DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
覚悟を決めたのであれば、即動くべきだ。と判断した晴明は学園生活部や大学生組の主要メンバーを集めていた。
「それで急にどうしたの、晴明さん?」
暫定的な大学生組のリーダーでペルソナ使いの朱夏は疑問を抱くように問いかける。
彼女にとっても、昨日マーラから話された内容はそれなりに衝撃的なものだった。なにせ、バイオハザード前まで接点がなかったとはいえ、澄子がマヨーネの弟子である、というのであれば多少なりとも師匠の意向を受けて行動していた、と思っていたのだから。
「あぁ、今後のことについて
「話しておきたい……。相談、ではなく?」
「あぁ、そうだ」
晴明の肯定に、朱夏は訝しげな表情を浮かべる。いくらなんでも、こんな状況でスタンドプレーに走る、なんてことはあまり見たことがない。まぁ、そもそも晴明とともに戦う、ということはあまりなかったので、そこまで信憑性が高くないと言えるが。
それはともかくとして晴明が何を話すのか、興味、という意味でもそうだし、何よりわざわざ晴明が告げたということは、今後の指針について。というのは理解できた朱夏は真剣な表情を浮かべる。
それでもこれから語られる晴明の言葉は、彼女からしても予想外だった。
「これより俺は暫定的な敵本拠のランダルへ打って出るつもりだ。学園生活部と朱夏たち、大学生たち。そして、天音に蘆屋晴明の名をもって協力を要請したい」
「………………は?」
「正気ですか、晴明さま?」
晴明の要請に朱夏は驚きのあまり目をまんまるに見開いて呆けた声をあげ、天音は畏き御方の勅を忘れたのか、と正気を疑う。
もちろん、晴明は正気を失ったわけでも狂気に陥ったわけでもない。だが、その疑いを持たれることを理解していた晴明は、真剣な表情で己が真意を話す。
「もちろん御方の勅を忘れたつもりはない。だが、由紀さんを守るにしても――」
ちらり、と由紀を見る。彼女の瞳には爛々とした決意がこもっており、天音の目からしても彼女がただ守られるのを良しとしていないのが見てとれた。
「ねぇ、天音さん。わたし、戦えるよ」
「それは……」
天音も分かっている、魔王-マーラとの戦闘で彼女が
しかし、それはあくまで天音の見解。由紀からすれば、はいそうですか。などと納得できるものではない。
「ねぇ、わたし。引くつもりなんてないよ」
由紀が発したとは思えないほど低く、決意がこもった声。普段の由紀を知る慈や悠里などは驚いた顔で彼女を見ている。彼女がここまで感情を、しかも暖かい感情ではなく冷たい感情を露にすることなど見たことがなかった。
「なぁ天音、認めてくれねぇか。あの娘が、由紀さんが戦場に立つことを」
「晴明さま、なにを……?!」
何を言っているのか。なぜ彼が、蘆屋晴明がそこまで由紀を戦場に立たせようとするのか理解できない。
かつて、彼が朱夏を弟子にとった時。彼は戦場へ立たせることに否定的だった。その彼が、なぜ由紀に関して、頑なにそうするのか。
もし、この場に朱音が、ライドウがいたら理解しただろう。彼が由紀を戦場に連れていこうとする意味を。その本質を。
だが、天音はその本質に気付くことができない。それは彼女が晴明が転生者である、という意味を、本当の意味で正しく認識できていないから。
しかし、それも仕方ないこと。彼女にとって晴明は蘆屋道満の転生体であり、朱音が知るように観測世界の転生体だと認識できていない。そして、間違った情報からは、間違った答えしか導き出せない。
さきほども言ったように朱音がいれば、晴明が由紀を戦場に連れ出すのも苦渋の決断だと気付いた筈だ。すなわち、仮に由紀を巡ヶ丘学院高校に置いていったとしても危険にさらすだけ、と考えている、ということに。
そして、その晴明の認識は正しい。まず、はじめに由紀はワイルドのペルソナ使い。かつて、フィレモンに見初められたペルソナ使いやベルベットルームの客人となった者たちと同じように、彼女は選ばれた、選ばれてしまった側の人間だ。その彼女は否が応でも歴史という名の濁流に飲み込まれる運命にある。
そしてもう一つ。それは彼女もまた
それは、今川の姫ということではない。それは、由紀もまた――。
かつて聖霊は言った。――しかし、あの人の子からは
由紀がペルソナを進化させたとき、由紀はこう告げた。――たとえ、かつてのわたしと違っていても――。
……そう、自覚こそないが彼女もまた転生者であった。ただ、晴明のように観測世界からではなく、デジタルデビルストーリー 女神転生に登場する中島朱美がイザナギの、そして白鷺弓子がイザナミの転生体であるように、彼女は、丈槍由紀はマリアの転生体。いわば、彼女のペルソナはある意味、かつての彼女そのものであった。
慈が何かと由紀を気に掛けていた理由。それは彼女自身の気質にもあったが、それとともにそのことを無意識に感じていたのも、またその理由であり、聖霊が由紀を優先していたのも同じ理由だった。
そして、それはまだ他の大天使たち、熾天使たちには認識されていない。だが、もし、それがバレた場合。彼女は間違いなくかの天使たちの標的となる。新たな
だからこそ、晴明は由紀を置いていく。という選択肢を取るわけにはいかなかった。由紀を守るためにも。そして、それを気付かれる前に事を収めるため、晴明は無謀だとしても動くしか選択肢が残されていなかった。
だからこそ、晴明は――。
「……頼む、天音」
天音に深々と頭を下げて懇願する。それが由紀を守るため、もっとも確実な方法だと認識していたから。そして、同時に万が一の場合。己の命すら捨て石にして由紀を守る。そう覚悟して。
天音にとって晴明の行動は理解不能だった。それでも、彼が意味もなくこんな行動をする男ではないことくらいは理解している。そして、己が恋い焦がれる男を誰よりも信頼している。
はぁ、とため息をつく天音。本人からすると今も由紀が戦場へ立つのは反対だ。でも……。
「晴明さま。それが必要、なのですね?」
「あぁ、そうだ。必要なんだ」
問いに答える晴明。それは同時に自身に言い聞かせるようで――。
「分かり、ました……」
晴明もまた苦渋の決断だったと知り、ついに折れた天音。彼女が折れる姿を見て、由紀はやった! と、歓声をあげるのだった。