DDS 真・がっこう転生 MythLive   作:想いの力のその先へ

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 毎度言っているような気もしますがお久しぶりです、作者です。
 この頃かなり私事が忙しく、その結果のモチベの低下まで発生していましたが、私事のほうが少し落ち着いて執筆の時間が取れたのでなんとか書き終えることが出来ました。
 また世間では今年の10月下旬にSwitchで真・女神転生Ⅲのリマスター、並びに来年にはⅤの発売が決定したと発表があり個人的には大変楽しみといったところです。

 前書きで長々と書いているのもあれなので、とある伏線回収とともにメガテンを知らない方へ向けてと同時に今作での独自設定の説明会、な第十四話をどうぞ。














第十四話 悪魔と召喚師と説明と

 透子が意識を取り戻してしばらくした後、彼女が寝ている部屋にフロストとジャック以外の全員が集まっていた。

 特に彼女の心配をしていた瑠璃は透子の元気な姿──あくまでもまだベッドから起き上がっているだけの状態だが──を見て、感極まったのか思い切り抱きついて涙を流していた。

 

「とーねぇ、とーねぇ……!!」

 

「ごめんね、るーちゃん心配かけて」

 

 そう言いながら瑠璃の頭を撫でる透子。瑠璃はそんな透子の言葉にうん、うん、と何度も頷いて。

 

「とーねぇ、ホントにいっぱい、いっぱい心配したんだよ」

 

 と、涙ながらに語りかける瑠璃を見て困ったような表情を見せる。

 そこで晴明が瑠璃に近付いて視線を合わせるように屈むと、彼女を安心させるように告げる。

 

「ほら、るーちゃん。だからおじさんは大丈夫だって言っただろう?」

 

「うん!!」

 

 晴明の言葉に満面の笑みを浮かべて頷く瑠璃。

 しかし瑠璃の笑顔を見た晴明はどこか気まずそうに苦笑いをすると本来の功労者について告げる。

 

「ま、実際のところ祠堂さんがあれを見つけてくれたからどうにかなったんだけどな」

 

 そう言いながら晴明はすぐ近くにあるテーブルの上に置いてある緊急避難マニュアルを見る。晴明につられて他の面々もテーブルを見るが、その中で一人だけその冊子を見て顔を青くするものがいた。

 

「……晴明さん、それ……!」

 

 顔を青くした人物は、先ほどまで意識を失っていてその存在を知るはずのない透子だった。

 その透子の姿を見て晴明はやはりか、と思って苦笑を浮かべつつ彼女に問いかける。

 

「やはり透子さんはあのマニュアルの存在を知ってたんだな?」

 

 晴明の断定とも取れる言葉に静かに頷く透子。彼女の頷く姿を見て発見者である圭は驚きの表情を浮かべると彼女に詰め寄ろうとする。が、その前に美紀に肩を掴まれて止められてしまう。

 

「ちょっと、美紀!」

 

 思わず美紀の方に振り向く圭だったが、顔を合わせた美紀は首を横に振ると。

 

「圭、落ち着いて。赤坂さんは病み上がりだよ。それに私たちよりもあの人に話を聞きたい人がいることを忘れないで」

 

「…………!」

 

 美紀に諭された圭は、それでも納得はいかないのか美紀から顔を背ける。そんな圭を見た晴明は。

 

「祠堂さん、いまは我慢してくれないか? ……それに、彼女が言い出せなかった理由は俺の方にもあるだろうしな」

 

 晴明の言葉を聞いた美紀と圭はキョトンとした顔をする。それには構わずに透子の顔を見る晴明に対して件の透子はというと。

 

「……晴明さん、いつ気付いたの?」

 

 どこか怯えたように晴明に話しかける。それを聞いた晴明は。

 

「気付いた、と言うほどではないかな。祠堂さんが持ってきた冊子のことをレティシアに聞いて、彼女も知らないと言ったから最初は祠堂さんが第一発見者だと思ったんだが」

 

 その言葉を聞いて、なら何故という顔をする透子。それを見た晴明は苦笑しながらさらに告げる。

 

「最初に違和感を持ったのはリバーシティ・トロンに移動する途中の夜。あの時透子さんは俺に何かを話そうとしてやめただろう?」

 

「……ええ、そうね」

 

「あの時のどこか後ろめたそうな顔が気になったのが始まりだった。そして次は祠堂さんがあの冊子を持ってきた時だ」

 

 そこで私? と、自身を指差す圭。それを笑って頷きながら晴明はさらに言葉を続ける。

 

「ここに到着した日に集積所を捜索したのはレティシアと貴女だったな。それでもしレティシアが発見していたのならば、そんな重要なものの報告をしないはずがない。そしてあの日、捜索が終わった後の貴女の顔色はかなり悪かったな」

 

 彼の言葉に顔色を悪くしながらも頷く透子。そこにさらに言葉を続ける晴明。

 

「あの時は只の民間人の貴女がこんな地獄のような目に合えば何もおかしくないと思ったが。……実際にはあれを見つけたんだろう?」

 

「……ええ、その通りよ」

 

「透子さん……」

 

 彼女の返答に信じられないようなものを見たような表情を浮かべるジャンヌ。そのジャンヌの視線から逃れるように縮こまる透子だったが。

 

「やめろ、()()()()

 

 晴明からの突然の叱責に戸惑うジャンヌ。

 

「え、あ、すみませんマスター」

 

 そして思わず素の返答を行ってしまうジャンヌ。それを聞いた瑠璃は。

 

「レティシアおねえちゃん、ジャンヌって? それにマスターって、なに?」

 

「あ、えっと、それはぁ……」

 

 瑠璃の質問にしどろもどろになってしまうジャンヌだったが、それを遮るように晴明が瑠璃に話しかける。

 

「るーちゃん、そのことは後でちゃんと話すから、いまはちょっとこっちを優先させてもらっていいかな?」

 

 晴明の言葉に不承不承と言った感じで頷く瑠璃。それを見た晴明は独り言を呟くように透子に話しかける。しかしそれは詰問するものではなく、どちらかと言えば自身の失敗を悔いるような雰囲気であった。

 

「なぜ冊子のことを話さなかったのか、なんて言うつもりはないよ。」

 

「…………」

 

 晴明の言葉に一瞬口籠る透子だがなんとか絞り出すように声を出す。

 

「……晴明さん、私は」

 

 しかし、晴明はそんな透子の姿を見て首を横に振る。

 

「さっきも言ったように気にしなくていいよ。……それに言い出せなかったのも、あの時はまだ無意識のうちに俺のことを怖がってたんだろう? それを無視して責めるわけにもいかんよ」

 

 まさか晴明の口からそのような答えを聞くことになるとは思っていなかったのか、透子はもとより、彼に助けられた全員が狼狽する。

 その彼女たちの姿が面白かったのか晴明は笑いをこらえながらさらに告げる。

 

「祠堂さんと直樹さんは()()と一緒にいたから感覚が麻痺しているんだろうが、よく考えてくれ。そもそも強盗のようなものに襲われていたからとは言え、警官でもない素性の知れない銃刀法違反の人間に助けられたとして、君たちはそんなやつを完全に信用できるのかい?」

 

『……あ』

 

 晴明の言葉を理解した二人はそう間の抜けた声を上げる。

 それを見た晴明はとうとう堪えきれずに笑いながらさらに告げる。

 

「まぁ、そう言うことだ。……ああ、後この剣と銃に関してはちゃんと許可を得て携帯してるからそこは安心してくれよ?」

 

 茶目っ気たっぷりにそう告げる晴明に生存者の面々はどういった反応をすればいいかわからないとばかりに困ったような顔をする。

 それを見ていた晴明だったがしばらくすると、申し訳なさそうな顔をして透子を見る。そんな顔で見つめられると思っていなかった透子はさらに困惑した表情を浮かべる。

 

「えっと、どうしたの晴明さん?」

 

「ああ、いや……」

 

 その透子の言葉に一瞬迷いを見せる晴明だったが意を決したように謝罪の言葉を告げる。

 

「むしろ俺のほうが透子さんに謝らなければいけない立場だからな。本当に済まなかった」

 

「…………はぃ?」

 

 なぜ晴明から謝られたか理解できない透子は素っ頓狂な声を上げる。そして意味がわからないゆえにその理由を尋ねる。

 

「えっと、なぜ私に謝ったのかしら?」

 

「恐らく、とは言ってもほぼ十中八九、透子さんが感染した原因は俺にあるから、だな」

 

『はぁっ?!』

 

 晴明の言葉に驚きの言葉を上げる面々。特に圭の驚きようは凄まじく彼に詰め寄りなぜそうなったのかを問い詰める。

 

「一体どうしてそんな事が起きたんですかっ!」

 

「そのことを言う前に透子さん。彼女たちに俺たちが最初に出会ったときのことを教えても大丈夫かい?」

 

「……え? ええ、それはまぁ構わないけど」

 

 晴明のお願いに怪訝そうな顔をしながらも了承する透子。圭にはそれが晴明が誤魔化そうとしているように感じて、彼にどういうつもりなのかを問おうとするが。

 

「蘆屋さんっ!」

 

「これを言うことが祠堂さんの疑問の解決にも関わるんだ。まずは聞いてはくれないかな?」

 

 晴明の落ちついた口調に自身が頭に血が上っていることを自覚した圭は、一度深呼吸をすると首肯することで晴明に話を促す。

 

「ありがとう。……それで、あの時透子さんと初めて出会った時は、彼女がゾンビの集団に襲われてあと少しで噛まれるという状態だった」

 

 その言葉に驚いた圭は思わず透子を見つめるが、彼女自身はコクリと小さく頷くことで晴明の言った言葉が事実だと肯定する。

 

「それで、本当にギリギリのところだったが、透子さんが噛まれる前にその場所に行くこと自体は間に合ったんだけど、予断を許さない状況だったこともあって安全な場所に避難させる暇がないから、その場で即座にゾンビ共を殲滅したんだ」

 

「ええ、そうね。あの時は完全に諦めてせめて痛くないように、なんて祈ってたから本当に何が起きたかわからなかったわ」

 

 そうしみじみと呟く透子。それを聞いた他の救助された面々はそんな事があったのかと興味深そうに聞いていた。

 しかしそこでふと疑問に思った圭は問いかける。

 

「あれ? でも、それじゃあ感染する理由がなくないですか? 救助も成功しているわけなんですし」

 

 圭の疑問を聞いた晴明は首を横に振ると。

 

「そこだけ聞くとまさしくそうなんだけどね、その状況が問題だったんだよ。……簡単に言うと透子さんを中心にゾンビたちに囲まれている状況で、そいつらを残らず斬り伏せたから透子さんは全身に()()()を浴びることになったんだ」

 

 しかもその後同じく血塗れの俺を見て精神の限界に達したのか気絶してたしな、と告げる晴明。

 それを聞いてさもありなんと頷く美紀と圭だったが、そこで美紀は晴明にとあるお願いをされる。

 

「それで直樹さん。そこに置いてあるマニュアルを手に取ってちょっと確認してほしいことがあるんだ」

 

「え? えっと、……どこを確認すれば良いんでしょうか?」

 

 唐突な晴明のお願いに面食らった美紀だったが彼の言うとおりにテーブルに置いてあったマニュアルを手に取り晴明に質問する。

 質問を受けた晴明は改めて美紀に確認して欲しいところを告げる。

 

「じゃあ、それに記述されている感染症の感染経路の(ページ)を確認してくれるかな?」

 

「? わかりました。……感染症だからここね。えっと、α系列の感染経路は接触感染に飛沫感染、それに……、()()、感染……! これって……!」

 

 そこまで読んだ美紀は驚きの表情を浮かべて晴明を見る。見つめられることになった晴明自身は彼女の考えを肯定するように首を縦に振る。

 

「恐らく直樹さんが考えている通りに全身血濡れになって、なおかつ気絶した透子さんは知らないうちに体内にウイルスか細菌の侵入を許したんだろうね。まだα系列だったから良かったものの他のタイプだったらどうなっていたことか……。ともかく、これが俺が透子さんに対して感染の原因だ、と言った理由だよ」

 

 晴明の言葉を聞いた面々はなるほどと納得していたが、ただ一人、美紀だけが疑問に思ったことを口にする。

 

「ちょっと待って下さい蘆屋さん。それだとおかしいです」

 

「どうしたんだい、直樹さん」

 

「それで赤坂さんが感染したと言うのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 貴方も赤坂さんと同じように返り血を浴びたのだったら、明らかに矛盾しているじゃないですか」

 

 美紀の考えにその他の三人はそういえば、と不思議そうな顔をして晴明を見る。

 見つめられた晴明はと言うと。

 

「それに関しては、そうだなぁ……」

 

 晴明はそれだけ呟くと周りにいるジャンヌを始めとする仲魔たちを見て一つ頷くと話し始める。

 

「そのことを説明するためにも、今まで待ってもらってたフロストのこととかについても話さないとね」

 

「? ヒーホーくん、ですか?」

 

 晴明の言葉に首を傾げる高校生組二人。

 

「ヒホッ?!」

 

 自身のことが話題に出るとは思っていなかったのか、部屋の隅でぼーっと全員を眺めていたフロストは肩をビクリと震わせると、晴明たちをまじまじと見つめる。

 そのフロストと目があった透子は、そういえばといった感じでその存在についての疑問を語る。

 

「そう言えば、結局その、ぬいぐるみ? の子、何者なのか聞いてなかったわね」

 

 透子にぬいぐるみと言われたフロストは心外だと言わんばかりに憤慨する。

 

「誰が、ぬいぐるみだホッ! オイラは【妖精-ジャックフロスト】、いつか偉大なキングになる悪魔だホ!」

 

 そのジャックフロストの熱弁に。

 

「「キング……?」」

 

「悪魔……?」

 

「ぬいぐるみじゃなかったんだ……」

 

 と、上から順に女子高生二人、透子、瑠璃の弁である。

 少しの間とはいえ、ともに暮らしていた美紀と圭はともかくとして、他の透子と瑠璃には全く信じられていなかった。尤も美紀と圭もキングという意味がわからずに首を捻っていたが。

 それぞれの反応を見ていた晴明は苦笑しながら、フロストが嘘を言っているわけではないことを告げる。

 

「ははっ、別にそいつが嘘や冗談を言ってるわけではないよ。その見た目雪だるまはアイルランドの妖精、ジャックフロストで間違いない」

 

 それを聞いた透子はどこか腑に落ちない顔をする。

 

「まぁ、可愛らしい姿だから、まだ妖精というのは理解できるんだけど、あの子自分のことを悪魔と言ってたけど、妖精と悪魔って別物なんじゃないの?」

 

 瑠璃がフロストを「ひんやりして気持ちいい」と言いながらペタペタと触っているのを横目に見ながら透子は疑問を口にする。

 透子の疑問を聞いた晴明は困ったように笑いながら告げる。

 

「確かに普通に考えるなら透子さんの疑問は正しいんだがなぁ……。まずはそこら辺の説明からかな」

 

 そう言って晴明は世間一般の悪魔のイメージではなく、所謂裏世界や、魔界などでの悪魔についての説明を始める。

 

 曰く、悪魔とは聖書や神話に謳われる神の敵対者のことだけではなく、その神自身や天使、各地の伝承に存在する土着の妖精や精霊、はたまた妖怪や怪物にそれを退治した英雄たち、果てには現代にも伝わる怪異や都市伝説、そのありとあらゆるものに登場する【人ならざるモノ】たちの総称を悪魔と呼称すること。

 

 その中でほんの一部だが、英雄と呼ばれるカテゴリの悪魔たちは、歴史上の人物がその存在を昇華させて悪魔となった人間であり、そしてレティシア自身がその英雄の一人、ジャンヌ・ダルクだということ。

 

 そしてジャンヌ自身のことも話を聞いていた透子たちには十分に驚くべきことだったが、それ以上に彼女たち、特に透子があまりの驚きに呆然としたのが、瑠璃と楽しそうに遊んでいたジャックが外道-ジャック・リパー、わかりやすく言えばかつて英国を震撼させた実在の連続殺人鬼にして、一種の都市伝説のような扱いになっている【切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)】その人だということだろう。

 

 そしてそのことに驚いた人物がもう一人いた。

 

「ブラザー?! 一体全体どうしてそんな姿になったんだホ!!」

 

 同じ悪魔のジャックフロストだった。

 と、言うのもフロストの一部個体は、同じアイルランド所属のジャックランタン、そしてジャック・リパーと【ジャックブラザーズ】や、【デビルバスターバスターズ】などといったグループを組んだりすることもあったため、ジャック・リパーと面識がある場合も多い。

 そのフロストをしてジャック・リパーのあまりの姿の変わりように、発狂したような声を上げたのだ。

 

 しかし、そんな声を上げたフロストを責めるのはあまりにも酷だろう。

 彼が知っているジャック・リパーはタキシードを着こなし手にナイフを握った【骸骨】の悪魔であり、断じて銀髪の布面積の少ない服を着て召喚師をおかあさん呼びする幼女ではない。

 なのでフロスト自身も彼女をニンゲンの一人と思っていたら正体はなんと自身の義兄弟の一人である。これはひどい。この状態で驚愕の声を上げるな、というのは無理難題である。

 しかも驚愕の声をあげられることとなったジャック・リパー本人は……。

 

「…………?」

 

 こいつ何言ってるんだろう? と、ばかりに首を傾げている。

 

「なんでそこで首を傾げるんだホ! それともオイラのほうがおかしいのかホ?!」

 

 と、ツッコミの声を上げる。

 ツッコミ疲れから、ゼーゼーと肩で息をしているフロストを見た晴明は不憫に思いながらも実は、と声を上げる。

 

「ジャック、だけではないが一部の仲魔たちは何故か通常とは違う姿になってるんだよ。原因は俺にもわからないんだが……」

 

「そうなのかホ?」

 

「ああ、そうなんだよなぁ……」

 

 そう言いながら首を捻る晴明とフロスト。

 フロスト自身も悪魔の姿が変わる、という事例に心当たりはないようだった。

 

「それはともかくとして、次の説明をするか」

 

 そう言って晴明が今度は生体マグネタイトについて実演を交えて説明を始める。

 そも、生体マグネタイト(MAG)とは東洋での氣や、西洋でのオーラなどと呼ばれる生体エネルギーのことであり、これを活性化させ身に纏うことによって悪魔召喚師やペルソナ使いたちは常人ではありえないほどの身体能力を発揮し、同時にMAGで体全体をコーティングすることにより一種のバリヤーに変換され、術者のMAGが尽きない限りは永続的にダメージを軽減する効果もある。

 そしてそれは勿論術者自身に害があるもの全てに適応されることから、透子と同じく晴明も血塗れになりながらも細菌やウイルスに一切侵されなかった要因だった。

 ただしこれは通常の、MAGが介在しないことが前提であり、悪魔たち自身の権能によって病原菌やウイルスをばらまいた場合はその限りではないのだが。

 

 晴明は自身の右腕に眩く発光する緑色の光、自身のMAGを可視化出来るほどに活性化させながらそう告げる。

 晴明の説明を聞いた女性陣たちは、あるものは恐る恐る、そしてあるものは興味津々といった感じで彼の右腕を見つめている。

 

 そして晴明は一息つくと最後の説明に入る。

 即ち、悪魔とは本来実体を持たない精神生命体と言うべき存在であり、普段は魔界と呼ばれる異世界に存在しているが、極稀に現世に現れる者たちもいる。その者たちが現世に干渉できるように顕現するためにはMAGで肉体を構成する必要があるということだった。

 そして現世において最もMAGを保有しているのは人間であり、それ故に悪魔たちはあの手この手で、時に契約、時に神託という形をとって人間に干渉してきた。

 その中には人間と共存することを望む悪魔もいたが、大多数はフォルネウスがヒト猿と蔑んだように隣人としてではなく家畜として扱う者たちだった。

 

 無論人間たちも家畜のままで終わるつもりはないが、しかし同時に人間と悪魔では圧倒的なポテンシャルの差が存在するために、そのままでは勝負にもならないのは明白だった。

 だが、それならば目には目を、歯には歯を、悪魔には悪魔をぶつければ良いと考えた人間たちの手によって生み出された技術こそが悪魔召喚、そして悪魔召喚師(デビルサマナー)であり、神降ろしから派生した人間という種が持つ普遍的無意識の海の中から、自身の内なる精神に最も近い認識を悪魔に見立てて顕現させるペルソナ使い、そして自身のMAGを徹底的に鍛え上げることで、その身一つで悪魔を討伐するデビルバスターだった。

 

「と、まぁ俺が感染しなかったことも含めて説明するとこんな感じか」

 

 そう言いながら説明を終えた晴明は全員を見渡すが、その目に写ったのはあまりのスケールの大きさに呆然としている人間たちと、それをさもありなんとある者は呆れたように、あるものは苦笑しながら彼女たちを見る仲魔たちの姿だった。

 晴明は、まあそうなるよな、という感想とともにふぅ、とため息を一つ吐くと。

 

「なぜ今さらになってこんなことを話したのかとか、聞かなければよかった、なんて考えているかもしれないが、もう既に少なからず悪魔が顕現し始めていることから、遅かれ早かれ皆も悪魔にかかわる可能性が高くなった以上、覚悟を決めてもらうために話させてもらった」

 

 その言葉を聞いた透子たちは顔を青くしながらゴクリと唾を飲む。

 

「無論俺たちは元々悪魔退治が専門だから、皆の護衛含めて危険が迫らないように努力するからあまり深く考えないで、ってのは無理だわな」

 

 晴明の言葉に全員顔を青くしながらブンブンと首を縦に振る。それを見た晴明は困ったような顔をすると額を手で抑えながら。

 

「まぁいくら皆が納得できない、と言ってもゾンビも悪魔もこちらの都合なんてものは考えてくれないから、死にたくなかったらなんとか折り合いをつけてくれ。愚痴ならいくらでも吐いてもらって構わないから」

 

 そう告げる晴明だったが、それでも彼女たちの顔色は悪いまま好転する兆しはない。その姿に晴明は。

 

「まぁ透子さんたちの考えも嫌というほど理解は出来るんだがな……。実際、俺も似たようなものだったわけだしね」

 

 その言葉にバッと顔を上げる透子たち。

 その姿を見た晴明は苦笑しながら自身の過去、かつてのヴィローシャナからの贈り物とその後のことについて、転生者などの下りをかなり暈しながら説明していく。

 

「というわけで、嫌な意味での先達者だが、まぁともかく少しぐらいなら相談に乗れるから、なにかあるなら遠慮なく言ってくれよ?」

 

 晴明が冗談めかして告げると、ようやく彼女たちの表情にほんの少しではあるが余裕が戻る。

 彼女たちに余裕が戻ったことを見て取れた晴明は安堵の表情を浮かべながら。

 

「さて、とはいえ本当に色々あって疲れただろう。今日はまずゆっくりと休もう。そして明日動けるならまたその時どうするかを考えようか」

 

 晴明の言葉に全員が頷くと、それぞれ思い思いに自身の気を落ち着かせるための行動を始める。

 その行動を見た晴明はウンウンと頷くと、彼は皆がちゃんと休めるように見張りのために外へ出るのだった。

 

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