グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い   作:自由の魔弾

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朱鷺坂(ときさか) チトセ】
本人が申告したものを除き、年齢、出身など一切の素性が知れない謎のお姉さん。かなりのベテランと思われるが、なぜこれまで発見されなかったのかも不明。余裕のある穏やかな態度と、まれに見せる訳知り顔が特徴。戦闘能力は武田虎千代に匹敵する。似た境遇で発見されたJCに好意とは違う理由で興味を持っているようで…。


第伍話 押し付けあえ!魔法使い

「あ、あの…会長?仰っている意味が分からないんですが」

 

薫子が若干顔を引きつらせながら、虎千代の言葉の真意を問いかける。すると虎千代はJCから少し離れたところに薫子と聖奈を集めて、こそこそと耳打ちしてきた。

 

「(いや本当は宍戸の所で寝泊まりしてもらう予定だったんだが、例の旧科研の調査で霧の護り手が、放置されていた魔物を操作する技術を確立させた疑惑が浮上したから暫くそっちに専念する旨を伝えてきてな…。とてもじゃないがJCの面倒までみてられないらしい)」

 

「(だからといって会長自らが請け負わなくても…。私や聖奈さん、朱鷺坂さん…は少し心配なのでアレですけど、任せて頂ければ…)」

 

「(いいんだ。こういうのは負担が軽い奴がやるべきだ。偶々それがアタシだったってだけの話さ。それに聖奈は子どもの扱いに慣れてないし、薫子はJCそのものに苦手意識を持ってるだろう?)」

 

「(そ、それは…まぁそうですけど)」

 

「(確かにそう言われたら、何も言い返せません…)」

 

「(それに、いつつかさに見つかるかも分からん。何かあった時にアタシが近くに居た方が色々と便利だろう?)」

 

「(…失礼ながら、会長もそこまで得意には見えませんが?)」

 

「(お、それは聞き捨てならんな。だったら試してみるかっ)」

 

虎千代はそう告げると、黙々と勉強を続けているJCへと向けて、問いかけた。

 

「なぁJC、1人で寝るよりアタシの部屋で一緒に寝る方がいいよな?」

 

「…え?」

 

言っていることの意味が分からなかったのかJCは聞き返す。後ろの2人に疑惑の眼差しを向けられ焦ったのか、虎千代は慌てて言葉を言い換える。

 

「えぇと…1人で居るより誰かと一緒の方がいいよな?例えばアタシとか…」

 

「……。…あ、うん。そうね」

 

否定されるより酷かった。ものっそい上の空だった。計算ドリルをカリカリ進めながらの言葉だった。

(お、大人だ…)

 

薫子と聖奈は一瞬で関係性が逆転した光景を目の当たりにしたが、とりあえず今日一日だけ虎千代に任せて様子をみることにした。

しかし、その結果は翌日に彼女らのもとに知れ渡ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、薫子と聖奈は少し遅れている虎千代とJCを待ちながら、なんとも言えない空気の中で待っていた。

ふいに聖奈が切り出す。

 

「あれから連絡の1つもありませんでしたが…会長は無事にやり遂げられたのでしょうか?」

 

聖奈の言葉に、虎千代のことが常に気が気でない薫子は柄にもなく朝からオロオロしていた。

 

「あぁ…会長…やはり私が彼を受け持つべき?いや、でも彼と一緒にいて他の生徒の前でまた…あんなはしたない呼び名を聞かれでもしたら…あぅ〜」

 

「…こっちも重傷だったか」

 

尋常じゃない薫子の状態を見て聖奈が肩を落とす。すると、少ししてガラガラと戸が開いた。

 

「……はぁ〜」

「おはよーございます、みなさま」

 

珍しく溜息と共に疲れ切った様子の虎千代と反対にやけに肌艶の状態が良いJCが入室してくる。虎千代に至っては全体重を預けるかのようにどっさりと自分の席に腰を下ろしていた。

薫子は聖奈と目を見合わせ、代表して声をかけることにする。

 

「えぇと…会長?何かありましたか?まさか彼に何か…!?」

 

「いや…最近の男子は元気過ぎるな。アタシも結構頑張ったんだが、先に参ってしまったよ…」

 

『なっ…!!』

 

虎千代が苦笑しながら笑い話にしているが、聞いてる側の人間はぶるぶると震えだす。

 

「本当は薫子と聖奈も呼ぼうかと思ったのだが、JCが中々離してくれなくてな…」

 

「“とらちよさん”がみせてくれたのに、つかれた〜ってさきにねちゃったんだよ」

 

「ハハハ…面目ない。という訳で今日のアタシはずっとこんな状態だ。悪いが今日はどっちかがJCの面倒を頼む」

 

何があったかは知らないがとにかく疲弊しきった虎千代の様子を見て、今度は聖奈が立ち上がった。

 

「分かりました。ではここは私が引き受けますので、副会長は会長のお世話に専念して下さい」

 

「…申し訳ありません。何か手伝えることがあれば言って下さいね?」

 

すると聖奈は妙にやる気で答えた。

 

「えぇ。中身は子どもと言えども見た目は大人であることは事実。この際、奴の性根を叩き直してやりますよ」

 

相変わらず他人に厳しい聖奈。元々子どもは苦手なはずだが、見た目が大人と何ら変わりないJCにはそんな感情は湧かないのだろうとすっかり安心しきっていたのが仇になるとは知らずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに翌日。生徒会にはすっかり元気を取り戻した虎千代と薫子が聖奈とJCが来るのを待っていた。

 

「………」

 

「な、なぁ薫子。扉に向かって念を送るのはやめないか?」

 

「…あ。す、すみません。私はどうも彼に苦手意識があるようで…」

 

「あー、例の“おっぱいのお姉さん”の件か」

 

「そ、それは言わないで下さい!あの時は居なかったからまだ良かったですけど、ここにはそういうのが大好きそうな人が「それって、もしかして私の悪口かしら?かぷっ」ひゃっ!!と、朱鷺坂さん!急に現れないで下さい!」

 

しれっと会話に交ざってきたのは、ついこの間転入してきてすぐにこの生徒会入りを果たした異例の転入生こと朱鷺坂チトセだった。因みに薫子が驚いたのはチトセが急に現れた体はなく、彼女の耳を甘噛みしたのが原因であることを強く説明しておく。

 

「んふふっ…。相変わらずそこ、弱いみたいね。それで、一体何の話かしら?」

 

「朱鷺坂さん…!ついこの間会ったばかりのあなたにそんなこと言われる関係性ではありません。それに転移魔法も使うとは…仮にも生徒会の人間なのですから、しっかりと配慮して頂かないと」

 

「あー、あー。全然聞こえませ〜ん。同年代の男の子におっぱいのお姉さんとか呼ばせて学園の風紀乱しまくってる人の言うことなんか」

 

「あ、あなたに言われたくありません。転校生さんに自分のことをお姉さんって呼ぶよう強要してるくせに!っていうかさっきのやっぱり聞いてたんじゃないですか!!もぉー!!」

 

チトセに煽られ軽く…というかだいぶキャラ崩壊を起こしている薫子。そこからさらにタイミングを見計らって追撃する。

 

「風紀を乱してると言えば、副会長のこの暴力的な乳のほうが問題だと思うけど?一体っ!何のっ!為にっ!こんなっ!育ったのっ!かしらっ!今どき“虎千代×薫子”の王道が天下とるわけじゃないのよ!!」

 

チトセは薫子の胸を両手で鷲掴みにして、乱暴に揉みしだいている言葉の端々に恨みつらみが含まれている気がしてならないのはまた別の機会に明らかになるので、今は語らないでおこう。

そこにタイミングよく聖奈とJCが入室してくる。が、聖奈の様子がどうもいつもの違うことに虎千代が気づいた。

 

「聖奈…何かふらふらしてないか?」

 

「うぅ…す、すみません。付き合いとはいえ、この歳になってあんなものに夢中になるとは…。あまつさえそれで寝不足になるなど弁解の余地もありません…」

 

「“せなさん”のほうがむちゅーになってたね。パチパチたたくの、たのしかったよ!」

 

JCの言葉に狼狽える薫子。その矛先はもちろん聖奈に向けられる。

 

「せ、聖奈さん…!あなたという方は、一体彼にどんな性癖を植え付けようと…!?まさかあなた、Mなんですか!攻められたいんですか!?」

 

「ご、誤解です…!?副会長の考えてるようなことは何もありません!それを言うなら一昨日の会長の方が問題かと…」

 

「んなっ!?アタシの何が問題なんだ!?アタシはただJCが興味を持ちそうな“おもちゃ”をいくつか用意してやってだな…」

 

『お、おもちゃ…』

 

「あ!お前たち、変な想像するな!そういうのじゃないぞ!本体より胸のほうが印象に残るような薫子に言われたくない!」

 

「か、会長…!!それは今、気にしていることですよ…!」

 

3人が我を忘れてギャーギャー言い合っているその横でチトセがJCの手を引いて小声で耳打ちする。

 

「(…今日は、お姉さんの所で寝ましょうか)」

 

JCがこくりと頷くと、そのままチトセに手を取られたまま1日を過ごす事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と…魔法で熟睡してもらったわけだけど、まさかここまで魔法に抵抗できるとは思わなかったわね」

 

夜中、自室に招き入れJCを魔法で催眠状態にしたチトセ。もちろん私利私欲の為にこんなことをしているのではなく、彼女にしかできない確固たる信念のもとでこの強行に及んだのだ。

 

「んじゃまず手始めに…あなたについて教えなさい」

 

「…ぼくは、JC。まほうつかい」

 

「JCは本名じゃないわね。“あっち”にはそんな魔法つかいは存在しなかったもの。本当の名前は?」

 

「…わからない。タグからつけてくれた」

 

「魔法が効きづらいのはどうして?」

 

「“ぼくたち”はまほうに、つよくないとダメ。だから、くんれんうけた」

 

「僕たち…他にもたくさんいたの?」

 

「おうちにいっぱい、なかまがいた。でも、みんなおでかけした」

 

「…?みんなはどこにお出かけしたの?」

 

「わからない。いつもよるでいったことないから。でもよるなのにおそといこうとしたら、おでかけされる」

 

いよいよ手詰まり感を感じて切り上げようとしたチトセだったが、ふと気になったことを興味本位で聞いてみる。

 

「生徒会のメンバーの部屋で何してたの?」

 

「とらちよさんとはひーろーごっこ、せなさんとはえくせる」

 

「成る程…狙って言ってるんじゃなければ、あなた相当のスケコマシね」

 

「でも、かおるこさんともあそびたいし…チトセさんとも」

 

そこでようやくチトセはある事に気づいた。

 

「あれ、もしかして魔法の効果切れてる?」

 

こくりと頷くJCに苦笑して誤魔化すチトセ。

 

「しばらく噂に付き合ってもらうから…宜しくね☆」

 

翌日から生徒会ご乱心の噂がしばらく絶えなくなったことは言うまでもなかった。

 




【JCの噂】
第7次侵攻後に発見された魔法つかいを転入生として迎え入れるや否や、その存在を秘匿扱いにして生徒会が匿っている。正確には生徒会と一部の生徒にのみ接触する機会を与えているのを報道部が掴んでいる。匿名で生徒会メンバーが日替わりで夜な夜な彼を辱めたり、逆に辱められたりしてるかもしれないという噂が流れていたりするが、真相は定かでない。
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