DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
とりあえず戦闘以外のことも書こうとしたら、とんでもない文字数になりそうだったので今回はほぼ戦闘のみの回です。
それではたいへんお待たせいたしました。VSフォルネウスの第十二話をどうぞ。
空間の孔より現れたフォルネウスは自身がリバーシティ・トロンの主である、と言わんばかりに空中をまるで海中であるかのように我が物顔で泳ぎ回る。
フォルネウスが泳ぎ回る合間、晴明はフォルネウスに狙いを付けるようにメギドファイアを構えるが、彼がその引き金を引く前にフォルネウスが行動を起こす。
「そぉら、まずは小手調べだ。いくぜェ!」
フォルネウスは自身の身にまとうMAGを束ねるとその中心点から冷気が、否、氷塊が姿を表す。
「──マハ・ブフーラ!」
フォルネウスが放つ力ある言霊により全体化された中級氷結魔法【マハ・ブフーラ】が解き放たれる。
迫りくる数多の氷塊を見た晴明は──。
「ジャンヌ!!」
「はいっ!」
ジャンヌに号令をかけ、それを受け取ったジャンヌは美紀と圭、それにジャックフロストをかばうように前に出ると、手に持つ旗槍、その旗部分を開放するように翻して、彼女もまた自身のMAGを集中し、力ある言霊を発する。
「──マカラカーン!」
その言葉と同時に、淡い緑色に輝く光の膜が彼女を中心に
光の膜に触れた氷塊はまるで時を巻き戻すようにフォルネウスの元へと向かう。ただ違う点を上げるとすれば、その氷塊はMAGに戻るわけではなくそのままフォルネウスへと殺到している点だろう。しかし──。
「ハッハァ! 無駄、無駄ァ!!」
氷塊がフォルネウスに触れると、まるで溶け込むようにそのまま体の中に吸収されていく。
それを迫りくる氷塊を時に倶利伽羅剣で切り払い、時に側面にそっと添えるように蹴りを放つことで氷塊の軌道を変えるようにして回避していた晴明は横目に見て。
「ちっ、氷結吸収か。面倒な……。バロウズ、解析できるか?」
余裕そうな表情でフォルネウスの姿に悪態をつきながら、バロウズにかの悪魔の解析ができるかを問いかける。
《それがマスター……。あのフォルネウス、かなり上位の個体のようで解析が効かないわ!》
晴明はその報告に舌打ちをしそうになるが、その前にフォルネウスが息をつかせぬとばかりに再び攻めかかってくる。
「オラオラ、よそ見してんじゃ、ねぇよ!」
そう言いながらヒレを激しく波打たせながら突撃してくる。
「おっと」
晴明はその突撃してきたフォルネウスを横っ飛びをして進路上から退避する。
そのままフォルネウスは速度を保ったまま先程まで晴明がいた場所を通り過ぎるが、その速度自体凄まじく過ぎ去ったあとには暴風が吹き荒れて、近くにある小物や商品などが吹き飛ばされていく。
晴明は回避ざまにフォルネウスが通り過ぎた方向に向き直り、メギドファイアの通常弾を乱射する。
しかしフォルネウスは狭い室内を器用に上下左右に回避行動を取りつつ旋回し、再び晴明に突撃してくる。
晴明もまた向かってくるフォルネウスに銃撃を浴びせかけながら回避行動を取りつつジャンヌに指示を出す。
「ジャンヌ! その二人を安全なところに!」
「はいっ!」
晴明の指示を承諾したジャンヌは二人ともに今から避難することを告げる。
「二人ともこちらへ! 建物の外へ逃げます!」
「え、あ、はい!」
フォルネウスの姿を見て呆然としていた二人だったが、ジャンヌの声を聞いて正気に戻った圭は美紀の手を掴むとジャンヌの先導のもと走り始める。美紀もまた圭に手を握られたことで遅ればせながら正気に戻ったようで、走り始めたときこそ足を取られそうになっていたが持ち前の運動神経の良さも手伝い転ぶことなく機能を停止したエスカレーターを駆け下りていく。
だがそれを見逃すフォルネウスではなく──。
「おぉっと、逃さねぇぞぉ!」
フォルネウスは再び自身のMAGを練り上げようとするが。
「ヒーホー!! ブフ!」
その前にジャックフロストが邪魔をするとばかりに低級氷結魔法のブフを放つ。しかし氷結吸収耐性を持つフォルネウスには意味がなく。
「ハッハハハ、意味がねぇんだよ! 雑魚妖精が!」
フォルネウスに小さな氷は吸収されていき今度はフォルネウスが自身の口から冷気を吐き出そうとする。だが──。
「よくやったフロスト!」
その前に晴明の放った熱を持つ斬撃、ヒートウェイブがフォルネウスのもとへと届く。意識の外から熱を持った強風に煽られることとなったフォルネウスはそれで体勢を崩し、吐き出した氷の吐息【アイスブレス】は全く別の方向へ吐き出され、周辺には霜と主に着弾した地点を中心に凍りついていく。
フロスト自身も先ほど反射されたマハ・ブフーラが吸収されたことで氷結系が効かないことは百も承知だったが後ろから猛追している晴明が見え、そしてフォルネウスがこちらに夢中になり気付いていなかったことを理解していたためにブラフとしてブフを放ったのだ。
そしてフォルネウスは見事思惑通りに引っ掛かり油断したことでアイスブレスを吐き出すタイミングがワンテンポ遅れることとなり、あらぬ方向に飛ばす結果となった。
「貴様ぁあ!!」
そのことを理解したフォルネウスは攻撃をした晴明と、それ以上にまんまと自身を嵌めたフロストに殺気を向ける。遥かに格上の存在に殺気を浴びせられたフロストと、近くにいた美紀と圭は──。
「ヒホッ!」
「あ、ぁぁ」
あまりの恐ろしさに体の震えを押さえきれなくなる。だがその時晴明が三人に声をかける。
「大丈夫だ、あとは任せろ!」
そう言いながらフォルネウスの視線を遮るように三人の前に身を躍らせる。そしてその後晴明はフロストに声をかけて、彼に
「フロストよく見ておけ。こいつは今の不屈の闘志を持つお前ならいずれ到れるかもしれない、キングとはまた違うお前の可能性の一つだ! バロウズ!」
《オーライ、マスター!》
バロウズは晴明に呼び掛けられたことで彼が何をしたいのかを理解して仲魔召喚用の魔法陣を展開する。そしてその魔法陣から真っ黒い腕が現れて──。
「ヒイィィィホオオォォオ!」
雄叫びとともにジャックフロストと似たような姿をした、しかし本来体の白い部分が真っ黒で青色から紫色に変化した帽子を被りジャックフロストとは思えないほどの凶悪な形相をした悪魔、【邪鬼-ジャアクフロスト】が顕現した。
「今さら雑魚妖精が増えたところでぇ!」
フォルネウスはそう咆哮しながら今度はマハ・ブフーラを放つ。
だがその時じゃあくフロストもまたとある魔法を放つ準備を完了していた。
「あんまりなめるんじゃねぇホ!
ジャアクフロストの突き出した両腕から火焔が、全体化された中級
フォルネウスが放ったマハ・ブフーラとジャアクフロストが放ったマハ・ラギオン、双方は互いを目標として突き進み空中で激突!
互いが互いを食い合うように氷解は水流に、火焔は水流を蒸発させつつも消えていく、がその最中に────、轟音、そして閃光。ついには二つの魔法が混ざり合い結果として水蒸気爆発を引き起こす。
「ちぃっ!」
「ヒホォ!」
美紀たちを庇う状態で爆発の衝撃波を浴びることになった晴明とジャアクフロストは驚きの声を上げながら足を踏ん張るが、ある意味彼らよりも悲惨なのは踏ん張ることができない空中にいるフォルネウスだった。
「うおぉっ!」
急な衝撃波による暴風を一身に受けることになったフォルネウスは、錐揉み回転をしながら現在の吹き抜け部分のさらに上空に打ち上げられる。そのまま天井に打ち付けられるかに思えたがその前に体勢を立て直して停止する。
そしてギョロギョロと地表部分に視線を巡らせるフォルネウスだったが、そこには既に出入り口から脱出しようという少女たちの姿があった。
それを阻止しようとフォルネウスは加速してロビーに移動するが間に合うはずもなく美紀たちは脱出に成功する。
脱出した美紀たちを見て歯噛みするフォルネウスは、次に晴明たちを忌々しそうに見る。
「てめえら……! よくも邪魔してくれたなァ!」
そのまま怒り心頭なフォルネウスの口からは先ほどの冷気、アイスブレスとは違い今度は煙が吐き出される。
フォッグブレス、と呼ばれる敵の視覚を制限し、命中と回避を低下させるスキルだ。
「ちぃ、面倒な」
晴明は大きくバックステップすることによりフォッグブレスの回避自体に成功するが、ジャアクフロストは……。
「ヒホッ!?」
そのままフォルネウスの吐いた煙に巻き込まれる。それを見たフォルネウスは自身が吐いた煙の中へと突撃していく。
そして煙で視界を遮られているジャアクフロストはフォルネウスの突撃に気付けるわけもなく、無防備な状態でその突撃を受けて煙幕外へと吹き飛ばされ、あまりの衝撃に内壁に埋まるように激突する。
ジャアクフロストが吹き飛ばされたところを見た晴明は手に持った銃を使い、煙幕内に弾幕をばら撒くが、フォルネウスはその前に上空に離脱する。
離脱したフォルネウスは──。
「今度こそ喰らっとけやぁ! マハ・ブフーラ!」
今度こそはとばかりにMAGを練り上げ、本来複数体の敵に攻撃するはずのおびただしい数の氷塊を晴明一人に殺到させる。
しかし、晴明はそのおびただしい数の氷塊を利用して思い掛けない行動を取る。
なんと伝承にある八艘飛びのように自身の放たれた氷塊を次々と足場にしてフォルネウスのもとへと跳んでいく。
そんな非常識なものを見せられたフォルネウスは一瞬とはいえ思考が停止する。
「……はぁっ?」
そしてその一瞬の隙きは、晴明がフォルネウスのもとまで辿り着き一太刀を浴びせるには十分過ぎる時間だった。
「おぉぉ!!」
晴明は気迫の入った咆哮とともに倶利伽羅剣に力を込めてフォルネウスを両断せん、とばかりに轟音、あまりの力強さに空気が破裂するような音を響かせながら振り下ろす。
「く、そ、がぁぁ!」
フォルネウス自身は晴明の一閃を躱そうと咄嗟に身を翻そうとするが、流石に間に合うわけもなく、しかし同時に致命的な一撃を避けることには成功する。だがその代償として片方のヒレが斬り飛ばされる。斬り飛ばされたヒレは光の粒子になって消滅しそして片ヒレがなくなったことで空を飛ぶことが出来なくなったのか、フォルネウスは地表へ、ちょうどリバーシティ・トロンの地下部分へと続く階段付近へと轟音を立てて墜落する。
それとほぼ同じ時にフォルネウスのヒレを切り飛ばした晴明も地表に着地すると、先ほどフォルネウスに吹き飛ばされたジャアクフロストに駆け寄る。
「おい、ジャアクフロスト、大丈夫か!」
「アイタタタだホ、よくもやってくれたホ」
フォルネウスに吹き飛ばされた衝撃で少しばかり壁に埋まっていたジャアクフロストは、その壁から抜け出すと頭をふるふると振りながら片手で押さえる。
その行動で痛みが収まったのか、ジャアクフロストはフォルネウスが墜落した地点を険しい目で睨みつける。
そこには晴明に斬られた結果地面でのたうち回っているフォルネウスがいた。
「がぁ、ぁあぁぁ! フザケやがってぇぇ!!」
喚き立てるフォルネウスのもとに地下に向かう階段から複数の人影が近づく。その体の一部は腐り落ち、そして中には食い破られた箇所から骨が見えるものも居る。
それは、晴明たちが地下に行かなかったために殲滅されずに残っていたゾンビたちだった。
そのゾンビたちはフォルネウスのもとに群がると、そのまま喰らおうとするが──。
「ヒト猿ごときが俺様を喰えるわけがないだろぉが!!」
その歯先はフォルネウスを貫くことはなかった。そもそもゾンビが如何に人間よりも強化された身体能力を持つとはいえ、そもそもMAGもまともに扱えない一般人が強化されたところで雀の涙でしかなく、まだ低級悪魔であるならともかくとして中級以上、即ち伝承に謳われる神話生物たちを相手取るにはあまりにも非力すぎた。
「何をしたいのかは知らんが俺様に楯突いたんだ。まずはキサマらから喰らってやるわ!」
フォルネウスはそう言うと自身に詰め寄っていたゾンビのうちの一体に喰らいつく。そしてそのままバキバキと骨ごと、肉や臓物を咀嚼する。
すると先ほど晴明に斬り飛ばされた切断面が隆起してヒレが少しづつ再生していく。
そしてさらにフォルネウスは付近に存在するゾンビたちを次々と喰らっていく。その結果は顕著に現れた。
すべてのゾンビを喰らったフォルネウスはヒレが再生しただけではなく、リバーシティ・トロンに現れたときよりも体自体が大きくなっており、そして身にまとう雰囲気も凶悪なものとなっていた。
力を取り戻した、否、先ほどよりもより強大になったフォルネウスは今度こそ晴明を仕留めるために飛翔するがその時。
『そこまでだ、フォルネウス!』
どこからか聞こえてきた声によってフォルネウスは動きを止めてあたりを見渡す。そしてその場所を見つけたのかある一点に視線を集中させる。するとそこには自身が出てきたときと同じような空間が広がっていた。
晴明も少し遅れてフォルネウスと同じ場所を見ると、ちょうどそこからなにかが飛び出してくる。
そのなにかは、高速で飛翔しながらフォルネウスのもとへと降り立つ。どこかヒトデを彷彿とさせる五芒星の中心に単眼がある悪魔【堕天使-デカラビア】が現れた。
「邪魔をするな、デカラビア!」
「落ち着けフォルネウス、今するべきことはそれではなかろう。我らがなぜ人間界に出張ることになった忘れたわけではあるまい?」
「………………ッ」
晴明に対して怒り心頭なフォルネウスはデカラビアに噛み付くが、そのデカラビアから諌めるような言葉を受けると沈黙する。
フォルネウスが沈黙したことを確認したデカラビアは晴明の方を向き、彼を品定めするようにマジマジと見る。
そしてしばらく見続けた後におもむろに口を開く
「只の人間がここまでフォルネウスを追い詰めるとはな。人間、貴様の名は?」
「…………蘆屋晴明だ」
デカラビアの質問に晴明は警戒しつつも答える。
晴明の答えを聞いたデカラビアは驚いたような雰囲気を出す。
「ほう! 貴様が我らの盟友オセに手傷を負わせた片割れか! ヤツも人間にしては見どころがあると言っておったわ」
感嘆の声を上げるデカラビア。
そしてデカラビアはフォルネウスに振り返ると、どこか呆れたような視線を向ける。
「大方久々に人間界に行くことに燥いで、なおかつ人間がいたことでヒト猿ごとき敵じゃないなどと言って油断したのであろう?」
「ぐむぅ……」
フォルネウスはデカラビアの言葉に反論できないのか口籠る。
それを見たデカラビアは溜息を吐きながら、今度は晴明の方へ向き直る。
「悪魔召喚師よ。我らにも使命があるゆえここで失礼させてもらう」
「……させるとでも?」
デカラビアの挑発とも言える言葉に晴明が噛み付く。しかし──。
「させてもらうとも。──【メギドラ】」
デカラビアの力ある言葉とともに晴明たちの頭上に光が集まり大きな光球を作り出すと明滅し始める。
晴明たちはその魔法、あらゆる防御を無視する万能系中級魔法【メギドラ】が危険であることを知っているために慌てて回避する。
その後、頭上に集まった光、メギドラはそのまま光を撒き散らすように爆発する。
「チィッ、無茶苦茶やりやがる!」
メギドラを回避した晴明はデカラビアたちの方を見るが、そこには既に離脱を始めていた彼らの姿があった。そうはさせまいと銃を構える晴明だったが。
「フォルネウス!」
「応よ!」
デカラビアの声かけにフォルネウスが応じると同時に再びフォッグブレスを、今度は攻撃のためではなく自身たちを護るための煙幕として散布する。
フォッグブレスに紛れてフォルネウスを視認できなくなった晴明はバロウズに指示を飛ばすが──。
「バロウズ、エリアサーチ! 奴らを逃がすわけには!」
《マスター、残念ながらもう離脱済みよ……》
「くそっ!」
バロウズの報告を聞いた晴明は苛立たしげに悪態をつく。そして深呼吸をして精神を落ち着かせるとバロウズに残存する敵がいるかどうかの確認を取る。
「バロウズ、エネミー・ソナーに反応は?」
《反応は…………、無いようね。地下にいたゾンビもフォルネウスにほとんど喰われたみたい》
「…………そう、か。」
バロウズの報告を聞いた晴明は忌ま忌ましげに表情を歪めながらそれだけを答える。
晴明個人としてはフォルネウスたちを追撃したかったが流石に救助した二人や、透子、瑠璃を放って追撃に出るわけにもいかずに舌打ちをする。
少しして晴明はガントレットを操作してジャアクフロストを送還しつつ今後の行動とバロウズに指示を出す。
「仕方がないか。最低限の目的は達成したのだからまずは透子さんたちのもとへ戻るとしよう。それとバロウズ、今後は何か少しでも異変があれば教えてくれ」
《了解、マスター。でもいいの? 緊急性が高い場合彼女たちにも聞かれることになるけど》
バロウズの質問に晴明は嘆息しつつ答える。
「仕方あるまい。もともと祠堂さんと直樹さんには話すと言ったんだ。それに、今までは人型しか召喚していなかったから誤魔化しは出来ていたが、ジャックフロストという明らかに異形の存在を見ることになった以上、もう隠すことも出来まい?」
《だから全てを話して決断してもらう、と?》
「そういうことだ」
そう言いながらリバーシティ・トロンの屋内から出た晴明が見た光景は、心配そうにこちらを見ていた透子と救助者二人。そしてジャックフロストに抱きつき戯れている瑠璃の姿だった。
晴明はその光景を見て困ったように笑いながら彼女たちに手を振り、自身が無事であることをアピールする。
すると心配していた三人、特に透子はあからさまにホッとした表情を浮かべる。
そんな彼女の姿を見た晴明は、彼女を安心させるように近づいていく。そしてただいまと告げると、彼女ははにかんだ笑みを浮かべておかえりなさいと返す。
祠堂圭と直樹美紀に太郎丸、二人と一匹の生存者を救出した晴明たちは秘密基地の帰途につくのであった。