DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
倒壊した衝撃でもくもくと上がる煙の向こう。そこに魔王-マーラによって吹き飛ばされた晴明の姿があった。
彼は強かに校舎の壁へ叩き付けられた衝撃で頭から血を流しながら悪態をついている。
「くそったれが、まさかこの程度も……ぐぅ!」
《マスター、大丈夫?!》
ずきん、と頭や背中に走る痛みに呻く晴明。
そんな彼の心配をしていたバロウズだが、当の晴明は彼女の心配に答える時間すら惜しい、と指示を出し始める。
「バロウズ、あいつに、朱音に連絡を。……今すぐ御方への防備を固めろ、と」
《えっ……? マスター?》
「急げっ! 恐らく、結界はもう長くは持たない!」
しどろもどろしていたバロウズを一喝する晴明。
先ほど空間から響いた軋むような音。それは巡ヶ丘全体に張られた結界が壊されようとしていた音だった。
そもそも、結界が張られた当初、この結界はあくまで巡ヶ丘内部で起こるであろう、災厄を外に出さないために敷かれたものだ。
罷り間違っても大悪魔を拘束する類いのものではない。
しかし、現実には
それらの存在は、ただそこにいるだけで結界に多大なダメージを与えていた。
そこにトドメとばかりの魔王-マーラの顕現。
もはや、結界が崩壊するのは必然でしかなかった。むしろ、現時点でまだ崩壊していないのが奇跡、といいたくなる状況だ。
しかし、それでももはや崩壊は時間の問題。ならば、一刻も早く事態を伝え、対応する時間を作るのが肝要。
だからこそ晴明は朱音に、ライドウに連絡するようにせっついたのだ。
《り、了解――!》
バロウズも晴明の余裕のなさに事態が逼迫していることを理解したようで、ライドウの端末にメールを送る。
それを確認した晴明は自身が破壊した校舎の壁から外へ飛び出していく。
自身の身体をうねうねと動かしていたマーラはご機嫌な様子を見せている。その理由は……。
「ぐわははははははっ――! 結構、結構。以前見た時はヤキモキしておったが、どうやらきちんと、イタしておったようじゃのう!」
その言葉に、マーラが何を言っているのか察し、なおかつ対象になった慈、透子、朱夏は顔を赤らめる。
ちなみに、幸か不幸か美紀と圭。残りの対象となる二人は意識が朦朧としていることもあって聞こえていなかったようだ。
そんな彼女らを他の面々。特に女性陣は気の毒そうに見やる。
いくらなんでも見た目が卑猥な化け物に夜の生活について暴露されるなど、羞恥プレイを越えた拷問だろう。それがたとえ周知の事実であったとしても、だ。
なお、その中で篠生だけは面々を羨ましそうに、物欲しそうに見つめている。
その様子を見つけたマーラのご機嫌はさらに高まる。
その証拠にマーラの身体はさらに艶が良くなり、バキバキに硬くなっている。
「ふははっ、重畳、重畳。女は度胸じゃ! 己の望むまま動くが良い! この儂、第六天魔王にして、愛の神――」
ご機嫌だったマーラのもとに矢の雨が降り注ぐ。
秘神-カーマが放った天扇弓だ。
せっかく上機嫌だったマーラは、カーマに邪魔されたことで少し不機嫌になる、が……。
「流石に、あなたと同一視されるのは迷惑なんですけどぉ……!」
「ぐわははははっ! そうかそうか、お主が
本来の姿と違う、
「まぁ、そう言うでないわ。同じ
「……………………はぁ?」
マーラから放たれた衝撃的な発言に、思わず反応が遅れるカーマ。
女神? なにが……?
あの卑猥に、うねうねしている
カーマだけではなく、その場にいた全員が目を剥く。そんな馬鹿なことがあるか! 全員の心中が一致した瞬間であった。
……ちなみに、マーラ=女神説は実際に存在し、女神転生シリーズではその説が採用されていたりする。
それはともかく、というにはあまりにも衝撃的な情報だが。それはともかくとして――。
「攻撃された以上、反撃しない。というのは無作法よな……!」
「……えっ?」
暗に今から攻撃するぞ、と宣いながら脈動するマーラ。
いちいち絵面が最悪なのだが、その後、ある意味さらに最悪な攻撃がカーマに降り注ぐ。
「――マララギダイン!」
マーラの登頂部から発射された、白い炎にも液体にも見える何かがカーマに向かって降り注ぐ。
そしてそれを呆然と見ていたカーマであるが、正気に戻った時には既に遅く――。
「……うぇ! ――あっちゅ、あっちゅ!」
『うわぁ……』
……白濁濡れになった美女が、付着したものの熱さで地面をのたうち回っている。
そのことに非常事態であると理解しながらも、ドン引きしている学園生活部と大学生組の面々。
……心なしか、敵方である筈の像の異形。ギリメカラも一歩引いているように見えた。
色々と最悪すぎる絵面とともに、何とも言えない空気が周囲――マーラを除く――に流れる。
だが、直後。その空気を破るがごとく一陣の風が駆け抜ける!
「――――雄ォォォォォォォォォォ!」
――晴明だ!
彼が奇襲気味にマーラの懐に飛び込むと、手に持っていたメギドファイアを乱射。
「……なんと、ぬおぉぉ――!」
ダメージ自体は低いものの、晴明の奇襲に怯むマーラ。
それを見た晴明は、さらに畳み掛けるように連激を加える。
「消えろよ、デス――――バウンド!」
晴明の斬撃が幾重にもなってマーラに殺到する。そして、マーラは最初の奇襲で態勢を崩していたことからも回避など出来ずすべて直撃する。だが――。
「ぬははははははは――――! この程度で儂をイかせることは出来ぬわぁぁぁぁぁぁ!」
マーラは自身の身体を仰け反らせることで無事をアピールする。そして、今度はこちらの番。とばかりに晴明に照準を合わせ――。
「そぅら、イノセントタック! 儂の美技に酔いしれるが良い――!」
彼に向かって、何度も登頂部の突きを繰り出すマーラ。
しかし、そんなものに当たってやる義理――というよりも、一撃でも当たれば致命傷になりかねない――のない晴明は、直線的な動きを見切り、回避すると即座に反撃!
メギドファイアの銃口にMAGを集め、それをマーラに叩き込む!
その後、いつまでもマーラの攻撃範囲にとどまる必要のない晴明は、即座に間合いから離れた。
晴明から手痛い反撃を受けたマーラは、ぷすぷすと身体から煙を出しながらも感心していた。
「ぶわっはっはっはっ! なかなかなテクニシャンではないか! だが――!」
その言葉とともに今まで傍観に徹していた邪鬼-ギリメカラたちがマーラを護るように立ち塞がる。
マーラの前に存在する、完全物理耐性の盾二枚。という厄介な状況。むろん、晴明にも突破する手立てはあるにはある。が、あまり時間を掛けすぎると、それだけマーラをフリーにすることを意味する。
今でさえ振り回されている女性陣が、そんな状態になったらどうなるか。それを考えれば、即座に突破する必要がある。
さて、どうするか。そう思案する晴明の耳にアレックスの声が聞こえてきた。
「ジョージ! 召喚シークエンス!」
《イエス、バディ――》
彼女の掛け声とともに足元に召喚陣が――。
「召喚――」
そして、彼女の左右にそれぞれMAGが噴出し、形作っていく。
それは二体の異形。彼女がかつてシュバルツバースにて調伏した二体の悪魔。
「やっと出番か、アレックス!」
「……ふん」
そこには上半身は人で、下半身はまるで精霊のように存在しない異形と、梟と狼、大蛇を合わせたような異形の二体の悪魔が顕現。
「また手伝ってもらうわよ。シャイターン、アモン」
「……ふん」
アレックスの言葉に鼻を鳴らすアモンと呼ばれた悪魔。
その悪魔の名は魔王-アモン。フォルネウスやデカラビアと同じくソロモン72柱の悪魔の一体であり、その力は上級神魔に匹敵する。
「ははは、俺様に任せろ! ちゃんと守ってやるぜ!」
そう自信満々にアレックスへ告げる悪魔の名は妖魔-シャイターン。
アラビアの精霊であり、イフリートのひ孫。また、サタンとも同一視されている。
だが、本悪魔はアレックスに惚れ込んでおり、彼女の忠実な仲魔として行動をともにしている。
アモンはおもむろに腕を天に掲げる。そして――。
「消し飛ぶが良い! ――トリスアギオン!」
ギリメカラの内の一体、その頭上から業火が舞い降りる。
かの魔法、それは火炎系の上級魔法であるアギダインを超える魔法として、限られた存在しか行使できない大魔法だ。
そして、いくら絶対的な物理耐性を持つギリメカラでも魔法には無力。
「…………――!」
トリスアギオンの直撃を受けたギリメカラはまともな悲鳴を上げることも出来ず、瞬時に焼滅。そこには灰すらも残ってはいなかった。
「蘆屋さん――!」
晴明にアレックスから声がかかる。それは、この場は任せろ。ということに他ならず。
「任せた――!」
晴明は後のことをアレックスに任せ、再びマーラと決着をつけるため突撃。
マーラもまた、迎撃するため待ち構えるのだった。