DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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第百十七話 聖槍騎士団

 聖霊、アルノー・鳩錦が人類のための神になる。と覚悟を決め、他の面々にバレないよう安全地帯から出立した頃。由紀たちはバタバタ、とYHVHの宇宙の先へ、先へと進んでいた。

 

「……っ、ジャアクフロスト。ムドオン!」

 

 由紀の背後に現れた幻影(ビジョン)。黒いジャックフロスト、ジャックフロストが進化した個体であるジャアクフロストが顕現し道を阻む天使へ呪いを振り撒く。

 その呪いに抵抗できなかった天使は、身体がどろどろに溶け、MAGへと還る。先ほどから同じような状況で散発的な襲撃を受けていた。

 

「みんな、大丈夫?!」

「大丈夫よ、ゆきちゃん」

 

 念のため、確認を取る由紀に悠里が間髪いれずに答えた。事実、これまで襲撃のほとんどを由紀が単独で対処していたため、他のメンバーは驚くほど消耗が少なかった。

 それもこれも、由紀がペルソナ使い。しかもワイルドであることに起因する。ワイルドは複数のペルソナを使い分けることができる。すなわち、きちんと属性や役割別にペルソナを作成しておけばどのような局面でも対応できるということ。

 ゆえに由紀は天使の弱点である呪殺、呪怨系の魔界魔法を使えるペルソナで確殺していた。しかし、それでは由紀に負担が集中するわけだが――。

 

「ゆきちゃん先輩、これ!」

「ん、ありがと!」

 

 圭から飴玉を渡された由紀。それをすぐに口に含み、ころころと転がして舌鼓を打つ。むろん、この飴はただの菓子ではない。チャクラドロップという使用者の精神力、魔力を回復させるアイテムだ。

 それをGUNP内の格納スペースへ保管していた圭は、適宜由紀へ渡して回復させていた。なお、手持ちのチャクラドロップは晴明から譲渡されたものや、アクマから手に入れたものなど、それなりの数を確保している。

 

「でも、ここ。本当にどれくらい長いんだろ? と、いうかあきらかにランダルより大きいよね?」

 

 ずっと進み続けていることに辟易した由紀が愚痴る。他の面々も、由紀の愚痴に共感しているのか、うんうん、と頷く者。苦笑いしながら否定しない者などさまざまだ。

 その中でアレックスも苦笑いを浮かべながらも、由紀へ話しかける。

 

「由紀さんの言いたいことも分かりますけど……。晴明さんが入った時に口走ったYHVH、という言葉。それが正しいならこの異界の主は聖書の神。唯一神-YHVH。あの鳩、アルノー・鳩錦の本体です」

「アルノーの……? って、どういうこと?」

 

 アレックスが言おうとしていることが良く分からない由紀は首をかしげている。それを受け、アレックスは答えを要約する。

 

「異界というのは、アクマの格で大体の大きさ、規模が決まります。そして唯一神はこの世界で現状、一番信仰を受けている神。つまり、とんでもなく大きな異界を創っている可能性が高いです」

 

 事実、過去――前世のアレックスや、仇敵にして今世の父親。唯野仁成が踏破したシュバルツバースの主は生きとし生けるものすべての母。大霊母-メムアレフであった。

 そのメムアレフが最終的に地球規模の異界、シュバルツバースを展開できたのだから、同じように信仰を受けるYHVHが展開していてもおかしくない。

 もっとも、アレックスは同時に、流石に地球規模の異界は展開していないと考えていた。

 

 なにせ、唯一神-YHVHの神格のひとつ。聖霊がアルノー・鳩錦として現世に降臨している。つまり、本来の神格から一部欠損しているのだ。その状態で完全な異界を形成出来るわけがない。それに――。

 

(……なにか、妙だ)

 

 言葉に出さない、というより言語化できない違和感がある。虫の知らせ、直感と言うべき何かが警鐘を鳴らしている。ここは、何かが違う、と。

 その何かを探るため、アレックスは辺りを観察する。それで何か分かるかもしれない、そんな希望を込めて。

 だが、それで何か分かることはなかった。しかし――。

 

「…………っ!?」

 

 ぞくり、と背筋が凍る感覚。この感覚に覚えが、本当によく覚えがある。それを感じたアレックスは声を張り上げた。

 

「――皆さん、下がって!」

 

 突然の警告。

 その事に目を白黒させながら、身体は反射的にその場から飛び退く。あのアレックスが切羽詰まった声を上げたのだから、それも当然だった。

 

 ――直後。

 

 ズガガ、と先ほど由紀たちの居た場所が銃弾の雨霰にさらされた。もし、あの場に留まっていたら全員、蜂の巣にされて血の海に沈んでいただろう。

 だが、おかしいのはその銃弾の軌跡。あきらかに上空よりもたらされていた。その事で上を見上げた由紀たち。

 

「あ、あれ……!」

 

 見上げた由紀は絶句する。あまりにも異質なものが浮かんでいた。

 その異質なもの。どこか大戦中の戦闘機を彷彿とさせるヒトガタのなにか。それが1()3()浮かんでいた。

 

「愚かな……」

 

 その中のひとつ。他のものとは違う、ただひとつ。白く塗装されたヒトガタが呟く。

 

「――ここは戦場だ!」

 

 それとともに、ガチャリ、と銃砲。MG34機関銃が向けられる。

 そして、銃口が光る。それに遅れるようにブルォォ、と音が響く。銃弾という殺意が由紀たちへ牙を剥く。

 

「――マリア!」

 

 由紀は反射的にマリアを、ペルソナを顕現させる。

 

マハ(拡散化)ブフダイン(上級氷結魔法)……!」

 

 マハ・ブフダインを放った由紀。しかし、それは攻撃のためではない。それは銃弾の盾とするため。事実、氷結魔法に限らず、魔界魔法は発動時こそMAGを要求されるが、現実へ顕現したあとは物理的な威力も持つ。

 由紀はそれを利用して即席の盾としたのだ。

 その目論みは間違いなく成功した。ガガガ、と氷塊に着弾する殺意。見事、魔法は盾の役割を果たした。しかし――。

 

「みんな――!」

 

 由紀が叫ぶ。その前に他の面々たちは各々回避行動出る。

 そう、盾としての役割は果たした。だが、それも一時のこと。あっという間に氷塊を削り取った銃弾は、目標物。由紀たちを穿つため殺到した。あくまで一時しのぎにしかならなかった。

 その事は由紀はもちろん、他の面々も分かっていた。だからこそ、由紀が声をかける前に回避行動に出たのだ。

 

「ほう……」

 

 彼女らの動きを見てヒトガタは感心する。いままでの一連の攻撃で何人かは死ぬと思っていた。しかし、蓋を開ければどうだ。少女たち、由紀たちは誰ひとり欠けることなく、こちらを警戒するように見上げている。

 

「なるほど、良い兵士たちだ。女子供と侮れんな」

 

 その言葉とともに、白いヒトガタはMG34機関銃を下げ、代わりに金色の槍、ロンギヌスコピーを掲げる。

 

「なれば、名乗ろう。我らは閣下の槍にして盾。ラストバタリオン、聖槍騎士団-ロンギヌス13である!」

 

 そう、かつてのナチスドイツ。親衛隊精鋭ラストバタリオンの構成員、聖槍騎士団は名乗りを上げるのだった。

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