DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
由紀が天音に自身が協力することを認めさせた後、他の協力要請もトントン拍子にまとまり――実際のところ、由紀に関しては慈も心配していたが、彼女の大丈夫、大丈夫だから。という押しに圧され、無理矢理認めさせられていた――具体的な今後の話に移っていった。
「それでランダルに向かうのは良いんだけど、晴明さんがわざわざ言う以上、なにか問題がある。ということよね?」
朱夏の半ば確信している、とも取れる晴明はこくり、と首肯する。そして、己が以前から感じていた懸念を口にする。
「ああ、そうだ。魔王-マーラの情報提供によって多神連合とファントムソサエティが動かない、というのは確かになった」
彼はすくり、と席を立つと後ろにあった黒板にかつかつ、とランダル・コーポレーションという文字。そしてその下にメシア、ガイア、ラストバタリオン、多神連合、ファントムソサエティというも字を書く。それから多神連合、ファントムソサエティという文字を消すようにペケ印を上から書いた。
「そしてマーラがこちらに協力する以上、ガイア教もまた今回の争いに手出しするつもりはないのだろう」
同じように今度はガイアという文字にペケ印をつける。
「つまり、現時点で敵対する可能性があるのはメシア、そしてラストバタリオンとなる」
そう言いながら晴明は、ラストバタリオンという文字の回りをすぅ、と円で囲む。そして、そこから棒線を引くと文字を新たに書いていく。そこにはフィンメル・フォイアーと書かれていた。
「問題はこのラストバタリオン。正確には彼らが運用している可能性があるパワードスーツだ」
「パワードスーツ……? デモニカと同じものなんですか?」
《しかしアレックス。少なくとも表の情報にそのようなパワードスーツの記述は存在しない。なら別物の可能性もある筈だ》
アレックスの疑問を、デモニカスーツのAI、ジョージは独自に調べたようで表の世界にはその様なものない筈だ、と否定する。
それに晴明は、ああ、そうだな。と肯定すると補足説明を続ける。
「昨日天音がラストバタリオンの他に聖槍騎士団、という組織を告げたのを覚えているだろう。やつらはラストバタリオンの中でも特に対オカルトに特化した部隊だ」
そこまで言ってぐるり、と回りを見渡す晴明。全員がなんとか話についてきている、と確認した彼は続きを話す。
「それはやつらの装備。聖槍という名に冠している」
「……聖槍? それって、もしかして……?!」
聖槍、という意味に気付いたのだろう。慈はハッとした表情で口許を塞ぎ、驚きをあらわにする。そして彼女が察した事実は正しかった。
「そう、それはかつて
晴明の言葉に周りはざわざわ、と騒がしくなる。特に慈は修道女にこそならなかったが、それでもキリスト教の信徒だということは変わらない。
また彼女の姪である杏子も同じく敬虔な――しかもからかいも含まれているとはいえ、仲間内で聖女などと呼ばれている――信徒であったことに違いはなく、目を白黒させて驚いていた。
「なんで、それを……。いや、待てよ。なんで
杏子が驚きながらも疑問を呈する。それもそうだろう。なにせ、ロンギヌスの槍は聖人、救世主を貫いた槍だ。その逸話を考えれば相手となるのは悪魔よりもむしろ神に連なる系譜。天使などに特効があると考えられる。
メシア教相手に、と考えればなにもおかしな話ではない。しかし、軍隊の武装として考えるならばあまりに不適当だ。
なぜなら軍隊とは本来あらゆる場面、あらゆる敵を想定しておかねばならず、それ故にあらゆる敵に一定の効果を発揮する武装を装備するのが望ましい。もちろん特定環境下で行動する場合、それ専用の武装を――山岳地帯で活躍する山岳歩兵や、上陸戦を想定した海兵隊など――装備するのが一般的だ。
そして、それを考えるとキリスト教圏である欧州の国家。ドイツ第三帝国であれば、本来想定すべきは天使よりも悪魔。なのにも拘わらず敢えてロンギヌスの槍をコピーしてまで配備する意味が分からなかった。
その教この考えはある意味正しく、ある意味間違っていた。それを正すため、晴明は口を開く。
「杏子の考えも間違ってはいない。でも、一つ抜けている部分がある」
「……なにが、だ?」
「それは人の軍隊が相手取るものの大半のことが抜け落ちていることだ」
そう、軍隊の本来の相手は敵国の人間。天使でも悪魔でもない。ある意味当然すぎる話であり、それ故に杏子の頭から抜け落ちていた。
その指摘を受け、ハッとする杏子。しかし、だからと言って疑問が解消されたわけではなかった。
そして、その疑問の答えを晴明は口にする。
「それと、かの部隊はオカルト専門と言ったが、それを組み合わせれば見えてくる筈だ」
と、言いながらちらり、と朱夏を見る。突然、視線を送られた朱夏は困惑する、がかつて晴明に教えられたことが頭によぎる。
「……そう、そういうことね。私たちペルソナ使いは
朱夏の独り言に、我が意を得たり、とばかりに晴明は相槌を打つ。
「そうだ、ロンギヌスコピーの本質はペルソナ。すなわち異能封じの武装、という点だ」
ロンギヌスコピーの本質を聞いた朱夏たち、ペルソナ使いの顔が曇る。いわば、自身の力を封じられるということだ。
「だからこそ、それらの相手は美紀、圭たちが重要になるだろう」
「私たちが……」
急に話題を振られたことでびくり、と反応する二人。彼女らとしても、まさか半人前だと自覚していた自分たちが頼られるとは思っていなかった。
まぁ、今回の場合。アレックスや天音、そして晴明自身も油断や慢心は無縁――むしろ、敵の根拠地に攻め入るということで、それなりに緊張している――からこそ、念のため彼女らへ話題を振ったというのが正しい。
「だが、正直お前たち二人の力では、まだ頼りないのも事実。だから――」
晴明はおもむろにガントレットを操作する。
「本来、今の圭では扱える力量ではないが……」
床に召喚陣が描かれ悪魔が召喚される。その悪魔は圭たちがよく知る悪魔。
「おかあさん、なにか用事?」
「ジャックちゃん?」
外道-ジャックリパーはこてん、と首をかしげ、サラサラとした短めの銀髪が揺れる。
晴明はジャックの頭を優しく撫でる。ジャックは気持ち良さそうに目を細めている。
「ジャック、お前に頼みたいことがある」
「なぁに?」
「これからは俺じゃなくて、圭を助けてやって欲しい」
それは、実質的にジャックリパーの契約を弟子である圭に譲渡する、という意味であった。
まさかのお願いに圭以上にジャックも驚いていた。
「……おかあさん? わたしたち、もう必要ない、の?」
涙声になって問いかけてくるジャック。もちろん、晴明からすればそんな意図はない。
「言っただろう、頼みたい、と。俺が契約している悪魔で圭が扱える可能性があるのはお前とジャンヌだけ。そしてジャンヌを渡すわけにはいかない以上、な」
「……うん」
返事をしながらぎゅ、と抱きつく。そんなジャックを晴明も抱きしめ返す。そしてしばらくそのまま時が過ぎ、満足したのか、ジャックは晴明から離れると、圭を見る。そして――。
「けい、コンゴトモヨロシク」
それは、彼女が圭を主だと認めた、ということであった。