DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第百七話 がっこうぐらし

 今回の災害は人災である。晴明もそのことを考えなかった訳ではない。しかし、それが実際に証明されて憔悴している彼女たちにかける言葉がなかった。

 本当ならフォローの一つでも入れるべきなのだが……。

 

 ――だが、何を言えば良い?

 

 それが晴明の偽らざる心境。

 まだ、俺たちは生きている。そんなことを言っても、なんの慰めにもなりはしない。それよりかはむしろ――。

 

「バロウズ、ここの設備を使って映像通信。出来るか?」

《えっ……? ええ、出来るけど……》

 

 晴明の指示に困惑するバロウズ。この場の空気を無視するとは思っていなかった。もちろん、晴明も無視するつもりは毛頭ない。

 ただ、ここで気を遣った声掛けをするよりも、通信相手も含めてになるがとある情報を渡したほうが遥かにまし、と判断した。

 

《それで通信相手は?》

「当代の葛葉ライドウ。それともう一人――」

 

 晴明から伝えられた言葉、人物の名を聞いてバロウズは意外に思う。だが、今は通信を繋ぐことを優先するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 東京都某所――

 

 とある建物内にある部署で一人の女性が凝り固まった身体をほぐすように、こき、こき、と音を鳴らしていた。

 そんな彼女の格好はどこか時代錯誤、古めかしい学生服、あるいは軍服に見えた出で立ちで……。

 

「……失礼します!」

 

 部屋の外から突如声をかけられたことに疑問を抱く女性。彼女が本日行うべき仕事、というよりもこの場で行う最後の仕事を終わらせ、ようやく目的の地。()()()へ出立しようとしていた矢先なのだから無理もなかった。

 

「どうしたの、なにか問題?」

 

 女性の問いかけに扉の外から答えが返ってくる。

 

「はい、いいえ。問題ではないのですが、ライドウさま宛に通信が――」

「まさか、ハルに……。蘆屋晴明殿から?」

「はっ!」

「そう、すぐに向かいます」

「はっ、お願い致します!」

 

 その言葉とともに扉の外にいた気配は去っていく。

 そしてライドウと呼ばれた女性。彼女こそが今代のライドウ、十七代目葛葉ライドウこと葛葉朱音。かつて晴明の実家で暮らしていた義妹とも呼べる存在だった。

 

「でもハル兄が通信、しかも私に直通じゃないなんて何かあったのかな?」

 

 彼女は疑問を抱く。なにせ、以前から何度か個人間で通信を行っていたのだから、いまさらなぜ手間がかかる方法を? と、頭を捻るのも無理なかった。

 ともかく、通信に出ればなにか分かるかな。と通信室へ向かうのだった。

 

 

 

 

 通信室に向かった朱音だったが、そこには先客がいた。

 

「あれ、五島一等陸佐?」

 

 そこにいたのは陸上自衛隊幹部、五島一等陸佐こと五島公夫。ライドウに協力していた人物だった。

 

「むっ、ライドウ殿か。あなたも蘆屋君に呼ばれたのかね?」

「陸佐も?」

 

 朱音もまさか五島まで呼ばれているとは思わず、目を丸くしていた。

 なぜなら五島は実質的な災害に対する司令官だということもあり、いよいよもってなにごとかあったのだと確信することとなる。

 

「ま、まぁ。ハル兄に聞けば何か分かるよね……?」

 

 予想外の事態に動揺していた朱音。対して五島は多少落ち着いた様子で部屋に入っていく。

 それに着いていくように部屋へ入る。

 中ではすでに通信が繋がっていたようで晴明の姿が映っていた。が――。

 

「――はっ?」

 

 思わず低い声が出た朱音。晴明の姿が確かに映っている。映っていたが、背後にも人の姿が、しかもそれはほぼ女性。しかも10人ほど映っていたのだ。

 

『ど、どうした朱音?』

 

 朱音の低い声に動揺している晴明。何か怒らせるようなことをしただろうか、と考えているようだ。

 

「ねぇ、ハル兄? ……いったい、ナニしてたの?」

『いや、ナニしてたって……』

 

 そこでようやく晴明は妹分の朱音に何を疑われているのか理解したようで、頭を抱えると誤解を解く。

 

『あのな朱音――』

「ライドウ」

 

 自身の名を訂正させる朱音。

 晴明もそれで失態を自覚する。

 

『あ、あぁ。そうだな、すまんライドウ』

 

 そして晴明は空気を変えるように咳払いする。

 

『んん、彼女たちは現地の生存者。そして協力者だ』

「ふぅん」

 

 晴明の言い分を信用していないように気のない返事をする朱音。そんな彼女の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『あか――ライドウ。晴明さんを虐めるのはそこまでにして、ね?』

「えっ……?! 朱夏!」

 

 それは彼女の親友でもあるペルソナ使い、神持朱夏だった。彼女の存在に気付いた朱音は嬉しそうに破顔する。

 

「無事だったのね!」

『ええ、なんとかね。色々と大変だったけど』

 

 苦笑いを浮かべて告げる朱夏。実際、堕天使-フォルネウスやデカラビア。しかも魔神柱に変異する、というおまけ付き。そんな化け物や魔王-マーラなどと出会っているのだから間違いなくその通りだった。

 

 それはともかく、親友である朱夏と旧交を温めていたが、そんな二人の間に晴明が割り込む。

 

『すまんがライドウ、そろそろ良いか?』

「えっ……? あっ、うん。ごめんねハル兄」

 

 朱夏の無事を――一応聞いていたとは言え――確認できたことに喜んでいた朱音は、自身がはしゃぎすぎた、ということも理解しており、軽く謝罪する。

 彼女の謝罪を受け取った晴明は今回の通信。その本題へと入る。

 

『今回お二人、ライドウと五島さんに通信を送ったのはお願いしたいことがあったんだ』

「お願い……? でも、それなら――」

 

 いつも通り、直通の通信でよかったのでは?

 そう疑問に思う朱音。だが、五島は晴明の意図に気付き問いかける。

 

「ふむ、それは……。今から話される事柄を公開した方が良い。そういうことかね?」

『ええ、そういうことです。特に今回、こちらの不手際で被害を拡散させうる事態になりまして……』

 

 そこで口を閉ざす晴明。被害を拡散させうる事態、とは結界が崩壊した件であり、それが起きたことでいと畏き御方に心労をかけてしまうことを悔いているようだった。

 それ故、晴明は少しでも心労を軽減するために――確定ではないが――確度の高い朗報を告げることにした。とは言え、それはあくまで予想。故に晴明は二人の、主に五島の力を借りるため今回の通信を行おうと考えたのだ。

 

『それで、五島さんにお願いしたいことは自衛隊、または政府の研究員をこちらへ派遣してほしいのです』

「ふむ、研究員の派遣か……。それは可能であるが、何のため、と聞くのは野暮かね?」

 

 そう思いながらも敢えて口に出す五島。そんな五島に晴明は苦笑いする。

 五島は既に予想できているが、敢えて問いかけることでその趣旨を説明してみせろ、という催促だった。

 

『いえ、失礼しました。今回のバイオハザード、その原因と思わしきもの。ならびに特効薬となり得るものを発見しました。その調査のため、研究員の派遣をお願いしたく』

「ふむ、それで具体的に研究員たちを送る場所は?」

『そちらは二ヶ所。一ヶ所は巡ヶ丘にある那酒沼、という名前がついた水源。そしてもう一ヶ所は――』

 

 晴明は一呼吸おいて場所を告げる。

 

『――巡ヶ丘学院高校です』

 

 それは晴明たち、そして学園生活部が暮らしていた学校の名前だった。

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