の魔法をかけるとするかの。どこまで効力があるかは本人次第じゃが、此奴らの実力なら心配いらんじゃろ。もう暫くしたら保健委員が交代に来るじゃろうから、その間に結城も療養せい……お主にも少なからず霧が入り込んでおるのじゃろ?」

 

「…知っていたのか?いや、こちらの私が報告したのか……悪いが、そうさせてもらう。私はこの者達とは違って一般的な実力しか持ち合わせていないからな」

 

私は東雲に断りを入れて身体を休める為に備え付けのベッドに横になる。流石にずっと看病を続けるのは疲れた……尤もこの人達の苦しみに比べれば大したことはないかもしれないが。我儘を言わせてもらえるなら、少しだけ休ませていただきます……会長たちはこのJCという魔法使いを信じていることは知っているが、私やパルチザンが抱いていたスレイヤーのイメージとあまりにもかけ離れ過ぎているのだ。今までの全ての疑問に決着をつける為、この男子生徒がどういう人間なのか見定めさせて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月29日、他の誰かにとってはいつもと何ら変わらない日だと言うでしょう。ですが、私にとっては年に一度の特別な誕生日なんです。なので例年通り風紀委員の皆さんや転校生さんにお祝いしてもらえてすごく嬉しかったです。嬉しかったのですが……心が満たされない感覚を覚えるのは何故なのでしょう?

そう考えた時、ふとあの人の顔が思い浮かびました。えっ、誰かですって?それは、その……JCさんです。特に深い意味はありません!無いはずなんです……いえ、ここで嘘をつくのはやめましょう。でも本当に明確な理由は思い浮かばないのです。なので、これはもう本人に聞いて確かめてみましょう。

 

「委員長、折り入ってお願いがあるのですが…」

 

「おっ、何ですか?今日はアンタさんの誕生日です、どんなお願いでも叶えてあげますよー」

 

そう言って、優雅にお茶を啜る委員長。ならば、遠慮なくお願いしてみましょう。

 

「あの……JCさんに会わせて貰いたいのです!」

 

「ぶほぉ!?けほっ、かほっ…!ひ、氷川……どーしたんですか急に。さては逢瀬ですか?いやー、遂に氷川にも春が」

 

「茶化さないで下さい!私は真剣にお願いしているんですからっ。年明けからもう1ヶ月ですよ?JCさんが学園に姿を現さなくなったのは。絶対何かあったに決まってるじゃないですか!彼は寮の自室にも帰っていないと聞きますし、かと言って周りが騒いでいないことを考えると……彼はこの学園の何処かにいる、でも何らかの理由で接触を許されていないということになります」

 

飲んでいたお茶を盛大に吹き出してしまった委員長。話を逸らそうとして茶化してくるのもやっぱり何か知ってるからなんですね?

 

「それで、どーしてウチに頼むんです?ウチが知ってるとも限らんでしょ」

 

「分かりますよ。以前、JCさんが学園からいなくなった時の委員長の様子を近くで見てきたのですから。何を言っても基本的には上の空、チェスの相手をしてる時も自分から率先して不利な手を講じるなど思考が止まっていました。あれはまるで中毒者の禁断症状みたいでしたね」

 

「……それ、マジですか?」

 

「えぇ、大マジです」

 

私に言及されて珍しく目を泳がせる委員長。ふふん、ちょっとだけ優越感です♪

 

「うわぁ……自分では上手く隠せてるつもりだったんですけどねー。しゃーなしですね、じゃあこの時間に学園地下の魔法使いの村に行って下せー。ウチから話は通しておきますが、絶対にこの時間だけにして下せー。本来なら一般生徒の面会は許可されてねーですから、見つけ次第パクらなきゃいかんもんで……今日だけ特別ですよ?」

 

そう言って、委員長は一枚の紙切れに走り書きした物を手渡してきました。何やら時間が書いてありますね……これは放課後ですか。

ということが昼間にあって、現在は閉校時間ギリギリの魔法使いの村です。こんな所にJCさんがいるのでしょうか…?

 

「……あれ、桃世さん?」

 

すると、視線の先にある居住施設の前に桃世さんが居ました。こちらに気づいた桃世さんは咄嗟に手に持っていた何かを背後に隠しました。怪しいですね…?

 

「ひゃい!?ひ、氷川さん?どうして此処に…」

 

「それはこちらの台詞です。もうすぐ閉校時間だというのに、此処で何をしているのですか?」

 

見るからにおどおどした様子で私の方を見る桃世さん。場合によっては取り締まりますよ!

 

「あの、えっと……その、こんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないんですけどぉ………先輩に、会いに来ましたっ!」

 

「…はい?」

 

勇気を振り絞る様に叫ぶ桃世さん。先輩?桃世さんより学年が高くてそこまで気にかける様な人が此処にいましたっけ?

 

「あのっ、別に変な意味じゃないんです!先輩が裏世界に行ってから、全然姿が見えないのでずっと心配してたんですぅ……そしたら生徒会長さんから、今日の閉校時間ギリギリくらいに魔法使いの村に行けば会えるって教えてもらって…」

 

「それは……私と同じじゃないですか」

 

「へっ…?な、何ですか?」

 

「いえ、何でもありませんっ。それよりそんな所で立ち尽くしていても仕方ありません。あまり時間は取れませんが、少しでも話が出来れば気も晴れるでしょう」

 

危うく桃世さんに本心を聞かれそうになってしまいましたが、何とか誤魔化せましたね。それにしても桃世さんにそんな相手がいたとは知りませんでした。機会があれば是非ご紹介して頂きたいですね。

 

「はい……あっ、先輩?先輩っ!」

 

居住施設内に入ると何かを見つけた桃世さんが一目散に走り出しました。その先のベッドに横たわっていたのは、どういう訳か苦悶の表情を浮かべて荒い呼吸をしているJCさんでした。

 

「これは、一体……うっ!な、何これ……!?」

 

その光景を目にした瞬間、私の頭の中に突然奇妙なイメージが入り込んできました。な、何ですかこれは……学園、魔物の襲撃に遭っているようですね。それに……満身創痍のJCさんを抱き抱える私!?こんなの記憶にありませんよ!?でも、このイメージの中の私……泣いてる。泣きながら微動だにしないJCさんに話しかけているんです。もう息を引き取ったかの様に動かないJCさんの姿は妙にリアルで……まるで本当に起こった出来事の様にすら思えます。

 

「先輩……また危ないことをしたんですね。あたし、先輩の苦しそうな姿……もう見ていられません…うぅ…」

 

桃世さんは今も苦しそうに呻いているJCさんの手を取り、両手で包み込む様にしてその思いの丈を露わにします。桃世さんの言っていた先輩というのはJCさんのことだったのですね……何故か桃世さんがJCさんの手を握っていることに対して胸がモヤモヤします。普段なら風紀を乱している!なんて咎めるはずなのにどうしてもそんな気は起こらず、逆にズルいなんて……JCさんがこんなに苦しんでいるというのに、私は何の支えにもなれないのでしょうか…。

 

「……誰かと思えば、こちらの学園生か?」

 

「まぁ…!虎千代さん、邪魔しちゃ駄目ですよ。折角の良い雰囲気が私たちの所為で台無しになってしまいます」

 

物陰から何やら誰かが内緒話をしているみたいですね。勿論、邪魔されても困るので取り締まりますよ?

 

「こら〜っ!!あなた達、そこで何をしているのですかっ!」

 

「ぴゃっ!?」

 

突然の私の叫び声に驚く桃世さん。しかし、当の本人達にはどうってこと無く、寧ろ面白がりながらその姿を見せました。

 

「いや〜、邪魔して悪かったな。どうもアタシはそういうのに疎くてな…」

 

「もぉ……あっ、私はちゃんと分かっていますよ?私たちに構わず、続きの方をどうぞ」

 

どういうわけか妙にノリノリの大人2人がせっついてきます。というかこの2人って……あっ、また誰か来ましたね。

 

「虎千代、生天目……ベッドに居ないと思ったらこんな所に居たのですね。2人とも、勝手に抜け出しては駄目じゃないですか」

 

「聖奈!?い、いや〜、偶には身体を動かしておかないと鈍ってしまうと思ってな……だよな、つかさ?」

 

「いいえ、私はちゃんと止めましたよ。それでも“アタシのJCに近くに女の気配がする”と虎千代さんが起きしなに申し上げるから…」

 

「あっ!つかさ、裏切るつもりか!?お前だって“あの方に触れていいのは私だけですわ〜”とか言ってただろう!」

 

「なっ!?そ、そんなことありましぇん……んんっ、ありませんわ!な、何を寝ぼけたことを仰っているのか全く理解出来ません!」

 

「な、何を〜!」

 

「何ですか〜!」

 

2人の背後に虎と龍が見えます!でも、当の本人達は何故か三頭身くらいにデフォルメされてやけに可愛く見えますね……あっ、ポカポカ叩き合ってます!

 

「2人とも、すまん。あぁなったら気の済むまで放っておくのが一番だ。それより、お前達のことか……このJCという男のことが気になって気になって仕方がないという生徒は?」

 

「…なっ!?何を言っているんですか!私はあくまでも風紀委員として、同じグリモアの生徒として彼の心配をしているというだけで別にやましいことなど……桃世さんもそうですよね!?」

 

大人の結城さんの言葉に思わず焦ってしまいましたが、しっかりと訂正出来ました。でも、自分でそう言っている内に心の何処かで本当は風紀委員とか同じ生徒だからとか関係なく、純粋にJCさんが心配だったという思いが確かにあったはずなのでは……と勘繰ってしまいます。自分の気持ちなのに、分からないですね。

しかし、その思いも桃世さんの言葉によって全て打ち砕かれました。

 

「へっ!?あ、あの…あたしは……そのぉ……えっと……あぅ………そ、そう…です…。あたしは、先輩のことが……ずっと前から…!す、好き…だったんだと、思います……うぅ…」

 

これ以上にない程、顔を赤く染める桃世さん。2人の関係はよく知りませんが、この口ぶりから察するに単純に友人として好意を持っている……という訳ではなさそうですね。恐らくそれ以上の……“男女の関係”つまり異性として好きということです。何故なのでしょう……私とJCさんは偶に会えば会話を交わす程度の関係、それなのにどうしてこうも気持ちが騒つくのでしょう?友人が好意を向けられていることは誇らしいことのはず、でもそれ以上に胸が高鳴る様な感覚と反対に締めつける痛みの様な感覚があるのはどうして…?

 

「…そうか。だがこちらとしてはあのスレイヤーと同質の存在と認識している以上、危険性が無いか確認する必要がある。これは私の仲間や本人も認めていることだ……だが、虎千代や生天目、パルチザンのメンバーなど一部を除けば殆どの人間が彼を危険分子とは捉えていない。だからこそ真意を計りかねてしまっている……お前たちの持つ情報を共有させてもらえないだろうか?」

 

「っ!は、はいっ!あたしなんかで良ければ…」

 

「そっちの風紀委員も、言いたいことがあるんだろう?奴の現状も踏まえた上で話を聞かせてほしい」

 

元気よく返事をした桃世さんに対して口を噤む私。その様子が気になったのか大人の結城さんは私にも意見を述べてほしいと促してきました。だったら……それに乗りましょう!

 

「当然ですっ!生徒の素行については風紀委員が一番詳しいと自負しています。彼がその様な危ない人間ではないことを私が証明します!」

 

この際、洗いざらい話してあげましょう!彼がどれほど自分に厳しい人間で、そして……どれほど他人に優しすぎる純真無垢な人なのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、そろそろ行くとするか。双美くん、見ていたまえ……君が命をかけて守ろうとしたものは、如何に呆気なく失われていくかを。君の選択が間違いであったことを」

 

私は決意を固め、魔物との共生の未来を脅かすグリモアとの最後の戦いに向かうべく歩みを進める。今まで幾度となく衝突してきた彼等だが、今回でもう最後となるだろう。それほどまでに私は追い込まれ、反対に起死回生の秘策を実行する覚悟を決めていたのだ。その鍵となるのはあの転校生という生徒だ。膨大な魔力量を持ち、他者に譲渡する能力…それだけならただ稀有な能力を持つ魔法使いという印象で終わっていただろう。しかし、裏世界の検体A……あの少年こそが魔物と人類を繋ぐ架け橋であり“霧の切れ端”。同時にムサシの正体でもあった訳か……私に彼を説得出来るだろうか?

 

「間ヶ岾、余計なことを考えるな。周りの雑魚は我に任せておけ」

 

不意に背後から声が聞こえてくる……スレイヤーの内の1人か。相変わらずその素性は一切不明だが魔法使いを敵視しているという思想が同じであることから協力関係を取っている。だが、お互いに信頼はしていないことは言うまでもない。

 

「むっ…私は何も心配しておらんよ。それよりも本当にグリモアの魔法使い全員の足止めを任せても良いのかね?」

 

「フッ…奴に比べれば魔法使い程度、肩慣らしにもならん。尤も満足に戦える身体ならば、の話だがな」

 

拳を握りしめて鳴らしながらそう断言するスレイヤー。この者たちの思想は私には理解出来んよ……一体何処から生まれた存在なのか、何を目的として活動しているのか、何故私に協力するのか全てが謎だ。だが、この際それはどうでもいい。双美くんを失った私には、手段を選べる程の余裕はもう無いのだから。少し前から私に囁き始めた霧の声……この声に身を委ねれば全てが思い通りになる、そんな気がしているのだ。そして、それは切れ端である彼にも言えることだ。彼にもきっとこの声が聞こえる筈だ……裏の様に声に耳を傾ければ自ずと理解出来るだろう。何故ムサシへと変貌を遂げたのか、その先には何が待ち受けているのかを。

 

「まぁ、いい。どのみち彼のみとの接触は不可能だからな……予定通り正面から向かうとしよう。君の実力、信用するぞ」

 

「誤って全員殺しても文句は言うなよ?こっちの獲物は奴1人だ、それ以外はオマケに過ぎん」

 

「ふふふ、転校生くんさえ生かせば他はどうなっても構わない。君の好きにすればいい。では、向かうとしよう」

 

私とスレイヤーの彼はグリモアへと歩み始める。その背後に大量の霧の魔物を従えて。その時、視界の隅に店頭に並ぶテレビの画面が目に入った。何故なら数日前まで行動を共にしていた光男くんが警察に出頭した速報が流れていたからだ。彼が自分で望んでそうした結果なのだから必要以上に悲しんだりはしないが、残念なのは今後の共生派の将来を担ってくれるかもしれなかった光男くんに“真の共生の姿”を見せてあげることが出来なかったことくらいか。まぁ、いい……どうせグリモア襲撃の際に報道されるだろう。牢屋の中でも私と霧の姿を拝めるだろうさ……光男くん、見ていたまえ。これからの人類にとって革命の瞬間が訪れる……その時、人々は何を思うだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間ヶ岾が……グリモアに向かっている?服部、それは確かなのか?」

 

「ッス。なんか凄い数の魔物をぞろぞろ引き連れて堂々と行進してるみたいッス。それと、ちょっと気になることがありまして…」

 

偵察から戻った服部がアタシに報告をしてくる。どういう風の吹き回しか今まで表立った武力行使はしてこなかった間ヶ岾が、堂々と魔物を従えてグリモアに向かっているらしい。それに服部の報告はそれだけでは終わらなかった。

 

「実は、間ヶ岾と一緒にいるのは魔物だけじゃなくてもう1人別の誰かがいるみたいで……自分も一瞬だけ姿を確認したんですけど、目合った瞬間なんかプレッシャーっていうか、凄い圧倒されて意識飛びそうになって……こんなの初めてッスよ!?」

 

あの服部が珍しく取り乱している所を見ると、その間ヶ岾の随伴者は相当の実力の持ち主ということらしい。学園の中でも上位に位置する実力者の服部を眼光一つで沈黙させるとは……アタシと互角か、それ以上かもしれんな。

 

「失礼するよ。間ヶ岾の狙いが判明した……恐らく今回グリモアに出向いた理由は“転校生くん”だよ」

 

「遊佐先輩!あ〜ん、怖かったですよぉ!」

 

急いだ様子で生徒会室に入ってきた遊佐が間ヶ岾の強行の理由について調査結果を報告する……その傍らで抱きついてきた涙目の服部をあやしながら。器用だなぁ。

 

「それよりも事態は刻一刻と悪化する一方だよ。当然ながら標的である転校生くんは前線で戦わせるわけにはいかないし、岸田さんの情報によれば間ヶ岾と一緒にいるのはスレイヤーで間違いない。頼みの綱であるJCくんの意識もまだ回復していない。はっきり言って、状況は最悪だよ」

 

遊佐の指摘に隣で聞いていた服部も強く頷く。まず状況を整理してみよう。間ヶ岾の狙いが転校生である以上、前線に向かわせることは出来ない……スレイヤーが相手では戦闘能力がほぼ皆無の転校生は抹殺されてしまうからだ。そして、転校生が前線から離脱するということは魔力の受け渡しが充分に出来ないことを意味する。これは転校生と他の魔法使いがお互いの状況を正確に把握出来ないからだ。更にスレイヤーに対する唯一対抗出来るJCの意識が回復していないことだ。アタシたちが戦線を維持していう内は魔法使いの村までは侵攻されないとは思うが最悪の場合、裏のアタシに頼んでJCだけでも裏世界に逃してもらうしか……って、いかん!ここでアタシが弱気になってどうする!気張れ、武田 虎千代!アタシは生徒たちの長だぞ、例え身体が粉々に砕かれたって最後まで戦い続ける!

 

「…あぁ、久々に本気が出せそうだな。今まで苦汁を嘗めされられて色々溜まってきていた所だ。間ヶ岾には悪いが、折角の行進も永久に中止してもらわなければなぁ……アタシが先陣を切る!これ以上、アタシたちの学園を好きにさせるわけにはいかん!!」

 

アタシが高らかに宣言すると、遊佐服部両名が同意の視線をこちらに向ける。今ならいつもよりも強力な魔法が使える気がしてやまない。身体中の細胞がアタシの力を後押ししてくれているみたいだ!

 

「この状況でもそこまで鼓舞できるとは……ふふふ、それでこそ僕たちの生徒会長だね。陣頭指揮は僕が取ろう、君はそういうお堅い仕事は苦手だろう?」

 

「あぁ、アタシは元来頭より拳で理解する性分でな。適材適所って奴さ……精鋭部隊と風紀委員、戦闘に参加できる生徒は学園内の各ポイントに人員を配置、それ以外の一般生徒は学園内で待機させるんだ。いつ前線を替わっても良い様に準備だけさせておけ。転校生の護衛はどうする?」

 

「水無月くんからの要望で浦白くんに任せたそうだ。彼女は間ヶ岾の戦略に詳しいだろうから、護衛には最適かもしれないね。あと自発的に始祖十家のジェンニくんも付いている様だ。それでJCくんの方なんだが…」

 

遊佐がその先の言葉を言おうとした瞬間、何者かによって遮られてしまった。生徒会室の扉が妙に勢いよく開いたからだ。

 

「その役目、アタシ達が背負うぞ。そうだろう…つかさ、聖奈」

 

「えぇ、こんなところで大切な殿方を失うわけにはいきませんから」

 

「というわけだ。病み上がりではあるが実力は申し分無い……自分達のことだから今更言われずとも分かっているか」

 

現れたのは裏のアタシ、つかさ、聖奈の3人だった。確かに彼女達の実力は相当高い。しかし霧を取り込んでしまっている以上、あまり無理をさせられない……んっ、遊佐?

 

「君の心配ごとはきっと杞憂に終わるよ。彼女たちも自分の限界を知っているからこそ志願してきてくれたんだ。始めから出来ないことは言わないだろうさ」

 

「そうか……そうだな。協力感謝する、貴方達にJCの護衛をお願いするぞ。だから決して死ぬな」

 

アタシは長々と話すことはせず、伝えたいことを端的に言葉にする。それはただ死ぬなということだけだ。すると、裏のアタシは拍子抜けした様な顔をして次の瞬間には堪えきれずに笑い始めた。な、何だ?

 

「……ぷっ、くふふ……あはははっ!そうかそうか…“死ぬな”か。ついこの前まで死ぬつもりでお前達にゲートの封印方法を授けたのだがな」

 

「虎千代さん、こちらの世界では理想的なまでに全てが円滑に回っているようです。私達の頃とは大違いですよ……だからこそ、守らなきゃいけませんね」

 

「私は……この1ヶ月、JCという男の話を聞いた。やはり、私の世界とこちらでは歴史が違うようだ。それに、2人を救ってくれた恩は感じている。まさかこうも早く返す機会が訪れるとは思っていなかったがな」

 

大人のアタシ達は既に戦う覚悟を決め、間ヶ岾迎撃に加勢してくれるという。何と心強いことだろうか…。

 

「…すまん、貴方達なら安心してJCのことを任せられる。間ヶ岾はアタシ達が必ず償わさせます」

 

「あぁ、期待しているぞ。お前はアタシだ、自分のことを信じられずに誰かを守れると思うな……と偉そうなことを言ってみたが、柄じゃないな、こういうのは。たはは…」

 

裏のアタシが緊張をほぐす為か戯けてみせると、室内が和やかな雰囲気に包まれる。相変わらず場の雰囲気を良い方に変えるのが上手いな、大人のアタシは。こういう所は忘れるわけにはいかんな。

 

「…よし、では行こうか。アタシ達のグリモアを守るんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【足掻き】

「やっと灰街に着いたけど……JCくん、本当に大丈夫かな?付き添ってくれてる結城さんも楽観は出来ないって言ってたし……ううん、私が弱気になってちゃ駄目!今のうちに残りのメンバーを集めて、そしたらもう一度ももを説得しないと…」

「あたしに何か用?」

「もも!貴方……丁度良かった、貴方に話があったの。JCくんが霧を取り込んで、意識不明の重体なの」

「そう……あいつ、まだ生きてたんだ。でも、いい気味ね……最後は霧に身体を蝕まれて死ぬのはお似合いだわ」

「…っ!?もも、貴方ねぇ…!!まだJCくんがスレイヤーと同じだと疑ってるの!?JCくんはゲートを閉じる為に霧を吸い込んで死のうとした武田さんと生天目さんを庇ったんだよ!?それなのにまだJCくんを信じられない!?」

「…っ!さら、もう10年だよ?あたし達が学園の平和を失ってから、今日までずっと戦ってきた。最近は双美 心の妨害も無くなったし、間ヶ岾も向こうの世界に行ったきり帰ってこない。あの時学園と街を襲ったスレイヤーもあれ以来姿を見せてない。JGJの部隊と霧の魔物さえ何とかすればあたし達の勝ちなんだよ!これ以上不安要素を抱える必要なんか無いでしょ!?」

「もも…」

「もう、耐えられないよ……信じて裏切られるの。あたしだってあの子が仇のスレイヤーとは違うことくらい分かってる!でもそうやって信じて、もしあの時と同じことが起きたら!?」

「……そっか。ももはあの時のこと、ずっと見てたんだもんね。だからJCくんのことも…やっぱり信じられない?」

「……あたしは以前あの子に会ったときに、確かにこの手で彼を殺めた。何十箇所と刺したし出血も致死量でまず助からないはずだった。でも彼は今もあたし達に協力して、自分がどんなに苦しんでも変わらずに手を差し伸べているのは事実。あたしもね、頭の中では分かってるんだ……あの子はあたし達の仇じゃないって。でも、それを認めたら今日まで頑張って戦ってきた決意が揺らぐの…!あのスレイヤーに殺された人たちや仲間に顔向け出来ないの…!うっ、うぅ……っ!」

「……もも、今はいっぱい泣いていいよ。いっぱい怒っていいよ。心の中に溜まってる色んな感情を全部吐き出しちゃおう?ももは、今まで頑張りすぎたんだよ。だから暫く戦線から離脱して休まないと駄目、これはパルチザンのリーダーからの命令っ!ふふっ♪」

「…ぐすっ、うん……分かった。ねぇ、さら……いつか、あの子に謝れるかな?いっぱい刺して、死ぬほど痛い思いさせちゃったけど……許してくれるかな?」

「JCくんだよ?きっと笑いながら“もうこんなことしちゃ駄目だぞ?”って、撫でてくれるはずだよ。そしたらちゃんと仲直り出来たってことだもん。だから大丈夫!」

「……そっか。なら、それまでにちゃんと元気で会えるようにしておかないといけないわね。そうだ、ありすと恋とミナから伝言を頼まれたの。近々集まって向こうの世界の様子について聞きたいって……多分もうデバイスを使っても妨害されないだろうから、さらの方から連絡してあげて」

「うん、分かったわ。もも……しっかりね」

「……うん、次会うまでには気持ちの整理をつけておくから。じゃあ、またね」

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