DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第百十四話 合流するため

 各所に現れた今川家に縁のある武将たち。彼らの活躍で学園生活部の面々は無事に集結しつつあった。しかし、その中の1人。彼女だけはいまだ孤軍奮闘していた。それは学園生活部副部長である――。

 

「……っ、ペルソナ――!」

 

 その名は若狭悠里。かつて恵飛須沢胡桃に扮したドッペルゲンガーとの邂逅。そして、自身の闇。シャドウと対峙して神話覚醒を果たしたペルソナ使いだ。

 彼女の背後に褐色の肌をした、どこか本人に似ている異形が顕現する。彼女のペルソナ、イシスだ。

 

「マハ・ジオンガ!」

 

 悠里の力ある言葉と共に轟雷が、閃光が辺りを駆け巡り天使たちを駆逐する。だが、その後も続々と補充される天使たちを見て、辟易とした声をあげた。

 

「もうっ、どれだけいるの! ……ゆきちゃんたちは大丈夫よね?」

 

 天使を駆除しながら仲間の、友人たちを心配する。それだけの余裕が悠里にはあった。

 今も彼女は手にした宝石が埋め込まれている魔術的意図が強いナイフで向かってくる攻撃をうまくいなしている。

 悠里がそういうことをできるようになったのも、ひとえに同じような武装――サバイバルナイフを主武装と――している朱夏との特訓の賜物だ。

 彼女との特訓。そしてペルソナに覚醒して以降、積極的に拠点である巡ヶ丘学院高校の巡回。さらにはかれらの討伐にも参加していた。

 それらの行動が悠里の、若狭悠里という1人のペルソナ使いの練度を飛躍的に向上させる結果をもたらしていた。

 

 ちなみに魔術的ナイフ――パッと見、包丁にも見える――についてだが、これも美紀の西洋剣にカイトシールドと同じく晴明からもたらされたものだ。

 かつて、美紀と2つの装備に縁を感じたように、若狭悠里こそこのナイフを持つにふさわしい。そう感じさせるなにかがあった。

 そして、そう感じた晴明の直感は正しい。なぜならこのナイフは可能性の(聖典)世界の若狭悠里が、エトワリア。クリエメイトとして召喚された際に得る筈だったナイフなのだから。

 

「ふっ……!」

 

 息を吐くとともに一閃。ナイフを天使へ突き立てる。見事に急所へ突き立てた一撃は天使を葬る、MAGへ霧散させるに足る一撃だった。

 地味ながらも堅実に戦果をあげる悠里。しかし、趨勢を決するにはいまだ程遠い状況だった。

 

「はっ、ふぅ。訓練だと思えばちょうど良いんだろうけど……。こうまで数が多いと――」

 

 いくら悠里が消耗少なく立ち回ろうとも、長時間戦闘をしていれば嫌でも体力を、気力を削られてしまう。いまはまだ許容範囲内だが、そんな状況が続いてしまえば、いかにペルソナ使いとして優れている悠里といえど……。

 

「ふっ、ふぅ……」

 

 つぅ、と頬を流れる汗。顎を伝いポタポタ、と床に滴っている。それは紛れもなく悠里が消耗している証だった。

 

「このままじゃ……」

 

 天使という数の暴力に押し潰される。そうなる未来を嫌でも認識させられた。だからといって、悠里にそれをどうこうできる程の実力はない。これが晴明やアレックス、天音であれば時間をかければどうにかできる可能性は十分ある。だが、さすがにそれをついこの間覚醒したばかりの悠里に求めるのは酷な話だった。

 そう、()()()()である。

 

「……ぬぅん!」

 

 どこからともなく、悠里の耳に届く聞き覚えのない声。それとともに辺り一面に銀閃が奔り、天使たちを細切れとした。

 

「……えっ?!」

 

 突然の増援、その心当たりにない悠里は目を白黒させた。そして銀閃を奔らせた当人を見て――。

 

「……はい?」

 

 思わず、間抜けな声をあげた。まず目に入ったのは胴体に巻き付けた数珠らしきものと黒い甲冑。そして兜についた鹿の角にも見える脇立が拵えられている。

 それよりもある意味異様なのが彼が持つ槍。……一言で言えば途轍もなく長い。全長で6メートル程だろうか。それを片手で扱っていた。

 その長槍で天使たちはまるで木の葉が舞うがごとく吹き飛ばされ、あるいは両断されている。

 余りに現実離れした光景に悠里の目が点になるのも仕方なかった。

 

「娘御よ」

 

 そんな男から声をかけられた悠里。男の声は重苦しくのし掛かるように感じた。

 

「は、はいっ!」

 

 予想外の事態に緊張する。しかし、彼女の思いとは裏腹に、男は優しげに話しかける。

 

「そなたの仲間たちが集まっているようだ。そなたも早く向かうが良い。ここは我らが引き受ける」

「え、あ、う……?」

 

 余りのことに混乱する悠里。だが時は待ってくれない。

 

「早く行くのだ!」

「は、はいっ!」

 

 男の渇に驚き、仲間たちと合流するため走り出す。それを見送り、男は悠里へ背を向ける。すべては悠里を、自身が主君、そのお方が主と仰ぐ者の血筋を継ぐ姫君を守るために。

 

「本多平八郎推参! ここを抜くは我を討ち果たすことが必須と知るが良い!」

「――ならば、俺も助太刀させていただこう!」

「ぬっ……」

 

 本多平八郎と名乗った男。かつて、織田信長に花も実もある武将とまで讃えられた徳川四天王が1人。本多忠勝は聞き覚えのある声に気を剃らす。

 忠勝のとなりに現れた武将。赤い甲冑に鬼の角にも見える脇立をつけた兜を被った男を見て、彼はなぜここに、と話しかけた。

 

「なぜ貴様がここに? 殿はどうなされた」

「殿は遅参の申し開きのため本陣へ行かれたわ。そのため、我らに手柄をあげてこい、ともな」

「なるほど……」

 

 男の話を聞き、得心したのか首肯する。

 

「ならば、せいぜい我と貴様。2人で手柄をあげるとしよう。頼りにするぞ、伊井の赤鬼」

「任されよ」

 

 忠勝の言葉に頷く赤鬼、と評された男。本多忠勝と同じく徳川四天王が1人。かつて最強と誉れ高い武田騎馬軍団『赤備え』を引き継ぎし大将、井伊直政。

 武名誉れ高き武将たちの揃い踏みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 忠勝が本陣と評した義元が座する地に、1人の老人が顔を見せていた。

 

「遅参申し訳ありませぬ、お屋形さま」

 

 老人の謝罪に義元は鷹揚に頷く。

 

「なに、遅参などと。こちらこそ馳走(援軍)感謝する。……ここは大御所(元征夷大将軍)と呼ぶべきかな?」

 

 からかい混じりの声色で老人へ問いかける。さらには――。

 

「――それとも、東照大権現殿かの?」

 

 その問いかけに老人は苦笑する。

 

「いえ、儂のことは昔のように竹千代、と」

 

 そう、彼こそがかつて戦国時代を終わらせた天下人。徳川幕府初代征夷大将軍、徳川家康その人であった。

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