DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第九十三話 奇妙な縁

 あの後、マーラはまだまだ余裕がありそうであったが、何を思ったのかそのまま撤退。もっともマーラを取り逃がしたことで杏子は憤慨していたが。

 

「あのくそ卑猥物! 今度会ったら、二度と減らず口を叩けないようにしてやる!」

 

 そんな怒髪天を衝く杏子に、さやかは苦笑いを浮かべて彼女を落ち着かせようとする。しかし――。

 

「どうどう、杏子。落ち着いて……」

「アタシは馬かっ!」

「ひぁぁっ! ちょっ、杏子――!」

 

 八つ当たりぎみにさやかの肩をがっくんがっくん揺らす杏子。

 そんな杏子の行動にさやかは目を回している。

 突然見知らぬ助っ人の豹変に驚き、目を白黒させている学園生活部と大学生組。

 その中で彼女たちと数年来の付き合いである朱夏だけが、懐かしいなぁ。と、半ば現実逃避気味に乾いた笑み浮かべていた。

 

(本当に変わらないわね……)

 

 在りし日の、見滝原で行われた彼女らとの共闘、そして日常。その続きがそこにはあった。

 

「……ふふっ」

 

 それは朱夏の口から出た、無意識な安堵。

 彼女とてかつて、聖イシドロス大学が健在だった頃、女性陣のリーダーとして気の休まらぬ日々を過ごした。

 大学が悪魔の、フォルネウスたちの手で崩壊した後は、数少ない生き残り。そしてほぼ唯一――派遣されていたジャンヌを除けば――悪魔への戦力として戦える彼女が大学生組の中核として機能していた。

 学園生活部と合流したあとこそ、晴明を始めとした他戦力の負担も多少は減ったが、それでも他の面々。晴明とアレックス、超人二人を除けば高位の戦力ということで、彼女自身表に出すことはなかったが、朱夏にかかるプレッシャーはかなりのものであった。

 そんな彼女にとって、気の置けない友人たちの肩肘張らないやり取りは、まさしく心の清涼剤となったのだ。

 

 ……ただ、まぁ――。

 

「二人とも、そこまでにしておきなさいな」

 

 ――流石に、この友人二人が仲間たち相手に無様をさらすのは思うところがあり、主に杏子を止めるべく語りかける。

 

「あぁん? ……て、朱夏。無事だったんだな! 心配したんだぞ!」

 

 険悪な雰囲気であった杏子だが、声をかけてきたのが朱夏だと分かると、揺さぶっていたさやかをほっぽりだして彼女へ抱きつく。

 突然杏子に抱きつかれたことで、目を白黒させて驚く朱夏。

 そして杏子から解放されたさやかもまた、ぐわんぐわんと回っている目を覚ますように頭を振ると朱夏に話しかける。

 

「いやはや、助かったよ朱夏ぁ……。でも、本当に無事でよかった。みんな心配してたよ?」

「あ、あはは……」

 

 杏子からの突然な抱きつき、そしてどこか呆れた、そして安堵を浮かべるさやかの声を聞いた朱夏は乾いた笑みを浮かべる。

 かつてともに死線をくぐった戦友たちの変わらぬ様子に彼女自身もまた安堵を覚えていたが、それ以上に気恥ずかしかったのだ。

 事実、背中におそらく晶あたりの生暖かい視線を感じているのだから、なおさらに。

 

「……あの、お二人はアヤカさんのお知り合い、ですか?」

 

 朱夏との再開を喜んでいた二人に、そんな疑問が聞こえてくる。

 その質問をした人物を見る魔法少女の二人。そこには多少休めたことで、少しだけ顔色がマシになった圭がいた。

 

「あ、と。すみません、私は圭、祠堂圭っていいます。アヤカさんとの関係でいえば、妹弟子、て感じに――」

「「……はぁ?!」」

「……うそ」

 

 圭の自己紹介に驚く杏子とさやか。そして、近くで聞いていた天音。

 それは例によって晴明が弟子を取ったということに対してであった。

 ちなみに、天音の耳には晴明が新たに弟子を、美紀と圭、二人の弟子を取ったという噂が確かに入ってきていたが、正直半信半疑であった。

 それもその弟子本人が出てきたことで認めざるを得なくなったのだが。

 それはともかく――。

 

「んん……! それで私らが朱夏の知り合いか、だったよね? うん、そうだよ。私は朱夏の中学の頃の同級生で、こっちの杏子は――」

 

 そこで言葉に詰まるさやか。どう例えるべきか、少し悩んでしまったのだ。その理由は……。

 

「んぁ、あぁ……。まぁ、アタシはガッコいってなかったしなぁ……。なんて言うべきやら……」

 

 少し、困ったように笑って告げる杏子。事実、彼女はとある家庭の事情から学校に通っていなかった。

 彼女はがしがしと頭を掻きながら、圭が晴明の弟子なら話しても大丈夫だろう、と考えもう一つの朱夏との繋がりを口にする。

 

「まぁ、簡単に言っちまえば、アタシら二人は一時期、朱夏と一緒に戦ってたんだよ。そっちの巫女さんは違うけどな」

 

 そう言いながら天音を見る杏子。

 そこで初めて朱夏と晴明以外の面々は、天音が巫女であることを知る。

 まぁ、それもある意味仕方ない。彼女の格好は一般的な巫女とは逸脱しており、どう考えてもパッと見、巫女とは思えなかったのだから。

 そして、そんな雑な説明をされた天音は、頬をぴくぴく、と痙攣させながら面々へ自己紹介する。

 

「では、わたくしの名は天音。九頭竜天音と申します。そこの失礼な――」

「おいっ!」

「――失礼な娘が言ったように、これでも巫女であるとともに九頭竜家の今代当主でもあります。ついでに言えばそこにいる彼――」

 

 そう言って、未だ完全に回復しきれていない晴明を見る。

 

「――彼とは遠い血縁関係でもあります。もともと九頭竜家は蘆屋本家から分かたれた家の一つでありますから」

「ふえぇ……」

 

 天音から説明を受けた圭は目をぱちくりとさせ、感嘆の声をあげている。対して朱夏は、どこか苦々しそうな表情を浮かべていた。

 と、言うのも天音がそう言うことを告げる場合は、大抵牽制。今回の場合、晴明と自身が近しい間柄であるということを周囲に誇示する意味合いがあるからだ。

 つまり、簡単に言ってしまえば天音は圭たちに、晴明は自分のものだ。と、宣言しているに等しい。だからこそ、朱夏は苦々しい顔をしていたのだ。

 それはともかくとして、天音が自己紹介をしたことで魔法少女二人は、まだ自己紹介を終えてないことに気付き、彼女らもそれに続く。

 

「それじゃ、私から。私は美樹さやか、さやかで良いよ」

「みき……?」

「うん? どしたの?」

 

 さやかの自己紹介を受けて、ここにいる多くの人が美紀を見る。

 そして美紀もまた、どこかきょとんとした様子で自身の名を告げる。

 

「えっと、私も美紀って言います。直樹美紀、です」

「へぇ、そうなんだ! じゃあ、私と貴女でみきみきコンビだね!」

「なんですか、それ?」

 

 そう言ってクスクス笑う美紀。さやかもまた、同じくおおらかに笑っている。

 そうして、当たりに和やかな雰囲気が流れる。その中で今度は杏子が自己紹介を始めた。

 

「んじゃ、次はアタシだな。アタシは佐倉、佐倉杏子だ――」

 

 その自己紹介を受け、びくり、と肩を震わせる人物がいた。その人物は恐る恐る杏子へ話しかける。

 

「……もしかして、本当に杏子ちゃん?」

「……んぁ?」

 

 急に話しかけられたことで、不思議そうに声が聞こえてきた方向を見る杏子。そして、彼女は声の主を見て目を見開く。

 

「そんな、嘘だろ……」

 

 そこには彼女にとって予想外の人物。

 

「……めぐ、ねえ?」

 

 ……かつて、彼女が魔法少女として力を行使した結果、絶望の果てに自身を残して家族全員と無理心中を図った父の妹。彼女、杏子にとっては叔母にあたる人物。()()慈が十字架を握りしめ、彼女を見つめていた。

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