DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
ご了承のほどお願いします。
今回、救出完了後の帰還並びに、インターミッション的な第八話です。
では、どうぞ。
秘密基地に帰るために、行きと同じように屋根を跳んでいく晴明一行。
しかし瑠璃を抱きかかえていることから、行きほどの速度は出さずに気持ちゆっくりとした行軍になっていた。
だが、遅いとは言っても、それはあくまでも晴明たちの基準であり、その結果夜風を浴びることになる瑠璃は風の冷たさからか身じろぎをする。
「おじさん、寒いよ……」
「ああ、るーちゃんごめんね」
そう言って晴明は一時的に屋根の上で停止すると、瑠璃に上着をかけて休憩する。
それを疑問に思ったジャックは晴明に話かける。
「おにいちゃん? ここで休憩するの?」
そのジャックの声で瑠璃は初めて彼女の存在に気付いたようで。
「おじさん、この子だぁれ?」
と、晴明に問いかける。二人に問いかけられた晴明はと言うと。
「ああ、ジャック、少しぐらいだったらここで休んでも大丈夫だろう。それと、るーちゃん。この子はジャック、ホリンと一緒にるーちゃんを助けに来てたんだよ」
と、二人にそれぞれ告げる。
その言葉を聞いた二人、特に瑠璃は。
「そうなの? ジャックちゃん、ありがとう!」
そう言いながらジャックに抱きつく。抱きつかれたジャックは。
「え、うん……」
どことなく困惑した様子で助けを求めるように晴明の方を見る。
一方見られた晴明はというと、微笑ましいものを見るような目で二人を見ながら瑠璃に話かける。
「なぁ、るーちゃん」
「……どうしたの、おじさん?」
「もし、よかったらさ、ジャックと友だちになってくれないか?」
「おか──お兄ちゃん?!」
ジャックとしては瑠璃を引き剥がしてもらおうと思ったのに、蓋を開けてみれば何故か
そして瑠璃は瑠璃で。
「え?! うん、なる! ジャックちゃんよろしくね!」
と、即答しながらさらにギュウ、と抱きつく始末。
そんなこんなで、ジャックも流石に頭がオーバーフローを起こしたのか。
「あうあうあうぅ」
顔を真赤に染め上げながら、言葉にならぬ声を上げていた。
それを瑠璃は不思議そうな顔をして。
「ジャックちゃん、大丈夫?」
と、ジャックの顔を覗き込む。
さらにジャックは慌てるが、流石にかわいそうに思った晴明は瑠璃に。
「瑠璃ちゃん、もうそろそろ行こうか?」
と、呼びかける。その声を聞いた瑠璃は。
「うん!」
と、元気よく返事をして晴明に抱きつく。その姿を見てホッと一息つくジャックだったが。
「ジャックちゃんも、早く早く!」
と、何故か瑠璃が呼び始める。彼女はジャックも晴明に運んでもらっていたと勘違いしているようだ。
それを見た晴明とクー・フーリンは目配せをして。
「おう、何してんだ。ジャック、さっさと行くぞ」
と自身の胸を叩くクー・フーリン。その動作は、ジャックに抱きつけと言っているものだった。ジャック自身はそんなに乗り気ではないのだが、瑠璃が自身をジィ、と見ているため仕方なくクー・フーリンに抱きつく。
それで瑠璃はジャックのことは大丈夫だと思ったのか、今度は晴明を急かす。
「おじさん、早く行こ!」
その言葉に晴明は苦笑しながら。
「ああ、そうだね」
屋根の上から跳躍し、また進み始める。だが今回、瑠璃は目を閉じていないので。
「わぁ、すごーい! おじさん、はやい、はやい!」
と、言った具合にキャッキャッ、と喜んでいた。
そして晴明の横を並走するクー・フーリンに抱きかかえられているジャックを見て。
「ジャックちゃん、たのしいね!」
と、笑いながら告げてくる。
ジャック自身は普段から同じような行動をしているため、特に思うことはなかったはずなのだが、何故か満更でもない、と思いながら無意識のうちに笑っていた。
そのまま、主に瑠璃とジャックは和気藹々とした雰囲気のまま秘密基地への帰途へ就く。
それから、そう時間もかからぬうちに、瑠璃の救出チームは秘密基地へと帰還した。
「はい、るーちゃん、着いたよ」
瑠璃にそう告げながら、彼女を下ろす晴明。瑠璃自身は擬似的な空の旅が楽しかったのか、終始ニコニコとしていた。そして、二人にわずかに遅れる形でクー・フーリンとジャックも到着する。
ジャックの姿を見た瑠璃は、彼女の手を取ると早く行こう! とばかりにジャックを引っ張る。
その二人の姿を見た晴明とクー・フーリンは微笑ましく笑いながら天井入口のドアを開けて中にはいる。
中に入った瑠璃は、すごいすごいとはしゃいでいる。その姿に元気だな、と笑いながら中の扉を開けて帰還したことを告げる晴明だったが。
「おぉい、無事に帰ってきたぞぉぉぉっ?!」
そこにはなぜか下着にジャケットを羽織っただけの姿の透子がいた。
即座に回れ右、からの背後を向き、ついでにクー・フーリンの目潰しをする晴明。
ちなみに一緒に見ていたるーちゃんの目は、ちゃっかりジャックの手で塞がれていた。
「どうしたの、ジャックちゃん?」
「ううん、なんでもないよ、なんでも」
その横では目潰しをされたクー・フーリンが、ゴロゴロと転がっていたが。
そして透子は晴明にとって、さらに予想外の行動に出る。彼女にとっては見知らぬ男性がいるはずなのに悲鳴を上げることもなく、さらには晴明に抱きついてきたのだ。
「良かった、晴明さん、無事に戻ってこれたのねっ」
そう言いながらさらに抱きつく力を強める透子。その力に比例して晴明には彼女の体の柔らかさがダイレクトに感じられてしまう。あまりの事態に驚く晴明だったが。
「透子さん、こんな所に! と、言うか、なんて格好してるんですか!」
奥の物資集積所から、恐らくは透子を探していたジャンヌが現れて、晴明に抱きついている透子を引き剥がす。透子も抵抗しようとしていたようだが、いくら見た目が似ているとはいえ、そもそもただの人間が悪魔の力に敵うはずもなく、そのまま引き剥がされるが、透子の腕は未練がましく晴明の方へと伸ばされていた。
その時奥の部屋からカーマも現れて、現在の状況を見るとなにかに納得したように頷きながら、ジャンヌに語りかける。
「……レティシア、透子はこっちで面倒見ますから、晴明になにか話すことがあるんでしょう?」
「さくらさん……。そう、ですね。お願いします」
そう言いながらカーマに透子を引き渡すジャンヌ。透子自身は名残惜しそうにしていたが、カーマの。
「はいはい、晴明は逃げないから、こっち居ましょうねぇ~」
と、引っ張られて奥の部屋に消えていく。それを見送っていた晴明だったが。
「それで晴明さん。少しお話が……」
ジャンヌが話しかけてきたことにより正気に戻る。
「あ、あぁ。しかし、透子さんは一体どうしたんだよ?」
「そのことについてのお話なんです」
あまりにジャンヌが深刻そうな表情をしていたために、晴明も息を呑む。その時、いつの間にか痛みから復帰していたクー・フーリンが。
「ガキどもの面倒は俺が見とくから行ってこいよ。大事な話なんだろ」
と、晴明に告げる。晴明はそんなクー・フーリンに。
「ああ、済まない。助かるよホリン」
そう言うと今度はジャンヌの方に振り返り。
「それで、どこで話す?」
「それでは向こうで」
晴明の質問にジャンヌは物資集積所の奥で話すことを提案し、二人とも歩いていった。
奥まで来た晴明とジャンヌは、それぞれ物資が入れてある棚に背中を預け、晴明は腕を組んだ状態でジャンヌに話かける。
「それで結局話ってのは、何なんだ? 透子さんについてのことだとは、嫌でもわかるんだが」
晴明の質問に、ジャンヌはどこか答えづらそうにしながらも、意を決したように話し始める。
「……はっきり言いますと、透子さんはかなり危険な状態です」
「………………危険、とは?」
どのように危険な状態なのか要領を得なかった晴明は、さらにジャンヌに話を促す。それにジャンヌは──。
「精神が、です。結論から言うと、透子さんは今貴方に依存しているからこそ、なんとか精神を保っている状態です」
そう言ってジャンヌはそれを知ることになった経緯を説明する。
曰く、晴明を見送ってしばらくしたのちに、彼女は急にソワソワし始めてあちこちを徘徊し始めて、次にはやっぱり私も、とキャンピングカーまで行こうとしたために自身とカーマの二人で止めたが、その時にかなり取り乱したらしい。
そのため二人で話を聞いたところ、彼女は目の前でゾンビに肉親を喰われ、救出の時に彼女を囲んでいたゾンビたちは彼女の同僚や恩人たちの成れの果てだったそうだ。
その事から今の彼女は、知り合った人間が居なくなることを極端に恐れ、そしてさらにはその中で晴明が一番、というよりもむしろ晴明が居なくなったらもう後はゾンビに喰われるだけだ、と思いつめている状態なんだそうな。
だからこそ彼女は現状晴明だけが自身を守ることが出来る存在だと認識しており、その結果彼女は自身の体を使ってでも晴明を留め置くように行動しているようだ。
そのことを聞いた晴明は頭を抱えながら。
「つまり、なんだ。今日、もしも自衛隊に預けてた場合、抜け出すのはまだいい方で、最悪発狂していた可能性があったのかよ……」
「ええ、まぁ、そうですね……」
二人はそういった後深々と溜息をつく。そしてジャンヌは──。
「なので晴明さんは、ゾンビと戦う時以外、救出の現場に行く場合なども、可能な限り透子さんと行動をともにしてください」
ジャンヌにそう告げられた晴明は困ったような顔をしながら。
「いや、そんなこと言われてもなぁ……。まぁ、流石にそれで発狂されても目覚めが悪いし、可能な限り善処する」
と、だけ告げる。その言葉を聞いたジャンヌは少し肩の荷が下りたようにホッとしながら。
「ええ、あくまで可能な限りで。私たちの方でもフォローしますので」
と、晴明に申し訳無さそうに話す。そして話は終わったのか、晴明に対して戻るように提案する。
「それじゃ、話すことは終わったので、戻りましょう晴明さん。あまり遅くなるとまた変な感じに誤解されるかもですし」
「おい、怖いこと言ってくれるなよ」
そう言いながら二人は放送室へと戻るのだった。
放送室に戻った二人が見たものは、今度はちゃんと服を着た透子と瑠璃が楽しくおしゃべりをしている光景だった。
お姉さんと女の子が楽しくおしゃべりしている光景を見ると、先ほどのジャンヌの言っていたことが嘘のようだが。
その時、透子が晴明に気付き、そちらに視線をよこす。その瞳は情欲に濡れていて晴明は。あ、やっぱりジャンヌが言ってたように駄目なやつだわ、これ。と、思ってしまう。
思わず表情が引き攣りそうになる晴明だったが、なんとか我慢して普段の表情のまま透子に話かける。
「透子さん、大丈夫だったかい?」
「? えぇ、勿論。私が何かをしていたわけでもないし。それよりも晴明さん? このことは知り合いだったのかしら?」
そう晴明に質問しながら瑠璃を見る瞳には、ほんの僅かながら嫉妬による敵愾心が見え隠れしていた。そのことを察知した晴明は、自然な仕草で彼女の横に座る。その行動の結果、彼女の瞳から嫉妬が消えて、どこか優越感が漂ってくる。
そして晴明は透子の質問に答えようとするが、その前に瑠璃が。
「ねぇねぇ、お姉さんとおじさんって、恋人同士なの?」
と、透子に対して爆弾発言をしてくる。それを聞いた透子は。
「ゲホッゴホッ! 急に何を言い出すの!」
と、驚いた声を出したあとに。
「…………ねぇ、本当に私と晴明さん、恋人同士に見える?」
猫なで声で瑠璃に質問する透子。その問いに瑠璃は。
「お姉ちゃんたち、恋人同士じゃないの?」
と、首を傾げている。その反応を見た透子は苦笑いしながら。
「うん、私と晴明さんは
そう瑠璃に答える。その答えを聞いた瑠璃は。
「う~ん、そうなんだ。」
小さな声で呟いた後に、屈託のない笑みを浮かべて。
「頑張ってね、お姉ちゃん!」
と、何故か透子に対して激励を送る。それを聞いた透子は。
「晴明さん! この子、すごく良い子なんだけど!」
よほど嬉しかったのか、かなりハイテンションになり晴明に抱きついていた。しかもその時に飛び跳ねるように喜んでいたために、結果として晴明の顔に胸を押し付ける形で。
その姿を見た瑠璃は、二人はやっぱり恋人なのでは? と首を傾げていたようだったが。
そのまましばらくグダグダな状況だったが、透子もようやく落ち着いてきたのか抱きしめていた晴明を離す。尤もその頬は少しばかり赤く染まっていたが。
そして透子から開放された晴明もまた顔をほんのりと赤く染めていた。そんな空気を変えるために晴明は少しわざとらしく咳き込んだ後に話し始める。
「んう! とりあえず透子さんが落ち着いてくれたようで何より。それでこの子についてだが──」
そして晴明は瑠璃と出会った経緯、主に交通事故未遂などについて、そして彼女たち姉妹にお守りを上げたことについて話す。
「なるほど、そんなことがあったのね」
そして瑠璃を見た透子は彼女に微笑みながら。
「お姉さんも、この人に助けてもらったのよ?」
瑠璃にそう告げる。すると瑠璃は、晴明の方をまるでヒーローを見つけたかのように、キラキラとした目で見つめている。
そんな目で見つめられた晴明はどこかきまりが悪そうにしていたが、そういえばそろそろ夜も遅くなってきたと思い、彼女たち二人にもう寝るように告げる。
「さて、二人はもうそろそろ寝たほうが良い」
そう言いながら晴明本人は寝室とは別の場所に行こうとするが、それを二人が手を握ることで阻まれる。
「…………どうした?」
「おじさん、一緒に寝よ?」
「瑠璃ちゃんの言う通りよ、一緒に寝ましょう?」
「いや、流石にそれは──」
思わず断ろうとする晴明だったが、その時ジャンヌが言っていた言葉がよぎる。
──可能な限り透子さんと行動をともにしてください──。
「あ~、そうだったなぁ……。分かった、分かったよ」
晴明が折れたことで、瑠璃と透子は喜びのハイタッチを交わす。
その姿を見た晴明は複雑な表情を浮かべていたが、大きく息を吐きだすと。
「それじゃあ、とっとと寝よう。明日もなにかあるかも知れないからな」
そう言いつつ、二人を連れて寝室へと入っていくのであった。