グリモア~私立グリモワール魔法学園~ 虐げられた元魔法使い   作:自由の魔弾

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生天目(なばため) つかさ】
闘争に命を賭ける正真正銘のバーサーカー。戦うこと以外に全く興味がない。強い相手を求めてふらりと学園からいなくなり、魔物を討伐して戻ってくるのが日常。武田虎千代とタイマンで張り合える数少ない人物で、格闘においては彼女を上回る強さを誇る。JCを拉致した後無理矢理自分と戦うことを強要するが、彼の体質・現在の戦闘力を理解した彼女は「お前が今よりもっと強くなったらまた相手してやる」と再戦を約束する。


第七話 滾れ!魔法使い

クリスマスパーティーから数日後、JCは来る日も来る日も迫る追手(アイラの話を間に受けた女生徒連中)から逃げ隠れしていた。そして今日も紆余曲折ありながらも無事に追手を巻いて生徒会室に逃げ帰ってきたのだが、ふとJCの視線の先に見知らぬ生徒たちが虎千代に促されて室内に入っていくところを目撃し、すぐさま近くの物陰に身を隠す。

 

「(…知らない人たちだ。そーいえば今日はせーとかいのみんなは出かけちゃうから、別のところに行きなさいって言われてたっけ…」

 

「成る程…。なら今日は私に付き合ってもらうぞ」

 

「…へ?にゃわ!」

 

思考を巡らせているのと同時に聞こえてきた明らかに自分ではない誰かの声。その正体を探る間も無く、次の瞬間には高速で景色が転換していく以外の情報が入ってこなかった。何故ならば現在進行形でJCは何者かに常軌を逸したスピードで拉致されているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来ればいいだろう。おい貴様、私と戦え」

 

僕を攫った“ゆーかいはん”のおねーさんが明らかに人気のないであろう山まで担いでいた僕を下ろした後、さっきのセリフに戻る。最早何が何だか状況からして掴めていないJCは、薫子ちゃんから「念のため…ほ、本当に念の為に渡すのであって、別にあなたのことを心配しているわけでは……ってそんな物に喜ばないで下さい!」と言って手渡された防犯ブザーを躊躇なく鳴らす。

 

ビビビビビビビビビッ!!!

 

「む、貴様!その五月蝿いのを早く止めろ!」

 

「うわっ!わわっ!こ、こんなに大きな音だと思わなくって!?お、おねーさん、これ止めて!」

 

「…仕方ない、貸せ!」

 

僕から防犯ブザーをひったくったおねーさんは、そのままけたたましく鳴り続ける防犯ブザーと戦っていた。しかし、仕組みがよく分からなかったのか最終的には地面に叩きつけてそのまま拳によって黙らせたところで話を元に戻す。

 

「さぁ、邪魔者は消えた。次は貴様の番だ…私と戦え」

 

ゆーかいはんさんが微笑み、僕はぶるぶると震えだす。

 

「…神崎○郎さん?」

 

「…誰だそれは?」

 

「オーデ○ンと言ったほうがわかりやすいですか?」

 

「貴様が何を言ってるのかは知らんが…フンッ」

 

ゆーかいはんさんは近くにあった手頃な岩を殴ると、ビキビキッという音を立てて粉々になって崩れてしまった。

 

「次は貴様の頭がこうなるぞ。分かったら戦え」

 

凄むゆーかいはんのおねーさんに、僕はついに意を決して立ち向かう。

 

「…わかった。そーいうのは“慣れてる”よ。さぁ…こい!」

 

僕の言葉に不信感を覚えたのか、一瞬だけ動きが止まったように見えた。

 

「では、行くぞ!」

 

「…ッ!!」

 

うん、止まったように見えただけだった。一瞬で姿が消えて次に見えた時には僕の体ごとおねーさんの放った拳によって吹き飛ばされ、そのまま後方の木に打ち付けられた後だった。

 

「貴様…何故、防がない?」

 

内臓やその周辺の骨の感覚がおかしく感じながらも、ゆらゆらと揺れる足腰を立たせて、おねーさんに向き直す。

 

「…?いつもと変わらないと思うけど」

 

「何だと…」

 

「僕はいたくならないと、つよくなれない。だから攻撃、うけるの」

 

これは少し前にチトセさんに魔法を使われた時に思い出したことだ。断片的に…という言葉であってるかな、昔実験施設にいた頃の話だと思う。もったいぶって話すことじゃないから流したりしないでかつ事細かく要点を押さえて説明します。

 

「僕を倒すなら、本気で攻撃しないと。痛くなるとどんどん強くなっちゃいますよ?」

 

つい先ほどまで震えていた僕の体は既に元の状態、いやそれ以上のポテンシャルを発揮していた。この一ヶ月でもう一つだけわかったことがある。

でもその前に目の前の彼女を何とかしないと。

 

「ふっ…面白い。なら今度こそ立たなくなるようにしてやろう」

 

そう言って再び彼女の姿が消える。さっきは速すぎて視認できなかった、でも今は少しだけ視える。やっぱりそうだ。

 

「どうした!さっきの言葉はハッタリか!?反撃しないのか!」

 

「ぐっ!…かはっ!?」

 

だからと言ってそんなすぐに彼女の異常な太刀筋を読み切れるわけもなく、せいぜい何発かに一発防げれば良いほうで、防ぎきれない分の拳は無情にも僕の体に吸い込まれるように炸裂していく。たぶんもう全身複雑骨折くらいの症状は体に現れてるはずなのに、すこぶる体の調子が良い。

 

「やっぱりそうだ…。力が、増してる!」

 

疑惑が確信に変わっていくのが手に取るようにわかる。彼女の攻撃を受けるたびに僕自身の筋力や傷の回復力はもちろん、視覚や聴覚果ては第六感まで研ぎ澄まされていくのが実感できる。

その成果として彼女の放つ拳が次第に決まらなくなってきていた。

 

「…ッ!成る程、痛みで順応したか。だが、もういい」

 

何かに満足したのか、はたまた諦めたのかわからなかったけど突然拳を振るうのをやめた彼女。それと同時に僕の体調が急激に崩れる。恐らくアドレナリンの分泌が収まった所為か痛みによる能力値ブーストの効果が切れたのか…あ、だめだ。また、もどるかも……うゅ?

 

「あれ、おねーさん?ぼく、まけちゃったの?」

 

あまりの豹変ぶりに、開いた口が塞がらないおねーさん。首を傾げていると、すっかり戦う気が失せたのか「まぁ、その何だ…」と頬をぽりぽり掻きながらゆっくりとおねーさんは話しだした。

 

「お前の強さは分かった。だが、まだ私の求める強さにまで達していない。だから、これ以上の闘争は望まない」

 

「えー、もうあそんでくれないの?」

 

不満げにブー垂れるJC。それに対して彼女はあえて誘うように挑発してみせた。

 

「もしまた私と遊びたくなったら…強くなれ。私は強い奴としか遊ばん。お前が強くなったと感じたその時、また遊んでやるさ」

 

彼女は制服の上着を肩に掛けて、僕に背を向けて歩き出す。

 

「あ、あの…!ぼく、もっとつよくなります。つよくなっちゃいますから!そしたら……またあそんでくださいね!」

 

僕の言葉に名前も知らない彼女は振り向くことはなく、ただ空いている手をひらひらと振って無言のまま返事して去っていった。

そんな彼女に僕は強さの憧れと目標を貰い、頬を叩いて気合いを入れ直す。

 

「よーし、頑張ろっ。でもその前に、どうやって帰ろう…?」

 

少年JCの奮闘はまだまだ始まったばかりなのです。

※この後結局迷子になりましたが、彼女の知り合いの忍者さんに連れ添ってもらって無事に学園に帰れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【忍者の噂】
いや〜、自分としては今回生天目先輩の見張りが任務だったわけッスが、それよりも人っ子一人いない山の中で放置されて泣きじゃくってるJCさん見かけたら、そりゃやっぱそっち優先しちゃうでしょ。案の定話しかけてみたらすごい勢いで懐いちゃいましたし、中身が子どもっていうの知らなかったら相当のダメ男に見えてしまうッスからね。自分も変なとこで母性に目覚めそうになったんで〜、そこはちょっと反省ッスね。今後も個人的にJCさんの動向を観察しよっかな〜と思ってるッス。にんにん。
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