DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第百五話 いざ、ランダルへ

 崩壊した市街を一つの影が駆ける。辺りには損壊した乗用車やトラックが放置され、いたるところに人の、損傷した死骸が打ち捨てられている。

 それと同じようにあちらこちらに蠢く人だった()()。学園生活部が()()()と呼ぶゾンビたち。

 それらは駆ける影に気付くとヴゥ、と唸り声をあげて襲いかかろうとして――。

 

 ――直後。銀閃が奔り、頸が跳ぶ。

 

 失踪する影に絶ち切られ、切断面から勢いよく血が噴き出す。辺りはびちゃびちゃと鮮血に染まる。が、疾走する影にそれが付着することはない。

 その血が危険極まりない、ということを承知しているからだ。そしてゾンビだったモノは打ち捨てられた死骸の一つに加わる。

 

 ……よく見れば打ち捨てられた死骸のなかには明らかに現実的ではない死因。全身が炭化したものや、四肢が切断されたものが混じっている。

 それらはすべて、かつてゾンビだったモノ。疾走する影、動く暴虐によってもたらされたもの。

 その暴虐は立ち止まり、口を開いた。

 

「これでここら辺りのかれらは掃討できた筈だが……。バロウズ」

《アイアイ、マスター。――エネミーソナーに反応無し。大丈夫みたいよ》

 

 その影の正体は、学園生活部に先駆けて先発した蘆屋晴明だった。彼は己の弟子たち、祠堂圭と直樹美紀。二人へ宣言したように前もって道中の障害となり得る存在――かれらや悪魔――を殲滅しながら先へ進んでいた。

 むろん、その殲滅した道を本隊。学園生活部の面々が進まなければ意味がない。が、そちらについては既に手を打っていた。

 それの軸となるのはガントレットのAIであるバロウズと、アレックスが着ていたデモニカスーツのAIであるジョージ。この二つのAIで常時周辺のデータを共有し、経路の案内を担っている。

 

「それで、この先は……と」

 

 晴明はバロウズのエリアサーチ能力だけではなく、己が鍛え上げた気配察知。いわば悪魔たちの殺意や、ゾンビたちが発する妙な気配。それらを十分に駆使して先へ進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後、何か問題が発生することもなく晴明はランダルまでの道を踏破。行程の敵対的な存在をすべて狩り終わって学園生活部、そして朱夏たち大学生組や透子たち秘密基地メンバーを待っていた。

 

「しかし……」

《マスター?》

 

 本隊たる彼女らを待ちながら、晴明は道中で感じていた疑問を口にする。

 

「この道すがら俺たち以外の戦闘痕を発見できなかった」

 

 そうして眼前にあるランダル巡ヶ丘支部を睨み付ける。

 そう、本来晴明からすれば聖槍騎士団やメシア教。その戦力をある程度削りたい、という意図から先駆けとして先発して自身をある意味囮としたのだ。

 しかし、結果としてそれは不発。道中にいたのはゾンビや野良悪魔たちのみ。肩透かしを食らった気分だった。

 そして何より問題なのが……。

 

「なら、もしかすると聖槍騎士団は既に――」

 

 ランダル内部に到達し、メシア教と抗争をはじめている、という可能性。また、聖槍騎士団だけではなく一般兵がいることも考えられるし、何より。

 晴明はなかに気取られないよう、近づいて覗き込む。そこには建物内部に徘徊するゾンビの姿。

 当然のことながら、暫定的にランダルが原因だと考えていたが、事実その通りだった。その証拠とばかりに建物内にゾンビがいるのだから。

 

「……やれやれ、これは正面突破しようものならメシアやラストバタリオンに感づかれる可能性が高い、か」

 

 ゾンビ程度なら晴明はもとより、今なら彼の弟子である圭や美紀でも十分に蹂躙できる。むしろ彼女たちに蹂躙させて成長の糧にする、というのも方法の一つだろう。

 だが問題は先ほども言ったように、それをすれば天使やラストバタリオンに感づかれる可能性が高いこと。少なくとも敵に囲まれて消耗する事態は避けたいのが本音だ。

 そうするとなると、侵入口は限られてくる。

 

 そんなことをつらつらと考えていた晴明の耳に聞こえてきた、キキィ、という金属が擦れる音。それは透子所有のキャンピングカー、つまり本隊がこちらに到着した音だった。

 キャンピングカーの扉がバタン、と勢いよく開き、とててっ、と美紀と圭が晴明のもとへ走ってくる。

 たとえ僅かな間、晴明は大丈夫だろうと分かっていても彼女らからすれば無事な姿を見て感極まっていた。

 これは理性ではなく感情の問題。己が好いた男が無事だったことに安堵する女の(さが)なのだから。

 

 もっとも、当の晴明は自身へ駆けてくる二人を見て頭を抱えていた。そして、近づいてきた二人の額にデコピンする。

 

「「あうっ!」」

 

 二人仲良く額を押さえて蹲る。

 晴明はあきれた表情を浮かべて話しかける。

 

「お前らなぁ……。ここは一応敵地だぞ。無用心すぎる」

 

 ふぅ、とため息をはく晴明。

 圭たちは涙目になっている。

 そこにもう一台の乗用車、慈たちも到着する。そして、恐らく車に乗ることができなかったのだろう。車の天井に座っていた胡桃が苦笑を浮かべている。先ほどの圭たちとのやり取りが見えていたようだった。

 彼女はぴょん、と天井から飛び降りると二人へ話しかける。

 

「みき、けい。お前らなら蘆屋さんが無事なことぐらい分かるだろ?」

「だってぇ……」

 

 胡桃の突っ込みに圭は涙声になりながら、情けない声をあげた。それを見てがしがし、と頭を掻く胡桃。

 

「お前らの気持ちも分かるけどさ……」

 

 彼女が言うことは嘘じゃない。胡桃だって葛城紡、憧れの先輩のことで色々あったのだから。

 そんな彼女のやり取りの合間にも車に乗っていた面々がぞろぞろと降りてくる。

 それを確認した晴明は、現状危険な状態であることを指摘して、内部に侵入することを提案する。

 

「ともかく、ここで喋っているのは危ない。今は内部に侵入して安全を確保するぞ」

 

 その提案に他の面々も、納得したように頷くのだった。

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