長くなったので、前編、後編に分けます。
今回は、前回のジンの行動の謎が明かされます。気がつけば赤井さんよりもジンの方が目立っていました……私は赤井さん派のはずなのに……(´・ω・`)
ジンの過去や黒の組織のボスについてかなり捏造しています!また、ジンのキャラ崩壊がありますので、注意して下さい!
結局。あの後はあまりにも騒ぎ過ぎた事で医者と看護師に叱られ、患者には安静にしてもらいたいからと、秀一達は追い払われてしまった。まだ俺が気絶した後の3日間の事を詳しく聞いていなかったというのに……
そこで翌日の朝。その事を聞くために退院後すぐに作戦本部に向かった。
いつも幹部達が集まっている会議室の扉を開くと、既に秀一達7人が揃っていた。
「和哉さん、おはようございます。退院おめでとうございます。……迎えに行けず、申し訳ありません」
「いや、構わない。忙しいだろうから、わざわざ迎えに来なくてもいいと言ったのは俺の方だ。……皆もおはよう」
全員と挨拶を交わした後、本題に入るとした。
「さて……昨日はいい年した大人達若干2名がじゃれあったせいで、話が止まっちまったからな。俺が寝ていた間の事を詳しく聞かせてくれ」
「じゃれあってない!」
「……みっともなく騒いでしまいました。すみません……」
むきになって否定する降谷と、素直に謝る秀一を尻目にコナンが説明してくれた。
……ジンを確保した後、黒の組織の拠点内部を隈なく探し回ったが、結局ラムと組織のボスは見つからなかったという。
ただ、ボスの部屋と思われる場所が酷く荒らされていたらしい。そこを調べた結果、ボスがこちらの襲撃を受けた直後に慌てて逃げ出したという事実が判明した。そしておそらく、ラムはその護衛として同行していると思われる。
拠点に残っていた幹部達を含め、組織の構成員達はその事を知らなかった。取り調べ中にその事実を知って酷く驚いていたらしい。……中には、信じられないと喚く者もいたようだが。
しかし、ベルモットは違う反応を見せた。
「――いつかはそうなると思っていたわ」
……と、呆れ顔で呟いていたらしい。
また、ジンもこの事を知っていたと思われる。この事実を知れば、知らなかった者は必ず何かしらの反応を見せるはず。しかしジンはこの話を聞いても驚くどころか、無反応だったらしい。おそらく知っていたんだろうな。
そのジンはというと、未だに何も語らないのだという。組織のボスとラムの居場所を知っている可能性が最も高いのがこいつなんだが……
しかし、何も進展していないわけではない。昨日、秀一に言われた事を実行した降谷のおかげで、ジンに関する情報が手に入った。
1ヶ月程前。ジンが上機嫌で拠点の外から帰って来た様子が目撃される。また、その日はジンが"ボスに会いに行く"と言ってウォッカを置いて1人でボスの元へ向かっていた、という情報も得た。
……1ヶ月程前、と言えばキルシュを確保した日が近い。……繋がりはあるのだろうか?
ただ、その日ボスの元から帰って来て以降、ジンの様子に変化が現れたという。普段から1日中機嫌が悪い日というのがたまにあったそうだが、それがほぼ毎日続いていたらしい。普段以上に威圧感を放っていたせいで、子分のウォッカがしばらく距離を取る程に酷い状態だったとか。
降谷も構成員達の証言を元に記憶を探ってみたところ、確かにそれと思われる様子が見られた、と人伝に聞いた事を思い出したそうだ。
……というのも、降谷は作戦決行日に向けて徐々に組織の拠点に足を運ぶ頻度を減らし、拠点から遠退くように行動していた。無論、組織側から怪しまれないよう慎重に。そのせいか、普段から出来る限りジンに近づかないようにしていたため、ジンと接触する事もほとんどなくなってしまった。奴の変化を人伝に聞く事があっただけで、直接見る事がなかったのだ。
……ジンと組織のボスの間に、何があったのだろうか。
奴は組織のボスに対する忠誠心が強かったという。そんな奴の機嫌が急降下する程の何かを、ボスがやらかしたのか……?
「……と、今分かっている事は大体こんな感じかな」
「そうか。ありがとな、コナン。……ところで降谷。ジンの機嫌が悪くなった原因を推測する事は……?」
「……できるわけがないですよ。奴の心境を理解できるはずがない。むしろしたくない」
「だよな……」
「……しかし、ベルモットがジンについて妙な事を言っていました」
「妙な事?」
「"あれは複雑な感情の処理の仕方が分からない事への苛立ちによるものだった"と」
「…………ほう」
ベルモットはあれでも表では大女優だった女だ。人間観察にも優れているはず。そのベルモットが言うくらいだ。信憑性はあるだろう。……しかし、それは俺自身が直接確かめなければ信じられない。
まぁ、公安の人間が取り調べしている中に割って入るわけには行かないから、今はやらないが。
「ベルモットが何故そう思ったのかは聞いたのか?」
「聞きました。しかしただ一言、"女の勘だ"と。……全く、ふざけている……!」
「そうか?案外女の勘ってのは馬鹿にできないぜ?」
「……まさか、ベルモットの言葉を信じると?」
「いや…」
「降谷君。和哉さんは自分で直接確かめない限りは物事を信じない、用心深い人だぞ。そんな人が敵の言葉を信じるはずないだろう」
「何故貴様が答えるんだ……」
「確かにその通りだけど秀一、お前な……あぁいや、いい。それよりも、だ。ベルモットが答えられないのなら、もう直接ジンに聞くしかないんじゃないか?」
「…………駄目で元々、ですか……」
「あぁ。……それに、ジンには今までラムと組織のボスに関する事ぐらいしか聞いてないんだろ?なら、それから少し離れた質問をしてみるのもいいんじゃないか?案外そこから突破口が見つかるかもな」
「まぁ……一理ありますね。……風見」
「了解しました。すぐに取り調べ担当の者に指示を伝えてきます」
「頼む」
降谷に指示され、風見は会議室から出て行った。
「……ジンは、何か反応を見せるかな?」
「さてな。俺にも分からん。……しかし、これで何も反応が見られなくても、その時はまた皆でどうすればいいのか考えよう。だから、降谷。また何かあったらいつでも俺達に相談してくれ。特に俺は――公安もFBIも関係なく、大切な同志の力になりたいんだ」
「……っ……そうゆうところですよ、荒垣さん!」
「ん?」
降谷が口元を隠してそっぽを向いた。……どうしたんだ?
「和哉さん……誰彼構わずたらし込まないで下さい」
「うん……?」
「対処が大変なんですよ。あなたを横取りされないようにさらに牽制しなくては……俺の飼い主は俺が守らないと」
「いや、だから俺はお前の飼い主じゃ…」
「じゃあ僕の飼い主になります?」
「――あ"?」
秀一が、柄の悪い声を出して降谷を睨んだ。……凶悪面だ。
「おい、赤井。一瞬ライの顔が出てたぞ」
「うるさい、黙れ。和哉さんの犬は俺だけだ」
「お前を俺の犬にした覚えはねぇぞ」
何を言い出すんだか……
「それから降谷。秀一をわざと煽るな、収拾がつかない。それにお前の性質はどちらかというと犬より飼い主側だろ。……いや、日本を守る番犬という意味でなら犬側か?」
「日本を守る……番犬……!?」
降谷は目を見開いた。それから、次第に笑顔になっていく。……そんなに喜ぶような事言ったか?
「そうですか、そう見えるんですね?」
「あ、あぁ。そうだな」
「ならば俺の飼い主は日本、という事か……うん。いいな、それ」
満足そうに頷いている。……よく分からんが収拾、ついたか?
と、その時。風見が会議室に戻って来た。……早いな。
「降谷さん、報告が……降谷さん?」
「ん?……あ、あぁ風見か。早いな、もう戻って来たのか」
「それが、ですね……」
「……どうした?何があったんだ」
すぐに表情を真剣なものに戻した降谷が、風見を促す。すると、風見は一瞬だけ俺を見た後にこう言った。
「ジンが――荒垣和哉を呼べ、と」
他の幹部達の視線が――特に秀一の視線が強い――集まるのを感じた。
確かに……確かにジンが何らかの反応をする事を望んではいたが、面倒事を望んだ覚えはねぇぞ……!!
俺は頭を抱えてため息をついた。
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「――よぉ。待ってたぜ、荒垣和哉」
「……そりゃどうも」
「……どうした?機嫌が悪そうだな」
「っ当たり前だろうが!今まで何の反応もしなかったてめぇがやっと反応したと思ったら"俺を呼べ"だぞ?FBIの俺を!そのせいで取り調べ担当の公安にねちねちと文句を言われたんだ!全く面倒な……!!」
取調室にて。俺はニヒルに笑う銀髪野郎に不満をぶつけた。すると鼻で笑われた。てめぇこの野郎……!
せっかく……せっかく最近になって公安の連中とも少し仲良くなれたところだったのに……!これでFBIと公安の仲がまた悪くなったらてめぇのせいだからな!!
「…………その様子じゃあ、体調も万全か」
「あぁ、てめぇに盛られた毒はもうすっかり抜けたが3日も眠り続けたぜ、おかげ様でな!!」
「そうか……念のために待っていた甲斐があった。回復おめでとう、良かったな」
「え?……お、おう……」
唐突な祝福に面を食らった。……やっぱりおかしくないか?こいつ。俺の中にあるジンのイメージが、また1つ崩れていく。
……って、ちょっと待て。
「今……念のために待っていた、って言ったよな?」
「あぁ」
「……まさか、今まで何を聞かれても無反応だったのは……」
「お前が来るのを待っていた。いきなり呼んでも、その時点で毒が完全に抜けきっていない状態だったら悪いからな。時間を置いた」
という事は、ジンがずっとだんまりだったのは俺のせいだった?……胃が痛くなりそうだ。
「……という事は、俺が聞けば黒の組織のボスとラムの居場所を答えてくれたり…って、そんなわけないよな。てめぇがそんな素直に答えてくれるはずが…」
「別に答えてもいいが、」
「いいのかよ!?」
「お前からの取り調べだけは、元から受けるつもりだった。条件付きでな」
「……条件?」
……やはり、そんな旨い話があるわけないか。一体どんな条件なんだ……?
「俺がお前の質問に答える代わりに、お前も俺の質問に答えろ」
「……もしも俺が質問に答えられなかったら?」
「その時は、俺もお前の質問に答えなくなるだけだ」
「…………」
つまり。俺が質問に答えられなければ、ジンから情報を得る事ができなくなる、って事か。
これでもしも、FBIの機密情報は?なんて質問されたらまずい。非常にまずい。
嘘をつけばいい。そんな考えが一瞬浮かんだが即刻取り消した。もしも嘘がバレたら、今度こそジンが何も話さなくなるかもしれない。
そして何より、俺の背後にあるマジックミラーの先で公安の人間がこの会話を聞いている。迂闊に話してしまえば怪しまれるだろうし、こちらは公安と友好的な関係でいたいのだから、それが水の泡になるような真似はしたくない。
どうする?とりあえず1度持ち帰って皆に相談を…
「おっと、1つ言い忘れた。条件を呑むかどうかは今この場で決めろ。お前がこの部屋から出た瞬間、俺はもう2度と口を開かねぇからな」
「……っ!!」
まるで狙っていたかのようなタイミングだ。……これは、駄目だな。こいつとの前哨戦は完敗だ。今後の取り調べの中で優位に立つしかない。
――しかしまぁ、なんとかなるだろ。取り調べは得意だ。……後で勝手に取り調べをしてしまった事を降谷に謝っておこう。
そう考えた俺は、ジンを見据えて口を開いた。
「――分かった。条件を呑もう。その代わり、ちゃんと俺の質問に答えてくれよ?」
「ふっ……あぁ。お前こそ、俺からの質問に言葉を濁したりするんじゃねぇぞ」
「もちろん、分かっている。……じゃあ、最初の質問は…」
「待て。質問は俺が先だ。お前から質問しておいて、聞きたい事は聞けたからと俺の質問に答えずにとんずらされるわけにはいかねぇ」
「……なるほど、一理ある。では、そちらの質問を聞こうか」
ちっ……流れで先手を打とうとしたんだがな……まぁいい。相手の出方を窺うとしよう。
「――お前にとって、赤井秀一はどんな存在だ?」
「――はぁ?」
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「――お前にとって、赤井秀一はどんな存在だ?」
「「――はぁ?」」
荒垣と、マジックミラーの先にある部屋にいた赤井の声が図らずも重なった。
現在。荒垣以外の7人の幹部達が、マジックミラー越しにジンの取り調べの様子を見守っていた。しかし、ジンの思わぬ質問に全員が困惑する。
「……分からない……ジンの考えがさっぱり分からない……!」
「降谷さん……それはこの場にいる全員がそう思っています」
「そうよ、フルヤ。私達にだってさっぱり分からないわ!」
「一体……何が目的なんでしょうか?」
「……今は、分からない。これからの取り調べの中でそれを追及するしかないだろう」
「その追及は、荒垣さんに任せるしかないんだよね……大丈夫かな」
そう言ったコナンと、それを聞いた降谷と風見の表情が強張る。……しかし、FBIの4人は、それとは対照的に表情を緩ませた。
「和哉さんが担当するなら問題ない。あの人は今まで数多くの犯罪者達の取り調べを行い、その懐に潜って有益な情報を引き出して来た。……和哉さんの手に掛かれば、たとえどんな凶悪な犯罪者であっても骨抜きにされ、その鋭い牙を抜かれてしまうのさ。弟子として、多くの事を学ばせてもらったが……この取り調べの技術だけは俺でも習得できなかった。こればっかりは、あの人だけが持つ技術だ」
「……用は、荒垣さんお得意の人たらしという天賦の才を応用しているわけだな」
「降谷君。俺がせっかく和哉さんを讃えたというのに、それを一言で片付けないでくれないか?まぁ、その通りなのだが」
「…………その通りなのかよ」
赤井の言葉に対して、コナンがこっそり呟く。
「……それにしても、ジレンマだな。和哉さんの魅力を周囲に自慢したいという気持ちがあるが、敬愛する師匠を独り占めしていたいという気持ちも同時に存在している。……悩ましい……」
「あー、はいはい。分かったから、今はそれよりもジンの取り調べの方に集中しなさい」
「おっと、そうだったな」
実を言うと、赤井は少し緊張していた。今まで、荒垣が自分の事をどう思っているのかを聞く事ができる機会などなかったからである。
……やがて、荒垣が口を開いた。
「……てめぇが何を思ってそんな質問をしたのかは分からねぇが……まぁ、いいだろう。長くなるぞ」
そう言って荒垣が語り始めたのは、赤井にとっては青天の霹靂と言える程の内容だった。
「――最初は、クソ生意気な野郎だと思っていたよ。命令違反はよくやってたし、教育係の俺の事を見下していた。だから、初めに上下関係をしっかり教えてやった。そうしたら急に大人しくなって、最終的には弟子にしてくれって言われてな。調子の良い奴だなと思った。
でも、その熱意は本物だったよ。あいつを弟子にしたのはそれに根負けしたからだ。
……最初のうちは俺の方があいつを上回っていた。……しかし、すぐに追い抜かれた。その時理解したんだ。こいつは俺のような凡人とは比べ物にならねぇぐらいの天才なんだって。
俺が数年掛けてようやくものにした技術を、あいつはたった数ヶ月で会得して、俺以上にそれを磨き上げた。――妬ましい。……俺よりも年下の男に対してそう思っちまったんだよ。
でも……俺がそんな醜い感情を抱いているのにも気付かず、あいつは俺の後ろをついて来て、一挙一動を見逃さないように観察してくる。それに、俺に対して敬意を払ってくるんだ。……そんなあいつの様子を見ていたら、嫉妬している自分が恥ずかしくなってな。
――こいつに失望されたくない。……そう、強く思った。
そう思った時から俺は努力を重ねた。あんなにも必死になったのは、FBIに入った当初以来だったな。……まぁ、努力しても技術面では天才のあいつには勝てなかったが、それで駄目なら今度は知識だと思って、ありとあらゆる知識を頭に詰め込んだ。あいつがあまり手を出さない分野に手を出し始めたのもその頃だったな。同じ分野で勝てないなら別の分野で勝とうって考えたんだ。
交渉術、話術、心理学、医学、語学、爆発物の処理技術、演技力、クラッキング、とまぁ……いろいろな。
そうする事でようやく、俺は師匠としての面子を保つ事ができたんだ。……と言っても、今は"元"がくっつくけどな。既にあいつは俺を軽々と越えている。俺なんかの弟子という立場に納まるような男じゃねぇ。……今でも師匠として敬ってくれるのはありがたいが、とっくに免許皆伝したものだと思ってるんだよなぁ、俺としては。
いろいろ話したが、結論を言えば……あいつのおかげで俺は努力の大切さを思い出し、あらゆる知識を詰め込み、新たな技術を身に付けた事で、更なる高みへと昇る事ができた。そう考えると、あいつは……
――俺自身をさらに鍛えるためのきっかけをくれた恩人だな。それから、元師匠として誇りに思っているよ」
荒垣が語り終える頃には、赤井は顔を覆って天を仰いでいた。
「俺の師匠が尊すぎてつらい……やっぱり周りに自慢するのはもったいない。独り占めしておこう、そうしよう」
「赤井さん……」
遂にはキャメルまで赤井を呆れた目で見始めた。
しかし、赤井は途端に真顔になった。
「だが……免許皆伝なんて聞き捨てならない言葉もあったな。後で問い詰めなければ」
「あーあ……」
「……御愁傷様……ですかね」
「……そうだな」
コナン、風見、降谷の3人は、荒垣に向かってこっそり合掌した。
(……っ!?一瞬寒気がしたような……?)
勘の鋭い荒垣はその頃寒気を感じていたが、さすがに原因を予測する事はできなかった。