DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
今回はまた幕間の物語、そして前後編となったので2話同時更新となります。
では、2つ合わせて幕間3をどうぞ。
X-day、アウトブレイクより数日、聖イシドロス大学では不可解な事件が起きていた。その事件というのも──。
「墓場から感染者が消えている?」
その報告を受けた男子生徒たちのリーダーである金髪の青年、
「確かなのか? それは」
そのことを確認した同じグループの人間で野球帽を被った無精髭の青年、
「いや、ホントだってリーダー! 流石に何体居るかなんてのは数えてないけど、明らかに以前よりも呻き声の数が少なくなってんだよ!」
そもそもに置いて彼らが【墓場】と呼んでいる場所はコンテナを始めとする障害物で直接出入りすることをできなくした区画のことで、そこからゾンビたちが居なくなるというのは考えづらい。
そのことから自身が嘘をついているのではないか、と疑われていると感じたのか、隆茂は必死そうな様子で貴人に訴えかける。
それを見た貴人は、頭に鈍痛でも感じたのか掌で押さえながら、隆茂に対して疑っていないことを告げる。
「別にお前を疑っているわけではない。ないが、そうだとすると、墓場の何処かに穴があって、そこから奴らが這い出ている可能性もある」
そうなると巡回警備を密にする必要があるな、と貴人は呟く。と、なると──。
「彼女らとも、話し合う必要があるな……。タカシゲ、高上を呼んできてくれ」
その言葉に少し驚いたのか隆茂は貴人に質問する。
「あいつを……? ということは、あちら側に行くのか?」
「ああ、ことがことだ。女性陣とも情報交換しておくべきだろう」
そうして二人は目的地である、女子生徒たちが避難している区画へと行くのであった。
そしてしばらくした後に、校舎にある一つの部屋に数人の男女が揃っていた。
男性側は、先ほどの貴人と隆茂、そしてニット帽を被った、少し恥ずかしそうにしている背丈の小さい青年、
「あなた達から連絡は珍しいけど、何かあったのかしら?」
そう澄まし顔で男性陣に話かける神持朱夏。その両隣には光里晶と右原篠生の姿があった。三人の中で晶のみが男性陣、主に貴人と隆茂を睨むように見つめている。
その姿を見た朱夏はいつものことと思いながらも、晶に対して話かける。
「アキ、貴女の気持ちも分かるけど、ここでそれは辞めなさい。話し合いができないわ」
そう朱夏に窘められた晶は、不服そうに顔を背ける。
彼女が不服そうにしているのも勿論理由がある。それはアウトブレイク初日、晶の友人の一人が混乱の最中に強姦未遂にあっているのだ。
その事自体は偶然避難するために移動していた、晶と朱夏の手によって防がれていたが、もしも彼女たちが通りかからなかった場合は……。
なお、朱夏自身も思うところはあったが、同時に晴明との修行時代に、彼とともに事件を解決する時に、そのような場面に幾度か遭遇しているために、そういったこともある、と理解はしている。尤もその度に下手人のモノはツブしているが。そのことに関しては晴明も黙認し、なにか問題がある場合も
そのことと、朱夏が人知れずペルソナで感染者を狩っていたことで本来の世界線よりも大学生の被害が少なかったこと、さらにはそのことで生存者に本来よりも精神的な余裕ができていたために、モラルの観点と、実際に強姦未遂が起きたために男女を別に分けるべきという意見が台頭して、それが受け入れられてしまったこと。
そのことから現在イシドロスでは男女が別々に行動し、何らかの問題が起きた場合に代表者、現在この部屋に集まった面々で情報を共有するという体制をとっている。
「それで? 一体何があったのかしら?」
再び朱夏が話しかけると、貴人は隆茂を見やり、それで彼の意図がわかったのか隆茂は説明を始める。
曰く、昨日より墓場にいるはずの感染者が減っている可能性があること。
曰く、それと同時に
と、現在判明していることを告げる。尤も生存者が行方不明になっていることは貴人も初耳だったようで。
「タカシゲ、それは確かなのか?」
「……、ああ、俺も今朝聞いたんだが、ダチのダチが昨日の夜、少し外に出てくるって言ったきり戻ってきてないんだそうだ」
隆茂から報告を聞いた貴人は、頭の痛みを堪えるように蟀谷を押さえる。そして──。
「そういった報告は早く欲しかったな」
貴人は報告を怠った隆茂に苦言を呈する。それを聞いた隆茂はバツが悪そうに顔をしかめて貴人に対して詫びを告げている。
その報告を受けていた女性陣もまた。
「そういえばシノウ、昨日から姿が見えないって子、続報はあるかしら?」
「……いえ、ありません。一応椎子さんの方にも確認を取りましたが、そちらには来てないそうです」
「……そう」
篠生から報告を受け取った朱夏は男性陣を見ながら。
「そっちの行方不明者との愛の逃避行というのならロマンがあるのだけど、そういうことではないでしょうね」
と、独り言のような仕草で彼らに話しかける。
そんな朱夏の問いかけに貴人は苦々しげな表情ではあるが、同時に少し落ち着いたような感じに答える。
「……それだと良いんだがな」
そこで今まで黙っていた晶が発言する。
「それで? 結局解ってるのは行方不明者が出てることだけ? で、アンタ達はどうするのよ?」
晶のどこか刺々しい物言いに高上が答える。
「僕たちの方では見回りを強化しようってことになってる。それで、そのことを含めて情報を共有しようってことになって……」
「こっちに来た、ってわけね」
高上の言葉を引き継いで晶が話す。そこには先ほどまでの刺々しさはなくなっていた。
「うん、まぁ……」
そんな晶の態度に高上はどこか毒気を抜かれたように肩の力が抜ける。彼にとっては友人が
尤も晶にとって彼を敵視しない理由は単純に彼が親友の篠生の想い人であることと、高上自身も篠生に対して憎からず思っていることを把握しているからだった。
なお高上自身が篠生のことを憎からず思っていることに関しては、現在生き残っている女性陣──ただし篠生を除く──に知れ渡っており、なおかつ双方ともに自身が片思いと勘違いしているために、彼女たちにとっては大変面白い、もといもどかしい話題として現在に置いては彼女たちの数少ない娯楽となっている。
ただ、その結果として二人の状態があるからこそ、篠生たちを潤滑油としてかろうじてイシドロスの男女間が決定的な破局まで陥らなかったとも言えるのだが。
なお、晶と、ついでに朱夏だけは早くこいつらくっつかないかな、と思っているのだが……。
それはともかく、朱夏もまた男性陣が今日こちらに来た理由に納得して彼らに話しかける。
「とりあえず、了解よ。こちらでもなるべく出歩かない、出歩く場合でも複数人で行動するように言っておくわ。見回りの件も含めてね」
その言葉を聞いて安心したのか、貴人は幾分か表情を和らげて朱夏に礼を告げる。
「ああ、感謝する。それでは俺たちはもう戻る。行くぞ、隆茂、高上」
そう言いながら席を立つ貴人。それに続くように二人も席を立つ。
「あら? もう帰るのかしら?」
「あぁ、これから今後のことを話し合う必要がある」
そう言って貴人は足早に部屋を出ていく。
それに続く形で隆茂も出ていき、最後に高上はちら、と朱夏たち三人を見ると軽く会釈をする。
それを見た三人、特に篠生はニコリと微笑みながら軽く手を振る。
そんな姿を見た高上は薄く頬を朱に染めながら二人に続いて部屋を去っていった。
男性陣を見送った朱夏たちはそのまま部屋で話し込んでいた。
「でも、頭護のやつ、ほんと偉そうにしてるわよねぇ」
「まぁまぁアキちゃん」
先ほどの貴人の態度が気に入らなかったのか晶は不機嫌な顔をして悪態をつき、それを篠生が諌めていた。
そんな二人のじゃれ合いを微笑ましそうに見ている朱夏だったが。
「そもそもあいつどうせ“自分が選ばれた存在だ”とか」
「うぐっ!」
「“俺が皆を導かねばいけない”なんて考えたりしてるわよ、きっと!」
「はうっ!」
晶の発言に何故か胸を貫かれたように押さえる朱夏。
近くで朱夏がそんな奇行をしていることに気付いていない晶はさらに言葉を続ける。
「まったく、生き残った程度で選ばれた存在だ、なんて“厨二病”じゃあるまいし!」
「がはぁっ!」
遂に堪えることが出来なくなったのか、朱夏は胸を押さえたままドサリと床に倒れ伏す。
その状態になって晶たちはようやく朱夏の奇行に気付いたようで慌てて彼女のもとへ駆け寄る。
「ちょっとアヤカ、どうしたの!」
「あの、アヤカさん。大丈夫ですか……?」
自身を心配する二人に朱夏は気付かずに不気味に咲い出す。
「ふ、ふふふっ」
そんな朱夏を不気味に思った二人はお互いを見つめるが次の瞬間、朱夏が突然喚き出す。
「コロせ、いっそコロしてぇ!」
喚きながら床をゴロゴロと転がりだす朱夏。
いつもの朱夏からは考えられない奇行に、流石に驚く二人だがすぐにそんな場合じゃないと思った二人は。
「ちょっとアンタ! 本当にどうしたのよ! しっかりしなさいよ!」
晶は朱夏に語りかけながら落ち着かせるためにもまずは彼女の動きを止めようとする。
尤も晶一人では動きが止められないようで彼女も朱夏に巻き込まれて転がりだす。
「ちょっ! シノウ手伝って!」
「う、うん!」
そのまま篠生もまた朱夏に抱きついてしばらく二人は朱夏を止めるために悪戦苦闘することになる。
その後しばらくして朱夏の暴走は止まることになったがその代償として三人はもみくちゃ状態、服装もはだけており何も知らない人間が見たら三人がそういう趣味に走ったと勘違いされかねない光景が広がっていた。
「はぁ、はぁ、もういったい急に暴れてどうしたのよ?」
朱夏から離れてはだけた服を整えながら晶は彼女に問いかける。尤も件の朱夏はまだショックが抜けきっていないのか上の空になっている。
朱夏のそんな状態が珍しいのか篠生もまた自身の服装を整えながら朱夏を見つめる。
しばらくその状態が続いたが外からノック音が響いたことで晶と篠生の視線がそちらを向き、そして扉が開き一人の女性が部屋に入ってくる。
グレー色の長髪を三編みに纏め瓶底、とまでは言わないが大きな丸いメガネを掛けた彼女の名前は
「お~い、三人とも遅いけど、話し合いは、おわ…………?」
桐子は三人に声掛けをするが途中で、主に朱夏の惨状に気が付き言葉が尻切れトンボなり驚きの表情に染まる。
そして先ほど桐子が部屋に入る前に着直したために結果的に何事もなかったように見える二人の方を向くと。
「……君たち、そんな趣味があったの……? 特にシノウは高上のことが、と思ってたんだけど、まさか両刀だったなんて…………」
二人から距離を取りながら驚愕の言葉を口にする。その言葉を聞いた二人は慌てて。
「ち、違うよトーコちゃん! え、えとコウくんのことは違わないけど、違うから!!」
「ちょ、流石にそんな冗談やめてよトーコ! ああ、もう! いつまでもボーッとしてないでアンタも説明しなさいよアヤカぁ!」
半狂乱になりながら否定の言葉を出す二人。
晶の罵声を聞いてようやく意識が戻ってきた朱夏は目をパチクリさせ何事かと周りを見る。
そこでギャーギャーと騒ぐ二人と彼女たちに対して引き気味な桐子、そして自身の服がはだけていることに対して桐子が勘違いをしていることに気付き、慌てて服を直しながら桐子に問題ないことを告げる。
「あ、あぁ、なるほど。桐子、私の身に何かあったってわけじゃないから安心しなさい」
「…………本当にぃ?」
朱夏の言葉に信用できない、という感情をありありと感じさせる表情で聞いてくる桐子。
桐子の表情を見た朱夏は苦笑しながら本当だ、と告げる。
「……ふぅん?」
まだ信用できないようだが、それでも朱夏自身が大丈夫と言っているためにこれ以上の追求が出来ない桐子は渋々と言った様子で引き下がる。
そんな桐子の様子に三人、特に晶と篠生は窮地を脱したと胸を撫で下ろすが、同時に晶はこの騒ぎの元凶となった朱夏と、ついでに貴人に怒りを募らせる。
晶はいつか
「それで結局朱夏はなんでいきなり暴れだしたのよ?」
そのことを問われた朱夏はと言うと、肩をビクリと震わせて。
「……それは必ず言わなければいけないかしら?」
後ろ髪をふぁさぁ、とかき上げながらクールぶって告げる。しかしいつもは不敵な笑みを浮かべているがその笑顔が引き攣っていることと、何よりも冷や汗をダラダラと流していることから全く余裕がないことが見て取れた。
そんな朱夏の姿を見た晶は目が据わった状態で一言だけを告げる。
「……いいから、さっさと吐け」
「……はい」
晶の凄みに朱夏は誤魔化すことは不可能だと悟ったのか、肩をガックシと落としながら自身が何故そうなったのかを告げるのだった。
朱夏から理由を聞いた晶は痛みだしたような気がする頭を押さえながら溜息を吐く。
「つまり、何か? アンタは昔、蘆屋さんのところでお世話になってて、その時に厨二病発症してたから、アタシの厨二病発言でその時のことを思い出して悶えていた、と?」
その晶の言葉に朱夏は意気消沈した様子で小さくコクリと頷く。
「で、なおかつ、アタシが頭護のこと言ってたのにそれが全部過去のアヤカに当てはまっちゃってて、その結果があの暴走だった、と……」
晶がさらに言うと朱夏は消え入りそうな声で「……はい」と、返事をする。
そんな意気消沈した朱夏の姿を見るのは全員初めてだったようで、各々驚きや呆れなど様々な表情を浮かべながら彼女を見つめている。
特に晶はこの数日間の付き合いで朱夏が意外にポンコツだった、ということをまざまざと見せつけられて、自身の中での朱夏のクールでどこか放おっておけない、そんな彼女のイメージ像がガラガラと崩れ落ちるのを感じていた。
「ま、まぁそれはそうとしても。話し合いは終わったんだし一度戻りましょうか。トーコが来たってことはヒカも心配してるんでしょ?」
晶の言葉に桐子は身を乗り出して同意する。
「そうそう! 皆があんまり遅いから迎えに来たんだからね!」
桐子のその言葉に遅くなる原因となった朱夏は苦笑いしながら謝罪の言葉を告げる。
「迷惑をかけたわね、ごめんなさい」
朱夏の謝罪を聞いた桐子は、あはは、と笑いながら大丈夫だと告げる。
「ま、若気の至りなんてものは誰でもあるさ。それよりも皆首を長くして待ってるからさ、そろそろ戻ろう?」
「……そうね」
桐子の朱夏を慰めるような言葉に彼女は小さい言葉で同意する。そして朱夏は再び小さい声で桐子に話しかける。
「……ありがとう」
朱夏の感謝の言葉を聞いた桐子は、にっ、と笑うと。
「気にしない、気にしない。それじゃ行こうー」
おー、と手を上げて一人で明るく掛け声を上げながら桐子は先に部屋を出ていく。
朱夏はそんな桐子の姿を見て、くすりと笑って彼女の後に続くのだった。