DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第百十話 伝承との差異

 YHVHの宇宙に顕現したメタトロンを確認して冷や汗を流す晴明。当然だ、大天使-メタトロンはメシア教の中でも重鎮。大幹部と言っていい位置付けにいる悪魔、否、天使だ。

 それが敵のアジトに足を踏み入れた場所でお出迎え、などとなんの冗談だ。それが紛れもない晴明の本心だった。

 だが、そういったところで、目の前にメタトロンがいる現実は変わらず、いくら考えたところで現実逃避としかなりえない。

 ともかく、晴明にとってこの状況は想定外もいいところだった。

 

 かといってここでぼぅ、としていたらそれこそ全滅だ。それを避けるため晴明は声をあげる。

 

「お前ら、先に進め!」

『――えっ?!』

 

 驚きの声をあげる仲間たち。晴明はその間にもメギドファイアを抜き放ち、敵へと撃ち掛ける。

 

「――はーさんっ!」

 

 由紀は晴明の一連の行動で、自身を囮にするつもりなのだと理解する。

 由紀は晴明がなぜ焦っているのか理解できない。敵が強大だ、というのはちりちり、という感覚が皮膚を刺激するのでわかる。

 しかし、それだって晴明とアレックス。二人を主軸にして戦えば打倒できる筈だ。それなのに――。

 

「バロウズ、召喚シークエンス!」

《オーライ、マスター》

 

 ガントレット内に記された召喚術式が起動。晴明のMAGを糧として幾何学的な魔法陣が展開される。

 それにMAGが注がれ光輝く。

 

《――召喚!》

 

 そして晴明の、バロウズの手によって召喚されたのは2体の魔人。

 

「かかっ、まさかこんな早くに出番かね、さまなぁ殿?」

「ふぅん? 誰に死んでもらえばいいのかな?」

 

 魔人-大僧正と魔人-アリスが召喚された。

 その仲魔たちに晴明は告げる。

 

「二人とも、皆の護衛を頼む! 俺は……」

 

 その言葉につられるよう、魔法陣が展開。女神-スカアハが、幻魔-クーフーリンが、英雄-ジャンヌダルクが、夜魔-ジャアクフロストが、そして秘神-カーマが顕現する。

 

「ここで足止めする!」

「はーさん!」

 

 普段の由紀からすれば考えられないほどの怒号。それほどまでに彼女は怒っていた。

 晴明が自身の命を囮として皆を逃がそうとしていることもそうだし、もし、ここで晴明が死んでしまえば残された者たち。

 彼を慕う女たち、そしてなによりめぐねえ。彼との間に命を宿した彼女はどうなる!

 それを由紀は認めるわけにはいかなかった。

 

 

 ……晴明とてこんなところでむざむざ死ぬつもりなど毛頭なかった。

 だが、それでも大天使-メタトロンという悪魔、神話生物は誰かを守りながら戦えるような、そんな生易しいな相手ではない。

 それにまだメタトロン相手に敗北する、と決まった訳じゃない。晴明はそれを示すように、そして由紀を安心させるために声をかける。

 

「大丈夫だ、そう易々と死ぬつもりなんてない。それに――」

 

 ここがYHVHの宇宙とランダル巡ヶ丘支社の境である以上、ここを突破されたら待機組に危害が及ぶ可能性が高い。そんなことを容認するわけにはいかなかった。だから――。

 

「こいつはここできっちりと仕留める。だから先にいくんだ」

「…………うん!」

 

 晴明の説得が功を奏したのか、由紀は元気良く声を出した。彼女の返事を聞いた晴明は、最後に激励の言葉をかける。

 

「由紀さん!」

「…………はーさん?」

英雄(ヒーロー)は待つものではなく、なるものなんだろう?」

 

 それはかつて、由紀自身が学園生活部にかけた言葉。

 

英雄(ヒーロー)になってこい!」

「うんっ!」

 

 そう言って学園生活部を、由紀を送り出す。そして即座にメギドファイアを再び構えて発砲!

 由紀たちの移動を妨害するため、晴明から注意を逸らしていたメタトロンへ牽制する。

 

「おっと、てめえの相手は俺たちだ。あんまり浮気はよくないぜ」

「滅せよ」

 

 ここに二つの化け物による激戦が始まった。

 

 

 

 

 

 初めに動いたのはスカアハだった。

 

「貴様なら儂を楽しませてくれるか――?!」

 

 跳躍した彼女は両手に持った2本のゲイボルクで突く、突く、突く!

 しかし、メタトロンは驚異に感じていないのか、回避するそぶりも見せない。

 そして、それは正しかったようで鈍色に輝く装甲に弾かれたゲイボルクはあらぬ場所へと逸れていく。

 自身の攻撃が弾かれたことでスカアハは一瞬呆然とする。しかし、次の瞬間にはにぃ、と喜色のこもった笑みを浮かべ。

 

「……面白い! ならば、儂がどこまでやれるか試させてもらおう!」

 

 狂喜する。

 そも、スカアハは影の国の女王であるが、その本質は武人。自らよりも格上の相手が出現したことに歓喜するのは必然だった。

 ……そのとなりを()()()()が通り過ぎるまでは。

 

「おいおい、師匠。あんただけ楽しむなんてなしだぜ!」

 

 獰猛な笑みを浮かべた閃光、クーフーリンは勢いそのままにメタトロンは突撃。

 

「……馬鹿弟子!」

 

 獲物を横取りされる、と危機感を持ったスカアハは怒号をあげる。しかし、それはある意味無用な心配だった。

 

「……う、おぉぉぉぉっ?!」

 

 弾き飛ばされ地表へと墜ちるクーフーリン。

 その姿に横取りされなかったことに安堵したスカアハは――。

 

 ――瞬間、後退。先ほどまで彼女がいた場所に聖なる光が出現する。

 半ば、獣染みた勘だった。それが働かなければ光に取り込まれ深刻なダメージを受けていただろう。

 しかし、攻撃はそれで終わりではなかった。

 

 ――シナイの神火。

 

 メタトロンの瞳からビームが放たれ、ガラスのような地面に接触。いたるところから光の柱が立ち上る。

 それらを躱す晴明たち。

 

「ちぃっ! 無茶苦茶すぎるぞ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないですって、マスター!」

 

 悲鳴を上げながら回避するカーマ。そして彼女は即座に弓を構え――。

 

「こ、のぉ……!」

 

 弦に矢をつがえ、放っていく。

 しかし、やはりこれも効果は薄い。スカアハたちの攻撃もそうだったが、一応ある程度のダメージを与えることはできているようだ。だが、それでもメタトロンを倒すにはあと一手足りない。

 

「……っ、メギドラ!」

「マハ・ラギオンだっホ!」

 

 ジャンヌとジャアクフロストの魔法が直撃する。だが、これらも効果が薄い。いや、メギドラだけは万能属性ということもあり、ある程度効果があったようだ。

 それを見た晴明は物理よりは魔法の方がまだ効果がある、と判断したようで――。

 

「ならば、マハ・ザンダイン!」

 

 びゅう、と空気を切り裂く音とともに鎌鼬の刃を放つ。しかし、晴明は元々物理よりのステータスをしている。それはそうだ。なんと言っても晴明の切り札は、至高の魔弾と空間殺法。見事に物理技ばかりだ。

 そして本人も器用貧乏になるくらいなら、と物理に重きを置いていた。

 だが、晴明の一番の切り札はそれではない。彼の一番の切り札、それは――。

 

()()()()()()()か! ならば、YHVHの宇宙、4finalのメタトロンは――」

 

 ――それは、前世という名のメタ知識。

 

 それにより、晴明は悪魔の弱点という知識を持って、常に優位をとるように行動してきた。

 そして、他の作品のメタトロンはともかく、4finalのメタトロンは明確な弱点というものを持っている。

 

「スカアハ、電撃属性!」

「……っ、マハ・ジオダイン!」

 

 雷光が走る、稲光がメタトロンを直撃し、電流が全身を駆け巡る。

 

「ぐ、ぁ……」

「やはり弱点かっ!」

 

 そう、4finalにおいてメタトロンは電撃属性という明確な弱点を持っていた。さらに言えば――。

 

「ぐ、ぅ……」

 

 メタトロンはいまだ体内に電撃が残っているのか、身体を痙攣させている。SHOCKの状態異常に陥っていた。

 そして、それを見逃すほど晴明は甘くない。

 

「今がチャンスだ! 畳み掛けろ!」

 

 仲魔に指示を出すとともに晴明も駆ける。一気に決着を付けるつもりだ。

 魔法が、斬擊が、刺突が、打撃がありとあらゆる攻撃がメタトロンへ殺到する。

 いくらメタトロンがメカのような外見そのままの耐久力を持っていようとも、それでも限度があった。

 

「お、のれ……」

 

 身体を構成していたMAGの結合が崩壊し、湯気のように立ち上って消滅する。

 

「いちちっ、いいとこなしかよぉ……」

 

 クーフーリンが、苦笑いしながら晴明のもとへやってくる。ぽふん、とカーマが心底疲れた様子で座り込んでいる。

 

 ――ときに、神話に於いてメタトロンは36対の翼と無数の目を持つ炎の柱、とされている。

 

「勇み足するからだ、馬鹿弟子が」

 

 思ったより早く終わってしまったことで、欲求不満ぎみのスカアハがクーフーリンに絡んでいる。ジャアクフロストは大天使を倒せたことにピョンピョンと跳び跳ねて喜んでいる。

 

 ――だが、あのメタトロン。見た目はアンドロイドのように機械化された1対の翼の天使であった。これは伝承とはあまりにかけ離れた姿といえる。

 

 同じく晴明に近づいてきていたジャンヌは、晴明の様子がおかしいことに気付く。晴明はいまだ、戦闘態勢を解除していない。

 

「どうしたんですか、マスター?」

「………………来るぞ!」

 

 空間が震える、悍ましくも神聖な空気が辺りに蔓延する。

 

 ――忌むべき人の子よ。

 ――やはり貴様はここで討たれなければならぬ。

 ――()()の手によって悪魔召喚師、貴様はここで倒れるのだ。

 

 あらゆるところから反射する声。それはまるで同じ声の持ち主が複数いるようで――。

 

 

 力が渦巻く、空間が崩壊する。その先には。

 

「……うそ、でしょ」

 

 カーマが目を限界まで見開き、呆然と呟く。

 そこには先ほど倒した筈の大天使の姿。それも数が10、20、と増えていく。

 

 それはさながら()()、というべき有り様だった。

 

 

 

 

 

 ――()()()()()の軍勢が現れた。

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