DDS 真・がっこう転生 MythLive 作:想いの力のその先へ
ゆるゆると書いていこうと思うのでよろしくおねがいします。
なおこの第一話では原作キャラが登場するところまで進みませんでした……。
第二話より少しづつ登場しますのでお楽しみに。
では、まだ平和ながっこうぐらし! を、どうぞ。
第一話 デビルサマナー 蘆屋晴明
──巡ヶ丘駅ホーム。
東京から新幹線に乗って、今ここのホームに降り立つ一人の男の姿があった。
全体的にラフな服装ながらも、左腕にまるでコスプレのような鉄甲を付け、どこかくたびれた雰囲気をまとう青年。
その青年の顔を見てみると、まるで死んだ魚のような目をして辺りを見回していた。さながら不審者の様相であり、事実、彼を見た人々は彼を避けるように、または彼を見てヒソヒソと話しながら距離をとっていた。
その件の彼だが、自身がそのように見られていることに対して全く気にせずに、もとい気にするだけの余裕がないのかボソボソとなにか呟いている。
「いやいやいや、何だよここ。楽な仕事じゃなかったのかよ。ありえねぇくらいに死臭が漂ってるし、どいつもこいつも死ぬような雰囲気まとってんぞ…………? ランダルって、そんなにやべぇ厄があるところだったのか? しまったな、もうちょいちゃんと情報洗っとくべきだったか」
そう呟く彼の名は、【デビルサマナー
知る人ぞ知る現代最強クラスの悪魔召喚師であり、そしてアクマ関連の難事件を協力者とともにいくつも解決した、現代の英雄である。
そして今回彼は、とある政府筋からランダルコーポレーションが怪しい動きをしているので調べてくれ、という依頼を受けて日本では一番大きいランダルの支部があるここ、巡ヶ丘市へとやってきたのだが……。
東京を出発してから頭の中で鳴り止まぬ警鐘、胸の中でどんどん広がる不吉な予感。そして極めつけは巡ヶ丘駅のホーム降り立った時に感じた、澱み過ぎてもはや毒に変わるんじゃないかと思いたくなるほどの空気。
それらを感じ取った晴明はそのまま踵を返してGO-HOME! したくなったが、実際にしたら大問題になってしまうし、なにより。
(やべぇ、これ多分メガテン案件だし、解決しても、しなくても、日本中に、下手すると世界中にとんでもない被害が出るやつだわ……)
彼のこの道、十年になる経験からくる霊感、第六感と言うべきか、がそのことを告げている。
往くも地獄、退くも地獄という究極の、選択する幅がない選択肢というものを突き付けられた彼は。
「…………もうどうにでもなれ、だわな。とりあえず流れに身を任せるしかねぇ」
そう呟きながら、駅の改札口を通り人混みの中へと消えていった。
しばらく市内を調査していた晴明だったが、人気の少なそうな路地裏を発見するとまるでそこが目的地であったかのように一直線に入っていく。そして辺りに人がいないことを確認すると、懐から御札を取り出して周囲に何枚かぺたりと貼っていき、その作業が終わると左腕の鉄甲、それに埋め込まれたコンピューターを操作する。
《ガントレットAIバロウズ起動開始》
左腕のコンピューターから機械音声が聞こえてくる。そして──。
《ハァイ、マスター。どうしたのかしら? まだPartyの時間ではないようだけど?》
コンピューターから女性の姿をしたホログラムと、同じく女性の声が聞こえてくる。
彼女の名前は【管理AIバロウズ】、晴明のパートナーの一人であり、彼が左腕の装着している【ガントレット】と呼ばれる彼専用のCOMPの文字通り管理者だ。
「おはようバロウズ。そのPartyについてなんだが、どうやらただのHomePartyじゃなくて、もっと大規模になるみたいなんでな。ちょっと時間がかかる案件かもしれないから、あいつに通信をつなげてほしいんだわ」
《あら、それは大変。あんまり遅くなっちゃったら、あの子が拗ねちゃうものね?》
「ま、そんな訳でな、俺の妹分の。──────十七代目葛葉ライドウまで頼む」
晴明の言葉を聞いたバロウズは直ぐに目的の人物へ連絡をかける。
すると、三十秒のしないうちに通信が開始される。
[もしもし、どうしたのハル
どこか嬉しそうに弾ませた声を聞かせてくる女性の通信者。
彼女こそが今代の葛葉ライドウであり、かつて最強と呼ばれた十四代目葛葉ライドウの後継である、十五代目葛葉ライドウから稀代の才能を持つ、とまで称された才媛である。
「残念だがハズレだ。むしろこれからどうしようか、なんて頭を痛めてるところだよ」
晴明からそんな言葉が溢れた瞬間、通信の先で困惑した雰囲気が発せられる。
彼女にとって晴明は、自身が封魔管を使うオールドサマナー、晴明がCOMPを使うハイテクサマナーの違いがあれど、自身を除くと最高クラスのサマナーであり、彼と比肩しうるのは組織の掃除屋である葛葉キョウジや、ファントムソサエティでも大幹部以上の何人かの合計でも十指に数えれる程度しかいない。
その有数の実力者である晴明から弱音が溢れる? 一体現場ではどんな事態が起きればそのようなことになるのか判断はできないが、義兄がそう言っているからには、大事になっている可能性は否定できない。
[と、言うことはハル兄? 私もそっちに行けば良いのかな?]
つまりは久々に義兄との共同作業というわけか。確か以前共闘した時は、彼の弟子で私の親友であるペルソナ使いの子の卒業試験として、
そういえば、いま義兄がいる巡ヶ丘市は、彼女の実家があるから会いに行けるなぁ、なんてことを漠然と考えているライドウに晴明が告げた言葉は彼女にとって予想外の言葉であった。
「────いや、お前はこっちに来るな」
[────────はぁあ??]
今この義兄はなんと言った? 来るなと言ったのか? あれだけのことを言っていたくせに? まるで私のことを足手まといだ。なんて言っているように聞こえてライドウは怒りを滲ませる。
彼女の勘違いであるのだが、怒りで冷静さを欠いた彼女は語気を強めて晴明に詰問しようとするが。
[ちょっと、ハルに「──メガテン案件だ」]
彼女の言葉にかぶせてきた晴明の発言に思わず息を呑む。
──メガテン案件。
それは彼女にとって、義兄が、晴明が自身にだけ話してくれたこと。
蘆屋晴明は転生者である。と、いうことは葛葉や蘆屋などの裏でなおかつ晴明と関わりの深い者たちには周知の事実であるが、それとはまた別に当時彼の家に居候し、彼が転生者だと割れた後に自身の実家である葛葉ライドウ家に転がり込んだ後、しばらくして私がライドウの名を襲名した時に私にだけ話してくれた事実。
彼の前世に存在した娯楽作品であり、同時に今世に極めて酷似している世界群である【真・女神転生】シリーズに、私達葛葉が主役になっていた【デビルサマナー】シリーズ、そして親友と同じペルソナ使いたちが活躍する【ペルソナ】シリーズ。
他にもいくつか別作品があったらしいが、それら全てに共通する世界規模の災厄。
義兄は、その世界規模の災厄の隠語としてメガテン案件なんて言うことがある。
だが、今まで義兄が同じようなことを言うことはあったし、何よりそれは全部解決してきた。それに本当にメガテン案件だというのなら、それこそ私もそこに行くべきなのでは?
ライドウはそう思いながら震えそうになる声を抑えて再び晴明に話しかける。
[そ、それじゃあさ、ハル兄? 余計に私も行ったほうが良いんじゃないの?]
内心、晴明が了承してくれることだけを祈るライドウだったが、晴明の返答は。
「さっきも言ったようにお前は東京に残っててくれ」
──明確な拒絶だった。
恐らくそうだろうな、と思いつつも彼女は更に晴明に問いかける。
[で、でもさ、ハル兄、なにかメガテン案件の根拠でもあるの?]
「ああ、それは、──俺の第六感だよ」
────最悪だ、とライドウは思う。
この義兄、良い方の勘は一切当たらないくせに、呪われてるんじゃないかと言いたくなるくらいには悪い方の勘は当たるのだ。それこそ百発百中と言えるぐらいには。
「で、ライドウには頼みたいことがあるんだよ」
[え、あ、うん、なにハル兄?]
「東京の防備を堅めてくれ、特に皇居をだ」
その言葉を聞いてライドウは今度こそ絶句する。
この義兄、言外に日本が滅亡する可能性がある、と言っているのだ。
「それとだ」
[な、なに?]
ライドウは純粋に義兄の言葉を聞くのが怖い、と思った。
一体今度はどんな酷いことを言ってくるのか。
「ヤタガラスに言って、巡ヶ丘に結界を張る準備をさせてくれ、俺よりもライドウであるお前が言ったほうが、すぐに動くだろ?」
何だ、そんなことか、とライドウは安心した。安心してしまった。故に次に晴明が言った言葉をすぐには理解できなかった。
「巡ヶ丘から出ることが出来なくなるように、全域にな」
[──────────は?]
その言葉は義兄を、晴明を見殺しにしろ、という意味であった。
[ちょ、ちょっと、ハル兄?]
「頼む、
よりによって今その名前を言うのか。私が義兄とともに暮らしていた、ライドウの名を襲名する前の、あの幸せだった頃の名前を。
今の私が不幸だとは思わない。思わないが、それでもあの時の、葛葉の使命など関係なく、只普通の暮らしをして幸せだったあの頃。
何の運命の悪戯か、あの日、かの神が義兄にガントレットを贈らなければ、もしかしたら続いていたかもしれない、なんでもない尊き日常の日々。
今となっては、その数少ない証明の一つが私の本当の名だった。
私が、それを大事に思っていることを知ってなお彼は言ったのだ。すなわち、
[────ふぅ、もう、ハル兄。その名前は呼ばないで、って言ってるでしょ? 今の私は葛葉ライドウなんだからね?]
平穏が崩れたあの日、義兄は葛葉ライドウの名を口にして、冗談めかしながらサインもらえるのか? なんて言ってきた。
義兄が言っていたのはあの伝説の十四代目葛葉ライドウのことだったが、今は、今代は私が葛葉ライドウなんだ。ならばせめて彼が失望しないように、
[わかりました、
私がそう言った瞬間、どこからか担当者の悲鳴が聞こえてきたような気もしたが、空耳だろうし、何より関係ない。私だって今回神経すり減らしたし、ライドウとしての仕事もあるから分担できる作業は分担しないとね。
「色々と迷惑を掛けるがよろしく頼む」
[うん、分かった。──その代わりと言っては何だけどハル兄? 私からもお願いがあるんだけど?]
「? どうした、色々と押し付けてるわけだから、出来る限りのことはするが?」
よし、言質は取った。なら──。
[それじゃあ言うけど、ちゃんと元気に帰ってくること。そして朱夏と一緒に会いに来てね]
「………………分かった。出来る限りの善処はするよ」
返答までに合間があったことから義兄は自信がないのかもしれない。でも、それでもきっとこの義兄なら叶えてくれる。だって彼はきっと
[それじゃあ、またね。ハル兄]
「ああ、またな、ライドウ。いや、朱音。今度は三人で、な」
[うん、それじゃあ]
その言葉を最後に通信が終了する。
《それで、良かったのマスター?》
通信が終わったタイミングでバロウズが晴明に話しかける。
「何がだ?」
《最後に朱音ちゃんの名前をまた呼んでたでしょう。今度怒られるんじゃない?》
バロウズにそう問いかけられた晴明は、何だそんなことか、と鼻で笑う。
「フン、そもそも朱音は朱音なんだ、何も問題ないさ。それに、だ」
晴明は薄く笑いながら更に言葉を続ける。
「血は繋がってないが俺とあいつは家族なんだ。それなのに家族の名前を呼んではいけない、なんてフザケた話があってたまるかよ」
《──────それも、そうね。OK、マスター。それじゃ朱音ちゃんに元気な顔を見せるためにもさっさと仕事を終えてしまいましょう? なにかオーダーはあるかしら?》
バロウズの問いかけに、晴明は先程周囲に貼っていた御札を剥がしながら答える。
「ああ、それは今のところはねぇな。と言うよりもさっき朱音のやつに言ったように、どう動くべきか考えあぐねてんだよな、これが」
その晴明の返答に不審なものを感じたのか、バロウズは更に話を促す。
《マスター、それは一体どういう意味かしら?》
「どうにも俺の霊感がささやくんだよ。ここで放置したら大変なことが起きる、が、ぱぱっと力技で片付けた場合もっとヤバいことが起こる、ってな」
そう言いながら晴明は片付けが終わったようで路地裏を出るように歩き出す。
「だから、まずはその霊感の正体が一体何なのかの調査と、この巡ヶ丘の地理の把握からだな」
《OK、マスター。それじゃマスターの霊感が杞憂であることを祈りながら散策といきましょう?》
「そいつぁいい、AIは一体何に対して祈りを捧げるんだ?」
二人はそんな軽口を叩きながら路地裏を後にした。