災厄が生まれる時 作:ヤンデレ製造機
力は譲渡される。
正義の力は、聖火のように受け継がれる。
平和への祈り。
ワンフォーオール、1人はみんなのために。
闇の支配者、オールフォーワン。彼から生まれたその力は、願いとともに培われ受け継がれていった。
しかし、今より数十年以上前のこと、その聖火は2つに分かれてしまった
"個性"は遺伝する。
ヒーローとて人だ。休息は必要だし。性欲だってある。
風俗に行っていたっていいじゃない。
風俗嬢はヒーローオタクだった。当時の継承者のファンで自分を指名してくれたことに大いに喜んだ。
彼女の"個性"は身体を制御するというものだ。一見、使い道の無い"個性"だが、体内のホルモン、自律神経、など普通操れないところを操れるため、健康という面ではかなり優れた"個性"だった。
そのため、夜の仕事である彼女はその"個性"で健康を保ち、非難のため、彼女は排卵まで制御していた。
彼女の彼の子を産みたい。
半ばストーカーじみた思考で、"個性"で避妊薬の効果を打ち破り、コンドームに穴を開け、"個性"で卵子を生み出し彼の子を孕んだ。
しかし、邪魔をしたくないと黙って隠れて育てて行くことにした。
ヒーロー達はその子どものことを知らない。
オールフォーワンもまさかこんなヤツがいるなんて思いもよらない。
世間は風俗嬢が避妊に失敗しただけだと思われただけだ。
正義の灯火は、こうして掠め取られた。
いや、引火、と言い換えた方がいいかもしれない。その別れた灯火は異なるモノへと変化して行く。
しかし、それでも元は同じモノ、持ち主はお互いに惹かれ合う。
悪から正義は産まれた。ならば、正義から悪も生まれることもある。
これは正義の力から、最悪の悪が生まれるまでの物語だ。
◆
基本的な計算問題。
証明問題。
確率、
連立方程式、
問題ない。私の集中力はまだ上がる。
私の"個性"は身体制御・強化だ。
身体の身体機能を全て制御し、さらに強化する"個性"だ。強化に使うエネルギーはどこから来ているか分からないが、なんか、めっちゃ強くなる。
筋力も視力も、そして、自律神経やホルモンバランスを制御すれば集中力や性欲、感情、身体の全てが制御可能だ。また、よくわからないが強化も出来る。すごく強い"個性"だ。
日常で"個性"を使うことは基本的にダメだが、バレっこ無いだろう。
前に座る生徒の背中が目に入る。それだけで彼がどれだけ緊張しているのかが伝わる。
当たり前だ。今は雄英高校の筆記試験。
実技試験は私の"個性"の前には楽勝だった。聴力も視力も身体能力もなにもかも強化、制御可能なのだから、音を聞きその場に行き倒すだけだ。最後のでっかいのは流石に無理だったが80点くらい稼いだ。
しかし、難題はこっちだ。
集中力は強化出来るが、学力は上がらない。脳は思い出せないだけで意外と覚えている、みたいな事は聴くが、そこまで細かい制御はできない。
だが、大丈夫。平静は保ち続ける。私は常に全力を出せる。
感情なんて制御可能な電気信号でしかない。
幼い頃、私はヒーローに憧れていた。
不思議なもので、気がついたらヒーローになりたかった。何かに
ヒーローになるために"個性"を鍛えた。家の中で淡々と"個性"の練習をした。
その結果、感情制御を覚え、そして、制御するのが癖になり当たり前になった。いつのまにか本当の感情なのか、制御の感情なのか分からなくなり、常に平静を保つのが当たり前になっいた。
2本足で立つのにバランスを気にする人はいないだろう。自転車だった無意識にこげるだろう。それと同じで、私は感情の制御が普通になった。
だから、何も感じない。
母が死んだ時も、祖母が死んだ時も、悲しむべきだから葬式では悲しんだだけだった。
もう、心とか信じられない。ただの信号でしかない。
ヒーローを目指すのも、なりたいからではない。
感情制御を覚える前の感情だからだ。唯一、私が覚えている制御されていない感情。それが、ヒーローだ。
それに従っているに過ぎない。
まるでロボットだ。
「はーい、終了、ペン置いて!」
ミッドナイトの声とともにペンを置く。
これで入試は終わった。回答用紙を提出後退出する。
廊下にはたくさんの人たちがいる。皆疲れ切っているようだ。
その時、視界の端にモジャモジャな頭の少年が目に入る。
ーーー!
まるで、私だけ時間が止まったようだ。
その少年から目が離せない。感情の制御が効かない。
苦しい、心臓が早く動く。制御できない。
胸が熱い、知らない感情だ。
分からない。苦しい。
「待って!」
叫んで、追いかける。
カバンがどこかに行ってしまった。どうでもいい。
彼に会いたい。分からない。追いかけたい。
しかし、すぐに見失ってしまった。
さっきよりもマシだが、心臓がなっている。胸が温かい。
彼が頭から離れない。
こんな感情は知らない。けど、嫌じゃ無い。
とっても幸せだ。
◆
合格した。
入試一位だそうだ。首席だ。
筆記試験の彼は合格しただろうか?
会いたい。どこの誰だか分からないから探すこともできない。探偵なんて雇うお金なんて無いし……。
受かっててほしいな。また会いたい。
彼は誰なんだろう? 不思議だ。
彼のこととなると感情の制御が出来ない。 きっと、これは私本来の感情なんだ。
本当の想いは"個性"なんかで制御できない。誰だ電気信号なんて言ってたヤツは、愛は無敵なんだ。
会いたい、会いたい、会いたい会い。
受かってて、お願いだ。
私が今行くから。
幸せだ。
そんなことを考えていたら、入学式の日となった。
彼はいるだろうか? 会いたい。
緊張はしない。制御出来る。しかし、彼のことだけは消せない。
あは、これが恋、これが愛なんだ。
彼に会ったら何て話をしよう。彼は私のことなんて知らないからまずは自己紹介をしないとね。
それから友達になって、恋人、それから結婚。
子どもはいらないな。彼の愛は私だけのものだ。でも、彼は欲しがるかな?
そうだ、子宮を取ってしまおう。そうすれば生まれない。
彼は子どもなんかに取らせない。私だけを見ててくれればいい。
私だけのヒーローだ。
扉を開ける。
クラスにはまだ誰も来ていない。まだ早過ぎたみたいだ。黒板に席順が貼ってあった。おそらく、出席番号順だ。
とりあえず、指定された席に座る。
来るかな? 彼は来るかな?
本を開くがページが進まない。
幸せだ。
感情がこんなに気持ち良いものだなんて……。
しばらく待つ。
クラスには沢山の生徒たちが登校してきた。
彼は来ないのだろうか?
そう諦めかけた時、扉が開いた。
入ってきたのは、モジャモジャな少年だ!
間違いない! 彼だ!
心が躍る! 呼吸がうまくできない!
全身が沸騰しそうだ!
私の全てが彼を求めている!
"個性"を使い跳躍!
彼と、メガネの間に立つ!
「私!
彼の手を取る。
硬くて暖かくて、それだけで幸せになってしまう!
彼は頬を染める。
可愛い! 可愛い!
私を意識してくれてる!
愛おしい!
「あ、あの、ぼ、ぼ、僕。 緑谷、出久……です。 純日本人、で、す。」
緑谷出久!
出久君って言うんだ!
絶対に忘れない!
そうか、緑谷絹。
いいかも。
「うん、よろしく! 会えて嬉しいよ!」
抱き寄せる。抱きしめる!
心臓が破裂しそうだ。けど幸せだ。
感情って素晴らしい!
私と彼は同じクラスの身長で、ちょうど彼の吐息が私の首筋にあたる。
心地良い。
なんだか、本当に、ずっと彼を探してた気がする。
幸せだ。体がポカポカとする。
お腹もキュンキュンだ。
これ以上このままでいたら本当にまずいので、離れる。
「……今のは、その、欧米式のハグというやつなのかな?」
メガネが話しかけてきた。
なんだ、邪魔すんなよ。
なんだ? この感情? 苛立ち、かな。
出久君にあってから感情がうまく制御出来ない。これが恋のデメリット、か。よくラブコメで思い悩んでるよね。
でも、感情制御……。私の中には出久君以外の感情はいらない。
出久君への感情は消去する。
これで、デメリットは無くなった。
「ええ、そんなところです。 ようやく会えた大切な人にはハグをするものなんです。」
「……ああ、そういうこと……か? ぼ……俺は飯田天だ。よろしく。」
「ええ、よろしく。 それで、出久君! ほら、なんだっけ? 君と会えたら色んな話しようとしてたけど忘れちゃった!」
楽しい、楽しい楽しい!
出久君が前にいるだけで幸せだ。
でも、もっと欲しい。彼が欲しい。
ちがう、彼のものになりたい!
支配されたい! 支配したい!
そして、彼の心も私だけのもの、だ。
そう思っていた。
彼はどこまでもヒーローだった。
主人公の"個性"はオールフォーワンから派生したものです。
そのため、幼い頃、ヒーローになりたいって思ったことも、
出久に惹かれたのも、
全部、彼女の"個性"が根源的なワンフォーオールに繋がっていたからです。