DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
今川、そして徳川を代表とする戦国武将の増援を得て、YHVHの宇宙を進もうとしていた由紀たち、学園生活部は活路を見いだし、続々と集結できていた。
「ゆきちゃん、無事?!」
「りーさん!」
「そっちこそ、無事だったのか!」
一足先に合流していた由紀たちと胡桃。そこへぱたぱた、と駆け寄ってくる悠里。
「悠里さん、無事だったのね!」
この中では唯一、巡ヶ丘学院高校のOGである神持朱夏。彼女もまた悠里の無事を喜んでいた。
「他の娘たちは?」
まだ合流できていない妹弟子。直樹美紀、祠堂圭。二人の安否を確認する。
「みきさんたちはまだ……」
不安そうな口ぶりの悠里。残り二人、後輩たちの状況はいまだ不明だった。
「そう……」
悠里の口調から、朱夏もまた表情を曇らせる。妹弟子二人のことが少し心配だった。
なにしろあの二人はついこの間、覚醒したばかり。ある程度即席で鍛え上げられたとはいえ、こんな地獄のような戦場に放り込まれるのは想定外だった。
それだけじゃあない。あの二人、朱夏にとって妹弟子だというのも確かだが、それ以上に同じ男。晴明のことを慕っている同胞、そしてライバルでもあるのだ。
もしも、二人が死んでいたら。顔には出さないだろうが、間違いなく晴明は哀しむだろう。そんな確信が朱夏にはあった。
「無事でいなさいよ――」
ぎり、と歯を食いしばる。辺りは消滅した天使たちのMAG。生命力が充満し、あの娘たちの気配が感じづらい。だが、それは言い訳にもならない。
ぐっ、と足に力を込める。いないのなら、こちらから探しにいくしかない。正直、危険だろう。いまも多くの天使と過去の英霊。戦国武将や配下の足軽たちが殺しあっている。
「朱夏さん! ひとりじゃ無茶だよ!」
朱夏の無謀とも呼べる行動を止める由紀。
「ええ、そうね。もし探すなら全員で行動すべきよ」
アレックス。この中で唯一、晴明と同格の超人。唯野=アレクサンドラも同意する。いくらなんでも、この戦場を単独で移動するのは自殺行為に等しい。故の制止だった。
「アレックスさん……!」
制止を受け歯痒そうに顔を歪める朱夏。理性ではアレックスが正しいのは分かる。しかし、感情では分かりたくない。いますぐにでも、衝動のまま走り出したかった。
そんな彼女の耳に声が聞こえてくる。
「おぉい、みんなぁ――!」
ぱたぱたというこちらへ近づいてくる足音。そちらへ目を向けると、そこには肩で息をしながら近寄ってくるふたりの少女。直樹美紀、指導圭の姿。ふたりとも無事だったのだ。
「あなたたち……!」
「みーくん、けーちゃん!」
ぱぁ、と明るい顔になる由紀と朱夏。他の娘、とくに親友のアレックスはホッとして胸を撫で下ろしていた。
「は、はっ、……ふぅ」
「み、みんな。無事だったんだね……」
おそらく全力疾走してきたのだろう。美紀はずざざ、と足裏で急ブレーキを掛けると、両膝に手をつき荒く息を吐いて、顔をしかめながらも嬉しそうにしている。
圭もまた同じではあるが、美紀よりは余裕があるようで、なんとか言葉を絞り出していた。
「おいおい、無事だったのかはこっちの話だよ」
どこか呆れたように話す胡桃。しかし、その言葉の節々に心の底から喜んでいることが伝わってくる。
そんな胡桃を仕方ないなぁ、とばかりに優しく見つめ、今度は合流してきたふたりの後輩を見守り、追従する悠里。
「ええ、そうね。みきさん、けいさん。……無事で本当に良かった……」
「りーさん……」
聖母のように微笑む悠里を見て、美紀と圭は嬉しそうにする。正直、天使の大群を見たとき心が折れそうになったし、最悪誰か欠ける可能性すら頭によぎった。
だが、結果としては最良。誰一人欠けることなく天使たちの攻勢に欠けることなく突破することができた。それもこれも、魔人-大僧正。黒衣の宰相、太原雪斎の策。過去の英霊たちを顕現させるという大偉業により達成された。
もしも、この場に大僧正がいなければどうなっていたことか。たられば、など考えても仕方ないが、それでもそのもしもを考えてぞくり、と背筋が寒くなる朱夏。
それに、ここで無駄に時間を潰すべきでもない。いまはまだ、戦力が拮抗している。しかし、まだまだ天使たちが顕現しているのも事実。時間とともに戦国武将勢が圧される可能性は十分あった。
「ゆき、急いで先に進んだ方が良いわ」
「えっ、でも。朱夏さん」
朱夏の進言に少し躊躇う由紀。大僧正はもとより、同じく天使たちを抑えている魔人。由紀たちより幼い姿のアリスもまた合流できていなかった。
「あのふたりが抑えてくれてるからこそ、私たちは無事なの。……下手に合流しようとしても、足手まといになってしまうわ」
躊躇う由紀を優しく諭す。このまま留まったところで数の暴力で圧されるのは目に見えている。それより、ここで朱夏たち、人間がいなくなった方がアリスたちは存分に暴れられるのだ。
それを考えれば、二人を置いて先に進むのは当然の選択だった。
「……ゆきさん」
由紀の肩を優しくつかむアレックス。
……由紀とて分かっているのだ。自身らが足手まといになっていることも。ここで先に進むのが最適解なことも。
ぎゅっ、悔しげに目を瞑る。……もう、決断はできていた。
「…………みんな、いこう」
か細い声。本当ならしたくない。でも、それしか方法がない。
そんな由紀の意思をみんな良く分かっていた。
こくり、と頷き皆、由紀のあとへ続く。
後ろ髪を引かれながら。でも、この戦いを、災いを終わらせるために。