DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
晴明の五島に対する研究員の派遣要請。それを聞いたDr.スリルは、自身の天才科学者としての矜持が傷つけられた、と憤慨し声を荒げる。
「ハルやん、どういうことや?!」
彼が立腹するのも無理などない。なにせ、本人が特効薬があるとされる巡ヶ丘学院高校に滞在していたのだ。にも拘わらずそのような話を一切聞かなかった。それで憤慨するな、というのが無茶だろう。
そんな憤慨するスリルを相方兼助手の椎子がたしなめる。
「まぁ落ち着け、Dr.スリル。……だが、なぜ話さなかったのか。その理由ぐらいは知りたいな」
実際、スリルをたしなめていたが、椎子自身思うところはあるのだろう。嘘は許さない、と言わんばかりの鋭い視線を向ける。
彼らの問い詰める視線に、晴明は自嘲する笑みを浮かべる。
「あぁ、今の俺が言ったところで言い訳にしか聞こえないだろうが、いくつも理由があった」
そして、晴明は心を落ち着かせるように深呼吸。
「――時間がなかった。設備がなかった。何より研究者として、実際にゾンビどもの研究をしていたお前らを失うわけにはいかなかった」
「せやかて……?!」
無二の友とも呼べる晴明に評価されているのは嬉しい。しかし、だからといってそんな重要なことを聞かされないのは……。と複雑な心境をスリルは浮かべる。
むろん、晴明とて心苦しいとは思う。しかし――。
「仮にスリル。おまえがその情報を聞かされて、あの高校だけを調査するだけならまだ良い。が、那酒沼まで行って調べようとしなかった、なんて断言できるか?」
「……そりゃあ」
言い淀んだスリル。それが答えだった。彼としても今回の災害、その理由や原因を探ることができるなら間違いなくするだろうという確信があった。それは彼自身の知見を広げるという意味でも、科学の信徒という意味でもだ。
ある意味自白したスリルを見て、晴明はため息をつく。
「だから言えなかったんだよ……」
「ぐ、むぅ……」
呆れが混じった晴明の言葉にぐうの音もでないスリルは歯噛みする。
「それに、おまえはヴィクトルに並び称される悪魔研究者だということを自覚しろ。スリル、という科学者を損失するのは、おまえが考えている以上に世界へ影響を与えるんだ」
スリルへ自重を求める晴明。彼が指摘するように、裏の世界からすればスリルという存在はそれだけの
それだけの価値がある、と判断されたからこそ彼は自由の身となったのだから。
その事を指摘されたスリルは照れたように顔を赤くする。自身が親友と思っている人に、それほどまでに評価されたのだ。嬉しくない筈がない。それを隠すように大声で捲し立てる。
「ふ、ふん! 当然やろ、わしを誰だと思っとるんや。大っ天才のスリル様やぞ!」
そして、こほん。と紛らわせるように咳をする。
「……まぁ、ハルやんの考えてたことは分かったわ。それで、あのガッコとその……那酒沼、やったか? そこに今回の騒動、その原因があるんやな?」
「正確には那酒沼、の方だな。バロウズ、あの
《アイアイ、マスター》
晴明の指示に了承するとともに、バロウズはとあるデータを表示する。それは――。
「これは……。那酒沼のおしゃべり魚?」
「あぁ、学園の面々は俺が美紀と圭、2人を連れて巡ヶ丘市役所へ探索に行ったこと、覚えてるだろう」
「え、えぇ……」
晴明が言葉に出したことで思い出したのだろう、慈が戸惑いがちに肯定する。
「そういえば……。あの時、晴明さん。このバイオハザードの原因が分かった、って……!」
なんでいままで忘れてたんだろう、とばかりに驚く圭。
「たしか、あの時……。そっか、ライドウさんから通信があって――」
『わたし……?』
思い出したかのごとく、ぽつり、と呟く美紀。その中に自身の名前があって反応するライドウ。
「……え、ええ。たしか、あの時はゆき先輩のことで――」
「わたし?」
それに今度は由紀が反応する。そして、指摘されたライドウはその通信がいつのことか思い出す。
『あぁ、あの時の……。と、いうよりその時に分かってたなら教えてくれても――いや、無理かぁ……』
どことなく不満そうに呟くライドウだったが、あの時、自身も焦っていたことし、晴明とともに行動できることに舞い上がっていたから、きっと聞いていてもダメだったろうなぁ、と回顧する。
『それで、結局それがどういう関係――』
「……たしか、高校の水源が朽那川で、その源流が那酒沼」
『――なん、ですって?』
今度は慈がポツリ、とこぼす。それにめざとく反応するライドウ。
「それとバロウズ、男土の夜関連の資料も提示してくれ」
《アイアイ、マスター》
次なる晴明の指示によって提示される男土の夜。かつてあった奇怪な事件の資料をみて息を呑むライドウ。
『これは……』
「男土の夜と今回の災害、よく似ていると思わないか? それと五島一佐」
『なんだね?』
「平行して少し調べてもらいたいものが……」
『ほう……?』
あえてライドウではなく自衛官である五島に頼むことで、裏ではなく表関連。しかも自衛隊、もしくはそれに近しい類いだろうことを理解する。
『それで? 何を調べれば良いのかね?』
「はい、それは……。かつて巡ヶ丘が男土市、と呼ばれた頃。帝国陸軍がスクランブルしている筈です。それを調べていただきたい」
『それは、その男土の夜を終息させるため、かね?』
「ええ、おそらく。そして、その行動は
晴明が提示した可能性。それを聞いた朱夏やライドウを除く女性メンバーは気が遠くなるのを感じる。信じたくないし、信じられないのだ。そのようなことが過去に行われた、ということに。
『なぜ、そう思ったのだね?』
「……圭、巡ヶ丘高校の校歌。今一度歌ってもらって良いか?」
「……え、あ、はい」
突然話題を振られると思っていなかった圭は困惑する。しかし、晴明に頼られた以上断る、という選択肢は彼女になく――。
――七つの丘に冠たるは天に煌めく剣の
――七日七夜の争いに天より降るは血の涙。大地に深く刻まれし炎の跡こそ物恐ろし。
――七つの丘に日は巡り今や聖はおらねども。我ら希なる聖の子、心に剣を捧げ持ち。
――勇気を胸にいざゆかん。巡ヶ丘の民いざゆかん。
校歌を聞いた五島は得心がいったように頷く。
『……なるほど。九頭の大蛇の毒の息がΩ、天より降るは血の涙が爆撃を表し、なおかつ炎の跡ということはナパーム弾、と推察したのだね?』
「ええ、そういうことです」
『承知した、こちらでも調べてみよう。しかし、必ず結果が出る、とは確約できないが』
「でしょうね」
そのようなやり取りをする二人。
ひとつ間違えば帝国陸軍の醜聞となりかねない記録が残っているとは思えなかったからだ。
『それと研究者の派遣も承知した。こちらで早急に手配しよう。御方にも早く報告できるよう努力させてもらう。それで、きみはこれからどうするのかね?』
「……我らはこれからこのランダル巡ヶ丘支社を調査するつもりです。
『なんと……』
『ハル兄……?!』
晴明の宣言に驚く二人。とくにライドウは、その場に由紀がいるにも拘わらず、そのような決断をした晴明を信じられない、とばかりな目で見つめている。
「……もし、メシアどもが何か企んでいた場合、手遅れになる可能性がある。だからこそ、危険を承知で行くんだ。だからライドウ、こちらへ合流する場合はランダルの方へ頼む」
『~~~~……っ! わかった、わかったわよ! 無茶しないでよ、ハル兄……』
「もちろんだ。俺もまだ死にたくないし、な」
信じるからね! そう念押しをしてライドウたちとの通信を終えた晴明。彼は人に聞こえないよう小さい声でポツリ、とこぼす。
「……まぁ、そうそううまくできるかわからないが、な」
そうこぼす晴明の目には、たとえ自身の命を使い潰しても、彼女たちを守る。という決意を湛えていた。
こんにちは作者です。おそらく今年最後の投稿になると思いますので、少し早いですがよいお年を。