DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

125 / 129
第百十三話 神と成りし者

 ひゅんひゅん、と風を切って放たれた矢が天使を貫いていく。額、喉元を貫かれた天使たちはぐりん、と白眼を剥いてMAGを撒き散らして消滅していく。ある者は宙に浮いたまま、殺されたとも気付かずに。またある者は地に堕ち、衝撃とともにMAGとして霧散する。そんな地獄を由紀は駆ける。自身の先祖だという今川義元、そしておじいちゃんとして慕っていた魔人-大僧正。太原雪斎から告げられたままに。

 

「ゆき、無事かっ!」

「くるみちゃん、無事だったんだね!」

 

 そんな由紀といち早く合流できたのは岡部元信と付近の天使を掃討し終えた胡桃。彼女は万が一の事態を考え、優先的に由紀のもとへ向かっていたのだ。

 

「くるみちゃん、りーさんたちはっ!」

 

 他の、まだ合流できていない仲間を心配する由紀。むろん、それは胡桃も同じこと。キョロキョロと素早く辺りを見渡して状況を把握しようとした。

 

「くっそ……。まだよく見えねぇ……! でも、きっと大丈夫」

 

 自身を、そして由紀を安心させるため。そう呟いた胡桃。別に気休めという訳じゃない。彼女自身、元信と協力して付近を制圧したのだから、他の面々も同じ状況になっている可能性は高い。

 そして、彼女の予想は当たっていた。

 実際に、他の面々。朱夏、美紀と圭、悠里のもとにも援軍、と呼べる者たちと共闘していた。

 

 

 

 

 

 

 

 美紀と圭、二人はエンジェルやアークエンジェルといった下級天使たちに囲まれていた。だが……。

 

「――――っ!」

「こんのっ……!」

 

 圭は音の魔弾による弾幕で足止めをして、その間に美紀がロングソードで切り裂く。もしくは――。

 

「まだ……! エイハ!」

 

 ムド、呪殺属性とはまた別の闇属性。呪怨属性に分類される魔界魔法だ。そしてこの魔法は、天使などの聖なる――lawに分類される天使には特効となる。

 事実、エイハを受けた天使たちはまるで硫酸でも浴びたかのよう、どろどろに溶けていく。今の彼女たちであれば下級天使は敵ではない。

 だが、それでも数の暴力で攻め立てられるとジリ貧となっていく。

 

「ほんと……! 多いなぁ……」

 

 辟易とした様子で吐き捨てる圭。額には珠のような汗が滲み、疲労が蓄積しているのが見て取れた。同じく、疲労を滲ませている美紀もはぁ、はぁ、と息を切らせている。

 

「けい、いくらなんでも。このままじゃ……」

 

 顔をしかめ、少し弱気になってきていた。今までなら晴明が、彼女たちの大切な人がどんな時でも助けてくれた。

 しかし、その晴明はここにいない。大天使、熾天使であるメタトロンの足止めをするため別行動を取っている。

 アレックスもまた獅子奮迅の活躍をみせている。が、それでも圧倒的に数が足りていない。

 そのことが美紀を弱気にさせていた。

 

「戦場で不安そうにするのは、あまり感心できねぇなぁ……」

「……えっ?」

 

 どこからともなく聞こえてきた男の声。晴明とはまた違う、聞き覚えのない声。だが、敵意は感じない。不思議に思った美紀、そして圭は声が聞こえた場所を見る。

 そこには黄色い着物を纏い、胴丸を着込んだ武士。背には『八幡』と書かれた黄色い旗指物。

 その武士は、刀を抜くと無造作に天使たちを切り捨てていく。

 

「本来、俺がここにいるなんて場違いにも程があるが……。義兄者の娘婿がああも張り切ってるんだ。かつての主家に加勢して、武を奮うのも悪かないさ!」

 

 そう、男が告げるとともに背後から部下らしき足軽たちが現れる。しかし、よく見ると義元たちが率いる足軽たちと違う点があった。

 家紋が違うのだ。義元たちが率いる足軽たちが掲げる家紋は今川赤鳥紋。だが、男が率いる足軽が掲げる紋は――。

 

「行くぞ手前ら、今回も勝ち戦なんだ。勝鬨をあげていけぇ!」

 

 ――北条鱗紋。

 関東の勇、後北条家が掲げていた紋。そして、それを背負うこの男こそが……。

 

「遠からん者は音に聞け、近くは寄って目にも見よ! 我こそが北条五色備えが一騎。地黄八幡(じきはちまん)北条左衛門大夫綱成なりぃ!」

 

 北条家随一の猛将とまで呼ばれた、地黄八幡、北条綱成だった。

 

 

 

 

 

 突如として現れた綱成、そして北条勢を見て呆然とする美紀と圭。しかし、そんな二人を置き去りにして綱成は突撃を開始する。

 

「勝った、勝った! この戦、すでに我らの勝ちぞ!」

(えい)(えい)(おう)! 鋭、鋭、応!』

 

 勝鬨をあげながら突撃する綱成たち。その異様な光景にエンジェルたちは気圧されている。

 ただの人間相手に気圧される、などと普通はあり得ない。しかし、ことこの北条綱成だけは普通足り得なかった。なぜならば――。

 

 ――地黄八幡とは、すなわち直八幡。

 

 かつて越後の龍、上杉不識庵謙信が毘沙門天の化身、と名乗ったように、綱成もまた八幡神、八幡大菩薩の直系、いわば化身だと名乗っていた。

 そして、今の綱成は涅槃、死人がこの世に蘇った身。あり方としては肉体を持たない、精神生命体に近い。

 ……時に、美紀たちからすれば今の綱成はある意味よく知る存在に極めて近くなっている。すなわち、悪魔に、だ。

 そして、この世界において悪魔とは、あらゆる伝承、都市伝説に出てくる、人を越えた超越者たちだ。

 つまりは、だ。偶然とはいえ、綱成もまた人を越えた存在としてこの場に顕現している。それとともに彼は直八幡と名乗り、その力を得ている。

 すなわち、今 ここにいる北条綱成は、過去の武将、北条綱成であるとともに悪魔、威霊-ハチマンの分霊としても顕現していた。

 

 戦いにおいて数は正義だ。しかし、それだけで決定打になるかと問われれば必ずしもそうなるわけではない。

 戦史を紐解けば、寡兵が大軍を打ち破った例なども出てくる。奇襲なり、戦略なりで、だ。

 今回の綱成の突撃もまた、一種の奇襲に近い。だが、本当に奇襲か、と問われれば首をかしげざるを得ない。なぜなら、この攻撃は足軽や綱成の気迫がこもった突撃で無理矢理、簡単に言えば勢いだけで突破しているに等しい。

 それでも天使たち相手に勝てているのも、綱成が……否。武神たる威霊-ハチマンが軍勢を率いているからこそ。

 つまり、威霊-ハチマンの化身たる北条綱成。彼がここに現れた時点で天使たちと美紀、圭。彼ら、彼女らの運命は決まっていたのだ。彼女たちが生き残り、天使たちが殲滅される。そんな運命が……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。